第17回研究成果報告書(2011年)

[研究成果報告書 索引]

Abs.No.
研究テーマ
研究者
17-01 肥満を伴うインスリン抵抗性マウスに及ぼす亜硝酸塩摂取の影響に関する研究 大竹 一男
城西大学薬学部
17-02 コチニール色素中の夾雑主要アレルゲンタンパク質の解析に関する研究 穐山 浩
国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部
17-03 フェノバルビタール誘発ラット肝増殖性病変に対する酵素処理イソクエルトシトリンの抑制作用 三森 国敏
東京農工大学共生科学技術研究院
17-04 天然香料基原物質の安全性評価のための基礎的調査研究 正山 征洋
長崎国際大学薬学部
17-05 光学活性を有する食品香料の品質評価法の構築および体内動態に関する研究 斉藤 貢一
星薬科大学薬品分析化学教室
17-06 フラボノイド含有食品添加物の血糖値調節作用に関する研究 芦田 均
神戸大学大学院農学研究科
17-07 食品中のポリソルベートの迅速分析法 野村 千枝
大阪府立公衆衛生研究所
17-08 増粘多糖類添加物利用食品の微量汚染物質に対するマスキング効果に関する研究 小西 良子
国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部
17-09 アラビアガムの粗原料の形態学的手法による識別方法の開発 酒井 英二
岐阜薬科大学薬草園研究室
17-10 ヒト味覚受容体発現細胞を用いた食品添加物の呈味付与機能の評価 三坂 巧
東京大学大学院農学生命科学研究科
17-11 食用色素-食品成分間の機能的相互作用に関する研究 中村 宜督
岡山大学大学院自然科学研究科
17-12 食品添加物として使用されるフラボノイド類による、消化管バリア機能調節作用の探索と応用への基盤的研究 鈴木 卓弥
広島大学大学院生物圏科学研究科
17-13 食品添加物として使用されるフラボノイド配糖体の消化管吸収メカニズムとその抗アレルギー活性との関係 牧野 利明
名古屋市立大学大学院薬学研究科
17-14 食品添加物として用いられる緑葉の香り物質の脳移行の解析とそれに応答するバイオマーカーの検索 小林 葉子
桐生大学医療保健学部
17-15 O/Wエマルションの乾燥粉末化におけるミセルの超高度包括安定化のための新規Sugar Ester Surfactantの探索 今村 維克
岡山大学大学院自然科学研究科
17-16 非加熱喫食水産食品におけるリステリア菌に対する市販抗菌製剤の相乗効果に関する研究 高橋 肇
東京海洋大学食品生産科学科
17-17 リサイクル使用可能な大環状香料化合物合成用触媒の開発 萩原 久大
新潟大学大学院自然科学研究科
17-18 生活空間芳香成分のリフレッシュ・リラクゼーション効果に関する研究 その2 沢辺 昭義
近畿大学農学部
17-19 伊予特産柑橘類の香り特徴成分の解析と添加物エンハンサーとしての可能性 天倉 吉章
松山大学薬学部
17-20 嚥下障害者用介護食の開発に伴う物性指標の構築に関する食品物性論的研究 熊谷 仁
共立女子大学家政学部
17-21 食品の咀嚼・嚥下感覚特性に関する生体計測を用いた客観評価法の開発 堀 一浩
新潟大学大学院医歯学総合研究科
17-22 食品製造施設におけるリステリア汚染防除のためのナイシンの応用 中村 寛海
大阪市立環境科学研究所微生物保健担当


17-01

肥満を伴うインスリン抵抗性マウスに及ぼす亜硝酸塩摂取の影響に関する研究

城西大学薬学部 大竹 一男


インスリン抵抗性は、高い循環血液中の脂肪酸量や炎症性メディエーターの産生増加によって起こり、標的臓器である骨格筋のインスリンシグナル経路が破壊される。また、動脈硬化病変の初期段階においてキーとなる病態であり、cNOSの活性が低下することが明らかにされている。また、亜硝酸は近年、生体内における一酸化窒素(NO)の新たな産生源として注目されている。
 そこで、本研究においては、cNOS由来NO産生が低下する肥満を伴うインスリン抵抗性の適切な動物モデルを使用して、本疾患に亜硝酸塩の摂取が有効か否かを詳細に検討することを目的とする。
生後4週齢の雄性KKAyマウスもしくはC57BL/6マウスに、普通水、亜硝酸塩溶解水を2つの投与量(50mg/L,150mg/L)で10週に亘り自由摂取にて与えた。飼料は通常飼育食を自由摂取させた。飼育期間中に体重、摂食量、随時血糖値を測定した。解剖時に空腹時血糖値、空腹時インスリン値、骨格筋NOx量を測定した。骨格筋中のインスリンシグナルタンパク質レベルをウエスタンブロットにて解析した。
KKAyマウスに亜硝酸塩を与えると、体重に影響はないものの、投与6週以降から徐々に摂食量と随時血糖値が低下していった。10週経過時のKKAyマウスのHOMR-IRは、C57BL/6マウスよりも増加したが、亜硝酸塩を与えると低下した。また、KKAyマウスの骨格筋NOx量は、C57BL/6マウスよりも低下したが、亜硝酸塩を与えると増加した。更に、KKAyマウスの骨格筋のAktリン酸化レベルとGLUT4の膜上発現レベルは亜硝酸塩の摂取によってどちらも改善した。従って、KKAyマウスに亜硝酸塩を与えると、骨格筋に不足したNOが供給され、インスリン抵抗性が改善され、この改善が摂食抑制につながったものと考えられた。



