通知

 

食監発第0326001号

平成14年03月26日

都道府県

政令市衛生主管部(局)長

特別区

殿

医薬食品局食品安全部監視安全課

 

 

カビ毒(アフラトキシン)を含有する食品の取り扱いについて

 



 標記については昭和46年3月16日付環食監第128号にて通知したところであるが、労働環境保全上クロロホルム等の有害試薬を使用しない試験法の導入が要請されていたことから、厚生科学研究により国立医薬品食品衛生研究所等において改良試験法を検討の結果、別添のとおりの試験方法が報告されたところである。
 ついては、今後本試験方法により、食品中のアフラトキシンの検査を実施されたい。
 また、本試験法と同等以上の性能を有する試験法により実施しても差し支えないので申し添える。
 なお、昭和46年3月16日付環食第128号中の別紙(1)「ピーナッツおよびピーナッツ製品中のアフラトキシンB1の試験法」は本年3月31日をもって廃止するので御了知願いたい。



別添


 穀類、豆類、種実類及び香辛料類中注1)のアフラトキシンB1試験法
 以下に示す高速液体クロマトグラフィーによる分析により、陽性と判断された場合には、高速液体クロマトグラフ質量分析計等により確認を実施する。

多機能カラム法注2)
1 機器、器具
 ロータリーエバポレーター、高速液体クロマトグラフ(蛍光検出器付きのもの)、クリーンアップ用カートリッジカラム(逆相樹脂、陰イオン交換樹脂、陽イオン交換樹脂を混合したものを充てんしたシリンジ型多機能カラム注3,4)あるいは押し出し型多機能カラム注5))、高速ワーリングブレンダー(容量が500~1,000mlのもの)、振とう機(容量が500mlのナスフラスコ用のもの)、スクリューキャップ付きバイアル、スリ付の試験管や遠心管を用いる。

2 試薬・試液
 次に示すもの以外は、食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)第1 食品の部D 各条の項の○ 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの2 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格の試験法の目の(2) 試薬・試液に示すものを用いる。
 トリフルオロ酢酸(TFA)冷暗所に保存する。
 ろ紙 WhatmanNo.5またはその同等品

3 標準品
 アフラトキシンB1標準原液の調製注6)精密に秤量を行ったアフラトキシンB1からトルエン・アセトニトリル(9:1)又はアセトニトリルを用いて最終標準溶液(2.5ng/ml)を調製する。以下に調製例を示す。正確に1.0mgの秤量が保証されたもの又は正確に1.0mg秤量を行ったアフラトキシンB1容器にトルエン・アセトニトリル(9:1)又はアセトニトリルを50mlを加え、激しく撹拌し、標準原液(20μg/ml)とする。標準原液は密栓しアルミニウム箔で覆い冷蔵庫中に保存する。標準原液0.5mlを採り、トルエン・アセトニトリル(9:1)又はアセトニトリルで200mlとし、標準第一溶液(50ng/ml)を調製する。その標準第一溶液1.0mlを採り、トルエン・アセトニトリル(9:1)又はアセトニトリルで20mlとし、最終標準溶液(2.5ng/ml)を調製する。

