薬事・食品衛生審議会資料

 

平成16年06月24日

薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会

 

 

既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究(平成15年度調査)

 
既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究
(平成16年6月24日  薬事・食品衛生審議会添加物部会)

 「既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究」の報告書が、平成16年6月24日に開催された薬事・食品衛生審議会添加物部会において公表されました。
 
    平成15年度食品添加物安全性確認費
    調査研究報告書
    既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究

    平成166


    主任研究者
     井上
     
    国立医薬品食品衛生研究所
    安全性生物試験研究センター長
    研究協力者
     菅野
     
    国立医薬品食品衛生研究所
    安全性生物試験研究センター毒性部長
     棚元 憲一 国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部長
     長尾 美奈子 共立薬科大学客員教授
     林 国立医薬品食品衛生研究所
    安全性生物試験研究センター変異遺伝部長
     広瀬 雅雄 国立医薬品食品衛生研究所
    安全性生物試験研究センター病理部長
     米谷 民雄 国立医薬品食品衛生研究所食品部長
     三森 国敏 東京農工大学農学部獣医学科教授



    A.研究要旨
     平成8 年度厚生科学研究報告書「既存天然添加物の安全性評価に関する調査研究」(主任研究者 林裕造)(以下、「林班報告書」という。)においては、国際的な評価結果、欧米での許認可状況、安全性試験成績結果等から、既存添加物の基本的な安全性について検討した結果、489品目のうち139品則こついては、今後安全性試験の実施も含めその安全性について検討することが必要であると報告されている。
     今回は、林班報告書において、更に検討する必要があるとされた139品目のうち、平成11年度「既存添加物の安全性評価に関する調査研究」(主任研究者黒川雄二)(以下、「黒川班報告書」という。)において報告された14品目を除く、126品目を対象に、新たに安全性試験成績が収集できた品目について検討を行った。本報告書においては、アウレオバシジウム培養液、5'-アデニル酸、アルカネット色素、力キ色素、ガストリツクムチン、クーロー色素、コメヌカ油抽出物、サバクヨモギシードガム、シソ抽出物、5'-シチジル酸、精油除去ウイキョウ抽出物、納豆菌ガム、ニガヨモギ抽出物、フクロノリ抽出物、マスチック、ユッカフォーム抽出物及びロシンの17品目についての検討結果をまとめて収載している。
     検討した17品目については、90 日間以上の反復投与試験及び変異原性試験の成績を入手することができた。試験成績より個々の既存添加物について基本的な安全性を評価することができた。結論としては、現時点で直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められず、新たな安全性試験を早急に実施する必要はないものと考えられた。

    B.研究目的:
     平成75月の食品衛生法改正により、食品添加物の指定制の範囲が従来の化学的合成品から天然香料等を除くすべての添加物に拡大された。本改正に伴い従来から販売・製造・使用等がなされてきた化学的合成品以外の添加物(天然香料等を除く。以下「天然添加物」という。)については、経過措置として、その範囲を既存添加物名簿として確定した上で、引き続き、販売・製造・輸入等を認めることとされた。
     しかしながら、これら既存添加物名簿に掲げられた天然添加物については、従来から指定されている添加物と異なり、各品目毎に安全性のチェックがなされているものではなく、国会等において、その安全性の確認が求められているところである。
     平成8年度には林班報告書により、既存添加物489品目について、国際的な評価結果、欧米での許認可状況、安全性試験成績結果等から、既存添加物の基本的な安全性について検討され林班報告書として公表された。この報告書では、「489品目のうち、159品目については既に国際的な評価がなされており基本的な安全性は確認されている。さらに41品目については入手した試験成績の評価により、また150品目についてはその基原、製法、本質からみて、いずれも現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないものと考えられた。」と報告されており、残る139品目についてさらに検討が必要であるとされている。
     平成11年度には黒川班報告書により、「林班報告書により安全性の確認が必要とされた139品目のうち、14品目の既存添加物について、現時点で直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められず、新たな安全性試験を早急に実施する必要はないものと考えられた。」と報告されしている。
    本調査は、平成8年度林班報告書で安全性について検討することが必要とされている139 品目から、平成11年度黒川班報告書で安全性の見直しの終了した14品目を除く、残る125品目を対象として、国内外の試験成績を収集し、その試験成績の評価を行うことにより、天然添加物の基本的な安全性を検討することを目的とした。

    C.研究方法
     林班報告書において安全性の確認が必要とされた既存添加物139品目のうち、黒川班報告書で安全性の見直しの終了した14品目を除く、残る125品目を対象として、90 日間以上の反復投与試験成績及び変異原性試験成績の双方の資料を入手し得た17品目について、品目毎に安全性試験成績の評価を行った。

    D.研究結果
     本調査において、安全性の見直しを行った17品目については、現時点において、これら17品目において直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった(その概要は別添のとおりである)

