国会関係

 

質問第1号

平成8年12月12日

参議院議長

斎藤十朗

殿

 

 

参議院議員竹村泰子君提出小麦と小麦粉の安全性に関する質問に対する答弁書

 

小麦と小麦粉の安全性に関する質問主意書
右の質問主意書を国会法第74条によって提出する。
平成8年12月12日

竹村泰子

小麦と小麦粉の安全性に関する質問主意書


 本質問主意書は、わが国に流通する内外の小麦および小麦粉に関する諸問題を取り上げる。小麦粉には薄力粉、中力粉、強力粉の3タイプがあり、それぞれの用途で国民が日々食している。
 ところが3タイプの小麦粉は、産地、品種、天候等の条件で品質が安定せず、品質のぶれを「調整する」ため、食品添加物や、栽培中や収穫後の小麦への農薬投与等、化学物質が使用されている。また例えば、強力粉であれば世界のパン業界が争奪戦を演じることで需給不安を現出させ、食糧問題をより複雑化させているように見える。
 本質問主意書では、小麦および小麦粉に関する問題の所在を明かにすることに重点を置く。そのため政府関係機関には多大の労力を強いることになってしまうが、世界最大の農産物である小麦(小麦粉)が孕む諸問題を、大消費国であるわが国で取り上げ、その打開策の解明をめざすという旗幟を鮮明にすべく答弁の労をおとり頂きたい。

1.食品添加物「臭素酸カリウム」の危険性について
 強力粉を使用するパン業界では、強力粉の品質のぶれを補い、パンの品質を安定させるため、「小麦粉処理剤」として臭素酸カリウムが世界的に使用されていた。ところがこの事実に警鐘を鳴らす動きが出ており、ここではそれを取り上げる。

1 1982年、厚生省がん研究助成金による研究で、臭素酸カリウムに発癌性の疑いがあるという中間報告がなされた。この中間報告後、厚生省は最終報告の早急な提出を求めたが、その最終報告の骨子を説明されたい。
2 1983年、国立衛生試験所食品添加物部長谷村顕雄氏は、雑誌「NEWFOOD INDUSTRY」NO.6 VOL.25において「食品添加物の指定と削除~特に発癌性の評価について」という論文を発表し、臭素酸カリウムの強い発癌性を指摘しているが、その内容を説明されたい。
3 この物質は、自然界にどの程度存在しているか説明されたい。
4 食品添加物としての臭素酸カリウムの年間生産量、並びに国内での使用量の推移を過去15年間にわたって示されたい。
5 臭素酸カリウムは、人体に摂取された場合、発癌性があるために危険であると認識している。食品添加物「臭素酸カリウム」は、食品中に一切残留してはいけないというのがわが国の姿勢であると理解しているがいかがか。

2.臭素酸カリウムについての諸外国の現状について
 諸外国では後述のように「小麦粉処理剤」として臭素酸カリウムを禁止する国が出現している。なぜ禁止したのかは、わが国としても緊急に知る必要があると考えるため、以下のとおり質問する。事は、日々のわれわれの食卓の問題である。

1 FAO/WHO合同食品添加物専門家委員会(以下、JECFAと略)の活動内容、および設置理由について簡潔に説明されたい。
2 一日摂取許容量(ADI)について説明されたい。
3 JECFAでは、ADIの設定されている食品添加物のリストをA(1)リスト、A(2)リストとして発表していると聞くが、これらについて説明されたい。
4 最新のA(1)、A(2)リストはいつ発表されたものか。また最新版に記載されている食品添加物は何品目あるか。
5 1994年末現在のA(1)、A(2)リストに臭素酸カリウムは指定されていないが、削除された年次、および削除理由を明らかにされたい。
6 1995年2月14日~23日、第44回JECFAがローマで開催された。この会議においては、小麦粉処理剤として使用された臭素酸カリウムがパン製品中に残留しているとの報告がなされ、改めて遺伝毒性を示す発癌物質である臭素酸カリウムの使用禁止の勧告がなされているが承知しているか。この報告文書の概要を示し、説明されたい。またこの報告の根拠となった分析技術を調査のうえ説明されたい。
7 英国農水省食品安全監督局が発行する定期刊行物「食品添加物と汚染」(FOOD ADDITIVES AND CONTAMINANTS)の1994.VOL11 NO.6 633-639によれば、イギリス政府は、1990年にパン製造時における臭素酸カリウムの使用を全面的に禁止している。この事実を承知しているか。1990年、イギリス政府がこのような措置をとるにいたった経緯を説明されたい。
 EU(欧州連合)でも臭素酸カリウムの使用を禁止していると聞くが、禁止していれば禁止の年次、および禁止理由(測定方法等も含む)を説明されたい。
8 アメリカでは、臭素酸カリウムの使用を禁止としている州と、使用を認めている州があると聞くが承知しているか。使用禁止措置をとっている州名を説明されたい。またそれらの州政府が禁止措置をとるにいっった経緯を説明されたい。
9 2の7のイギリス政府の禁止措置と、2の8で指摘した事態に対する政府見解を表明されたい。

3.臭素酸カリウムについてのわが国の現状について
 4で触れる通り、1984年、世界に先駆けて「臭素酸カリウムの規制措置」を打ち出したわが国も、前述の諸外国での「使用禁止措置」に対する反応は、以下のとおり鈍いを言わざるを得ない。
 わが国で使用継続状態が続いているのはなぜか、という疑問は国民が等しく持つものであると考えるため、以下質問する。

