薬事・食品衛生審議会資料

 

平成10年05月26日

 

 

食品添加物の指定に関する食品衛生調査会毒性・添加物合同部会報告について - (別添) グルコン酸カリウム及び同ナトリウムの指定について

 

(別添)

グルコン酸カリウム及び同ナトリウムの指定について


1.品目名:1)グルコン酸カリウム
2)グルコン酸ナトリウム

2.構造式:1)

     2)

3.用途:製造用剤
 グルコン酸カリウム及び同ナトリウムは、パン、味噌、醤油等の製造における食塩の加工機能の代替、魚肉すり身の冷凍保存時のタンパク質変性の防止等の目的に使用される。 

4.起源又は発見の経緯及び使用状況等
 グルコン酸カリウムは、グルコン酸の水溶液と水酸化カリウムの中和反応等により製造される。グルコン酸ナトリウムは、ブドウ糖を原料にした発酵法等により製造される。
 グルコン酸は、1878年、フランスで乳酸発酵の研究中に発見されたといわれているが、米、蜂蜜、味噌、醤油等の食品中にも存在することが知られている。また、グルコース(ブドウ糖)が生体内で代謝される際に、ペントースリン酸回路の中間体としてグルコン酸及びそのラクトン体であるグルコノデルタラクトンが生成することも知られている。グルコン酸類のうち、グルコン酸(酸味料)、グルコノデルタラクトン(酸味料)、グルコン酸カルシウム(カルシウムの強化剤)、グルコン酸亜鉛(亜鉛の強化剤)、グルコン酸第一鉄(鉄の強化剤及びオリーブの色調安定剤)、グルコン酸銅(銅の強化剤)がわが国において食品添加物として指定されている。グルコン酸カリウム及び同ナトリウムは、現在、米国、EU及びニュージーランド等において食品添加物として使用が認められている。
 また、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)では、1974年にグルコン酸類についての安全性が評価され、グルコン酸カリウム及び同ナトリウムを含むグルコン酸類の一日摂取許容量(ADI)は50mg/kg(グルコン酸第一鉄を除く。)と設定された。なお、1986年にはグルコノデルタラクトンについて「ADIは特定せず」と評価されている。

5.有効性
 グルコン酸カリウム及び同ナトリウムの有効性については、パン、味噌、醤油、魚肉すり身等への使用について試験が行われており、その概要は次のとおりである。
1)パンへの利用
 食パン又は菓子パンの製造過程において、食塩の25~100%を代替した場合、食パン又は菓子パンの比容積(体積/重量)は食塩のみを使用した場合と同等若しくは同等以上であった。
2)味噌及び醤油への利用
 食塩の33~53%を代替して製造した味噌及び食塩の25~75%を代替して製造した醤油のpHの測定及び官能試験の結果から、食塩の代替として製造時に使用できることが示された。
3)魚肉すり身への利用
 蒲鉾の原料となる魚肉すり身の冷凍保存時のタンパク質変性の防止の目的で使  用されるショ糖をグルコン酸カリウム又は同ナトリウムで置き換えた場合、グルコン酸カリウム5%添加又はグルコン酸ナトリウム3%添加によりショ糖5%添加と同等の効果が見られた。

 上記を含め別紙1に示した試験成績が提出されている。

 なお、食品製造時に使用される食塩の一部をグルコン酸カリウム及び同ナトリウムで代替することにより、グルコン酸カリウムの場合は勿論、グルコン酸ナトリウムの場合にもその分子量の差(それぞれの分子量に占めるナトリウムの重量比 グルコン酸ナトリウム:食塩= 0.267:1)により、食品からのナトリウムの摂取量が低減されるものと考えられる。  

6.安全性

1)反復投与試験について
 グルコン酸ナトリウムを用いたラットの強制経口(500、1000、2000mg/kg、水溶液として)投与による28日間の反復投与毒性試験において、2000mg/kg 投与群の雄で前胃の境界縁の肥厚が認められている。また、グルコン酸ナトリウムを用いたラットの混餌( 1.25、2.5、5.0% )投与による28日間の反復投与毒性試験においては、検体投与に起因した影響は認められていない。無毒性量は5.0%( 4103.6mg/kg/日)と考えられる。なお、強制経口投与試験においてみられた前胃の境界縁の肥厚については、混餌投与試験において同様の所見はみられていないこと、強制経口投与試験に用いた水溶液の浸透圧が高いこと等から、毒性学的に特に問題とするものではないと考えられる。
 グルコン酸ナトリウムを用いたビーグル犬の強制経口(500、1000、2000mg/kgカプセル封入)投与による28日間の反復投与毒性試験において、1000mg/kg以上の投与群で嘔吐、軟便及び水様便が見られた。この所見についてさらに検討するため、グルコン酸ナトリウム1500mg/kgと塩化ナトリウム(食塩)405mg/kg(ナトリウム量としてグルコン酸ナトリウムの1500mg/kgに相当)について、ビーグル犬を用いて、それぞれ、混餌投与とカプセル封入による強制経口投与による7日間の追加試験が実施された。その結果、グルコン酸ナトリウム及び塩化ナトリウムのいずれにおいても、混餌投与群では各1匹に1~2回、強制経口投与群では全例に1~7回の嘔吐がみられた。また、グルコン酸ナトリウムの混餌投与群の2匹に各1回、強制投与群の2匹に3~4回の軟便がみられた。本追加試験結果及び浸透圧の高い物質を投与した場合、物理的要因により軟便又は水様便がみられることが知られていることなどから、上記の28日間の反復投与毒性試験においてみられた嘔吐、軟便及び水様便は毒性学的に特に問題とするものではないと考えられる。無毒性量は 2000mg/kgと考えられる。
 なお、グルコン酸ナトリウムの急性経口LD50は、ラット及びイヌで2000mg/kg超である。