17-02

コチニール色素中の夾雑主要アレルゲンタンパク質の解析に関する研究

国立医薬品食品衛生研究所代謝生化学部 穐山 浩


コチニール色素は,雌のエンジムシを原料とする赤色色素で,食品や化粧品等に使用されている。一方,この色素は色素含有食品の摂取による食物アレルギーとして重篤な症状を引き起こすことが報告されている。そのアレルゲンは,色素本体のカルミン酸ではなく,原料由来の夾雑タンパク質によることが示唆されているが,その同定には至っていなかった。昨年度まで、主要アレルゲンが38 kDaであることが明らかにした。また,このタンパク質(CC38K)のアミノ酸配列は,ハチのアレルゲンであるホスホリパーゼA1関連タンパク質と相同性が高いことが示した。今年度は、添加物原料からコチニール色素夾雑タンパク質を検出するためのポリクローナル抗体を調製し、化学発光検出のELISA法を確立した。食品添加物製品及びその原材料からは検出されなかった。また添加物原料から酵素を用いて糖鎖除去(脱グリコシル化)を行い、アレルギー患者および健常者IgEとの反応性への影響から糖鎖修飾の抗原性への寄与を調べた。コチニール抽出液中のタンパク質で、グリコペプチダーゼA処理によって患者IgEとの反応性が顕著に低下するタンパク質バンドは見出されず、CC38Kバンドについても糖鎖除去による変化は少ないことが示唆された。



17-03

フェノバルビタール誘発ラット肝増殖性病変に対する酵素処理イソクエルシトリンの抑制作用
―酸化的ストレスを誘発する非遺伝毒性発がん物質の肝発がんプロモーション作用に対する抗酸化物質の修飾作用に関する研究―

東京農工大学大学院農学研究院 三森 国敏


CYP2B 誘導肝発がん物質であるフェノバルビタール(PB)誘発肝増殖性病変に対する酵素処理イソクエルシトリン(EMIQ)修飾作用を検索するため、6週齢の雄性F344ラットにN-ジエティルニトロアミン(DEN)の単回腹腔内投与(200mg/kg)し、DEN投与後2週目から8週間、PBを混餌投与(500ppm)、EMIQを飲水投与(2000ppm)ないしPBとEMIQを併用投与した。PBおよびEMIQの投与開始から1週後に全ての動物に2/3部分肝切除を行った。実験終了後、肝臓に対して肝前がん病変マーカーであるGST-Pと細胞増殖活性のマーカーであるPCNAの免疫染色、Cyp2b2のmRNA発現のリアルタイムRT-PCR解析、活性酸素種(ROS)産生やDNA損傷に関連する生化学的検索、及びCYP2B誘導に関連する分子の検索を実施した。GST-P陽性肝細胞巣の数、面積、PCNA陽性増殖肝細胞数はDEN-PB群でDEN単独群に比べ有意に増加し、DEN-PB-EMIQ群ではDEN-PB群に比べ有意に減少した。Cyp2b2のmRNA発現はPB投与で有意に増加したが、EMIQの併用投与での有意な変動は認められなかった。ROS産生、TBARS、8-OHdGに有意な変動は認められなかった。免疫組織学的に、CYP2B誘導細胞内受容体 (CAR) の核内移行がPB投与で誘導され、EMIQ併用投与で抑制された。また、CARの下流に発現するMrp2のmRNA発現がPB投与で増加し、EMIQ併用投与で減少した。以上のことより、EMIQによりPBの肝発がんプロモーション作用がCYP2B誘導の減少を介して抑制されることが示された。その機序には酸化ストレスの抑制ではなく、CARの核内移行の抑制が関与する可能性が示唆された。



17-04

天然香料基原物質の安全性評価のための基礎的調査研究
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 加藤喜昭、森本隆司
小林病院 小林公子
お茶の水女子大学 佐竹元吉
長崎国際大学・薬学部 正山征洋*
徳島文理大学・香川薬学部 関田節子
東亜大学大学院 義平邦利
西日本食文化研究会 和仁皓明
*主任研究者


天然香料基原物質は、平成17年から、厚生労働大臣により許可されたもの以外は使用することが出来なくなった。平成7年までに,使用されていた天然香料基原物質は、天然香料基原物質名簿に収載され、引き続き添加物として使用が認められている。厚生労働省は,これら天然香料基原物質513品についてリストアップしている。
本研究では、天然香料基原物質について、安全性評価のための基礎的調査研究を行うことにした。天然香料基原物質の安全性を評価するためには、原材料の植物が確かであること、食経験の歴史的なバックグランドがあること、原材料の植物は有害性でないこと、有害成分を含有しないこと等が必要であるので、これらの課題について調査研究を行い、平成22年度は150品目の基原植物の規格案の作成を行なうこととした。