1 JECFAの研究成果はわが国の食品行政に反映されるか。反映されるとすればそのシステムを説明されたい。
2 わが国の食品衛生調査会の性格、設置趣旨を簡潔に説明されたい。
3 食品衛生調査会の現在の構成メンバーを、各人の所属を含め明かにされたい。
4 食品衛生調査会毒性・添加物部会(以下、合同部会と言う)の性格、および設置趣旨を説明されたい。
5 合同部会の現在の構成メンバーを、各人の所属も含め、説明されたい。また、部会長は誰か。
6 合同部会の審議課題は誰が決定するか。
7 JECFAが適宜改定しているA(1)、A(2)リストを検討し答申することは合同部会の任務と認識しているがいかがか。
8 2の6から2の8までで指摘した事実について、合同部会での議事録を提出されたい。
9 合同部会での臭素酸カリウムに関する討議が前項以外にあれば、その諮問内容や発言者を含め、議事録を公開されたい。
10 臭素酸カリウムを食品添加物リストから削除し、国内での使用を禁止しても、輸入小麦粉や小麦粉調製品に添加されてわが国に入ってくる可能性があると思われるがいかがか。また過去においてそのような事例があれば示されたい。
11 前項の質問への回答として、「事例がある」あるいは「事例がありうる」とするならば輸入相手国に対して禁止措置を求めることはできるのか。禁止措置を求めることができるならば、輸入小麦粉あるいは小麦粉調製品のチェックはどの機関が行うのか。
12 臭素酸カリウムの使用を禁止した後イギリス政府は、1992年に追跡調査を実施し臭素酸カリウムを違法に使用したパンの有無を調べ、監視を続けている。
 わが国では、1984年に臭素酸カリウムの使用規制強化措置を実施したあと、前記のような監視・追跡調査等を実施したか。その後の監視・追跡調査の実績があれば、その年月日、結果および測定方法について詳細に説明されたい。
 また、監視・追跡調査を実施していなければその理由を説明されたい。
13 臭素酸カリウムが添加された小麦粉の輸入を禁止し、食品添加物リストから削除すべきであると考えるがいかがか。

4.臭素酸カリウムの食品業界での用途について
 なぜ、危険な臭素酸カリウムを使う必要があるのか、という素朴な疑問について、以下その実情を明らかにすべく質問する。

1 食品添加物としての臭素酸カリウムの用途、使用方法、使用基準、残留基準等につき食品衛生法関係法令、告示等ではどのように定めているか、説明されたい。
2 1984年に厚生省は、食品添加物としての臭素酸カリウムに関する法令、告示等を改正しているが、その内容および改正理由について説明されたい。
3 水産練り製品の製造において、食品添加物としての臭素酸カリウムの使用を厚生省は認めていたが、前記法令、告示等の改正時に禁止している。禁止した理由は何か。
4 前記法令、告示等の改正時に、パンの製造においては臭素酸カリウムの使用を認めたが、その理由を説明されたい。また、使用を認めるについて、業界サイドからなんらかの要望等はあったか。あればその年月日、内容について説明されたい。
5 わが国では、製パン用の小麦粉処理剤以外に、食品業界において臭素酸カリウムの使用を認めているか。
6 日本パン工業会が「小麦粉処理剤としての臭素酸カリウム」の使用を自主的に規制していると聞くが事実か。事実であれば2で触れた諸外国での現状に鑑み、この際全面使用禁止措置をとるべきであると考えるが、政府の見解を明示されたい。

5.化学物質「臭素酸カリウム」の検出技術について
 危険な化学物質である臭素酸カリウムをパンの原料の一部に使用しても、パン製造時の加熱で分解するので残留しない、と言われても国民は納得できない。JECFAが援用する「新しい分析方法」など、科学技術の進歩は目覚ましいものがある。ここでは、「パンに臭素酸カリウムは本当に残留していないのか」という疑問に答えるべく、分析方法について質問する。

1 食品中に残留する臭素酸カリウムの測定に際しては、臭素酸イオンを測定するのか、臭素を測定し臭素酸カリウムの量を推計するのか、あるいは全く別の方法がとられているのか。その際の検出限界はppmで考えているか、あるいはppbで考えているか。
2 最高水準のイオンクロマトグラフ分析装置が国立衛生試験所に導入されていると聞くが、導入している部門およびその目的を説明されたい。
3 国立衛生試験所に導入されているイオンクロマトグラフ分析装置のメーカーをすべて部門ごとに明かにされたい。
4 厚生省・農水省所管の研究・分析機関で、イオンクロマトグラフ分析装置を使用し、食品添加物の分析をしたことはあるか。あれば、その内容を説明されたい。
5 4の2で述べた法令、告示等の改正時に厚生省が実施した、パン中に残留する臭素酸カリウムの測定試験の測定方法、測定結果を公表されたい。
6 イオンクロマトグラフ分析装置で測定すると、パンの中に残留する臭素酸イオンが、数十ppbまで検出可能との結果が出ているが把握しているか。
 また、イギリス政府がパン製造時の臭素酸カリウム使用を禁止する根拠となった測定方法でも、パン中に残留する臭素酸カリウムが最小17ppbという数値で検出されていると聞くがいかがか。
7 パン中に残留する臭素酸カリウムの測定方法として、指定検査機関で行われているオルトトリジン吸光光度法での検出限界を説明されたい。またその他の測定方法があれば、その検出限界についても説明されたい。
8 食品衛生法で定める食品分析の指定検査機関で、パンに残留する臭素酸カリウムの検出に際し、イオンクロマトグラフ分析装置を使用している機関はあるか。あるとすればその機関名を報告されたい。
9 食品衛生検査指針によれば、食品中の臭素酸カリウムの測定方法は「臭素酸カリウムを測定するイオンクロマトグラフィーで行うものとする」と規定されているが、この場合の検出限界を示されたい。
10 前項の測定方法が指定された年月日を明かにされたい。
11 (財)日本食品分析センターでは、パンの中に残留する臭素酸カリウムの分析をどのような分析方法で行っているか。イオンクロマトグラフィーで分析している場合、同センターが導入している装置のメーカー名をすべて挙げられたい。またそれぞれの分析装置の検出限界をあわせて明らかにされたい。

6.小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの代替技術について
 私の調査では、小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの代替技術が開発され、すでに食品業界で独自の流通が始まっている。この事実をより明確にするため、以下質問する。良い技術はどしどし採用し、国民の食卓を一層安全なものたらしめることは国の責務であると考えるためである。

1 国産小麦は、グルテンの含有量が少ないためパンは焼けないとされてきたが、小麦粉改良剤(麹)を使用すると、国産小麦でもパンが焼け、実際に商品が流通している。その現状を説明されたい。
2 この、小麦粉改良剤(麹)の技術をもってすれば、国産、外国産を問わず、小麦粉への臭素酸カリウムの添加を禁止できると考えるがいかがか。
3 小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの使用を禁止している(あるいは禁止しようとしている)国・地域等に、この小麦粉改良材(麹)の技術を紹介し、この技術を使用した小麦粉についてのみ輸入を許可すべきであると考える。民間が臭素酸カリウムの使用を禁止している国・地域等の小麦粉の輸入を行った場合、現行法規に抵触する可能性はあるのか。また、政府は率先して臭素酸カリウムを使用しない技術の紹介と、臭素酸カリウムの使用を禁止している小麦粉の輸入を推進されてはいかがか。