    E.考察
     林班報告書において、安全性の確認を必要とされた既存添加物のうち、見直しの済んでいない126品目を対象に、安全性試験成績の収集を行い、少なくとも90 日間以上の反復投与試験成績及び変異原性試験成績の双方が入手できた17品目について、試験成績を評価したところ、いずれの品目についても、現時点において、直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった。従って、評価を行った17品目については、新たな安全性試験を早急に実施する必要はないものと考えられた。なお、厚生労働省は平成15年度食品衛生法の改正を踏まえ、現在、使用実態のない既存添加物の整理を行っており、具体的には消除予定添加物名簿に38品目(安全性を確認する必要があるとされている添加物は25品目)を公示して手続きを進めているところである。今後とも既存添加物の使用実態の調査を行い、情報の必要な品目から効率的に見直しを進めていく必要がある。

    F.結論
     本調査により、基本的な安全性が確認されていると考えられた新たなものは、試験成績の収集による17品目であった。これらの品目についてはいずれも現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないものと考えられた。



    別添
    アウレオバシジウム培養液

    1.食品添加物名
     アウレオバシジウム培養液(アウレオバシジウム培養液から得られた、b-1,3-6-グルカンを主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     黒酵母(Aureobasidium pullulans)の培養液より、分離して得られたものである。主成分はb-1,3-6-グルカンである。

    3.主な用途
     増粘安定剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットを用い、検体濃度を 0.561.675.0%となるように調整し、飲水投与にて 90 日間反復経口投与試験を実施した。その結果、血液学的検査及び血液生化学的検査において有意差のみとめられた検査項目が散見されたが、いずれも用量相関性は認められず、正常範囲内の軽度の変化であるため、被験物質の影響ではないと結論した。病理組織学的検査の結果、雌の肝に巣状に軽度の小肉芽腫及び髄外造血、雄では心筋に軽度の炎症性細胞浸潤などが散見されたが、これらの変化は F344 ラットの自然発生病変であることが知られており、群間にも差は認められなかったことから毒性学的意義の乏しい病変であると考えられた。これらのことを総合的に判断すると無毒性量は 5%であると考えられた。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537WP2urA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、500 mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験は、試験可能な実験条件下(10%v/v)において、染色体異常誘発性は認められなかった。3
     マウスを用いた小核試験は技術的投与可能量(420mg/kg)まで試験されたが、いずれの用量においても小核誘発性は認められなかった。4

    (引用文献)
    1. 鰐渕英機:厚生労働科学研究補助金、大阪市立大学大学院医学研究科
    2. 兒嶋昭徳:平成13年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3. 林真:食品添加物安全性再評価等の試験、国立衛生試験所変異遺伝部
    4. 安心院祥三:厚生科学研究費補助金、財団法人化学物質評価研究機構


    5'-アデニル酸

    1.食品添加物名
     5'-アデニル酸

    2.基原、製法、・本質
     酵母(Candida utilis)の菌体より、熱時水で抽出した核酸を酵素で加水分解した後、分離して得られたものである。成分は5'-アデニル酸である。

     3.主な用途
    強化剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与毒性試験
     F344系ラットに5'-アデニル酸を00.61.262.55%含有する飼料を12週間にわたり経口投与した。雌の 5%群で、有意な体重増加抑制と腎臓重量増加が認められたが、ごく軽度の変化であり、また、病理組織学的検査、血算及び血清生化学的検査でも変化が認めなかったことから、毒性変化とは考察しなかった。
     5%以下の経口投与において、5'-アデニル酸はF344系ラットに何ら毒性を示さないものと考えられた。1) 
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA100TA1535TA98TA1537WP2urA/pKM101)を用いた復帰突然変異原性試験はS9mixの有無にかかわらず、陰性であった(最高用量5000 mg/plate)2)
     哺乳類培養細胞(CHL)を用いた染色体異常試験は、1561250mg/ml-S9mix24時間処理で染色体構造異常の誘発が認められたことから、陽性であった。3
     マウス(ICRSPF、雄各用量5)に強制経口投与(50010002000 mg/kg×20.5%CMC に懸濁)して、骨髄における小核試験を行った。いずれの用量においても小核を有する多染性赤血球の頻度等に有意な増加は認められず、陰性であった。4)

    (引用文献)
    1. 東府蓑之:平成12年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、広島大学
    2. 松島泰次郎:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、日本バイオアッセイ研究所
    3及び4. 岩本毅:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人残留農薬研究所


    アルカネット色素

    1.食品添加物名
     アルカネット色素(アルカネットの根から得られた、アルカニンを主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     ムラサキ科アルカネット(Anchusa officinals LINNE)の根より、エタノールで抽出して得られたものである。主色素はアルカニンである。
    赤色~赤紫色を呈する。