4 試験溶液及び標準溶液の調製

a 高速液体クロマトグラフィーによる分析の場合
 ① 穀類、豆類及び種実類
 採取された検体を粉砕均一化した試料50gをブレンダー容器あるいは共栓付きナスフラスコに量り採る。これにアセトニトリル・水(9:1)を100mlを加え、5分間ブレンドまたは30分間振とう後、ろ紙でろ過又は遠心分離する。ろ液5mlを多機能カラム注3,4,5)に静かに注入し、1分間1mlの流速で流出する。最初に溶出される流出液約1.0mlを試験管注7)に集め、試験溶液とする。
 その試験溶液の0.5mlをスクリューキャップ付きバイアルあるいはスリ付の試験管や遠心管へ正確にとり、窒素気流を送るかエバポレータを用いて溶媒を除去する。残留物にトリフルオロ酢酸を0.1ml加え、密栓をして激しく撹拌する。室温、暗所で15分間、放置したのちアセトニトリル・水(1:9)0.9mlを加えたものを高速液体クロマトグラフィー用試験溶液注8)とする。
 別に最終標準溶液1.0mlをスクリューキャップ付きバイアルあるいはスリ付の試験管や遠心管に正確にとり、窒素気流を送るかエバポレータを用いて減圧乾固したのち、それぞれにトリフルオロ酢酸0.1mlを加え、密栓をして激しく撹拌する。室温、暗所で15分間、放置したのちアセトニトリル・水(1:9)0.9mlを加えたものを穀類、豆類及び種実類の高速液体クロマトグラフィー用標準溶液とする。
 ② 香辛料類
 採取された検体を粉砕均一化した試料50gをブレンダー容器あるいは共栓付きナスフラスコに量り採る。これにアセトニトリル・水(9:1)を400mlを加え、5分間ブレンドまたは30分間振とう後、ろ紙でろ過又は遠心分離する。ろ液5mlをシリンジ型逆相強化多機能カラム注3)に静かに注入し、1分間1mlの流速で流出する。最初に溶出される流出液約1.0mlを試験管注7)に集め、試験溶液とする。
 その試験溶液の0.5mlをスクリューキャップ付きバイアルあるいはスリ付の試験管や遠心管へ正確にとり、窒素気流を送るかエバポレータを用いて溶媒を除去する。残留物にトリフルオロ酢酸を0.1ml加え、密栓をして激しく撹拌する。室温、暗所で15分間、放置したのちアセトニトリル・水(1:9)0.4mlを加えたものを高速液体クロマトグラフィー用試験溶液注8)とする。
 別に最終標準溶液0.25mlをスクリューキャップ付きバイアルあるいはスリ付の試験管や遠心管へ正確にとり、窒素気流を送るかエバポレータを用いて減圧乾固したのち、それぞれにトリフルオロ酢酸0.1mlを加え、密栓をして激しく撹拌する。室温、暗所で15分間、放置したのちアセトニトリル・水(1:9)0.4mlを加えたものを香辛料類の高速液体クロマトグラフィー用標準溶液とする。
b 高速液体クロマトグラフ質量分析の場合
 4aで得られた試験溶液で高速液体クロマトグラフィー分析に0.5ml使用後、残った試験溶液の内、0.4mlをスクリューキャップ付きバイアルあるいはスリ付の試験管や遠心管へ正確にとり、窒素気流で溶媒を除去するかエバポレータを用いて減圧乾固を行う。次いで移動相0.1mlを加えて溶解し、液体クロマトグラフ質量分析用試験溶液とする。
 ① 穀類、豆類及び種実類
 最終標準溶液2.0mlをスクリューキャップ付きバイアルあるいはスリ付の試験管や遠心管へ正確にとり、窒素気流を送るかエバポレータを用いて減圧乾固したのち、次いで移動相0.25mlを加えて溶解し、穀類、豆類及び種実類のための液体クロマトグラフ質量分析用標準溶液とする。
 ② 香辛料類
 最終標準溶液2.0mlをスクリューキャップ付きバイアルあるいはスリ付の試験管や遠心管へ正確にとり、窒素気流を送るかエバポレータを用いて減圧乾固したのち、次いで移動相1mlを加えて溶解し、香辛料類のための液体クロマトグラフ質量分析用標準溶液とする。


5 操作法

a 高速液体クロマトグラフィーによる分析注9、10、11)
 高速液体クロマトグラフィー用試験溶液及び高速液体クロマトグラフィー用標準溶液をそれぞれ20μlについて、次の条件で試験を行う。試験溶液から得られたクロマトグラム上のピークの保持時間を標準品のピークと比較して定性する。
 高速液体クロマトグラフイー用試験溶液の測定から得られたピーク高さ又はピーク面積が、高速液体クロマトグラフィー用標準溶液の測定から得られたピーク高さ又はピーク面積を上回る場合は陽性と判断する。
 操作条件
 カラム充てん剤 オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径3~5μm)注12)を用いる。
 カラム管 内径4.6mm、長さ150mm又は250mm
 カラム温度 40℃
 移動相 アセトニトリル・メタノ-ル・水(1:3:6)を用いる。
 流速 1.0ml/min.
 検出波長 励起波長365nm、蛍光波長450nmで操作する。
 注入量 20μl
b 高速液体クロマトグラフ質量分析
 試験溶液及び標準溶液6μlを注入し、高速液体クロマトグラフ質量分析を行う。液体クロマトグラフ質量分析用試験溶液から得られたピークの保持時間と液体クロマトグラフ質量分析用標準溶液のピークの保持時間と比較して同定する。また液体クロマトグラフ質量分析用試験溶液の測定から得られたピーク高さ又はピーク面積が、上記食品分類の各液体クロマトグラフ質量分析用標準溶液の測定から得られたピーク高さ又はピーク面積を上回る場合陽性と判断する。
 操作条件
 カラム充てん剤 カラムクロマトグラフ用オクタデシルシリル化シリカゲル(粒径5μm)注13)を用いる。
 カラム管 内径2.0mm、長さ150mm
 カラム温度 40℃
 移動相 アセトニトリル・メタノール・10mM酢酸アンモニウム(2:6:15)を用いる。
 流速 0.2ml/min.
 注入量 6μl
 質量分析計条件
 イオン化モード ESI‐positive
 スキャンレンジ m/z100―500
 SIM イオン アフラトキシンB1 313、アフラトキシンB2 315、アフラトキシンG1 329、アフラトキシンG2 331