7.ポストハーベスト農薬について
 次に、世界各国で収穫された小麦そのものについて質問する。最近やや下火になった観のある「ポストハーベスト農薬が小麦に残留し、国民の体内に入りつつある」という問題である。
 私の調査では、ポストハーベスト農薬に替わりうる新技術の実験が食糧庁で開始されていると聞く。また、ポストハーベスト農薬問題の解決には、国際的な枠組みづくりが必須であり、政府の果敢な対応を期待する意味もあり、以下質問する。

1 輸入農産物において、外国で収穫後に農薬投与が必要な理由を説明されたい。
2 輸入農産物に残留が許可されている農薬名およびその残留基準を、農産品目ごとに説明されたい。
3 輸入農産物において、残留あるいはその使用を認めていない農薬が摘発された事例を過去3年間にわたって挙げられたい。
4 農薬取締法には、農産物についての検査義務や、同法において環境庁長官が定める基準と規定されている農薬登録保留基準を越えた場合の規制措置、罰則規定が定められていない。これはなぜか。そもそも農薬取締法を施行した趣旨はなにか。
5 輸入農産物において、指定農薬の残留基準オーバーや指定外農薬の使用が判明した場合、通常どのような措置をとっているか。措置の根拠を説明されたい。
6 輸入相手国に対して、ポストハーベスト農薬やくん蒸剤投与に関するわが国の使用基準を示し、その遵守を呼びかけたことはあるか。あればその内容を説明されたい。
7 7の5のチェックはどのようにしているか。農薬の種類ごとにその検出方法、検出機関、およびその機関がいつの時点で検査しているかを説明されたい。
8 ポストハーベスト農薬としてわが国が指定している農薬以外の薬物が使用されている場合、輸入相手国からの事前の情報開示はあるのか。あるとすれば具体例を挙げ、そのシステムを説明されたい。
9 前項で、輸入相手国からの事前の情報開示というシステムがない場合、わが国でのチェックシステムはあるか。あれば具体例を挙げ、そのシステムを説明されたい。
10 食糧庁は、米・麦について、炭酸ガスによる貯蔵試験を行っていると聞くが、その内容を説明されたい。
11 わが国で収穫された米について、炭酸ガスによる長期保存が可能となったと聞くがその内容を示されたい。
12 炭酸ガスによる貯蔵技術の確立は、化学薬品を使用したくん蒸処理やポストハーベスト農薬に替わる新技術であると認識するがいかがか。
13 輸入米とともに輸入小麦について、なぜこの技術を適用しないのか。その理由を説明されたい。
14 輸入小麦のポストハーベスト農薬の代替技術として、産地およびわが国での炭酸ガスによる貯蔵技術は使用可能か。可能でなければその理由を説明されたい。
 15輸入小麦の相手国で、収穫後の長期保存並びに輸送の各段階で、炭酸ガスによる保存技術への切り替えはできないか。民間がこれを行った場合、現行法規に抵触するか。
16 食糧庁が推進している炭酸ガスによる農産物貯蔵技術を、他の農産物の長期保存・長期輸送に応用できるものは応用すべきであると考えるがいかがか。
17 ポストハーベスト農薬の使用を削減し、将来的に全廃していくための新技術は他にあるか。
18 最後に、輸入小麦について、ポストハーベスト農薬の種類、使用状況を、輸入相手国(地域)別に詳しく説明されたい。

8.国内施設における輸入農産物に対するくん蒸処理について
 収穫された小麦は、わが国に輸入される際、害虫等が発見された場合は致死性のあるガス等による「くん蒸」が行われている。「残留しないから安全」というがやはり、分析技術や毒性化学の進歩によってはどうなるか分からない、というのが国民の率直な不安であると考える。したがって、以下のとおり質問する。

1 輸入農産物につき、くん蒸対象としている品目を示されたい。
2 対象品目ごとのくん蒸剤の名称、物質名および使用基準(残留基準を含む)を示されたい。
3 使用基準設定の理由であるくん蒸剤の危険性を、品目ごとに説明されたい。
4 前項で示されたくん蒸剤の残留の有無を測定する分析方法およびそれらの検出限界をすべて示されたい。
5 前項で説明された分析方法の適用年度を方法別に明らかにされたい。
6 くん蒸剤の残留測定方法(装置)は分析技術の進歩に伴い、当然見直しがあるものと考えるが、8の4で説明のあった分析方法の、適用年度後の見直し作業について説明されたい。
7 くん蒸剤の残留基準が遵守されているか否かをチェックする機関および部署名を明らかにされたい。
8 例えば輸入小麦において、臭化メチルを使用したくん蒸処理を行う場合、農水省ではその残留基準を15ppm以下としているが、厚生省では50ppm以下であれば食用として大丈夫であるとしている。この差異の理由を簡潔明瞭に説明されたい。
9 臭化メチルの残留濃度が高いため食用として流通できなくなった輸入小麦粉の処分はどのようになされているか。実例があれば例示し説明されたい。
10 輸入相手国でポストハーベスト農薬を使用していない場合でも、輸入に際し、くん蒸を行うのであれば、くん蒸剤が残留基準以内であれば輸入農産物は100%安全であるという保証を消費者に対してするべきであると考えるがいかがか。
 また仮に、くん蒸剤の現在の残留基準が医学的見地から危険であると判定された場合の責任の所在、罰則を含めた処分、および販売できなくなった輸入農産物の所有者に対する責任ある処理方針を明確にすべきであると考えるがいかがか。
11 くん蒸処理を全面的に廃止する条件とは何か。輸入農産物の品目ごとに説明されたい。
12 国内施設におけるくん蒸処理を廃止するという根本方針を持っているか。国際的な枠組みづくりや、炭酸ガス使用等の新技術開発推進なども含め、明確に答弁されたい。

9.国産小麦の奨励策について
 国産の小麦ならばより安全ではないのか、というのが率直な発想であるが、実際はどうなのかについて質問する。

1 国産小麦の生産数量を、過去5年について示されたい。
2 国産小麦の生産量の推移について、今後の見通しを説明されたい。
3 農林水産省「麦類作付面積調査」では、昭和35年の小麦作付面積は約60万haであり平成3年の小麦作付面積は24万haへと激減したが、国産小麦の生産量を拡大する計画はあるか。また、国産小麦の消費拡大政策はあるか。あれば説明されたい。
4 国産小麦の生産量を増大させることは、食糧自給率の向上と、農薬の規制・管理など国内法規で対応ができるという意味での安全性の向上にとって有益であると考えるがいかがか。
5 国産小麦の収穫後、ポストハーベスト農薬は使用されているか。またくん蒸処理はされているか。
6 国産小麦を市場流通させる場合、炭酸ガスによる貯蔵は可能か。
7 食糧用として輸入される小麦の数量、そのうちハード小麦と呼ばれる、主にパン用強力粉の輸入数量をそれぞれ最新の統計で示されたい。
8 民間企業が、国内の生産農家と直接、自由に小麦の取引を行った場合、現行法規に抵触するか。抵触する法規があれば説明されたい。
9 国内の全農産物について、市場流通を自由化する計画はあるか。
10 外国産の小麦(小麦粉)に比べ、より安全性の高いと思われる国産小麦に小麦粉改良剤(麹)を使用すると食パンの製造も可能となるため、国産小麦を奨励していきたいと考えるがご意見をうかがいたい。

