薬事・食品衛生審議会資料

 

平成13年01月23日

 

 

食品規格設定に係る毒性部会・残留農薬部会合同部会報告について - 別添:クロロタロニル

 
クロロタロニル

    1.品目名:クロロタロニル(Chlorothalonil)

    2.用途:殺菌剤 (フェニル系)

    3.構造式及び物性


    分子式 :C8Cl4N2
    分子量 :265.9
    水溶解度:0.81mg/L25℃)
    分配係数:log Pow=2.89
    水蒸気 :0.076mPa25℃)
    (Pesticide Manual第11版より)

    4.吸収・分布・代謝・排泄
    (1)動物
     SDラツトを用いた経口(5mg/kg)投与による試験において,血液中濃度のTmaxは6.1時間,Cmaxは0.8μg eq./g,T1/211.8時間と考えられる。経口(1.5mg/kg)投与において,投与9時間後における組織内濃度は肺(0.3μg eq./g),腎(0.2μg eq./g)等で血液(0.01μg eq./ml)中に比べ高濃度である。また,胃における分布は,投与9時間後に 5.2μg eq./g,投与168時間後に 0.08μg eq./gである。投与後168時間までに投与量の 7 %が尿中に,83%が糞中に排泄される。なお,経口(1.5mg/kg)投与において,投与後48
    時間までに23%が胆汁中に排泄される。主要な代謝反応はグルタチオン抱合体化とその後のメチルチオール体の生成である。

    (2)植物
     きゅうり,トマト,豆を用いた試験において,葉面,子葉,胚軸処理7日後,本薬の植物体内への移行は認められない。
     とうもろこし,トマトを用いた試験において,土壌処理23日後,本薬の地上部への移行は認められない。
     とうもろこし,トマト,きゅうりを用いた試験において,土壌処理16日後,本薬の根茎系への移行は認められない。
     リンゴを用いた試験において,葉面または果皮に塗布処理12日後の主要残留物は未変化体である。本薬の植物体内の吸収は認められない。
     リンゴを用いた試験において,葉面または果皮に塗布処理12日後の主要残留物は未変化体である。本薬の植物体内の吸収は認められない。
     レタスを用いた試験において,処理した土壌に播種63日後の残留放射能は葉部で1.46ppmである。
     ニンジンを用いた試験において,処理した土壌に播種90日後の残留放射能は根部で0.220.57ppmである。
     豆を用いた試験において,処理した土壌に播種63日後の残留放射能は種子で0.06ppmである。

    (3)その他
     上記を含め,別添1に示した試験成績が提出されている。

    5.安全性
    (1)単回投与試験
     急性経口LD50は,マウスで11,55414,622mg/kg,ラットで15,000mg/kg超と考えられる。

    (2)反復投与/発がん性試験
     ICRマウスを用いた混餌(7601,5008,000ppm)投与による24カ月間の発がん性試験において,3,000ppm投与群で死亡率の増加,1,500ppm以上投与群で前胃粘膜の腫傷,750ppm以上投与群で腎比重量の増加,食道及び前胃の偏平上皮粘膜の過形成及び角化亢進,慢性腎症,腎尿細管上皮の過形成及び上皮性腫瘍が認められる。また,本試験の追加試験として,ICRマウスを用いた混餌(101540175760ppm)投与による24カ月間の発がん性試験が実施されている。この試験において,76ppm投与群で腎比重量の増加,175ppm以上投与群で腎尿細管上皮の過形成,40ppm以上投与群で前胃の過形成及び角化亢進が認められる。本試験における無毒性量は15ppm(1.86mg/kg/day)と考えられる。
     F344ラツトを用いた混餌(4080175mg/kg)投与による116週間の発がん性試験において,175mg/kg投与群で前胃の偏平上皮がん等,80mg/kg以上の投与群で尿素窒素の増加等,40mg/kg以上の投与群で低体重,ALTの低下,尿量の増加,肝及び腎比重量の増加,食道及び前胃の過形成及び角化亢進, 十二指腸粘膜のびまん性肥大,前胃の乳頭腫,腎尿細管上皮の過形成,腺腫及び腺がん等が認められる。また,本試験の追加試験として実施されたF344ラットを用いた混餌(2415175mg/kg)投与による111週間の発がん性試験において,175mg/kg投与群で死亡率の増加,尿量の増加,腺胃のびらん等,15mg/kg以上投与群で体重増加抑制,腎尿細管の過形成及び腫瘍,4mg/kg以上の投与群で腎比重量の増加,前胃の過形成,角化亢進及び潰瘍等が認め
    られる。本試験における無毒性量は2mg/kg/dayと考えられる。
     ビーグル犬を用いた混餌(60120ppm)投与による24カ月間の反復投与試験において,本薬投与に関連する影響は認められない。本試験における無毒性量は120ppm(3.58mg/kg/day)と考えられる。また,ビーグル犬を用いた500mg/kg 12カ月間投与による食道及び胃の細胞増殖活性試験の結果,食道及び胃における細胞増殖活性に対する影響はないと考えられる。
    マウス及びラットにおいて認められる前胃及び腎での腫瘍の発生については,変異原性試験成績,ラットを用いた前胃及び腎の細胞増殖活性試験成績等から非遺伝毒性メカニズムによるものと考えられる。また,イヌ及びラットにおける代謝物と腎への影響に関する試験において,腎への影響は代謝物であるチオール同族体によるものであり,ラット,イヌの間でその代謝様式が異なるため腎における毒性発現に種差が認められると考えられる。