    3.主な用途
     着色料

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットに検体 0.561.675%の濃度で飼料に混入し、90 日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、体重及び摂餌量に変化は認められなかった。
     血液学的検査において、雄0.56%以上の群において白血球減少が認められたが、用量相関に乏しく、型別百分率に変化が無く、また、病理学組織学的にも骨髄に細胞密度の減少などの特異的な変化は見られていない。しかし、5%群では数値が低く、投与の影響であると考えられる。雌雄 0.56%以上の群で貧血(RBCHb、Ht の減少)傾向が認められたが、有意差は雌 5%群の RBC の減少のみであった。雌の1.67%以上の群で、用量相関性に血小板が増加しており、投与の影響であると考えられるが、病理組織学的な変化は認められず、毒性学的意義は少ないと考えられる。
     血液生化学的検査において、検査項目のなかに散発的な変化がみとめられるものもあるが、用量相関性は認められず、病理組織学的検索においても毒性を示す所見は認められなかった。本試験における無毒性量は、雄1.67%、雌0.56%と考えられる。1)
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1637WP2urA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて染色体異常試験を行った結果、短時間処理法(-S9mix及び+S9mixにおいて試験用量に依存した染色体構造異常の誘発が認められた。3)
     マウスの骨髄を用いた小核試験は、ガイドラインで認められている限界用量である 2000 mg/kg まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4
     従って、in vitroで観察された染色体異常誘発性は、十分高用量まで検討されたげつ歯類を用いる小核試験で確認できなかったことから、生体にとって特段問題となるものとは考えられない。

    (引用文献)
    1. 廣瀬善信:厚生労働科学研究補助金、岐阜大学医学部付属病院
    2. 兒嶋昭徳:平成13年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3. 望月信彦:平成13年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
    4. 野口忠:厚生科学研究補助金、日本バイオアッセイ研究センター


    カキ色素

    1.食品添加物名
     カキ色素(カキの果実から得られた、フラボノイドを主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     カキノキ科カキ(Diospyros kaki THUNB.)の果実を発酵後、焙焼したものより、温時含水エタノールで抽出して得られたもの、又は温時弱アルカリ性水溶液で抽出し、中和して得られたものである。主色素はフラボノイドである。赤褐色を呈する。

    3.主な用途
     着色料

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     SDラットを用い、検体濃度を1.262.55.0%となるように調整し、混餌投与にて 90 日間反復経口投与試験を実施した。その結果、全試験期間において死亡動物は認められず、体重、摂餌量、血液化学検査及び病理学的検査において、被験物質による影響は認められなかった。
     一般状態で、黒色調便の排泄が全ての投与群で認められたが、被験物質の糞中排泄に伴う着色糞と考えられ、毒性学的意義のないものと判断した。血液学的検査で白血球数の有意な減少が5.0%投与群の雄に認められたが、軽度のものであり、白血球百分率にも差がなく、リンパ系器官の病理学的検査においても被験物質の影響は認められないことから、生理学的範囲内の変動と考えられる。
     無毒性量は、雄雌とも5.0%と推定される。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98,TA100)を用いた復帰突然変異原性試験は、代謝活性化の有無に係わらず、His+復帰コロニーを誘発しなかったことから(最高用量5000 mg/plate)、陰性と判断した。2)
     哺乳類培養細胞(CHL)を用いた染色体異常試験は、染色体構造異常を誘発した。3
     マウス(ICR)を用いた小核試験はいずれの用量においても小核誘発性はないと結論された。4)

    (引用文献)
    1.及び2. 企業データ
    3. 食品添加物の変異原性試験成績(その6)
    4. 食品添加物の変異原性試験成績(その9)
    5. 厚生省等による食品添加物の変異原性評価データシート


    ガストリックムチン

    1.食品添加物名
     ガストリックムチン(ほ乳類の胃粘膜から得られた、ムコ多額類を主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     ほ乳類(羊、豚等)の胃粘膜を、酵素で消化した後、上澄み液より、エタノールで沈殿させて得られたものである。主成分はムコ多糖類である。

    3.主な用途
     製造用剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットに検体 0.030.1260.52%の濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、体重及び摂餌量に変化は認められなかった。
     血液学的検査及び血液生化学的検査及び臓器重量において、対照群に比べ散発的な項目で有意差が認められたが、軽微な変化であり、用量相関性がないことなどから毒性学的意義が低いと考えられる。肉眼的観察及び病理組織学的検査において、特異な変化は認められなかった。以上から、2%群は毒性を発現しない用量と考えた。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537WP2urA/pKM101)を用いた復帰突然変異原性試験で、TA1535 に対し S9mix非存在下において溶媒対照の1.5倍以上の His +復帰コロニーを誘発し、再現性も認められた。複数回の試験により、用量依存傾向が示されたことから疑陽性とした。2)
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて染色体異常試験及び小核試験を行った。S9mix非存在下、1.25mg/mlで染色体異常(染色分体ギャップ、染色分体切断、染色分体交換)が誘発された。また、小核試験でもS9mix非存在下、1.25mg/ml で陽性を示した。3)これよりも高濃度は細胞毒性を示すため染色体異常も小核も解析ができない。また、いずれもS9mixの添加により抑制された。
     マウス(ddy、雌、各用量 5 )に水溶液を1及び 2g/kg用量で2回強制経口投与し、骨髄小核試験を行った。いずれの用量においても小核を有する多染性赤血球の頻度等に有意な増加は認められず、陰性であった。4