10.より安全な小麦(小麦粉)の選択的輸入について
 個人、もしくは企業が、食の安全を考え「ポストハーベスト農薬不使用」「臭素酸カリウム無添加」の小麦粉、あるいは「ポストハーベスト農薬不使用」の小麦を輸入し、くん蒸しないことを希望した場合、現行法規に抵触するか。抵触する法規があれば明示されたい。

11.小麦粉輸入について
 気候等の諸条件に規定され、現状では小麦(小麦粉)の大半は輸入に頼らざるを得ない。ポストハーベスト問題のある小麦よりは、「ポストハーベスト農薬不使用」という小麦粉での輸入が食の安全を考えればベターである。次に小麦粉輸入にまつわる問題について質問する。

1 小麦粉100%での輸入を実施する場合、関係法規によれば、重量換算でkg当たり30円47銭の関税のほかに、食糧庁分の関税相当量として70円20銭を納めなければ輸入できない。したがって輸入=販売者はkg当たり100円前後の費用負担を強いられている。そのため国内での不利な価格競争を強いられ、小麦粉100%での輸入販売は事実上不可能となっている。小麦粉調製品での輸入販売を考えると、実行関税率表では16~24%前後の関税がかけられ輸入=販売者サイドにとっては厳しい規制となっている。こうした規制をする理由はなにか。
2 小麦粉100%での輸入に関する輸入者の費用負担を小さくすれば、無駄な作業が省かれ、国民の利点は多いと考えられるがいかがか。
3 小麦粉輸入に際して、関税の引き下げを行ってはどうか。

12.表示について
 私の調査では、臭素酸カリウムや収穫後農薬を使用していないという証明書を発行するという輸出国(輸出者)が存在する。それでは、そのような小麦粉を使用したパンや加工食品が出回り、消費者が一目でそれとわかる表示がなされればと考えるため、以下質問する。

1 体内に摂取された場合、その危険性が指摘されている臭素酸カリウムについて、同物質を添加していない小麦粉、およびそれを原料として製造された加工食品について、明確に認識できるよう表示を指導するか義務化するべきであると考えるがいかがか。また、この表示を民間独自で行った場合、現行法規に抵触するか。
2 ポストハーベスト農薬についても、同様に、ポストハーベストフリーの小麦(小麦粉)についての表示を指導するか義務化するべきと考えるがいかがか。また、この表示を民間で行った場合、現行法規に抵触するか。
3 くん蒸処理についても、くん蒸処理を行っていない小麦(小麦粉)については、表示を指導するか義務化するべきと考えるがいかがか。また、この表示を民間で行った場合、現行法規に抵触するか。

13.最後に
 世界最大の貿易農産物である小麦(小麦粉)について質問をしてきた。私は、この質問主意書で取り上げた事項およびその他の事項について、いずれも大消費国であるわが国が果たしうる役割、果たすべき役割が存在すると確信している。異常気象や人口問題で、世界の食糧危機が叫ばれ始めて久しいが、いまこそ代替技術の普及を含め、わが国がその役割を果たすべきときであると考え、質問するものである。

1 臭素酸カリウム無添加、ポストハーベスト農薬を使用せず、くん蒸処理もしていない小麦(小麦粉)使用を推進し、これらの代替技術である小麦粉改良剤(麹)、炭酸ガスによる保存技術を推奨し、食の安全を願う国民の期待に応えるべきであると考えるが明確な回答を頂きたい。
2 これら代替技術を世界規模に普及させることにより、世界の食糧問題にわが国が貢献するこが可能となると考えるがいかがか。またこうしたことを民間が主導する前に、政府が積極的に動かれることを期待するが考えを明確にされたい。
3 小麦(小麦粉)に関する本質問主意書の各項も含め、民間人をも含めた食糧問題全般に関する新たな審議機関を設置するべきであると思うがいかがか。
右質問する。

      


参議院議員竹村泰子君提出小麦と小麦粉の安全性に関する質問に対する答弁書


1の1について
 御指摘の厚生省がん研究助成金による研究については、昭和56年度の研究報告書によれば、臭素酸カリウムの含有率(当該物質の重量をその物質が含まれる物の重量で除した数をいう。以下同じ。)が100万分の250及び100万分の500の飲料水によりそれぞれ経口投与実験を行ったところ、いずれの投与においてもF344ラットには腎腫瘍を誘発したが、雌B6C3F1マウスにはがん原性を示さなかったと報告されている。

1の2について
 御指摘の論文は、臭素酸カリウムと、2-(2-フリル)-3-(5-ニトロ-2-フリル)(以下「AF-2」という。)、わらび、ふきのとう、過酸化水素及びブチルヒドロキシアニソール(以下「BHA」という。)を、その発がん性について比較したものであるが、被験動物の半数に腫瘍を発生させる量(以下「半数腫瘍発生量」という。)という点においては臭素酸カリウムの発がん性が最も強いが、安全率(当該物質又は食品の通常の摂取量を半数腫瘍発生量で除した数)という点においては、BHA、ふきのとう、臭素酸カリウム、わらび、過酸化水素、AF-2の順に安全性が高い旨を報告したものである。

1の3について
 臭素酸カリウムは、自然界には存在していないものと理解している。

1の4について
 御指摘の食品添加物である臭素酸カリウムの年間生産量については承知していないところであるが、食品衛生法(昭和22年法律第233号)第21条に基づく添加物製造業の許可を受けた者を対象に、臭素酸カリウムの出荷量及び食品用使用量を調査した報告によると、その量は次のとおりである。

調査対象年度 出荷量(トン) 食品用使用量(トン)
昭和58年度 16 調査せず
昭和61年度 124 124
平成元年度 163 163
平成4年度 222 2

