薬事・食品衛生審議会資料

 

平成13年06月21日

 

 

畜水産食品中に残留する動物用医薬品の基準設定に関する 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会乳肉水産食品・毒性合同部会報告につい - 薬食審 第111号:(別紙)の(別添2) シロマジンの審議結果

 
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(別添2)
シロマジンの審議結果

(1)使用方法
       シロマジン(Cyromazine)は、家禽飼料への添加、動物への直接噴霧又は動物舎の表面処理によって昆虫から家畜を保護するために使用される。

(2)ADIの設定について
      1)吸収・排泄
       放射能標識シロマジンを用いたニワトリの経口投与試験では、最終投与後24時間までに投与量の99.1%が排泄された。排泄物中の放射活性の約75%~78%は親化合物であり、卵白中では58%、卵黄中では70%が親化合物であった。

      2)毒性試験

      (1)単回投与試験
       急性毒性試験では、マウス(雄、雌:経口投与)のLD50は、2029mg/kg、ラット(雄:経口投与)では、3387~4050mg/kgであった。

      (2)反復投与試験
       CDラットを用いた90日間投与試験(0、30、300、1000、3000ppm:混餌投与)では、3000ppm群及び1000ppm群は対照群に比べ平均体重は減少した。肝臓の絶対重量は、3000ppm群及び1000ppm群において雌雄両群とも減少した。この試験のNOAELは300ppm(23.5~26.9mg/kg体重/日)とされた。
       ビーグル犬を用いた90日間投与試験(0、30、300、1000、3000ppm:混餌投与)において、雄の3000ppm群及び雌の1000ppm以上の群で、検体投与期間中、体重増加のわずかな抑制があった。雄の3000ppm群の肝臓の絶対重量及び相対重量は対照群よりも大きかった。これらのどの群においても検体投与に関連する病理学的所見は認められなかった。この試験におけるNOAELは300ppm(11.4~12.0mg/kg体重/日)とされた。
       ビーグル犬を用いた26週間投与試験(0、30、300、3000ppm:混餌投与)では、雌雄の3000ppm群で赤血球数、ヘマトクリット値等の低下等の血液学的変化が認められた。検体投与に関連する薬理学的所見は認められなかった。この試験のNOAELは300ppm(8.86~9.29mg/kg体重/日)とされた。

      (3)発がん性試験
       CD-1マウスを用いた2年間の長期/発がん性試験(0、50、1000、3000ppm:混餌投与)では、雄の3000、1000ppm群で体重増加抑制が認められた。検体投与の雄マウスに、肝細胞腫瘍(腺腫と癌)のわずかな増加が認められたが、用量依存性ではなく、前腫瘍性病変(非腫瘍性増殖性病変)の増加もなく、また、雌マウスにおいて同じような影響がなかったことから、検体投与に関連したとは考えられなかった。検体投与の雄マウスに悪性リンパ腫(リンパ球型と組織球型)のわずかな増加があり、投与用量の増加とともに増加した(統計学的に有意ではない)が、3000ppm群における出現頻度は、背景病変発生頻度よりもわずかに高いのみであった。雌では同様の傾向はなかった。雄の体重に及ぼす影響に基づいて、この試験のNOAELは50ppm(6.5mg/kg体重/日)であった。この試験について各群にみられた肝細胞腫瘍とリンパ腫を組織学的に再評価した結果、リンパ腫が3000ppm群で、対照群に比べ僅かに発現率が増加したが、統計学的に有意ではなく、検体投与によるものではないと考え、発がん性はないと判断された。

       CDラットを用いた104週間の長期/発がん性試験(0、30、300、3000ppm混餌投与)では、体重は雄、雌の3000ppm群及び雌の300ppm群で減少した。雄ラットの3000ppm群で精巣間質細胞腫の頻度がわずかに高く、雌の3000ppm群で乳腺腺癌の頻度がわずかに高かった(統計学的に有意ではない)が、発生頻度は、発がん性試験実施機関での背景データの範囲内であり、発がん性はないものと判断された。雌ラットで認められた体重変化に基づいて、この試験におけるNOAELは、30ppm(1.8mg/kg体重/日)であった。この試験について、各群にみられた精巣間細胞腫と乳腺腺癌を組織学的に再評価した結果、統計学的な有意性や用量相関性が認められないことから、これらが検体投与に起因するものとはみなせなかった。