    (引用文献)
    1. 東府義之:平成13年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、広島大学
    2. 兒嶋昭徳:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3. 林真:平成11年度食品添加物安全性再評価等の試験、国立衛生試験所安全性生物試験研究センター変異遺伝部
    4. 蜂谷紀之:平成11年度食品添加物安全性再評価試験、秋田大学


    クーロー色素

    1.食品添加物名
     クーロー色素(ソメモノイモの根から抽出して得られたものをいう。)

    2.基原・製法・本質
     ヤマノイモ科ソメモノイモ(Dioscorea matsudai HAYATA)の根より、熱時水、弱アルカリ性水溶液若しくはプロピレングリコールで抽出したもの、又は室温時含水エタノールで抽出して得られたものである。赤褐色を呈する。

    3.主な用途
     着色料

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344/DuCrj ラットを用いたクーロー色素(色価 30、ブロピレングリコール、塩化カリウム、塩素、カリウム及びナトリウムをそれぞれ79.95.80.81.62及び0.06%含有)の混餌(0Vhiecle0.51.5及び5.0%)投与による 90 日間反復投与試験を行った。その結果、いずれの群においても、病理組織学的検査を含む検査結果に、被験物質投与に起因する変化は認められない。無毒性量は 5.0 %(:2993 mg/kg/day、雌:3376 mg/kg/day)と考えられる。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537TA1538)を用いた復帰突然変異試験の結果は、TA1537 株に対して 4.8 倍の His+復帰変異コロニーを誘発(-S9mix200 ml/plate)し、かつ濃度依存性を示したため、陽性と判断される。2) しかし、S9mixの添加により、変異原性は消失した。
     哺乳類培養細胞(CHL)を用いた染色体異常試験の結果は、S9mixの有無に係わらず染色体構造異常を持つ細胞および倍数性異常細胞の出現頻度に有意な増加は認められないことから、陰性と判断された。3
     マウス(ICRSPF、雄、各用量6)に、50010002000mg/kg(0.5%CMC水溶液に懸濁)2回強制経口投与し、骨髄の小核試験を行った。結果は陰性と判断される。4

    (引用文献)
    1. 井上 :平成9年度食品添加物試験検査、国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター
    2. 宮部正樹:平成7年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3及び4. 栗田年代:平成7年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、財団法人残留農薬研究所


    コメヌカ油抽出物

    1.食品添加物名
     コメヌカ油抽出物(米ぬか油から得られた、フェルラ酸を主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     イネ科イネ(Olyza sativa LINNE)の種子より得られる米ぬか油の不けん化物より、エタノールで抽出して得られたものである。有効成分はフェルラ酸である。

    3.主な用途
     酸化防止剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットを用い、0.060.2514%の濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を実施した。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、体重及び摂餌量に変化は認められなかった。血液学的検査及び血液化学的検査では、散発的な検査項目で有意差が認められたが、その変動範囲はごく軽度で生物学的に正常範囲であり、用量相関性も認められない点などから毒性学的意義は乏しいと考えられる。剖検による肉眼的検査及び病理組織学的検査においても毒性学的に有意な変化は認められなかった。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537WP2urA/pKM101)を用いた復帰突然変異原性試験は 5000mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無に関わらず、いずれも陰性であった。2)
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験は、代謝活性化系の有無に係わらず5000 mg/plateまで染色体異常を示さなかった。3
    マウスを用いた骨髄の小核試験は 2000 mg/kg まで試験されており、いずれの用量においても小核誘発性は認められなかった。4

    (引用文献)
    1. 神谷研二:厚生労働科学研究費補助金、広島大学原爆放射線医科学研究所
    2. 野口忠:厚生科学研究費補助金、日本バイオアッセイ研究センター
    3及び4. 本間正充:厚生科学研究費補助金、国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部


    サバクヨモギシードガム

    1.食品添加物名
     サバクヨモギシードガム(サバクヨモギの種皮から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     キク科サバクヨモギ(Artemisia halodendron TURCZ. ex BESS., Artemisia ordosica KRASCHEN., Artemisia sphaerocephala KRASCH)の種子の外皮を、脱脂、乾燥して得られたものである。主成分は、a-セルロースを基本骨格に持つ、中性多糖類及び酸性多糖類である。