備考 調査は昭和59年度より3年ごとに、前年度の数字をまとめたもの。

 なお、昭和57年の日本食品添加物団体連合会の調査によると、臭素酸カリウムの使用量については、魚肉練り製品製造用に年間4トンから5トン、パン製造用に年間3トンから4トンと報告されている。

1の5について
 食品衛生法第7条第1項の規定に基づき定められた食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示370号。以下「規格基準告示」」という。)においては、添加物としての臭素酸カリウムの使用に関し、「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定しているところであり、同条第2項の規定により、この基準に合わない方法による食品又は添加物の製造、販売等をしてはならないこととされているところである。

2の1について
 国連食糧農業機関(以下「FAO」という。)及び世界保健機関(以下「WHO」という。)による合同食品添加物専門家会議(以下「JECFA」という。)は、添加物等に関する専門的な情報等の評価、技術的な勧告等を行うために開催されているものであり、添加物等に関する安全性評価、添加物の成分規格の作成等の活動を行っているところである。

2の2について
 一般に「一日摂取許容量(ADI)」とは、人が生涯にわたり毎日その物質を摂取し続けたとしても、安全性に問題のない量であると考えている。

2の3、4及び5について
 御指摘の「A(1)リスト」及び「A(2)リスト」とは、JECFAの勧告並びにFAO及びWHOによる食品規格委員会の勧告に基づき、FAO及びWHOによる合同基準計画事務局によって作成されていたものであるが、昭和54年を最後に、新しいリストは公表されていないと承知している。

2の6について
 第44回のJECFAの報告書によれば、臭素酸カリウムについて、①これまで合計4回その成分規格及び安全性について検討したこと、②第39回のJECFAにおいて、遺伝子傷害性の発がん物質であり、小麦粉処理剤としての使用は適当ではないとの結論に至ったこと、③今回(第44回)の会議では、パン中の臭素酸カリウムを分析するために新しく開発された質量分析計を検出器として用いるガスクロマトグラフ法及び誘導結合プラズマをイオン化源とした質量分析計を検出器として用いる方法によって、臭素酸カリウムによって処理された小麦粉を用いて製造したパンから臭素酸の残留が認められたこと及び新しい毒性データは入手できていないことから、第39回のJECFAの結論が従前どおり適用されることが報告されていると承知している。
 また、試験方法については、同報告書によると、「質量分析計を検出器として用いるガスクロマトグラフ法」と記載されているが、同報告書で試験方法について引用された文献においては、電子捕獲検出器を用いるガスクロマトグラフ法及び誘導結合プラズマをイオン化源とした質量分析計を検出器として用いる液体クロマトグラフ法が検討された旨記載されており、質量分析計を検出器として用いるガスクロマトグラフ法に関する記載はない。

2の7について
 御指摘の英国政府の措置については承知している。その経緯については、英国農業漁業食品省が平成元年11月に公表した資料によると、専門家からなる英国政府の食品諮問委員会並びに食品、消費者製品及び環境中の化学物質の毒性に関する委員会において、当時定められていた使用の基準では、最終食品に臭素酸カリウムが残留しないという確証が得られないとされたことから、使用が許可されている添加物リストから臭素酸カリウムを削除するという提案がなされた旨記載されている。
 欧州連合(以下「EU」という。)においては、平成6年以降、販売等が認められる添加物の範囲を添加物に関する指令により定めているところであるが、その中に、臭素酸カリウムは記載されておらず、結果として、当該指令においては臭素酸カリウムの添加物としての販売等が認められていないところである。また、EUの事務局に照会したところ、公定の臭素酸カリウム測定方法は定められていない旨の回答を得たところである。
 なお、平成2年、EUの食品科学委員会より、最終食品中における臭素酸の残留の可能性が否定できないこと、パンの製造に従事する者への臭素酸カリウムの影響等にかんがみて、小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの使用を中止するべきである旨の報告がなされている。

2の8について
 米国食品医薬品庁に照会したところ、臭素酸カリウムの添加物としての使用を禁止している州政府は承知していないとの回答を得たところである。

2の9について
 我が国においては、規格基準告知に「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定していること等から、直ちに、その取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていない。

3の1について
 食品衛生法第6条の規定に基づき人の健康を損なうおそれがない場合として新たに添加物を定める場合等に、当該添加物に関するJECFAの安全性評価結果等を食品衛生調査会に提出することにより、食品衛生行政の参考としている。

3の2について
 食品衛生調査会は、食品衛生法第25条第1項の規定に基づき、厚生大臣の諮問に応じ、食中毒の防止に関する事項、食品添加物公定書の作成に関する事項その他食品衛生に関する重要事項を調査審議させるために置かれるものである。

3の3について
 現時点における食品衛生調査会の委員の氏名及び所属は、次のとおりである。

氏名 所属
五十嵐 脩 お茶の水女子大学生活環境研究センター
池上 幸江 国立健康・栄養研究所食品科学部
江崎 孝三郎 大阪府立大学農学部
江角 浩安 国立がんセンター研究所支所
岡田 齋夫 生物系特定産業技術研究推進機構
小川 益男 東京農工大学農学部
柏崎 守 農林水産省家畜衛生試験場
片山 純男 雪印乳業株式会社
上野川 修一 東京大学大学院農学生命科学研究科
黒川 雄二 国立衛生試験所安全性生物試験研究センター
小林 修平 国立健康・栄養研究所
近藤 雅臣 大阪ハイテクノロジー専門学校
阪口 玄二 財団法人日本食品分析センター大阪支所
坂本 元子 和洋女子大学
島田 俊雄 国立予防衛生研究所腸管系細菌室
鈴木 啓介 全国農業協同組合連合会肥料農薬部
鈴木 久乃 女子栄養大学栄養学部
鈴木 康夫 静岡県立大学薬学部
高仲 正 財団法人日本公定書協会
寺尾 充男 国立衛生試験所
寺田 雅昭 国立がんセンター研究所
戸部 満寿夫 財団法人日本公定書協会
長尾 美奈子 国立がんセンター研究所発がん研究部
中澤 裕之 星薬科大学
仲西 寿男 神戸市環境保健研究所細菌部
成田 弘子 日本大学短期大学部
林 裕造 北里大学薬学部
日和佐 信子 日本生活協同組合連合会組織推進本部
福島 昭治 大阪市立大学医学部
伏谷 伸宏 東京大学大学院農学生命科学研究科
古市 圭治 国立公衆衛生院
細谷 憲政 茨城県健康科学センター
丸山 務 麻布大学環境保健学部
三森 国敏 国立衛生試験所安全性生物試験研究センター病理部
村上 正孝 筑波大学社会医学系
村上 紀子 女子栄養大学
安元 健 東北大学農学部
山崎 修道 国立予防衛生研究所
山崎 幹夫 千葉大学薬学部
和田 正江 主婦連合会