      (4)遺伝毒性試験
       細菌を用いる復帰変異試験、マウスリンパ腫細胞を用いる試験、in vitro染色体異常試験及びマウスを用いる小核試験等標準的な試験をはじめ多くの試験が実施されており、毒性が強いために評価不能となった1試験を除き、すべて陰性であった。従って、遺伝毒性に関しては問題ないものと考えられる。

      (5)生殖試験
       CDラットを用いた生殖試験(0、30、1000、4000ppm:混餌投与。高用量群は、毒性のために4週間目に4000ppmから3000ppmに減量。)では、1000ppm、3000ppm群の雄及び雌のF0とF1ラットの体重は対照群より統計的に有意に低値であった。妊娠に影響はなかった。F0動物において3000ppm群の雄ラットに生殖能に対する影響が示唆されたが、F1雄には認められなかった。妊娠期間に及ぼす影響はなかった。F0、F1児において3000ppm群で周産期死亡の増加があった。両世代において3000ppm群の児の重量は、対照群よりも低値であった。児動物の行動及び外形には影響はなかった。親動物または児動物の組織に、肉眼的、病理組織学的変化は認められなかった。この試験において、NOAELは親動物の体重に及ぼす影響に基づいて30ppm(2.0mg/kg体重/日)であった。

      (6)催奇形性試験
       CDラットを用いた催奇形試験(0、100、300、600mg/kg体重/日:妊娠6~19日に強制経口投与)では、投与初期に300または600mg/kg群のラットすべてに各1回赤色鼻汁の分泌が確認された。試験中に死亡例はなかった。300及び600mg/kg群の母動物は投与初期3日間に体重は減少し、全投与期間で対照群に比べて体重増加の抑制を示した。同腹児を持つ母動物数、生存胎児数または吸収胚数に影響はなかった。死亡胎児はどの群にも認められなかった。600mg/kg群の胎児の平均体重は対照群に比べ統計学的に有意に低かった。性比は全群でほぼ同じであった。胎児には被験物質投与に関連する奇形はみられなかった。未骨化胸骨の出現頻度は600mg/kg群で有意に、100及び300mg/kg群では軽度に増加した。この試験のNOAELは明らかにできなかったが、100mg/kg群の影響は極めて軽度であった。
       ウサギを用いた催奇形性試験(0、5、10、30、60mg/kg体重/日:妊娠7~19日に強制経口投与)では、検体投与に関連する外形または行動の変化は認められなかった。60mg/kg群では投与初期に体重の減少があり、30mg/kg群ではその他の群よりも体重増加が少なかった。平均胎児重量は検体投与に関連する影響はなかった。0、5、10、30及び60mg/kg体重/日群で、少数の奇形が認められた。自然発生かどうか確認するために、雌3群を用い単眼症の2胎児をつくった雄ウサギから取った精液を雌2群に注入(1群には検体投与を行い、もう1群は検体投与を行わなかった)し、もう1群には別の雄から精液を注入した。この試験の結果、どの群にも様々な奇形が認められたため、生じた奇形は自然発生であると考えられた。
       ウサギを用いたもう1つの催奇形性試験(0、5、10、30mg/kg体重/日:妊娠7~19日に強制経口投与)では、糞便及び排尿の減少の出現頻度は30mg/kg群が最も大きく、10mg/kg群では対照群よりやや大きかった。30mg/kg群では体重減少、摂餌量の減少があった。死亡胎児数、吸収胚数は、検体投与に関連する明らかな影響はなかった。対照群を含めて、全用量群に奇形が生じた。全群において母動物には検体投与に関連する肉眼的病理的変化が観察されなかった。この試験におけるNOAELは5mg/kg体重/日と考えられた。

      3)ADIの設定
       これらの試験成績からADIを設定すると、最小のNOAELはラットにおける長期/発がん性試験(1.8mg/kg体重/日)であり、100の安全係数で除した場合、18mg/kg体重/日となる。
       従って、ADIは18mg/kg体重/日とする。(NOAEL=1.80mg/kg体重/日、SF=100)


(3)残留基準値の設定について
       残留基準値については、国際基準値と同様に設定しても、既に農薬の基準値が設定されている農産物から摂取される量に日本人1日あたりの肉、鶏卵及び牛乳の平均摂取量(厚生省国民栄養調査成績)を加えた理論最大摂取量は3)で得られたADIを超えないことから、以下のとおりとする。
       
        肉(鶏、羊)
      0.05 ppm
        鶏卵
      0.20 ppm
      0.01 ppm

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