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平成18年07月28日

 

 

別紙1 清涼飲料水中のベンゼン試験法

 

別紙1

清涼飲料水中のベンゼン試験法


1.試験法の概要:清涼飲料水中のベンゼンは,ヘッドスペースガスクロマトグラフィー質量分析法により定量する.

2.試験法(ヘッドスペースガスクロマトグラフィー質量分析)
(1)検体の採取と試料の調製
「食品中の食品添加物分析法第2版」の一般試料採取法を準用する.
試料を採取・保存する場合,試料採取瓶にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)張りのねじ口ガラス瓶を100℃で3時間乾燥し,キャップで密栓しておいたものを使用する.試料は,極力泡立てないように静かに採取し,瓶口まで試料を満たして密栓する.1)

(2)試料液の調製
①炭酸飲料
50mlメスフラスコに,30w/v%水酸化ナトリウムを1ml採り,試料を加えて正確に50mlとし,検液とする.20mlヘッドスペースバイアル2)に塩化ナトリウムを3g入れた後,検液10mlを正確に加える.さらに,マイクロシリンジを使用して内部標準液B10μlを注入し,直ちに密栓し3),よく振り混ぜ試料液とする.
②清涼飲料水濃縮液4)
50mlメスフラスコに,試料10mlを正確に採り,精製水を加えて正確に50mlとし,検液とする.20mlヘッドスペースバイアル2)に塩化ナトリウムを3g入れた後,検液10mlを正確に加える.さらに,マイクロシリンジを使用して内部標準液B10μlを注入し,直ちに密栓し3),よく振り混ぜ試料液とする.
③その他の清涼飲料水
20mlヘッドスペースバイアル2)に塩化ナトリウムを3g入れた後,試料10mlを正,確に加える.さらに,マイクロシリンジを使用して内部標準液B10lを注入しμ直ちに密栓し3),よく振り混ぜ試料液とする.

(3)検量線用標準液の調製
5本の20mlヘッドスペースバイアル2)に塩化ナトリウムをそれぞれ3gずつ入れた後,精製水10mlずつを正確に加える.さらに,マイクロシリンジを使用して5種類の検量線用標準原液10μlを注入し,直ちに密栓し3),よく振り混ぜ5種類の検量線用標準液とする.(検量線用標準液1mlは,それぞれベンゼンを1,2,4,10,20ngを含む).

(4)測定法
①測定条件5)
 ヘッドスペースガスクロマトグラフ質量分析装置を用い,次の条件によって測定する. 

ヘッドスペース条件
バイアルオーブン温度:60℃
サンプルループ(ニードル)温度:130℃
トランスファーライン温度:150℃
バイアル加熱時間:25min

ガスクロマトグラフ質量分析装置条件
カラム:内径0.25mm,長さ60mのケイ酸ガラス製の細管に,25%ジフェニル・75%ジメチルポリシロキサンを1.4mの厚さに被覆したもの,又はこれと同等のμ分離性能を有するもの.6)
注入口温度:200℃
オーブン温度:40℃(5min)―4℃/min―120℃―8℃/min―200℃(5min)
イオン化法:EI
SIM選択イオン:m/z 78,77,52(ベンゼン)
        m/z 96,70(フルオロベンゼン)

②検量線
 検量線用標準液のヘッドスペースガスの一定量を正確にガスクロマトグラフ質量分析装置に注入し,ベンゼン及び内部標準液のピーク高さ比又はピーク面積比から検量線を作成する.
③定量7)
 試料液のヘッドスペースガスの一定量を正確にガスクロマトグラフ質量分析装置に注入し,得られたベンゼン及び内部標準液のピーク高さ比又はピーク面積比と検量線から試料液中のベンゼン濃度(ng/ml)を求め次式によって試料中のベンゼン含量(n,g/ml)を計算する
①炭酸飲料
  
              C:試料液中のベンゼン濃度(ng/ml)
②清涼飲料水濃縮液
  
              C:試料液中のベンゼン濃度(ng/ml)
③その他の清涼飲料水
  
              C:試料液中のベンゼン濃度(ng/ml)