3の4について
 御指摘の「食品衛生調査会毒性・添加物部会」とは、食品衛生法施行規則(昭和23年厚生省令第23号)第25条の2に基づく食品衛生調査会運営規程(以下「運営規程」という。)第6条第1項により食品衛生調査会に置かれる毒性部会及び添加物部会を合同して開催する場合の通称である。その所掌は、運営規程第7条第5項及び第6項において、それぞれ、食品、添加物、器具及び容器包装の毒性に関する事項その他必要事項について調査審議すること並びに添加物の規格基準に関する事項、添加物公定書に関する事項その他必要事項について調査審議することが規定されている。

3の5について
 現時点における毒性部会及び添加物部会の委員の氏名及び所属は、次のとおりである。また、毒性部会の部会長は戸部満寿夫委員、添加部会の部会長は山崎幹夫委員である。

毒性部会

氏名 所属
江崎 孝三郎 大阪府立大学農学部
江角 浩安 国立がんセンター研究所支所
黒川 雄二 国立衛生試験所安全性生物試験研究センター
戸部 満寿夫 財団法人日本公定書協会
長尾 美奈子 国立がんセンター研究所発がん研究部
成田 弘子 日本大学短期大学部
林 裕造 北里大学薬学部
福島 昭治 大阪市立大学医学部
三森 国敏 国立衛生試験所安全性生物試験研究センター病理部
村上 正孝 筑波大学社会医学系

添加物部会

氏名 所属
五十嵐 脩 お茶の水女子大学生活環境研究センター
江崎 孝三郎 大阪府立大学農学部
近藤 雅臣 大阪ハイテクノロジー専門学校
鈴木 久乃 女子栄養大学栄養学部
鈴木 康夫 静岡県立大学薬学部
高仲 正 財団法人日本公定書協会
長尾 美奈子 国立がんセンター研究所発がん研究部
中澤 裕之 星薬科大学
成田 弘子 日本大学短期大学部
山崎 幹夫 千葉大学薬学部


3の6及び7について
 毒性部会及び添加物部会は、厚生大臣が諮問した事項のうち、運営規程第8条の規程により、委員長より付議された事項を調査審議するほか、食品衛生法第25条第2項の規定により、食品衛生調査会が厚生大臣に意見を述べるため、食中毒の防止に関する事項、食品添加物公定書の作成に関する事項その他食品衛生に関する重要事項について調査審議することができるものである。

3の8及び9について
 昭和57年5月7日の食品衛生調査会の意見具申以降、臭素酸カリウムの取り扱いに関し、食品衛生調査会に諮問がなされたことはなく、また、臭素酸カリウムの取扱いを調査審議するための毒性部会又は添加物部会は開催されていない。

3の10及び11について
 仮に臭素酸カリウムを食品衛生法第6条の規定に基づき人の健康を損なうおそれのない場合として厚生大臣が定めるものから削除した場合、臭素酸カリウムが添加された小麦粉や小麦粉調製品は同条の規定により輸入が禁止されることとなる。
 なお、輸入食品が食品衛生法に適合しているか否かの輸入時の取締りは検疫所において実施しているところである。

3の12について
 食品衛生法第7条第1項に基づき規格基準が定められた食品、添加物等については、同法第14条第1項、第15条及び第17条第1項に基づき検査を実施しているところであり、臭素酸カリウムに対象を限定した特別の監視及び追跡調査は実施していない。

3の13について
 我が国においては、規格基準告示に「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定していること等から、直ちに、その取扱いについて見直しを行う必要があると考えていない。

4の1について
 臭素酸カリウムの添加物としての使用等については、規格基準告示において、「臭素酸カリウムは、パン(小麦粉を原料として使用するものに限る。)以外の食品に使用してはならない。臭素酸カリウムの使用量は、臭素酸として、小麦粉1キログラムにつき0.030グラム以下でなければならない。また、使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定している。

4の2、3及び4について
 御指摘の「食品、添加物等の規格基準の一部を改正する件」(昭和57年厚生省告示第136号)においては、臭素酸カリウムについて、パンへの使用量を、臭素酸として、小麦粉1キログラムにつき0.050グラム以下から0.030グラム以下に変更し、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならないとの規定を新たに設けるとともに、従来認められていた水産練り製品への使用を禁止したところである。
 この改正は、昭和57年5月7日の食品衛生調査会において、臭素酸カリウムはF344ラットに発がん性が認められたこと等から食品に残留することは好ましくないとする意見具申が厚生大臣に対してなされたことを受けて行われたものである。また、その具体的な基準値等については、当該意見具申より前に取りまとめられた食品衛生調査会添加物部会の報告書において、パンへの使用については一定量以下の添加である限り臭素酸カリウムは残留しないと考えられるが、使用量は可能な限り少なくするという前提及び当時の使用実態を踏まえて使用の基準を含有率100万分の50から含有率100万分の30に改めるとともに、水産練り製品への使用については再検討する必要があるとされたことを踏まえ、設定されたものである。
 なお、昭和57年当時、パンの製造業界から、臭素酸カリウムは安全であるとの見解を厚生省が示すのであれば、臭素酸カリウムをパンの製造に使用したい旨の要望があったことは承知しているが、詳細については、現在、把握していない。

4の5について
 規格基準告示により、パン(小麦粉を原料として使用するものに限る。)以外の食品への使用は禁止されている。

4の6について
 社団法人日本パン工業会に臭素酸カリウムの使用自主規制について照会したところ、平成4年の当該法人の月例会議において、「臭素酸カリウムはなるべく使用しないようにする。」旨の申し合わせを確認した経緯があるとの回答を得たところである。
 また、我が国においては、規格基準告示に「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定していること等から、直ちに、その取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていない。

5の1について
 臭素酸カリウムの測定については、種々の方法が公表されているが、概ね、臭素酸を測定する方法が採られているものと承知している。また、その検出限界は測定方法により異なっているが、厚生省が地方公共団体等に対し発出した昭和57年5月25日付け事務連絡(以下「事務連絡」という。)に示されているイオンクロマトグラフ法を用いて臭素酸を測定する方法における検出限界については、「食品衛生学雑誌」において含有率100万分の0.5(10億分の500)であると報告されている。

