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平成12年06月14日

 

 

(別添2)

 
(別添2)

DEHPの安全性評価について(概要)

  
  
(毒性影響における種差) DEHPの安全性評価においては動物の種による感受性の差が問題となる。げっ歯類においては,共通して肝臓及び精巣への影響が認められるが,カニクイザル等の霊長類では影響は認められていない。
(肝臓への影響) DEHPのげっ歯類の肝臓への影響として,ラット及びマウスの2年間の反復投与における肝腫瘍の発生が挙げられる。


 最近のIARC(国際がん研究機関)専門家会合における検討において,
 ① DEHPはペルオキシゾーム増殖作用を介するメカニズムで肝腫瘍を発生させること。
 ② マウス及びラットの発がん性研究においてペルオキシゾーム及び肝細胞の増殖が観察されたこと。
 ③ DEHPに暴露したヒト肝培養細胞及び霊長類の肝臓でペルオキシゾームの増殖が認められなかった。


ことから,DEHPの発がん性の分類を従来のグループ2B(ヒトに対する発がん性があるかもしれない。)からグループ3(ヒトに対して発がん性があると分類できない。)に変更されている。


(精巣及び生殖毒性) DEHPに関するラット及びマウスの精巣毒性及び生殖毒性に関する多くの試験成績のうち明確な無毒性量(NOAEL)の得られている数少ない実績を見ると,まず,マウスによる生殖発生毒性試験(Lambら,1987)におけるNOAELは,生殖発生に関する明確な有害影響(胚致死,胎児の形質異常等)を指標として14mg/kg/dayである。
 次に比較的低用量のDEHPをラットに投与した時の影響を見た報告(Poonら,1997)におけるNOAELは,精巣の病理組織学的変化を指標として3.7mg/kg/dayである。
 ラットに低用量のDEHPを投与したもう一つの報告(Arcadiら,1998)については低用量でも精巣毒性が確認されているが,DEHPの投与量が不明で,毒性についても不明確であるなど報告に不備がある。

  
(内分泌かく乱性) フタル酸エステル類については,内分泌ホルモン様の作用及びそれに基づく生体障害の可能性が問われているが,フタル酸エステル類全般についてヒト乳がん細胞(MCF-7)を用いた試験報告ではDEHPは増殖活性が認められていない。また,酵母の系でも活性は認められていない。他方,MCF-7の増殖活性で見た別の報告によれば用量相関性の増加が認められており,その最低濃度は10μM(=3.9mg/kg)であった。
 その他のin vitro試験成績を含めて検討すると,DEHPにおける内分泌かく乱の可能性の如何については今後の研究を待たなければならないが,in vitro試験から求められる最小作用濃度(10μM)でも,従来の精巣毒性で求められているNOAEL値に較べて著しく低用量とはいえず,さしあたり一般毒性についてはこれまでの毒性試験の評価方法で判断することは差し支えない。


(耐容一日摂取量(TDI)) 上記のような検討の結果として,DEHPのTDIについては,精巣毒性及び生殖毒性試験におけるNOAEL 3.7mg/kg/day及び14mg/kg/dayから不確実係数100を適用して,当面のTDIを40~140μg/kg/dayとすることが適当である。


(参考)DEHPに係る諸外国における安全性評価結果(EUにおける評価)TDI:37μg/kg/day('98)(NOAEL 3.7mg/kg/day,精巣毒性:Poonら,1997,SF=100)(英国における評価)TDI:50μg/kg/day('96)(NOAEL 5mg/kg/day,肝毒性:RIVM,1992,SF=100)(デンマークにおける評価)TDI:5μg/kg/day('96)(NOAEL 5mg/kg/day,肝毒性:RIVM,1992,SF=1,000)(米国における評価)NOAEL:約10mg/kg/day('99)(精巣毒性:Poonら,1997,生殖毒性:Lambら,1987)NOAEL 4mg/kg/day,NOAEL 14mg/kg/day


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