通知

 

食安基発第0513003号

平成16年05月13日

都道府県知事

保健所設置市長

政令市市長

殿

医薬食品局食品安全部基準審査課

 

 

「食品中の食品添加物分析法」の改正について

 

 標記分析法については、「食品中の食品添加物分析法について」(平成12年3月30日衛化第15号当職通知)の別添「第2版 食品中の食品添加物分析法」により定められているが、下記のとおり改正したので通知する。

なお、貴職におかれても御活用の上、貴管内関係者に対する周知徹底方よろしくお願いする。

 
1. L-アスコルビン酸2-グルコシドは、平成16年1月20日に添加物として指定されたところであるが、別添1のとおり食品中の分析法を当該試験法として加えたこと。

2. 過酸化ベンゾイルについて、別添2のとおり当該試験法を改正したこと。




【別添1】

L-アスコルビン酸2-グルコシド
L-Ascorbic Acid 2-Glucoside

C12H18O11:338.26


1. 試験法の概要
 食品中のL-アスコルビン酸2-グルコシドは、逆相高速液体クロマトグラフィーにより定量する。

2. 試験法(液体クロマトグラフィー)
(1) 検体の採取と試料の調製
一般試料採取法を準用する。

(2) 試料液の調製
① 液状食品
 試料約5.0 gを精密に量り、移動相1)を加えて正確に50mlとする。不溶物がある場合は遠心分離し、メンブランフィルター(0.45mm)でろ過したものを試料液とする。

② 粉体及び固体食品
 試料を粉砕してその約5.0 gを精密に量り、移動相30mlを加え10分間ホモジナイズする。不溶物がある場合はろ過又は遠心分離し、移動相を加えて正確に50 mlとする。この液をメンブランフィルター(0.45mm)でろ過したものを試料液とする。

(3) 検量線用標準液の調製
L-アスコルビン酸2-グルコシド約0.10 gを精密に量り、移動相1)を加えて溶かして正確に100 mlとする。その20 mlを正確に量り、移動相を加えて正確に200 mlとしたものを標準液とする(この液1 mlは、L-アスコルビン酸2-グルコシド約100mgを含む)。標準液1~50 mlを正確に量り、移動相を加えて正確に100 mlとし、検量線用標準液とする(この液1 mlは、L-アスコルビン酸2-グルコシド約1~50mgを含む)。

(4) 測定法
① 測定条件
紫外部吸収検出器付高速液体クロマトグラフを用い、次の条件により測定する2)。
カラム充てん剤3):オクタデシルシリル化シリカゲル
カラム管:内径4.6 mm、長さ250 mm
カラム温度:40℃
 移動相:水800 mlにリン酸二水素カリウム1.4gとテトラブチルアンモニウムヒドロキシド26 mlを加え、リン酸水溶液でpH5.2に調整した後、水で1000 mlとする。この液900 mlとアセトニトリル100 mlを混和したもの。
流速:0.8 ml/分
測定波長:260 nm

② 検量線
 検量線用標準液それぞれ10mlずつを正確に量り、液体クロマトグラフに注入し、ピーク面積からL-アスコルビン酸2-グルコシドの検量線を作成する4)。

③ 定量5-7)
 試料液10mlを正確に量り、液体クロマトグラフに注入し、得られたピーク面積と検量線から試料液中のL-アスコルビン酸2-グルコシド濃度A(mg/ml)を求め、次式によって試料中のL-アスコルビン酸2-グルコシド含量(mg/kg)を計算する。

A : 試料液中のL-アスコルビン酸2-グルコシド濃度 (mg/ml)
W: 試料の採取量 (g)

試薬・試液
1.アセトニトリル:[高速液体クロマトグラフ用]
2.リン酸二水素カリウム:[特級]
3.テトラブチルアンモニウムヒドロキシド:[特級、10%水溶液]
4.リン酸溶液:20%溶液
5.水:水道水を超純水製造装置で処理した水

[注]
1) L-アスコルビン酸2-グルコシドは、水、5%メタリン酸溶液に比べ、移動相に溶かしたときに最も安定である。
2) 本法のほかに、次の条件でも測定できる。カラム充てん剤:アミノプロピル基を化学結合したシリカゲル、カラム管:内径4.6 mm 長さ250 mm、移動相:アセトニトリル/リン酸二水素カリウム・0.5vol%リン酸溶液(5.44→1000)の混液(60:40)、流速:0.7 ml/分、そのほかの条件は本法と同じ。この条件で測定したときの検出下限は2.5mg/kgである。
3) 液体クロマトグラフィーのカラムとしては、TSKgel ODS-80Ts QAなどが使用出来る。
4) 試料液の濃度が検量線の濃度範囲を超える場合、試料液を移動相で適宜希釈するか、試料採取量を減らして試験する
5) 本法の検出下限は1.0 mg/kgである。なお、清涼飲料水、飴及び錠菓における添加回収率は98.2~99.1%である。
6) 本法はL-アスコルビン酸2-グルコシドのほかに、L-アスコルビン酸、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、ニコチン酸アミド及びニコチン酸などの水溶性ビタミンについても同時分析が可能である。また、検出波長をUV195 nmとすることでパントテン酸Caの検出が可能である。
7) 水溶性ビタミン類とエリソルビン酸の液体クロマトグラムを注図に示す。