17-05

光学活性を有する食品香料の品質評価法の構築および体内動態に関する研究

星薬科大学薬品分析化学教室 斉藤 貢一


食品のバラ香料として使用されている、リナロール(d,l-体)、ネロール、シトロネロール(d,l-体)、フェネチルアルコールおよびゲラニオールの5品目と、リナロールとシトロネロールに関しては各光学異性体を含めた、以上7種類のガスクロマトグラフィーによる一斉分析法を検討し、市販食品における当該香料の品質評価法の構築を試みた。食品中の香料の抽出および測定法としては、前処理にヘッドスペース-固相マイクロ抽出(HS-SPME)法を採用し、分析装置にガスクロマトグラフ-質量分析器(GC/MS)を用いてHS-SPME-GC/MSによる分析法を構築した。その際GCカラムには、シクロデキストリン系のキラルカラム(β-DEX 225)を用いることで、測定対象とした7種類の全ての香料において完全な分離が達成された。食品中の香料の添加回収試験では、SPME法の抽出条件を最適化することにより、良好な回収率が得られた。本法をバラ香料の使用が謳われていた食品試料(サプリメント4件体、キャンディ3件体、飲料2件体)の計9検体の分析に適用したところ、いずれのサンプルからも測定対象とした5品目(7種類)の一部もしくは全ての香料が検出された。また、リナロールは、d-体とl-体がほぼ等量含まれており、すべてラセミ体と推察され、化学合成品が使用されている可能性が高いと推測された。また、シトロネロールは多くの試料においてl体が多く検出され、これらは天然物由来であることが推察されたが、一部の試料においてはラセミ体が検出され、化学合成品が添加された疑いも考えられた。本研究で構築した方法は、食品に添加されたバラ香料の品質評価が可能と考えられた。



17-06

フラボノイド含有食品添加物の血糖値調節作用に関する研究

神戸大学大学院農学研究科 芦田 均


フラボノイドの摂取は、さまざまな疾患の予防に有効であると考えられている。高血糖や糖尿病の予防には、食後血糖の調節が一つの重要な課題である。そこで本研究では、ケルセチン、ケルセチン配糖体であるイソクエルシトリンとルチン、ならびにケルセチン骨格のB環3位に1-8分子のグルコース直鎖が結合した酵素処理イソクエルシトリン(EMIQ)が培養細胞や実験動物においてグルコースの取り込み活性を促進するか否かを検討した。L6筋管細胞を用いた実験において、EMIQとイソクエルシトリンはグルコースの取り込みを濃度依存的に増加させ、それぞれ10 nMと3μMで最大となった。ケルセチンも同様にグルコースの取り込みを濃度依存的に増加させたが、有意ではなかった。また、EMIQとケルセチンはいずれもインスリン応答性グルコース輸送担体4(GLUT4)の細胞膜移行を促進させた。マウスを用いた動物実験においても、EMIQとイソケルシトリンのいずれもがGLUT4の細胞膜移行を誘導した。興味深いことに、動物実験ではケルセチンとルチンも細胞膜移行を誘導した。一方で、耐糖能試験ではケルセチンは効果を示さず、EMIQのみが有意に血糖値を抑制した。さらに、EMIQは試験管内ではマルターゼとスクラーゼに対して阻害効果を示したが、投与したマウスの小腸ではこれらのα-グルコシダーゼ活性に変化はなかった。以上の結果から、EMIQはGLUT4の細胞膜移行を介して筋肉細胞にグルコースの取り込みを促進させることから、高血糖の予防に有効であることが示唆された。



17-07

食品中のポリソルベートの迅速分析法

大阪府立公衆衛生研究所 野村 千枝


平成20年4月に乳化剤のポリソルベート(PS)類が食品添加物として指定され、国内での使用及び流通が可能となった。厚生労働省より通知されたPS類の分析法(食安基発第0430001号)はアセトニトリル・ヘキサン・メタノール混液で抽出しアルミナオープンカラムおよびシリカゲル固相抽出カラムで精製する。しかし、回収率の低い食品がある他、塩析や4回の液-液分配等、煩雑な工程を含むため結果が得られるまでの時間が長い等の問題点がある。そこで操作の簡略化と精製度および回収率の改善を目指し市販の固相抽出カラム(シリカ、ジオール、銀、アルミナB、グラファイトカーボンブラック)を用いて検討を行った結果、DiolとALBを組み合わせた方法が、スクリーニング法として有効であった。本法では、PS類を酢酸エチル-メタノール混液で抽出し、DiolとALBを組み合わせて精製を行った後、TLCを用いた定性、比色法により定量値を算出した。7種類の食品における添加回収試験(0.05-5g/kg)の結果、回収率は47-92%、定量下限値は0.05g/kgであり、通知法とほぼ同等の結果が得られた。