    3.主な用途
     製造用剤、増粘安定剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットの雌雄を用い、0.51.55%の濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を行ったところ、毒性を示唆するような変化は認められなかった。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537TA1538)を用いた復帰突然変異原性試験は、代謝活性化の有無に関わらず、いずれも陰性であった。2
    哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験は、代謝活性化系の有無に係わらず染色体異常を示さないと考えられる。3
     マウス(ddy 系、雄、16)にサバクヨモギシードガムの水溶液を強制胃内投与を2回実施した。最高用量として 760mg/kg(これより高濃度ではペースト状になり投与不可)まで試験されたが、いずれの用量においても骨髄における小核誘発性は認められなかった。4

    〔引用文献〕
    1. 井上達:平成10年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター
    2. 宮部正樹:平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3. 祖父尼俊雄:平成9年度食品添加物安全性再評価等の試験、国立衛生試験所変異遺伝部
    4. 蜂谷紀之:平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、秋田大学


    シソ抽出物

    1.食品添加物名
     シソ抽出物(シソの種子又は葉から得られた、テルペノイドを主成分とするものをいう。)

    2.起原、製法、本質
     シソ科シソ(Perilla crispa TANAKA)の種子又は葉より、酸性水溶液又は温時含水エタノールで抽出したものから得られたものである。主成分はテルペノイドである。

    3.主な用途
     製造用剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344系ラットを用いた 2.5510%の濃度での飲水投与による 90日間反復投与において、5%以上の投与群で飲水量が増加したが、これはシソ抽出物に含まれているショ糖の影響による可能性が示唆された。また、雄の10%群で増加抑制が認められ、血液学的検査では雄の 5%群以上でWBCの増加がみられ、雄の全投与群でSegが減少し、Lymph が増加したが、毒性学的に意義のある変化とは考えられない。
     血清化学的検査では、TCAlbTP 等の増加が認められたが、無処置ラットの背景データ範囲内であり、特記すべき病理学的変化が確認されなかったことから、投与に起因するとは見なされない。臓器重量では雄の10%群で肝臓と心臓の相対重量の増加が、雌の5%群以上で肝臓の絶対・相対重量および雌の全投与群で心臓の絶対・総体重量の増加が認められたが、いずれも病理学的に臓器障害性を示す変化が認められなかったことから、毒性とは見なされない。以上より、本試験においては何ら投与に起因する毒性変化は認められなかったことから、無毒性量は雄で 10%(109.6mg/kg/day)、雌で 10%(86.7mg/kg/day)と考えられる。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1635TA1537TA1538)を用いた復帰突然変異原性試験は S9mixの有無にかかわらず、陰性であった。(最高用量200 ml/p1ate) 2
     哺乳類培養細胞(CHL)を用いた染色体異常試験は S9mix の有無にかかわらず、5mg/ml の濃度まで染色体構造異常及び倍数性異常の誘発性は認められず、陰性であった。3
     マウス(ICR SPF、雄、各濃度6)を用い、50010002000mg/kg(0.5%CMC水溶液)2回、強制経口投与した。骨髄の小核試験はいずれの用量においても多染性赤血球の頻度等に有意な増加は認められず、陰性である。4

    (引用文献)
    1. 広瀬雅雄:平成8年度食品添加物規格基準設定等試験検査、国立医薬品食品衛生研究所病理部
    2. 宮部正樹:平成8年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3及び4. 栗田年代:平成8年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人残留農薬研究所


    5'-シチジル酸

    1.食品添加物名
     5'-シチジル酸

    2.基原、製法、本質
     酵母(Candida utilis)の菌体より、食塩存在下熱時水で抽出した核酸を酵素で加水分解後、分離して得られたものである。成分は5'-シチジル酸である。

    3.主な用途
     強化剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344系ラットを用いて、検体を 0.060.2514%の濃度で飼料に混入し、90 日反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、体重及び摂餌量に変化は認められなかった。血液学的検査、血清生化学的検査及び臓器重量変化では、散発的な検査項目で有意差が認められたが、ごく軽度の変化であり、生物学的に正常値範囲である点、用量相関性が認められない点、及び病理組織学的検査では相応する変化は認められないことから、毒性学的意義は乏しい変化と考えられた。以上から、5'-シチジル酸の毒性は極めて低いものと考えられた。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537WP2urA/pKM101)を用いた復帰突然変異原性試験は、5000 mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無に関わらず、いずれも陰性であった。2)
     哺乳類培養細胞〔CHL/IU〕を用いた染色体異常試験は、短時間処理では代謝活性化系の有無にかかわらず、構造異常及び倍数性異常は認められなかった。また、S9mix非存在下の長時間処理でも陰性であった。(最高用量3232 mg/ ml(10mmol)) 3
     マウス(ICR 系、SPFCrj-CD-11 5 )5'-シチジル酸を水に懸濁し、強制胃内投与を2回実施した。2回投与から 24時間後に骨髄を採取し小核試験を行った。限界用量である 2000 mg/kg x 2回まで試験されており、いずれの用量においても小核を有する多染性赤血球の頻度等に有意な増加は認められず、陰性であった。4