    (3)繁殖試験
     SDラットを用いた混餌(5001,5003,000ppm)投与による2世代繁殖試験において,親動物では,3,000 ppm投与群のF0及びF1で腎の明細胞過形成巣,色素沈着,1,500ppm以上投与群のF0及びF1で体重増加抑制,500ppm以上投与群のF0及びF1で前胃の過形成及び角化亢進,尿細管上皮過形成,尿細管肥大等が認められる。児動物では,3,000ppm投与群のF1及びF2で低体重等が認められる。本試験における無毒性量は500ppm(34.0mg/kg/day)以下と考えられる。また,500ppm投与群で認められた前胃及び腎への影響については,より低用量まで見た(2)反復投与/発がん性試験で認められている所見と同様である。

    (4)催奇形性試験
     SDラットを用いた強制経口(25100400mg/kg)投与による催奇形性試験において,400mg/kg投与群で母動物の死亡率の増加,体重増加抑制,生存胎児数の低下,吸収胚数の増加が認められる。本試験における無毒性量は,母動物,胎児動物ともに100mg/kg/dayと考えられる。催奇形性は認められない。
     日本白色種ウサギを用いた強制経口(550mg/kg)投与による催奇形性試験において,50mg/kg投与群で母動物の流産,体重増加抑制等が認められる。胎児動物においては,本薬投与に関連する影響は認められない。本試験における無毒性量は,母動物5mg/kg/day,胎児動物50mg/kg/dayと考えられる。催奇形性は認められない。

    (5)変異原性試験
     細菌を用いた復帰突然変異試験,Rec-assay,マウス培養細胞(BALB/3T3)を用いた突然変異試験,チャイニーズハムスター培養細胞(V79)を用いた突然変異試験,ラット胎児培養細胞を用いた形質転換試験,マウスを用いた宿主経由試験,マウスを用いた優性致死試験,マウス骨髄細胞を用いた染色体異常試験,ラット骨髄細胞を用いた染色体異常試験,チャイニーズハムスター骨髄細胞を用いた染色体異常試験,マウス骨髄細胞を用いた小核試験,ラット骨髄細胞を用いた小核試験,チャイニーズハムスター骨髄細胞を用いた小核試験の結果は,いずれも陰性と認められる。細菌を用いたDNA修復試験の結果は腸性,また,チャイニーズハムスタ一培養細胞(CHO)を用いた染色体異常試験の結果はS9mg非存在下で陽」性と認められるが,上記の試験
    成績等から総合的に判断して生体にとって,特段の問題となるような遺伝毒性はないものと考えられる。

    (6)その他
     上記を含め,別添1に示した試験成績が提出されている。

    6.ADIの設定
     以上の結果を踏まえ,次のように評価する。

    無毒性量 1.86mg/kg/day
    動物種 マウス
    投与量/投与経路 15ppm(1.86mg/kg)/混餌
    試験期間 24カ月間
    試験の種類 発がん性試験
    安全係数 100
    ADI 0.018mg/kg/day

    7.基準値案
     別添2の基準値案のとおりである。
    各農産物について基準値案の上限まで又は作物残留試験成績等のデータから推定される量の本農薬が残留していると仮定した場合,国民栄養調査結果に基づき試算される1日当たり摂取する農薬の量注)(推定一日摂取量)のADIに対する比率は78.6%以下である。

    注)国民平均並びに乳幼児(16yo),高齢者(66yo以上)及び妊産婦について試算したもの。

公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 事務局

本部 大阪府豊中市三和町1丁目1番11号

TEL(06)6333-5680 FAX(06)6333-5491

お問い合わせはこちらへ

東京分室 東京都中央区日本橋本町4丁目6番3号 SEGビルアネックス2階

English Top