薬事・食品衛生審議会資料

 

平成13年01月11日

 

 

「遺伝子組換え食品及びアレルギー物質を含む食品に関する表示」 及び「指定検査機関の在り方」に関する食品衛生調査会の意見具申について - 別添3 アレルギー物質を含む食品に関する表示について

 
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(別添3)
アレルギー物質を含む食品に関する
表示について

報告
 
平成121130
 
食物アレルギーの実態及び誘発物質の解明に関する研究班

主任研究者 海老澤 元宏



1. はじめに
 近年、アレルギーをはじめとした過敏症を惹起することが知られている物質(以下「アレルギー物質」という。)を含む食品に起因する健康危害を未然に防止するため、表示による情報提供の要望が高まってきている。これらの問題を含め、食物アレルギーの実態及び誘発物質の解明に関する研究を厚生省の免疫・アレルギー研究事業において検討してきた。
 昨年度までの研究成果をもとに、食品衛生調査会表示特別部会は、平成12713日に「遺伝子組換え食品及びアレルギー物質を含む食品に関する表示について」の報告書を公表した。その中で、消費者の健康危害の発生を防止する観点から、食品衛生法においてもアレルギー物質を含む食品にあっては、それを含む旨の表示を義務付ける必要があるとの考えにより、表示義務化の必要性を提言している。
 そこで、実際に表示を義務化することにより生じる諸問題について、今年度から発足した「食物アレルギーの実態及び誘発物質の解明に関する研究班」(以下「研究班」という。)の中の「アレルギー物質を含む食品の表示に関する検討グループ」にて検討を行ったので、その内容について報告する。

2. 表示規定について
 報告書では、表示の方法を過去の健康危害などの程度、頻度を考慮して重篤なアレルギー症状を起因する実績のあった食品について、その原材料を表示させる「特定原材料名表示」方式とし、実状調査をもとに24品目の特定原材料を示している。
 しかし、24品目中でも実際のアレルギー発症数、重篤度等に差異があるため、法令で厳しく表示を義務付けるものと、通知で表示を奨励するものとに規定を分けることが現実的であると考え、以下のように分類することが適切であるとの結論に達した。

・厳しく法令で規定する特定原材料
 卵、乳又は乳製品、小麦については、症例数が多いこと、また、そば、ピーナッツについては症状が重篤であり、生命に関わることがあるため特に留意が必要であると考え、これら5品目を法令として定めるべきであると考える。
 なお、チーズに関しては牛乳とともに乳又は乳製品とするなどして1品目とすることが適切である。

・表示を奨励する特定原材料
 あわび、イカ、いくら、エビ、オレンジ、力二、キウイフルーツ、牛肉、クルミ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、リンゴ18品目については、アレルギー症状を引き起こすものの、症例が少ないか、先の5品目より少なく、また現段階では科学的知見が少ない品目もあることを考慮に入れ、厚生省から通知等により、関係者へ幅広く表示を奨励していくことが望ましいと考える。なお、これらは時代の変化とともに改訂されるものであり、研究班でもさらに実態調査・科学的研究を行い、新たな知見や報告による検討を行っていくものである。
 なお、ゼラチンに関しては、牛肉・豚肉由来であることが多く、これらは特定原材料であるため、既に表示することが必要であるが、パブリックコメントによる単独表示(「ゼラチン」としての表示)の要望も多いため、1品目として項目を立てることが望ましい。

3. アルコール類の取扱いについて
 アルコール類については、摂取時の反応がアレルギーによる反応かアルコールによる作用かの判断が難しく、現在の知見では検証が難しい。よって、今回は特定原材料表示を求めぬが、今後、新たな報告や事例を調査し検討していくこととする。また、牛乳の乳漿から製造される工業用アルコールについても、アレルギーを起こすという知見は得られていないので、アルコールと同様に表示は求めぬが、今後さらに検討していく必要がある。

4. 蒸留等の精製過程を経る食品について 
 一般に加工食品は、加熱・濃縮・ろ過・蒸留等、様々な製造・精製過程を経て最終製品となる。製造・精製過程においてアレルギー物質が変性することにより、アレルゲン性が減少、若しくは消滅する可能性が考えられる。しかし、全てのアレルギー物質を特定できているわけではなく、その物質のどの部分にアレルゲン性があるかの知見も少ないことにより、どの製造・精製過程を経ればアレルギーを引き起こす危険性がなくなるとは言い切れない。よって、今回は特定原材料表示を求めぬが、個々の食品についてさらに調査を行い、アレルゲン性の有無を科学的に判断する必要がある。
 ただし、過去の症例をみて、アレルギーを起こすことが明らかな加工食品については、表示により判別できるようにするべきである。