17-08

増粘多糖類添加物利用食品の微量汚染物質に対するマスキング効果に関する研究

国立医薬品食品衛生研究所衛生微生物部 小西 良子


カビ毒の一種、デオキシニバレノールをマスキングした増粘多糖類添加物である低メトキシルペクチンゲルが、生体におけるデオキシニバレノール(DON)の吸収を抑えることをマウスを用いた実験で明らかにした。
低メトキシルペクチンのアミド化ペクチンは、in vitro系の実験から体温と同じ37℃でも約75 %のDONをトラップすることを明らかにした。そこで、1 %ペクチン濃度を用いて、マウスによる投与実験を行った。投与はDON含有ペクチンゲル、DON含有水溶性ペクチン、 DON含有PBSおよび対照ペクチンゲルをそれぞれ一回投与したのち、経時的に血液、尿、糞を採取しDONの濃度をELISA法を用いて測定した。
その結果DONは、血漿中のDON濃度から、DON含有水溶性ペクチン投与群、DON含有PBS投与群では投与後15分を、DON含有ペクチンゲル投与群では30分後をピークに吸収されることが明らかになった。低メトキシルペクチンのゲル化によりDONの吸収率が非ゲル化ペクチンと比べて1/4程度抑えられることが明らかになった。また、低メトキシルペクチンはカルシウムの添加によりEgg boxと呼ばれる格子構造をとることから、そのboxにDONがマスキングされているのではないかと考えられた。この実験系により、増粘多糖類添加物がカビ毒の吸収を制御できる可能性が世界で初めて示された。



17-09

アラビアガムの粗原料の形態学的手法による識別方法の開発

岐阜薬科大学薬草園研究室 酒井 英二


アラビアガムは、Acacia senegal Willdenow又はAcacia seyal Delileの幹や枝から得られる分泌物で、食品、医薬品をはじめ、多くの工業製品に利用されている。基原の違いにより用途が異なることから、粗原料の段階での鑑別方法開発を目的として顕微鏡観察を行った。粉末の形態では鑑別出来ないが、含まれている植物の破片を精査することで、基原を推測できる可能性が示唆された。



17-10

ヒト味覚受容体発現細胞を用いた食品添加物の呈味付与機能の評価

東京大学大学院農学生命科学研究科 三坂 巧


哺乳類においては、甘味物質の受容はT1R2とT1R3のヘテロマーで構成される甘味受容体によって行われている。甘味受容体は多様な構造を持つ甘味物質を受容しているが、分子内にいくつかのリガンド結合サイトが存在するという特徴を有している。本研究においては、食品添加物の有する呈味付与機能を評価するため、ヒト甘味受容体(hT1R2/hT1R3)およびキメラGタンパク質を安定的に発現する細胞株の構築を行った。細胞株の構築には、細胞のゲノム上に発現コンストラクトを1コピーのみ導入する方法であるFlp-Inシステムを利用した。得られた細胞株について、多種の甘味物質に対する細胞応答を測定したところ、極めて強い応答が観測できることを確認した。ヒト甘味受容体安定発現細胞の応答は多種の甘味料に対して観察され、食品添加物であるアスパルテーム、アセスルファムカリウムや天然甘味料である砂糖に対して応答することを確認した。本研究で構築したヒト甘味受容体安定発現細胞は、長期間にわたって安定的に細胞応答を測定できることから、ヒトに有効な新規呈味調節物質、特に甘味増強剤の検索に利用しうることが期待される。



17-11

食用色素-食品成分間の機能的相互作用に関する研究

岡山大学大学院自然科学研究科 中村 宜


 ヒト急性前骨髄球性白血病細胞株HL-60を用いて、食用タール色素の光細胞死誘導作用を検討した結果、rose bengal (赤色105号) に加えて、phloxine B (PhB、赤色104号)、erythrosine B (赤色3号)に顕著な誘導効果が認められた。PhBは光依存的にDNAラダー形成やcaspase-3活性化を誘導したことから、主要な細胞死様式はアポトーシスであることが明らかとなった。このHL-60における細胞死はcatalase処理により解除され、PhBによる細胞内活性酸素量の増加もcatalase処理により有意に抑制された。一方、ヒトリンパ球性白血病細胞由来細胞株Jurkatでの光依存性細胞死は、catalase感受性を示さなかった。以上の結果から、細胞外で生成した過酸化水素が、細胞内に拡散することで細胞内の酸化ストレスを上昇させ、myeloperoxidaseのような細胞特異的経路を介してアポトーシス誘導経路を活性化することが示唆された。さらに、食品に含まれる抗酸化物質 (α-tocopherol、cysteine) も、高濃度処理により光依存性細胞死を有意に抑制したが、比較的低濃度のcysteineは逆に細胞死及び過酸化水素産生を増加させた。この結果は、Type I反応の律速段階で重要な励起色素の一電子還元反応を増強している可能性を示している。このような濃度依存的な食品成分間相互作用の報告例は極めて少なく、食品加工や保蔵において、より安全に食用色素を利用する上で極めて意義深い知見であると考えられる。また、食用タール色素の暗条件におけるNADPH oxidase依存性活性酸素産生阻害作用も見出したので、併せて報告する。



