薬事・食品衛生審議会資料

 

平成10年12月03日

 

 

「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に適合していることの確認を行うことの可否に関する部会報告 - 別紙4

 
  
  
   
     
    
   
     
  
  
  
別紙4

 ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社から申請されたα-アミラーゼに係る「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に適合していることの確認を行うことの可否について


 ノボノルディスクバイオインダストリー株式会社から申請されたα-アミラーゼ(商品名「BSG-アミラーゼ」、以下「BSG-アミラーゼ」という。)について、「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」(以下「指針」という。)に適合した安全性評価がなされているか否かについて検討し、以下のような結果を得た。

1 申請された食品添加物の概要
 BSG-アミラーゼは、食品添加物の酵素の一つとして、でんぷん糖、発酵アルコール、パン等の製造過程に使用される。
 Bacillus licheniformis を宿主とし、 pUB110 をベクターとして用いて、Bacillus stearothermophilus のα-アミラーゼ合成遺伝子を挿入した組換え体を培養し、効率的にα-アミラーゼを生産するものである。


2 指針の適用の可否について
 BSG-アミラーゼについては、α-アミラーゼとしての特性(分子量、至適温度、至適pH、反応特異性)を有することを示す資料の検討を行い、既存の食品添加物であるα-アミラーゼと同等とみなし得るものと考えられる。また、BSG-アミラーゼについては、組換え体自体は食品に含有されない。以上の点から、BSG-アミラーゼについては、指針の適用範囲内であると判断できる。


3 指針への適合性
 BSG-アミラーゼの指針への適合性については、指針の第2章第1~第3及び第3章第1に従って申請資料の検討を行った。


【製造過程に関して】

(1)組換え体等の製造方法 (1)組換え体の利用目的及び利用方法
 Bacillus stearothermophilus のα-アミラーゼ合成遺伝子をpUB110をベクターとして用いて、Bacillus licheniformis に導入することにより、α-アミラーゼを効率的に生産する。生産されたα-アミラーゼは、食品添加物の酵素の一つとして、でんぷん糖、発酵アルコール、パン等の製造過程に使用される。


(2)宿主
 Bacillus licheniformis CA63株より紫外線照射、N - メチル - N' - ニトロソグアニジンで誘導し、胞子形成能を欠失した突然変異株DN2717株を使用している。DN2717株は、嫌気的生育、硝酸還元、でんぷんの分解等の検査項目について、Bacillus licheniformis 基準株 ATCC14580株と比較検討した結果、Bacillus licheniformis と同定されている。Bacillus licheniformis は、土壌中や食品中に存在しているものであり、「国立予防衛生研究所病原体等安全管理規定」、米国国立衛生研究所(NIH)の「DNA分子組換えに関する研究のガイドライン」(以下「NIHガイドライン」という。)等でも非病原性の、最も危険性の少ない微生物として分類されている。また、マウスの腹腔内に単回投与した結果、LD50は、0.8×1011cells/kg体重超であった。


(3)ベクター
 Staphylococcus aureus の薬剤耐性菌から得られたプラスミドpUB110は、制限酵素による切断地図、塩基配列が明らかにされており、既知の有害塩基配列を含まないことが示されている。また、NIHガイドライン等で pUB110は、Bacillus subtilisを宿主とする場合、伝達性に乏しく、安定に定着することが認められているが、Bacillus licheniformis を宿主とする場合については、特に記載はない。なお、pUB110は、カナマイシン及びブレオマイシン系抗生物質耐性の形質を与える遺伝子を含む。