試薬・試液等
1.精製水:ベンゼンを含まないもの.8)
2.メタノール:[水質試験用]又は[トリハロメタン測定用]
3.水酸化ナトリウム:[特級]
4.塩化ナトリウム:[水質試験用]9)
 ベンゼンを含まないもの.使用する前に,塩化ナトリウムを500℃で2時間焼成し,冷却後,汚染のない場所に密栓し保存する.5.フルオロベンゼン標準原液:9,10)
 フルオロベンゼン0.100gをメタノール10mlを入れたメスフラスコ100mlに採取し,メタノールを加えて全量を100mlとする.この溶液は,調製後,直ちに液体窒素で冷却しながらアンプルに小分けし,封入して保存する.(この液1mlはフルオロベンゼンを1mg含む).
6.内部標準液:
 フルオロベンゼン標準原液をメタノール少量を入れたメスフラスコに採取し,メタノールにより10倍(内部標準液A)及び100倍(内部標準液B)に希釈する.(これらの液1mlはフルオロベンゼンをA液では0.1mg,B液では0.01mgを含む).
7.ベンゼン標準原液:9)
 ベンゼン0.100gをメタノール10mlを入れたメスフラスコ100mlに採取し,メタノールを加えて全量を100mlとする.この溶液は,調製後,直ちに液体窒素で冷却しながらアンプルに小分けし,封入して保存する.(この液1mlはベンゼンを1mg含む).
8.ベンゼン標準液:
 ベンゼン標準原液をメタノール少量を入れたメスフラスコに採取し,メタノールにより10倍(ベンゼン標準液A)及び100倍(ベンゼン標準液B)に希釈する.(これらの液1mlはベンゼンをA液では0.1mg,B液では0.01mgを含む)8)
9.検量線用標準原液:
 少量のメタノールを加えたメスフラスコ10mlに,ベンゼン標準液B1,2,4ml及びベンゼン標準液A1,2mlを正確に採り,それぞれに内部標準液Aを正確に1mlを加え,更にメタノールを加えて正確に10mlとし検量線用標準原液とする.(これらの液1mlはそれぞれベンゼンを1,2,4,10,20μgを含む).

[注]

1) 空気中に存在する揮発性物質が試料採取瓶を汚染するので,この操作を行う.室内空気の汚染が原因で,無添加試料よりベンゼンが検出される場合には,試料瓶を100℃で乾燥後,ヘリウム又は窒素ガスを用いて瓶の内側及びキャップに強く吹き付け,直ちに密栓したものを使用することが望ましい.検体開封後,ベンゼンが速やかに揮発し,試料中の濃度が急激に減少する可能性が考えられるため,原則として用時調製を行い,できるだけ速やかに試験を行わなければならない.試料を保存する場合,密栓し,冷蔵保存しておく.
2) ヘッドスペースバイアルは,100℃で3時間乾燥したものを使用すること.
3) セプタムは,厚さ0.05mm以上のポリテトラフルオロエチレンシート付のセプタムを使用する.セプタム及びアルミキャップをバイアルにのせ,アルミキャップ締め器で速やかに固定する.
4) 清涼飲料水全自動調理器に用いられる濃縮タイプの清涼飲料水原液は粘性があるため,精製水で希釈して測定を行う.
5) 測定条件は,各測定機器において検量線用標準液のピーク強度が最大となるように設定を変更すること.
6) 市販のカラムとしてAQUATIC-2(ジーエルサイエンス)等が使用できる.選択するカラムによってはベンゼンと同じ保持時間に1,2-ジクロロエタンが検出される場合があるため,マスクロマトグラフ法により分析するときには注意すること.
7) 本法における定量限界は1ng/mlである.定量限界値以上の濃度でピークが検出された場合には,別途マスクロマトグラフ法によりマススペクトルによるベンゼンの確認を行う.
8) ベンゼンが含まれていないことを確認した後ならば,超純水の他,市販の精製水又はミネラルウォーター等を使用してもよい.ベンゼンで汚染されている室内環境で,精製水を長期間保存した場合,精製水からベンゼンが検出されることがあるので注意すること.
9) 市販の水質試験用又はトリハロメタン測定用の試薬を使用してもよい.あらかじめ妨害ピークが検出されないことを確認する.
10) 内部標準原液に,d6-ベンゼン標準原液を使用してもよい.


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