17-12

食品添加物として使用されるフラボノイド類による、消化管バリア機能調節作用の探索と応用への基盤的研究

広島大学大学院生物圏科学研究科 鈴木 卓弥


消化管は、管腔内の異物を体内に侵入させないバリア機能を持ち、そのバリア機能の低下は様々な疾患につながることが知られている。このバリア機能の最も重要な因子の1つが、タイトジャンクション(TJ)構造が知られ、TJは上皮細胞間の物質の通過を制御する役割を持つ。本研究は、消化管上皮細胞と腸炎誘発マウスを用いて、食品添加物に使用されるポリフェノール類のもつ消化管TJバリア機能強化・保護作用を探索し、その機能を基盤としたバリア機能保護食品の開発を目指した。最初に、ヒト消化管上皮Caco-2細胞に様々なポリフェノールを作用させ、TJバリア機能への影響を解析した。使用した9種類のポリフェノールは、TJバリア機能へ各々特徴的な作用を示した。レスベラトロール、ケンフェロール、ヘスペレチン、ナリンゲニンは、TJバリア機能を強化し、一方でダイゼインとゲニステインはTJバリア機能を弱めた。なかでも、レスベラトロールに最も強いTJバリア機能強化作用が認められ、その作用には、TJタンパク質であるZO-1、ZO-2、OccludinのTJへの局在増加が関連していた。続いて、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による大腸炎誘発マウスを用いて、レスベラトロールによる消化管バリア機能の保護作用と大腸炎軽減作用を探索した。DSSは、マウスの体重減少、大腸の炎症、大腸長の短縮、さらに消化管透過性の上昇と大腸TJタンパク質の減少を引き起こした。レスベラトロールの摂取は、これらの異常を部分的に回復し、消化管バリア機能保護作用と大腸炎軽減作用を示した。これら結果は、レスベラトロールが炎症性腸疾患、および消化管バリア機能の低下に関連する他の疾患を予防・軽減する機能性食品成分への応用が期待できること、さらに食品添加物として利用される他のポリフェノール類についても、消化管バリア機能調節作用を通した有益な効果が期待できることを提案するものである。



17-13

食品添加物として使用されるフラボノイド配糖体の消化管吸収メカニズムとその抗アレルギー活性との関係

名古屋市立大学大学院薬学研究科 牧野 利明


ケルセチンは、タマネギやソバなどに含まれているフラボノイドであり、その抗酸化活性、抗アレルギー活性などから機能性食品素材として利用されている。しかし、ケルセチンは水溶性が低く消化管からの吸収率は低いため、食品としての機能性発現には限界がある。これまで我々は、種々の糖鎖構造を付加することによって水溶性を高めたケルセチン配糖体をラットに経口投与した時のケルセチンの動態を比較検討し、ケルセチンの消化管吸収はケルセチンの3位にβ結合でグルコースが付加したイソケルシトリン(ケルセチン3-グルコシド、IQC)のグルコースに1→4結合でグルコースをさらに数分子(n = 1~7)さらに付加した酵素処理イソクエルシトリン(EMIQ)で著しく亢進することを明らかにし、そのメカニズムとしてEMIQは小腸上皮細胞表面に存在するmaltase-glucoamylase(MGA)によりIQCまで加水分解され、その後βグルコシダーゼ活性を持つlactase phrolizin hydrolase(LPH)によって加水分解されるものと推定された。本研究では、EMIQ、ケルセチンマルトシド、IQC およびケルセチンをマウスに経口投与した時の受動皮膚アナフィラキシー(PCA)反応抑制作用を比較した。EMIQは用量依存的にPCA反応を抑制し、4 mmol/kgの投与量で70%の阻害率を示した。この投与量では、IQCが35%の阻害率を示したが、ケルセチンやEMIQと同等の水溶性を示すαポルグルコシルルチンはまったく抑制作用を示さなかった。ケルセチンの抗アレルギー活性は、3位にグルコースが付加したIQCからさらにα1→4結合でグルコース鎖を伸張することにより増大し、それらの消化管吸収特性と相関することが明らかになった。