(4)導入遺伝子関連

a.供与体
 組換え体に導入されるα-アミラーゼ合成遺伝子は、Bacillus stearothermophilus DN1792株に由来する。Bacillus stearothermophilus は、「組換えDNA実験指針」においてP1レベル(設備等に関し最も簡素なレベル)の封じ込め対象に分類されており、また国立予防衛生研究所の「病原体等安全管理規定」においてバイオセーフティーレベル1(ヒトに疾病を起し、或は動物に獣医学的に重要な疾患を起す可能性のないもの)として分類されている。


b.導入遺伝子
 Bacillus stearothermophilus DN1792株に由来するα-アミラーゼ合成遺伝子(1.9kb)、Bacillus stearothermophilus に由来するプロモーター遺伝子(176bp)、Bacillus amyloliquefaciens に由来するプロモーター遺伝子 (326bp) を含むプラスミド (5.9kb) が pPL1117として導入される。この導入遺伝子の塩基配列は明らかにされており、既知の有害塩基配列は含まれていない。


(5)組換え体
 組換え体は、α-アミラーゼ産生性及びカナマイシン耐性を新たに獲得する。組換え体をマウスの腹腔内に単回投与した結果、LD50は、1.4×1011cells/kg体重超であった。
 また、組換え体の外界における増殖性については、(1)栄養培地上の増殖試験では、22℃での増殖は良好だが、16℃では生育が遅く、10℃では増殖しない、(2)塩化ナトリウムを加えた飲料水中では、20℃では増殖せず、14日間生存し、10℃では増殖せず、6日間以上の生存もない、(3)滅菌した土壌中では、20日間で生菌数が108個/gから106個/gに減少したことが示されている。
 生産過程で酵素より分離される組換え体は、煮沸し、pH11に1時間保つことにより不活性化される。


(2)組換え体以外の製造原料及び製造器材

(1)マスターセルバンクの作成及びその管理方法
 マスターセルバンクは、組換え体より選択した生産菌株を培養し、複数のバイアルに封入したものであり、微生物汚染のないこと、生菌数が適切であること等の品質確認をした後、-80℃で凍結保存される。生産にあたっては、マスターセルバンクからワーキングセルバンクを作成し、微生物汚染のないこと、生菌数が適切であること等の品質確認の検査後、培養を行っている。


(2)製造工程
 組換え体を前培養したものを発酵槽で培養してBSG-アミラーゼを産生させた後、除菌し、安定化させ製品化する。なお、発酵原料は、120~125℃で45~90分間の滅菌処理が行われたものである。


(3)生産物の精製
 生産菌の培養物はケイソウ土を用いたろ過、限外ろ過、除菌ろ過の精製工程を経て、組換え体等不純物が除去され製品化される。本製品は、不純物含量、抗菌活性等を規定したFAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)の食品加工用酵素の規格及び米国FCCの規格に適合している。


【生産物に関して】

(1)組換え体の混入を否定する資料
 組換え菌体が混入していないことは、組換え菌体のカナマイシン耐性及びアミラーゼ産生性を利用して、カナマイシンを含む培地で菌体の生育の可否及び澱粉を含む培地でのアミラーゼの産生性により確認している。
また、生産物中に組換え体由来のDNAが混入していないことは、ドットブロットハイブリダイゼーション法により確認したところ、検出されなかった(検出限界は10μg/ml)。


(2)製造に由来する不純物の安全性に関する資料
 BSG-アミラーゼについては、ラットを用いた13週間の反復投与試験、変異原性試験等が行われている。具体的には、ラットを用いた強制経口投与(0.24、1.20及び 6.00g/kg/day)による13週間の反復投与では、6.00g/kg 投与群において、胃壁の肥厚、胃腺の鉱質化等が認められている。無毒性量は、1.20g/kg/dayと考えられている。また、復帰突然変異試験並びにヒト培養リンパ球及びマウスリンパ腫細胞での染色体異常試験は、陰性と認められている。


(3)含有量の変動により有害性が示唆される常成分の変動に関する資料
 BSG-アミラーゼは、精製タンパク質であり、有害成分は認められなかった。

4.指針適合性に関する結論
 申請に際して提出された資料に関する以上の知見からすると、BSG-アミラーゼについては、指針に沿って安全性評価が行われていると判断できる。

  
  
            
   
 
 
  


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