    (引用文献)
    1. 神谷研二:平成12年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、広島大学
    2. 兒嶋昭徳:平成12年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3. 益森勝志:財団法人食品農医薬品安全性評価センター
    4. 岩本毅:平成12年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人残留農薬研究所


    精油除去ウイキョウ抽出物

    1.食品添加物名
     精油除去ウイキョウ抽出物(ウイキョウの種子から得られた、グルコシルシナピルアルコールを主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     セリ科ウイキョウ(Foeniculum vulgare LINNE)の種子を水蒸気蒸留した残遭より、熱時水で抽出し、濃縮して得られたものである。主成分は4-O-a-D-グルコシルシナピルアルコールである。

    3.主な用途
     酸化防止剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットを用い、検体濃度を 0.060.2514%となるように調整し、混餌投与にて 90 日間反復経口投与試験を実施した。その結果、いずれの投与群においても途中死亡例がなく、体重増加抑制も認められず、また、組織学的に明らかな毒性所見も認められなかった。1)
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537TA1538)を用いた復帰突然変異原性試験は、20mg/plate まで試験されており、TA98 に対し、+S9mix の条件において、溶媒対照の2倍以上のHis+復帰コロニーを誘発し、濃度依存性及び再現性が認められたことから陽性と判断した。2
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験は、最高用量5mg/mlまで被験物質投与に起因する染色体異常の明確な誘発は認められなかった。 3
     マウスを用いた小核試験は最高投与量(3g/kg)まで試験されており、いずれの用量においても小核誘発性はないと結論された。4)
     細菌を用いる復帰突然変異試験において陽性と報告されているが、復帰変異頻度が対照群の2倍以上となるのは TA98 において、+S9mix の条件下、10mg/プレート以上の用量においてのみである。従って、遺伝子突然変異誘発性を否定することはできないが、ガイドラインで認められている限界用量以上での反応であり、この報告の結果の解釈に問題があり、変異原性は無いか、仮に変異原性があったとしても非常に弱いものであり、通常の使用法では、生体にとって問題となる遺伝毒性は発現しないものと考えられる。

    (引用文献)
    1. 神谷研二:平成11年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、広島大学
    2. 宮部正樹:平成10年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3. 祖父尼俊雄:平成10年度食品添加物安全性再評価等の試験、国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部
    4. 蜂谷紀之:平成10年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、秋田大学


    納豆菌ガム

    1.食品添加物名
     納豆菌ガム(納豆菌の培養液から得られた、ポリグルタミン酸を主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     納豆菌(Bacllus subtilis)の培養液より、分離して得られたものである。主成分はポリグルタミン酸である。

    3.主な用途
     増粘安定剤、製造用剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F334/DuCrj系ラットを用いた混餌(0.180.551.665 %)投与による 90 日間反復投与試験において、被験物質に起因すると思われる重篤な変化は認められず、最高用量の5%でも病理組織学的な毒性学的変化はみられなかったため、無毒性量は 5 %(雄で 2616.4mg/kg/day、雌では 2727.6 mg/kg/day)と考えられる。1)
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537TA1538)を用いた復帰突然変異試験は 20mg/plateまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず、陰性と判断される2)。
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験では、短時間処理、代謝活性化系の存在下において限界用量の2.5mg/ml処理により6%の細胞に異常が観察されたが、他の処理条件では全く染色体異常を誘発しなかった。3)
     マウス(ddy、雄、各用量 6 )を用いた骨髄小核試験は最高用量(3000mg/kg x 2)まで試験されており、いすれの用量においても小核誘発性は認められない。4)
     従って、ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験での陽性結果は、非常に高用量でのみの反応であること、異常の出現頻度が高くないこと、十分高用量まで検討された小核試験において陰性であったことを考え合わせると、生体に対する危惧すべき毒性影響はないものと考えられる。

    (引用文献)
    1. 広瀬雅雄:平成8年度食品添加物安全性再評価試験、国立医薬品食品衛生研究所病理部
    2. 宮部正樹:平成8年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3. 祖父尼俊雄:平成8年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、国立衛生研究所変異遺伝部
    4. 蜂谷紀之:平成8年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、秋田大学医学部


    ニガヨモギ抽出物

    1.食品添加物名
     ニガヨモギ抽出物(ニガヨモギの全草から得られた、セスキテルベンを主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     キク科二ガヨモギ(Artemisia absinthium L.)の全草より、水又は室温時エタノールで抽出して得られたものである。主成分はセスキテルペン(アブシンチン等)である。