17-14

食品添加物として用いられる緑葉の香り物質の脳移行の解析とそれに応答するバイオマーカーの検索

桐生大学医療保健学部 小林 葉子
静岡県立大学大学院生活健康化学研究科 加古 大也、横越 英彦


植物特有の緑葉の香り"みどりの香り"には、炭素数6のアルデヒド類及びアルコール類が含まれ、これらの香り物質は植物性の香りを添加するための食品香料として用いられている。食品に含まれる香り物質は、他の栄養素と同様に体内に取り込まれる。体内に取り込まれた香り物質の脳への移行、及び、香り物質の刺激に応答するタンパク質をバイオマーカーとして検索することを試みた。これまでに、脳線条体切片及びラット副腎褐色細胞腫(PC12) 細胞をみどりの香りで刺激をすると、ドーパミンの放出が促進され、特にヘキサナールが強い活性を持つこと、PC12細胞をヘキサナールで刺激すると分子量約130 kDaのタンパク質(130 kDa タンパク質)の脱リン酸化が生じる報告している。本研究では、マイクロダイアリシス法を用いて、ヘキサナールによるドーパミン放出調節への細胞内外カルシウムの関与、及び、ヘキサナールを経口投与あるいはヘキサナールで嗅覚刺激した時の脳線条体における細胞外ドーパミン量の変動の解析、PC12 細胞を用いて、ヘキサナールに応答するバイオマーカーの検索を行なった。
マクロダイアリシス法を用いた実験では、ラット脳線条体におけるヘキサナールによるドーパミン放出調節には細胞内外カルシウムが関与すること、ヘキサナールを経口投与することにより、嗅覚刺激では見られない細胞外ドーパミン量の増加が見られることが明らかになった。PC12 細胞を用いた実験では、130 kDa タンパク質の脱リン酸化反応とドーパミン放出作用に関連性がみられた。このことから、ヘキサナール刺激に応答するバイオマーカーとして 130 kDa タンパク質の同定を試みた。データベースより候補タンパク質を抽出し、ウエスタンブロッティングで確認した。しかし、130 kDaタンパク質と抗Calcium-dependent secretion activator 1抗体の認識するタンパク質は異なっていた。
以上の結果から、ヘキサナールを経口投与することによりヘキサナールが脳に移行すること、130 kDaタンパク質はCalcium-dependent secretion activator 1以外のタンパク質であることが示唆された。



17-15

O/Wエマルションの乾燥粉末化におけるミセルの超高度包括安定化のための新規Sugar Ester Surfactantの探索

岡山大学大学院自然科学研究科 今村 維克


糖分子によって形成されたアモルファスマトリクスは極低分子量の分子からタンパク質やクラスター、さらには細胞まで、あらゆるサイズの物質を包括することができる。油脂もミセル状態にすることで糖類アモルファスマトリクスに包括することができ、これは食品分野における油脂の粉末化などにおいて極めて重要である。ここで、糖とミセルを構成する界面活性剤および油脂の組み合わせはミセルの包括特性に決定的な影響を及ぼす。本研究では、種々の界面活性剤、特にsugar surfactantsについて、凍結乾燥時におけるミセルの包括特性に対する寄与について検討した。その結果、糖エステルについては、アルキル鎖が長くなるほど、あるいは、ジ・トリエステルが混在すると、高度なミセル包括特性を示すことが分かった。また、種々の糖からなるアモルファスマトリクスのミセル包括特性を比較した。糖類アモルファスマトリクスの構造柔軟性とミセル包括特性との間には密接な関係があり、単糖と多糖を複合することにより、糖類アモルファスマトリクスによるミセル包括特性を最適化できることが分かった。さらに、酵素合成によるsugar esterの合成および精製を行った。



17-16

非加熱喫食水産食品におけるリステリア菌に対する市販抗菌製剤の相乗効果に関する研究

東京海洋大学食品生産科学科 高橋 肇


Listeria monocytogenes はready-to-eat(RTE)食品などの喫食により食中毒を引き起こすことで知られている。我々はこれまでRTE食品であるネギトロ、イクラが高率でL. monocytogenes に汚染され、ナイシン、リゾチーム、ε-ポリリジン、キトサンといった抗菌剤がこのようなRTE水産食品中の本菌の増殖制御に有効であると報告した。本研究では、RTE水産食品中のL. monocytogenes の増殖を抑制するため、2種の抗菌剤の組み合わせによる相乗効果について試験した。102cfu/gのL. monocytogenes を2種の異なる抗菌剤を混合したネギトロおよびイクラに接種し、10℃で7日間または25℃で12時間保存後、菌数を測定した。4つの抗菌剤の組み合わせのうち、ナイシンを含む2つの組み合わせがRTE水産食品中のL. monocytogenes に対し高い効果を示した。これら2つの組み合わせ(ナイシン配合のニサプリンとε-ポリリジン配合のサンキーパー No.381、ニサプリンとリゾチーム配合のアートフレッシュ 50/50)は殺菌および静菌的に作用し、L. monocytogenes 菌数を減少させつつ、その後長期間菌数を低く維持した。L. monocytogenes に対する本手法は、加熱やpHや水分活性による制御が難しいRTE水産食品において実用的であると考えられた。