5の2及び3について
 国立衛生試験所におけるイオンクロマトグラフ分析装置の導入部門、その製造メーカー及び導入目的は、次のとおりである。

導入部門 製造メーカー名 目的
食品部
 
ダイオネックス社
 
1 オゴノリ食中毒事件における検体中の無機成分の分析
2 海草成分としてのアルギン酸への無機塩類の吸着性に関する研究
環境衛生化学部 ダイオネックス社 水道水中の無機陰イオン類の測定
食品添加物部
 
 
島津製作所
 
 
1 タール色素中の遊離ハロゲンイオンの分析
2 ビートレッド色素中の硝酸根の分析
3 次亜塩素酸塩及び亜塩素酸塩の分析
筑波試験場 横河電機 土壌中の金属及び無機イオンの量の測定


5の4について
 厚生省の試験研究機関である国立衛生試験所食品添加物部において、食品添加物中の不純物(タール色素中のハロゲンイオン及びビートレッド色素中の硝酸根)及び食品添加物(次亜塩素酸塩及び亜塩素酸塩)の分析を行ったことがある。
 農林水産省の試験研究機関及び分析機関のいずれにおいても、イオンクロマトグラフ分析装置を使用して、食品添加物の分析を行ったことはない。

5の5について
 食品衛生調査会においては、昭和57年5月の意見具申に当たって、イオンクロマトグラフ法を用いた試験成績、陰イオン交換樹脂カラム-比色法を用いた試験成績等が調査審議されているが、いずれの報告においても、臭素酸カリウムの使用量が、臭素酸として、小麦粉1キログラムにつき0.04グラム以下の場合においては、最終製品たるパンから臭素酸は検出されていない。
 なお、当該試験成績は、学会誌等に既に公表されているところである。

5の6について
 御指摘のような水準での測定方法については、平成7年に米国食品医薬品庁の研究者が、誘導結合プラズマをイオン化源とした質量分析計を検出器として用いるイオンクロマトグラフ法について報告したこと等を承知している。
 また、平成7年に英国農業漁業食品省の研究者が公表した文献中に、平成元年に英国政府において実施した調査において、包装していない市販のパンから最小で含有率10億分の17の臭素酸を検出した旨記載されていることは承知している。

5の7及び8について
 オルトトリジン吸光光度法については、昭和58年に「食品衛生学雑誌」において、横浜市衛生研究所の日高利夫をはじめとする研究所員により報告されたものであると承知している。
 同報告によれば、その定量限界は含有率100万分の1であるとされている。
 なお、指定検査機関における臭素酸カリウムの測定方法については、厚生省への報告を義務付けていないため承知していない。

5の9について
 御指摘の測定方法の検出限界については、「食品衛生学雑誌」において含有率100万分の0.5と報告されている。

5の10について
 御指摘の測定方法は、事務連絡を踏まえ、食品衛生検査指針に記載されたものと考えられる。

5の11について
 財団法人日本食品分析センターに分析方法について照会したところ、オルトトリジン吸光光度法により測定しているとの回答を得たところである。

6の1について
 最近開発された小麦粉改良剤(麹)を使用したパンが商品としてごく僅か流通していると聞いている。

6の2について
 我が国においては、規格基準告示に「使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に臭素酸カリウムを分解又は除去しなければならない。」と規定していること等から、直ちに、その取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていない。

6の3について
 食品衛生法においては、小麦粉の輸入に関し、その輸出国において臭素酸カリウムの使用を禁止しているか否かに係る規定はない。
 小麦粉改良剤の使用については、国として特定の小麦粉改良剤(麹)を推奨することは考えていない。
 また、2の9についてで述べたように我が国においては、直ちに、臭素酸カリウムの取扱いについて見直しを行う必要があるとは考えていないため、臭素酸カリウムを使用していない小麦粉の輸入を推進することは考えていない。

7の1について
 農薬を収穫後に使用することについては、一般に、農産物の収穫から販売までの間における当該農産物の腐敗、変敗、損耗等を防止する目的で、殺菌剤、殺虫剤、発芽防止剤等が使用されているものと承知している。

7の2について
 食品衛生法第7条第1項に基づき、食品に残留する農薬の成分である物質(その物質が化学的に変化して生成した物質を含む。以下同じ。)の量の限度(以下「残留農薬基準」という。)は、食品及び農薬の成分である物質ごとに、規格基準告示の第1 食品の部D 各条の項のO 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの1 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格及び同項のO 小麦粉の1 小麦粉の成分規格により規定しており、輸入農産物であるか、国産農産物であるかにかかわらず適用されるものである。

7の3について
 輸入時の農産物の検査において、残留農薬基準に「不検出」と規定されている農薬が検出された事例は、平成5年度は0件、平成6年度は3件、平成7年度は1件である。また、地方公共団体において実施され厚生省に報告された検査結果については、平成6年度分のみを集計したところであるが、残留農薬基準に「不検出」と規定されている農薬が検出された事例は2件である。

7の4について
 農薬取締法(昭和23年法律第82号)は、農薬の品質の適正化とその安全かつ適正な使用の確保を図るため、農薬の登録並びにその製造、販売及び使用に関する規制等の措置を定めた法律であり、同法においては、農林水産大臣の登録を受けていない農薬の販売を禁止し、これに違反した場合の罰則を設けている。また、同法に基づき、登録申請に係る農薬が、農産物への残留性等について環境庁長官が定める基準(いわゆる農薬登録保留基準)に照らし、問題がある場合には、当該農薬の登録は行われないこととなる。
 なお、食品に残留する農薬等の成分の規制に係る措置については、食品衛生法において規定されているところである。

7の5について
 食品衛生法第7条第2項の規定に違反し、残留農薬基準に合わない食品が輸入された場合には、同法第22条に基づき、営業者等に当該食品を廃棄させ、その他営業者に対し食品衛生上の危害を除去するために必要な処置を採ることを命じている。

7の6について
 残留農薬基準の設定に当たっては、在日外国大使館等への説明及び衛生植物検疫措置の適用に関する協定(平成6年条約第15号)に基づく加盟各国への通報を行うとともに、日本貿易振興会が発行する規格基準告示の英文版の作成への協力等を通じ、諸外国への残留農薬基準の周知を図っているところである。

7の7について
 輸入時の農産物に係る残留農薬の検査については、「平成6年度輸入食品等に係るモニタリング検査の実施について」(平成6年9月19日衛食第157号他厚生省生活衛生局食品保健課長通知)に基づくモニタリング検査の実施要領により、検疫所において実施している。検査農薬の種類及びその検査方法については当該通知等により定めているところである。