    3.主な用途
     苦味料等

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     Wistar ラットを用いた混餌(0.1250.52 %)投与による 13 週間の反復投与試験において、いずれの投与群においても死亡動物は認められず、体重増加量、血液学的及び血清学的検査、臓器重量測定及び病理組織学的検査において被験物質投与に起因した変化は何ら認められない。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537WP2urA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000 mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2
     ほ乳類培養細胞(CHL/IU)を用いる染色体異常試験は、5000 mg/plateまで試験されており、短時間処理法の代謝活性化のない条件下において、用量依存性に染色体異常の誘発が認められた。3
     マウスを用いた小核試験は、2000mg/kg まで試験されており、いずれの用量においても小核誘発性は認められなかったことから、陰性と判断した。4
     ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験において陽性結果が報告されているが、十分高用量まで試験したげっ歯類を用いる小核試験において陰性であったことを考慮すると、in vitroで見られた染色体異常誘発性が生体内で発現するとは考え難い。従って、本剤は生体において問題となる遺伝毒性を発現するものではないと考える。

    (引用文献)
    1. 三森国敏:厚生労働科学研究補助金、東京農工大学農学部
    2. 松島泰次郎:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、日本バイオアッセイ研究センター
    3.及び4. 望月信彦:食品添加物規格基準作成等の試験検査、()食品農医薬品安全性評価センター


    フクロノリ抽出物

    1.食品添加物名
     フクロノリ抽出物(フクロノリの全藻から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)

    2.基原・製法・本質
     フノリ科フクロノリ(Gloiopeltis furcata POSTEL et RUPR)の全藻より、熱時水で抽出して得られたものである。主成分は多糖類である。

    3.主な用途
     増粘安定剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344/DuCrj ラットを用いた混餌(0.51.55.0%)投与による 90日間の反復投与試験において、試験期間を通して一般状態ならびに体重では雌雄とも群間に明らかな差は認められない。摂餌量は雌雄とも1.5および5.0%群で増加傾向がみられたが毒性学的な意味を持つ変化とは考えられない。血液学的検査では群間に明らかな差は認められない。血液生化学的検査では雄の 6.0%群で TPT-Cho およびALP の有意な減少、雌の1.5および5.0%群でGPTの有意な増加が認められた。また、雄で肝臓実・比重量の有意な減少がみられた。しかし、これらの変化は統計学的には有意であるが背景データの範囲内であった。さらに、病理組織学的検査においては5.0%投与群で投与に起因した病変の誘発は認められなかった。以上の結果よりフク口ノリ抽出物の無毒性量は5.0%(:3362 mg/kg/日、雌:3594 mg/kg/)と考えられる。1)
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537TA1538)を用いた復帰突然変異試験では、S9mixの有無に係わらず試験菌株に対し復帰変異コロニ一数の誘発は認められず、変異原性は陰性と判断された。 2) (最高用量20mg/plate)
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験では、S9mixの有無に係わらず、染色体構造異常及び倍数異常を有する細胞の有意な増加は認められず、染色体異常誘発性を有さないものと判断された。3) (最高用量250 mg/mlの用量でわずかに沈殿を生じた。)
     マウス(ICR SPF、雄、16) 50010002000mg(オリーブ油に溶解)2回、強制経口投与した小核試験では、いずれの用量においても小核を有する多染性赤血球の頻度に有意な増加は認められず、小核誘発性は陰性と判断された。4)

    (引用文献)
    1. 井上達:平成8年度食品添加物試験検査、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター
    2. 宮部正樹:平成8年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3及び4. 栗田年代:平成8年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、財団法人残留農薬研究所


    マスチック

    1.食品添加物名
     マスチック(ヨウニュウコウの分泌液から得られた、マスチカジエノン酸を主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     ウルシ科ヨウニュウコウ(Pistacia lentiscus LINNE)の分泌液より、低沸点部を蒸留により除去し、熱時エタノールで抽出し、エタノールを留去して得られたものである。主構成成分はマスチカジエノン酸である。

    3.主な用途
     ガムベース

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットに検体 0.220.672%の濃度で飼料に混入し、90 日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態及び摂餌量に変化は認められなかった。雄2%群及び雌 0.67%群以上で体重増加抑制が認められた。
     血液学的検査において、雄 2%群において白血球増加と血小板数増加が認められ、血液生化学的検査において、雄0.67%群以上でTP及びALB増加、CRN減少が、雄2%群で Ca及びALP増加、TG減少が認められた。雌2%群で TP増加、BUN増加、g-GT増加が、0.67%群以上で TC増加が、0.22%群以上でP減少が認められた。臓器重量としては、肝臓の実重量が雌雄とも0.67%群以上で増加し、相対重量は雄0.22%群以上、雌0.67%群以上で増加した。病理組織学的検索では、雄の肝臓に小肉芽腫及び髄外造血、腎臓に好塩基性尿細管及び硝子滴の沈着、心筋に軽度の炎症性細胞浸潤、雌では肝臓に小肉芽腫及び髄外造血、腎臓に鉱質沈着、心筋に軽度の炎症性細胞浸潤が観察されたが散発性のものであり、群間に差は認められなかった。
     無毒性量は雄0.22%以下、雌0.22%と考えられる。1)
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537WP2uvrA)を用いた復帰突然変異試験は、5000 mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、細胞毒性の認められる濃度まで染色体異常試験を行った結果、代謝活性化系存在下においてのみ統計学的に有意な染色体異常の誘発が認められたが、その出現頻度は6%と低く、また、細胞毒性の認められる用量のみでの反応であった。3
     マウスの骨髄を用いた小核試験は、限界用量である 2000mg/kg まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4
     従って、in vitroで認められた染色体異常誘発性はin vivo試験系においては確認されず、生体にとって特段の問題となるものではないと考える。