2)体内動態について
グルコン酸カリウム、同ナトリウム及び同カルシウムを各々ラットに単回経口(500mg/kg)投与したとき、いずれにおいても投与後0.5~1時間で最高血中濃度2~3μg/mlに達し、投与後0~24時間での尿中回収率は 1~2%であった。グルコン酸ナトリウム500mg/kgの静注投与での尿中回収率は約90%程度であり、大部分が代謝されずにそのまま尿中に排泄された。また、グルコン酸カリウム、同ナトリウム及び同カルシウムを各々イヌに単回経口(500mg/kg)投与したとき、いずれにおいても投与後1~3時間で最高血中濃度29~32μg/mlに達し、投与後0~24時間での尿中回収率は7~9%であた。上記の試験結果等から、これらのグルコン酸塩は難吸収性であると考えられる。

3)その他の安全性試験成績について
 食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針(平成8年3月食品衛生調査会答申)においては、「既に指定されている添加物と塩基部分のみが異なるものの場合、適宜その添付を一部省略することができる。」とされており、本要請においても、その理由が記載されている。
 本分科会としては、グルコン酸カリウム及び同ナトリウムの安全性について、グルコノデルタラクトンの発がん性試験成績等の参考資料(別紙1参照)を含め、検討したところ、①グルコン酸、グルコン酸カルシウム等のグルコン酸の塩類が既に指定されていること、②水溶液中ではグルコン酸イオンとカリウムイオン又はナトリウムイオンという形で存在すること、③グルコン酸はグルコース代謝の中間体として生体内で生成されること、④グルコン酸カリウム及び同ナトリウムの体内動態はカルシウム塩とほぼ同等の成績であることなどから、他の試験成績の添付は要しないものと判断した。

7.一日摂取量の試算
 「日本人の食品添加物一日摂取量実態調査研究(昭和51年~昭和60年)」によれば、グルコン酸類(グルコン酸、グルコノデルタラクトン、グルコン酸カルシウム、グルコン酸第一鉄、グルコン酸銅及びグルコン酸亜鉛)の一日摂取量はグルコン酸として114.9mg/日(添加物として使用されたもの以外の自然に含まれているグルコン酸を含む。)と報告されている。
 グルコン酸カリウム及び同ナトリウムの食品への使用量は、有効性に係る試験成績から、食塩の40%程度の代替と推測されること、代表的な減塩食品である減塩醤油の普及率が1%であることから、食塩代替率を40%とし、減塩食品の普及率を1%として一日摂取量を試算すると、グルコン酸として摂取量が 33.7mg/日増加すると推定される。

8.ADIの設定
 安全性に関する知見については、上記に述べたとおりであるが、JECFAではグルコン酸カリウム及び同ナトリウムを含むグルコン酸類のADIを「50mg/kg/日」、グルコノデルタラクトンのADIは「特定せず」としている。
 仮にADIを50mg/kg/日とすると、体重50kgのヒトでは 2500mg/日に相当するが、上記のとおり、グルコン酸類の摂取量は自然に含まれるものも含め150mg/日程度と試算されること、グルコン酸がグルコース代謝の中間体として生体内で生成されていること、添付資料及び参考資料からみてグルコン酸カリウム及び同ナトリウムの毒性については特に問題となるものはみられていないこと、グルコノデルタラクトンを人に2週間経口投与(9g/日)した試験結果などから、「 ADIを特定する必要はない」と考えられる。

9.使用基準案
 ADIを特定する必要がないと考えられることから、使用基準の設定は要しないと考えられる。

10.成分規格
 成分規格については、別紙2のとおり設定することが適当であると考えられる。参考までにJECFAにおいて設定されている規格等との比較表を別紙3に示す。


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