注図 水溶性ビタミン類とエリソルビン酸の液体クロマトグラム
①:ビタミンB1、 ②:ビタミンB6、 ③:ニコチン酸アミド、 ④:L-アスコルビン酸2-グルコシド、 ⑤:L-アスコルビン酸、 ⑥:エリソルビン酸、 ⑦:ビタミンB12、 ⑧:ビタミンB2、 ⑨:ニコチン酸





【別添2】

過酸化ベンゾイル
Benzoyl Peroxide

C14H10O4:242.23


1. 試験法の概要
小麦粉及び小麦粉製品中の過酸化ベンゾイルは、アセトニトリルで抽出後、逆相高速液体クロマトグラフィーで定量する1)。

2. 試験法(液体クロマトグラフィー)
(1)検体の採取と試料の調製

一般試料採取法を準用する。


(2)試料液の調製2)
粉末試料はそのまま固形試料は粉砕後、試料約10 gを精密に量り、アセトニトリルを正確に50 ml加え、マグネチックスターラーで15分間攪拌する。この液をメンブランフィルター(0.45 mm)に通し、試料液とする。

(3)検量線用標準液の調製
水添加過酸化ベンゾイル3)は、以下の方法に従って、あらかじめ滴定により含量を求めておく。その約250 mgを精密に量り、共栓フラスコに入れ、アセトン15 mlを加えて振り混ぜる。この液にヨウ化カリウム溶液(1→2)3 mlを加え、直ちに密栓し、1分間振り混ぜる。遊離したヨウ素を0.1 mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液で滴定し、過酸化ベンゾイル含有比を計算する。別に空試験を行い補正する。
 0.1 mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液1 ml = 12.112 mg C14H10O4

標準液の調製:水添加過酸化ベンゾイル4)を過酸化ベンゾイルとして約0.25 gを精密に量り、アセトニトリルを加えて溶かして正確に50 mlとする。その2 mlを正確に量り、アセトニトリルを加えて正確に200 mlとしたものを標準液とする(この液1 mlは過酸化ベンゾイル約50 mgを含む)。標準液1~50 mlを正確に量り、アセトニトリルを加えて正確に100 mlとし、検量線用標準液とする(これらの液1 mlは過酸化ベンゾイル約0.5~25 ■ochgを含む)。

(4)測定法
①測定条件
紫外部吸収検出器付高速液体クロマトグラフを用い、次の条件によって測定する。
カラム充てん剤:オクタデシルシリル化シリカゲル
カラム管:内径4.6 mm、長さ 250 mm
移動相:アセトニトリル・水混液(55:45)
流速:1.0 ml/分
カラム温度:40℃
測定波長:235 nm

②検量線
検量線用標準液それぞれ20 mlずつを正確に量り、それぞれを高速液体クロマトグラフに注入し、ピーク面積から検量線を作成する。

③定量
試料液 20 mlを正確に量り、高速液体クロマトグラフに注入し、得られたピーク面積と検量線から試料液中の過酸化ベンゾイル濃度 (mg/ml)を求め、次式によって試料中の過酸化ベンゾイル含量(mg/kg)を計算する5)。

A: 試料液中の過酸化ベンゾイル濃度 (mg / ml)
W: 試料の採取量 (g)

試薬・試液

1.水添加過酸化ベンゾイル:ALDRICH社製USP grade、シグマ アルドリッチジャパン社製SAJ一級を用いた。
2.アセトン:[試薬特級]
3.ヨウ化カリウム:[試薬特級]
4.0.1 mol/lチオ硫酸ナトリウム溶液:[試薬]
5.アセトニトリル:[高速液体クロマトグラフ用]
6.水:水道水を超純水製造装置で処理した水

[注]
1) 過酸化ベンゾイルは、小麦粉以外の食品には使用できないので、小麦粉及び小麦粉製品からの定量法を記載した。
2) 本法は小麦粉及び乾製品に使用できる。試料によってはホモジナイズし、ろ過又は遠心分離した後、そのろ液又は上澄みを50 mlに定容し、メンブランフィルターに通したものを試料液とする。
3) 食品添加物として指定されている希釈過酸化ベンゾイルは、過酸化ベンゾイルに爆発の危険性があるため、ミョウバン、リン酸カルシウム塩類、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム及びデンプンのうちの一種以上で20%に希釈したものであるが、我が国で生産されていないため入手する事ができない。そこで、市販の試薬として入手可能な水添加過酸化ベンゾイルを標準として使用する。過酸化ベンゾイルは60℃以上、あるいは還元性物質の共存で爆発する危険性があるので、もとの容器内に保存し、状態が変化しないように取り扱うように注意する。
4) 水添加過酸化ベンゾイルは、25%程度の水を含んでいるため、調製した標準溶液の濃度をあらかじめ滴定により定める必要がある。
5) 本法の検出下限は0.2 mg/kgである。なお、小麦粉及び乾製品における添加回収率は97.1~99.4%である。


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