17-17

リサイクル使用可能な大環状香料化合物合成用触媒の開発

新潟大学大学院自然科学研究科 萩原 久大


麝香の香りの主成分は15員環構造を持つムスコン、R-(-)-3-methylcyclopentadecan-1-oneである。この化合物は特有な高貴な香気特性を持ち、多くの香粧品のベースノートとして用いられている。また共存する他の香り成分の保香剤としての役割も担っている。しかし、麝香シカの乱獲がたたり、その取引はワシントン条約により禁止されている。本研究では、天然型ムスコンの重要合成前駆体であるE-3-methylcyclopentadec-2-en-1-oneの新規合成法の開発に成功した。合成は、酸化亜鉛触媒による気相大環状分子内アルドール/脱水反応、濃硫酸触媒を用いた無溶媒での塩化水素の付加反応、エタノール中水酸化ナトリウムによる脱離反応の3段階からなる。触媒となる酸化亜鉛は安価かつ環境に優しく、リサイクル使用可能である。本方法は大量合成に向けて経済的かつ実用性が高い。なお、E-3-methylcyclopentadec-2-en-1-oneからの光学活性ムスコンの工業的合成は、高砂法により既に確立されている。



17-18

生活空間芳香成分のリフレッシュ・リラクゼーション効果に関する研究 その2

近畿大学農学部応用生命化学科 沢辺 昭義


精神的な環境ストレスは、何気ない日常生活の中に多様に存在している。十人十色というほど、そのストレスの感じ方は様々である。オフィスでの緊張した雰囲気の中で、一寸したリラクゼーション機能をもつアイテムを欲しいと感じている人が多い。そこで、オフィスおよび生活空間のブレイクタイム(休憩)時に利用される植物芳香成分(食品添加物)によるリフレッシュ・リラクゼーション効果を確認検討した。本試験では、ストレス条件にTrier Social Stress Test (TSST) 法を用い、生活空間芳香成分のリフレッシュ・リラクゼーション効果をヒト唾液中のコルチゾール、アミラーゼの変化による並行群間比較試験を実施し、ストレスに対する有効性成分を検討した。その結果、米ヒバ (USH-G)の香りがストレスを軽減することを確認した。また、その有効成分はcedrol, widdrol, α-bisabolol, citronrllic acid, および hinokithiolであった。



17-19

伊予特産柑橘類果皮の香り成分の解析と添加物エンハンサーとしての可能性

松山大学薬学部 天倉 吉章


愛媛県は国内有数の柑橘類生産県であり、温州みかんの他にも様々な柑橘類が特産品として生産されている。それらの中には、生産量が限定した希少な品種もあり、香り成分を含めて含有成分に関する科学的データが乏しい。そこで本研究では、愛媛県特産柑橘類の果皮に含まれる精油成分を精査し、フレーバー開発に資する香り特徴成分を明らかにすることを目的とする。まず、柑橘類3種(河内晩柑、伊予柑、はるか)の果皮に含まれる精油を抽出し、GC-MSによる精油分析を行った。その結果、河内晩柑においては主成分としてlimonine(62.2%)、次いでg-terpinene(8.1%)、myrcene、nootkatone(それぞれ2.8%)が検出された。Nootkatoneは、市販のオレンジ油を含めて他の試料からは検出されず、河内晩柑に特有のものであった。伊予柑ではlimonene(89.3%)の他、g-terpinene(3.9%)、linalool(1.5%)、myrcene(1.4%)、はるかではlimonene(83.9%)、g-terpinene(4.0%)、linalool(2.3%)、myrcene(1.3%)を検出した。また、柑橘成分である11種の化合物(フラバノールおよびその配糖体、ポリメトキシフラボン、クマリン類)の成分含有率についても分析し、それぞれの特徴を明らかにすることが出来た。特に、河内晩柑におけるaurapteneの高含有は特徴的であった。さらに、各精油添加による食品添加物(酸化防止剤)の相乗効果について基礎的評価を実施し、その効果について考察した。



17-20

嚥下障害者用介護食の開発に伴う物性指標の構築に関する食品物性論的研究

共立女子大学家政学部 熊谷 仁


超音波パルスドプラー法を用いてヒトの咽頭部での流速測定を行い、力学物性機器を用いた動的粘弾性、粘度、テクスチャー等との関係について検討した。
市販の増粘剤から調製した溶液の粘度および咽頭部での流速を、ヨーグルトのモデル食塊である"カードを破壊したヨーグルト"(以下、"破壊ヨーグルト")と比較した。流速スペクトルの形状と流速とから、"破壊ヨーグルト"の流動特性はヨーグルトの食塊に近いと考えられた。また、介護食の安全性の指標である最大流速Vmax の値に関しては、"ヨーグルト状"や"ジャム状"の増粘剤溶液の方が"破壊ヨーグルト"の値より大きかった。
ゼラチンやκ-カラギーナンなどのゲル化剤を用いて、厚生労働省の嚥下困難者用許可基準において指標とされているパラメータである「かたさ」、「凝集性」、「付着性」を測定し、咽頭部流速との関係について検討を行った。その結果、咽頭部における食塊のまとまりやすさの指標とされる「凝集性」と最大流速Vmaxとの相関は見られず、3つのパラメータのうち、Vmaxと最も高い相関がみられたのは「かたさ」であった。
κ-カラギーナンなどを含むゲル化剤から調製した試料に関して、レオロジー特性と咽頭部流速との関係について検討した。ゾル状態(低濃度)における粘度測定と、全濃度領域における動的粘弾性測定の結果、試料のゾル・ゲル点移転濃度(ゲル化濃度)が求められた。ゾル領域においては、濃度の増加とともにVmaxの値は減少したが、ゲル構造が形成されると一定になる傾向が見られた。