    (引用文献)
    1. 鰐渕英機:厚生労働科学研究費補助金、大阪市立大学大学院医学研究科
    2. 安心院祥三:厚生科学研究費補助金、財団法人化学物質評価研究機構
    3及び4. 由中憲穂:厚生科学研究補助金、財団法人食品薬品安全センター


    ユッカフォーム抽出物

    1.食品添加物名
     ユッカフォーム抽出物(ユッカアラボレセンス又はユッカシジゲラの全草から得られた、サポニンを主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     ユリ科ユッカ・アラボレセンス(Yucca arborescens TREL.)又はユリ科ユッカ・シジゲラ(Yucca schidigera ROEZL ex Orlgies)の全草より、熱時水で、又は室温時~微温時含水エタノール又は含水イソプロピルアルコールで抽出して得られたものである。主成分はサポニン(サルササポニン等)である。

    3.主な用途
     乳化剤、製造用剤

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットに検体 0.10.313%の濃度で飼料に混入し、90 日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、体重及び摂餌量に変化は認められなかった。
    血液学的検査、血液生化学的検査及び臓器重量では、対照群に比べ種々の項目で有意差が認められたが、極軽微な変化であり、生物学的に正常値の範囲にあり、用量相関性も認められなかったことから毒性学的意義に乏しい変化と考えられた。病理組織学的検査では、毒性学的に記すべき変化は認められなかった。3
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537WP2urA)を用いた復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞(CHL/LU)を用いた染色体異常試験、マウスの骨髄を用いた小核試験が行われており、いずれも方法及び結果等問題となるような点は認められなかった。1
     更に、ラットに2000mg/kgのユッカフォーム抽出物を強制経口投与したin vivo/in vitro不定期DNA合成試験が行われており、陰性の結果が報告されている。従って、遺伝毒性はないものと考える。2

    (引用文献)
    1. 林真:厚生省等による食品添加物の変異原性評価データシート(昭和54年~平成10年度分)
    2. 望月信彦:平成12年度食品添加物規格基準等の試験検査、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
    3. 西村隆宏:平成9年度食品添加物再評価等の試験検査、広島大学


    ロシン

    1.食品添加物名
     ロシン(マツの分泌液から得られた、アビエチン酸を主成分とするものをいう。)

    2.基原、製法、本質
     マツ科マツ(Pinus palustris MILL.)の樹皮の分泌液より、低沸点部を蒸留により除去して得られたものである。主構成成分はアビエチン酸である。

    3.主な用途
     ガムベース

    4.安全性試験成績の概要
    (1)反復投与試験
     F344 ラットを用い、検体濃度を 0.030.1250.52.0%となるように調整し、混餌投与にて 90 日間反復投与試験を実施した。死亡や病理組織学的な毒性変化は認められなかったが、2.0%群では雌雄ともに、体重増加抑制と摂餌量の低下が認められた。また、血液学的検査、血液化学的検査及び組織重量測定において、多項目で有意な増加や減少が認められた。これらの変化の一部はロシンのテルペン臭による餌の忌避に起因すると考えられた。0.5%群では、雄で体重増加抑制が認められ、血液学的検査、血液化学的検査及び組織重量測定の一部の項目では2.0%と同じ変化が認められた。また、雌雄で、肝重量相対重量の増加が認められ、被験物質投与との関連性が示唆された。0.125%群以下では、幾つかの項目で有意差が認められたが、その変化は小さく、被験物質の毒性を意味する変化とは考えないこととした。無毒性量は、雌雄で0.125%と推定された。1
    (2)遺伝毒性試験
     細菌(TA98TA100TA1535TA1537TA1538)を用いた復帰突然変異原性試験は、5000 mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2
     哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験は、最高用量(5000mg/ml)まで試験されており、代謝活性化の有無に係わらず、被験物質投与に起因する染色体異常の明確な誘発は認められない。3
     マウスを用いた小核試験は、2000mg/kgまで試験されており、いずれの用量においても小核誘発性は認められなかったことから、陰性と結論された。4)
    従って、遺伝毒性はないものと考えられる。

    (引用文献)
    1. 渡辺敦光:平成10年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、広島大学
    2. 宮部正樹:平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
    3.及び4. 栗田年代:平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人残留農薬研究所

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