【注解】

1)  香辛料はチリペッパー、レッドペッパー及びナツメグが適応できる。
2)  本法は日本薬学会の衛生試験法として2000年版に採用された方法の変法である。わが国の通知法(昭和46年3月16日付け 環食128号)と比較し、試験操作に有害溶媒であるクロロホルムを使用せず、迅速でクリーンな分析法である。
3)  MultiSep #228(Romer Labs社製)、Autoprep MF‐A(昭和電工社製)などが使用できる。使用するカラムによって溶出パターンは異なるので、標準溶液を用いて事前に溶出量を確認する。
4)  ISOLUTE MULTIMODE(International Sorbent Technology社製)などが使用できる。使用するカラムによって溶出パターンは異なるので、標準溶液を用いて事前に溶出量を確認する。
5)  押し出し型多機能カラムMycoSep #226、MycoSep #228(Romer Labs社製)などが使用できる。使用するカラムによって溶出パターンは異なるので、標準溶液を用いて事前に溶出量を確認する。
6)  アフラトキシンは強力な発がん物質であるため、取り扱いに注意する必要がある。Sigma社等から入手可能な正確に秤量された市販品を用いると便利である。また、標準溶液調製法として、AOAC掲載の方法(Mary W.Trucksess: AOAC(17thversion)Chapter49,p.3―5,(2000))が有用である。
7)  多機能カラム精製は、夾雑物がカラムに保持し遅く溶出され、アフラトキシンはカラムに保持せず、常に一定の濃度で溶出されるため精製される。従って多機能カラムから初期溶出液1.0mlが最も精製度が高い。
8)  必要であれば、遠心処理等で不溶物を除去後、高速液体クロマトグラフィー用試験溶液とする。
9)  香辛料試料及びHPLCカラムに保持が強い夾雑物が多く存在する試料を連続分析する際は、アフラトキシンB1溶出後、アセトニトリルでHPLCカラムを5分から10分間洗浄後、移動相で10分間送液し、初期化する。
10)  トリフルオロ酢酸による蛍光誘導化(TFA法)のほかに、フォトケミカルリアクターによる蛍光誘導化(PR法,Joshua,H.et al.:J.chromatogr A.,654,247―254(1993))も応用可能である。本法は、ポストカラムで紫外線照射により生成する蛍光誘導体化物を測定する簡便な手法である。検出感度及び蛍光誘導体化物は、TFA法と同じであるが、ポストカラム反応であるためアフラトキシンの高速液体クロマトグラフィー上の溶出順序が異なり、G2、G1、B2、B1の順となる。PR法の場合、試験溶液を直接HPLCに注入するため、高速液体クロマトグラフィー用標準溶液調製の際は、最終標準溶液(穀類、豆類及び種実類では2.0ml、香辛料類では0.5ml)をスクリューキャップ付きバイアルあるいはスリ付の試験管や遠心管へ正確にとり、窒素気流を送るかエバポレータを用いて溶媒を除去後、アセトニトリル・水(9:1)(穀類、豆類及び種実類では1.0ml、香辛料類では1.0ml)を加えて調製する。なお、測定条件の一例を以下に示す。
高速液体クロマトグラフィーの条件
カラム:オクタデシルシリル化シリカゲルカラム注9)(内径4.6mm、長さ150又は250mm、粒径3~5μm)、カラム温度:40℃、移動相:メタノール・水(4:6)、流量:0.7ml/min、検出波長:励起波長365nm、測定波長450nm、PCR反応システム:245nm低圧水銀灯(15W)照射システム(スペルコ社製)、反応コイル:内径0.25mm、長さ15~20m、注入量:10μl
11)  分離できない夾雑物が明らかに存在し、高速液体クロマトグラフイー用試験溶液の測定から得られたピーク高さ又はピーク面積が、高速液体クロマトグラフィー用標準溶液の測定から得られたピーク高さ又はピーク面積を上回る際は、注13)で示したカラムの内径が同じで長さが250mmと150mmのカラムを連結して、再度試料溶液を分析する。あるいはHPLC条件を次のように変更する。カラム:ワコーパックFluofix 120E(内径4.6mm、長さ250mm、粒径5μm)(和光純薬社製)、カラム温度:40℃、移動相:メタノール・水(3:7)、流速:1.0ml/min.
12)  Inertsil ODS‐3(ジーエルサイエンス社製)、Shodex Silica C18M 4E(昭和電工社製)及びCadenza CD‐C18 CD006(インタクト社製)などが使用できる。
13)  Shodex Silica C18M 2D(昭和電工社製)などが使用できる。


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