17-21

食品の咀嚼・嚥下感覚特性に関する生態計測を用いた客観評価法の開発

新潟大学大学院医歯学総合研究科 堀 一浩、林 宏和、矢作 理花、谷口 裕重、井上 誠
大阪大学大学院歯学研究科顎口腔機能再建額講座 横山 須美子、小野 高裕、田峰 謙一


食品物性が咀嚼・嚥下運動に影響を及ぼすことは広く知られており、医療・介護現場では食品物性に対する工夫が経験的に行われている。舌を口蓋に押し付け、食物を押しつぶして嚥下する際に発揮される力(舌圧)は食品物性によって調節されていると考えられるが、それを口腔内にて定量的に評価した報告はまだ少ない。今回、我々は咀嚼・嚥下に関連する食品の特性を多面的に評価し、生体計測を中心とした食品テクスチャーの評価システムを構築することを目的として、食品のモデルに食品多糖類ゲルを用い、テクスチャーを舌運動という生体計測による客観的な指標を用いて解析した。
まず、それぞれ3種類の濃度に調整したゲル化剤を使用し、摂取様相がとゲル化剤の濃度が舌圧に与える影響を検討した。その結果、ゲル濃度が増加するにつれて押しつぶし時および咀嚼時の舌圧は高く長くなる傾向が認められた。また、押しつぶし嚥下時舌圧にもその傾向はみられたが、咀嚼嚥下時にはゲル試料濃度による舌圧の違いは認められなかった。
次に、舌圧と嚥下内視鏡検査との同時計測を行った結果、舌圧発現様相とホワイトアウトの出現に一定の時系列関係が認められた。また,ゲル試料濃度が高く摂取量が多いほど押しつぶし回数・嚥下回数は多く、嚥下反射惹起時の食塊位置は下方へと下がっていた。さらに、ゲル試料の摂取量が多いと口腔内・咽頭内に食塊が存在する時間が長くなっていた。
本実験の結果より、舌圧・嚥下内視鏡の同時計測によりゲル化剤摂取時の口腔相および咽頭相それぞれでの評価が可能となる可能性が示され、ゲル試料の濃度や摂取量の違いは両者に影響しており、口腔内での食塊形成が重要であることが示唆された。



17-22

食品製造施設におけるリステリア汚染防除のためのナイシンの応用

大阪市立環境科学研究所微生物保健担当 中村 寛海


食品媒介感染症の原因細菌の一種であるListeria monocytogenes(リステリア)は、食品を介してヒトに重篤なリステリア症を引き起こす。食品製造施設内から分離されるリステリアには、同一施設から長期に渡って繰り返し検出され、施設内に定着しているように見える、いわゆるpersistent strain(PS)の存在が知られているが、筆者らもこれまでの研究で、スモークサーモン製造施設からリステリアを分離し、複数の型別法により菌株を分類した結果、これらの菌株には長期間繰り返し検出されるタイプが存在することを明らかにした。リステリアはバイオフィルム形成細菌の一種であることから、バイオフィルム形成が施設内の定着に寄与している可能性がある。筆者らはPSおよびtransient strain (TS)、すなわち調査期間中に施設から一度しか分離されなかった菌株、についてマイクロタイタープレート上のバイオフィルムの形成性をクリスタルバイオレット(CV)法により検討した。その結果、PSがTSよりも高いバイオフィルム形成性を示すことを明らかにした。食品製造施設においてはリステリアバイオフィルムに対する有効な消毒剤が望まれる。そこで本研究では、近年、わが国において食品の保存料としての使用が認可されたナイシンを用いて、リステリアバイオフィルムに対する消毒剤としての有効性を調べることを目的として、1.食品製造施設由来リステリアに対するナイシンの最小発育阻止濃度(MIC)の測定、2.リステリアバイオフィルムに対する消毒剤としてのナイシンの有用性、の2点について工業用に汎用されている塩化ベンザルコニウム(BAC)との比較検討を行った。
寒天平板希釈法によりPSおよびTSの各消毒剤に対するMICを測定した結果、ナイシンのMICはBACに比べて2~3倍高かった。また、いずれの消毒剤でもPSはTSに比べて高いMICを示した。また、各消毒剤をリステリアバイオフィルムに作用させ、その影響についてCV法およびアデノシン三リン酸(ATP)法により評価を行った。CV法の結果から、いずれの消毒剤も高濃度で使用してもリステリアバイオフィルムに対する洗浄効果は見られなかった。しかしながら、ATP法の結果、BACにはバイオフィルム中のリステリアに対して濃度依存的な殺菌効果が見られた。BACの殺菌効果はPSに比べてTSが顕著であった。また、PSにナイシンを作用させた場合においてのみ濃度依存的にATP量の増大が認められた。ATP量が増大した要因について今後検討を行いたい。


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