<個別例>
①「乳清(ホエイ:チーズの製造に際して得られる液体)」について
 ・乳清には蛋白が入っているので、アレルギーを起こすことが知られていることより、乳成分を含む旨の表示が必要である。
②「大豆油について
 ・大豆油については、使用した食品には可能な限り大豆油の表示をするべきであるが、大豆油でアレルギーを起こすとの明らかな知見を調査した上で、さらなる検討も必要である。
③「乳糖」について
 ・乳糖については、本来精製が完全であり、蛋白質の残存がなけれぱ発症しないと考えられ、乳糖と表示されるのであれば乳成分を含む旨の表示は必要ないと考えられるが、今後の調査で蛋白の残存の知見や症例が判明したとき再検討を行う。

5. 食品添加物について
 特定原材料由来の食品添加物であり、過去の症例により、アレルギー反応が起こることが明らかな添加物については、特定原材料が判別できるような表示を記する必要がある。また、特定原材料由来の食品添加物であっても、その成分を精製することによるアレルゲン性の変化が明らかとなってないものに関しては、今後科学的に検証する必要がある。しかし、原則としては特定原材料を用いて製造した添加物については、現時点で抗原性試験等によりアレルゲン性のないことが明らかである場合以外は、その特定原材料由来であるが判明できるような表示がなされることが望ましいと考える。
 アレルギー反応が起こることが明らかであり、特定原材料由来である旨の表示が必要な添加物の例として、リゾチーム、カゼインナトリウム、レシチン類がある。
 卵鼓カルシウム(焼成、未焼成)については、詳細を調査した例がないこと、また、大豆油から抽出したトコフェロール等、特定成分だけを抽出している場合のアレルゲン性の変化については明らかでないため、今回は表示は求めぬが、今後さらなる検討を要する。

6. 香料について
 香料については、単一物質ではなくほとんどのものが数十品目を徴量に調合することにより得られる混合物であり、配合割合が他に提示されることがなく、使用している香料に特定原材料を含むか否かを確認することは現状では困難である。
 よって、表示の必要性については今後の検討課題であり、現時点では基本的には「香料」と記載するのみで、特定原材料を記載する必要はない。但し、香気成分以外に法令や通知で定められる24品目を原材料としてつくられた副剤を使用している際には特定原材料を可能な限り表示することが望ましい。 .

7. 特定原材料の含有量が微量な場合の表示について
 食物アレルギーについては、人によっては極微量のアレルギー物質であってもアナフィラキシー症状を起こすこともあるので、その含有量に関わらず当該原材料を含む旨を表示する必要がある。
 よって、徴量でも特定原材料が含まれる場合は表示する必要があり、現在表示が免除されている食品添加物についても、表示をする必要がある。
 しかし、24品目の中にも重篤度等の差異があるため、法令で定める5品目については、最終製品にまで表示を行うこととし、ゼラチンを含めた通知の19品目については可能な限り表示するように努めることが望ましい。

8. 特定原材料の個々の範囲について
特定原材料となっている24品目の中には、対象となる範囲の判断が難しいものがある。なかでも卵については、鶏卵のみを示すのか、その他の鳥類の卵も含めるのかの判断が難しい。しかし、卵については交差反応が認められていることにより、鶏卵のみでなく、あひるやうずらの卵等、一般的に使用される卵についても表示の対象とするべきである。その他、えび、さけ等については、交差反応を調べた報告がないため、今後検討していく必要がある。
 現在ある科学的知見は、RASTにしろ、狭い項目しか調べていないので、特定原材料となっている品目については、それぞれの種や属等を限定した範囲でしかアレルゲン性の裏付けが得られない。よって、特定原材料については、今後さらなる研究により、アレルゲン性の交差反応の範囲等を調べていく必
要がある。

9. 読み替え表示について
 限られた表示スペースに特定原材料表示を行っていくことには限界がある。よって、その表記から使用されている特定原材料が連想(読み替え)できるような一般的(常識的)な表記なら認めてもよいのではないかと考えられる。しかしながら、漢字表記等、広く一般消費者が理解できないような表示方法となっては無意味であるので、一般消費者を対象に調査が必要である。

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