7の8及び9について
 御指摘のような「ポストハーベスト農薬として我が国が指定している農薬」は食品衛生法上存在しないため、輸入相手国からの事前の情報開示並びに我が国におけるチェックのシステムは存在しない。

7の10から13について
 炭酸ガスによる保存技術については、昭和40年代に開発されているところである。この有効性については、常温下で長期保存が可能であるとする一方、現在食糧庁が行っている低温保管より早期に品質が劣化するとの見解もあり、確定した評価はない状況である。
 このため、食糧庁として、当該保存方法の有効性の有無を確認するため、炭酸ガスによる米の貯蔵試験を民間に委託して実施中である。
 一方、米、麦の貯蔵中に発生する病害虫の炭酸ガスによる駆除については、コスト、施設条件等の問題はあるものの、米、麦の品質に影響を与えない等の利点があるため、食糧庁では平成6年度から実用化のための事業を実施しているところである。

7の14について
 炭酸ガスを輸入小麦の病害虫の駆除に使用することは、コスト、施設条件等の問題を解決することが必要であるため、一般には普及していないが、条件が整っている豪州の一部の輸出ターミナルに併設した貯蔵施設において実用化されている例があると聞いている。

7の15について
 炭酸ガスによる保存技術については、我が国の小麦の輸入相手国において、同技術への切り替えの新たな動きがあるとは聞いていない。
 また、食品衛生法においては、小麦の輸入に関し、その輸出国において炭酸ガスによる保存技術を使用しているか否かに係る規定はない。

7の16について
 果実や野菜等の青果物については、適切な低酸素、高二酸化炭素及び低温環境下での呼吸量の低下を利用することにより貯蔵性を高めるCA(コントロールド・アトモスフィア)貯蔵技術が実用化されているところである。

7の17について
 輸入時の植物検疫の一環として行われている消毒措置には、農薬によるくん蒸処理以外に、
1 米、麦、雑穀等に付着する病菌及びコクジツセンチュウに対する乾熱処理及び温湯侵せき処理
2 麦に混入する麦角に対する塩水選処理
があるが、その他の有害動植物又は品目に関しては、現在のところ、臭化メチル、シアン化水素、二酸化炭素その他の農薬によるくん蒸処理に代替し得るような、消毒効果の確実性と安全性が確保され、かつ、農産物の品質への影響が少ない消毒方法はないと考えている。

7の18について
 我が国の小麦の輸入相手国においては、小麦の生産環境、生産規模及び流通状況等が多岐にわたることからポストハーベスト農薬の種類、使用状況について厳密に把握することは困難であるが、食糧庁の調査によれば、これら輸入相手国で使用が認められている殺虫剤のうち、小麦へのポストハーベスト農薬として使用される可能性があるものは別表1のとおりであると考えられる。

8の1について
 輸入時の植物検疫の一環として行われているくん蒸処理の対象となる植物は、顕花植物、しだ類及びせんたい類に属する植物(その部分、種子、果実及びむしろ、こもその他これに準ずる加工品を含み、製材、製茶等の加工品を除く。)であって、検査の結果、くん蒸の対象となる有害動物(昆虫、だに等の節足動物その他の無脊椎動物又は脊椎動物であって有用な植物を害するもの。)の付着が認められたものである。

8の2について
 品目ごとのくん蒸剤の名称、物質名、使用基準については別表2、残留農薬基準については別表3のとおりである。

8の3について
 シアン化水素に関して作物残留に係る農薬登録保留基準を設定するに当たっては、シアン化水素を用いた試験成績等を評価したところであるが、ラットによる試験成績において血中のシアン化水素代謝物の濃度の上昇等が認められている。
 燐化アルミニウムに関して作物残留に係る農薬登録保留基準を設定するに当たっては、燐化アルミニウムを用いた試験成績等を評価したところであるが、ラットによる試験成績において長期的な暴露による影響は何ら認められていない。
 臭化メチルに関して残留農薬基準を設定するに当たっては、臭化物を用いた試験成績等を評価したところであるが、ヒトによる試験成績においては何ら影響が認められていないものの、ラットによる試験成績においては甲状腺への影響等が認められている。

8の4について
 シアン化水素及び燐化アルミニウムの分析方法は、「農薬取締法第3条第1項第4号から第7号までに掲げる場合に該当するかどうかの基準を定める等の件第1号イの環境庁長官の定める基準を定める件」(昭和48年7月環境庁告示第46号)の2 試験法の(55)シアン化水素試験法及び(80)リン化アルミニウム試験法に示されている。なお、これらの検出限界は、シアン化水素については含有率1,000万分の5、燐化アルミニウムについては燐化水素として含有率1億分の1である。
 臭化メチルの分析方法は、規格基準告示の第1 食品の部D 各条の項のO 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの2 穀類、豆類、果実、野菜、種実類、茶及びホップの成分規格の試験法の目の(41)臭素試験法に示されている。なお、その検出限界は臭素として含有率100万分の1である。

8の5について
 シアン化水素の分析方法については昭和51年度、燐化アルミニウムの分析方法については昭和53年度、臭化メチルの分析方法については昭和48年度である。

8の6について
 8の4についてで示した分析方法については、各々の基準値の10分の1以下を検出限界としており、残留農薬の安全性を評価する上で必要な分析感度は確保されていると考えられることなどから、いずれも、設定後、改正していない。

8の7について
 輸入される農産物が食品衛生法に適合しているか否かの輸入時の取締りは検疫所において実施しており、くん蒸剤に係る検査については、横浜検疫所及び神戸検疫所における輸入食品・検疫検査センターにおいて実施しているところである。

8の8について
 農林水産省は、臭化メチルまたは臭素の残留農薬基準として「15ppm以下」の基準を設けた事実はない。

8の9について
 我が国においては、小麦粉について食品衛生法に基づく臭化メチルの残留農薬基準は設定されていない。

8の10について
 残留農薬基準は、食品衛生法第7条第1項の規定に基づき、厚生大臣が公衆衛生の見地から定めるものであり、当該農薬の安全性等について食品衛生調査会における慎重かつ緻密な調査審議を経ているものであることから、残留農薬基準に合う輸入農産物については、人の健康を損なうおそれはないものと考えている。
 従って、仮に、御指摘のようなくん蒸剤に関する現在の残留農薬基準が医学的見地から危険であると判断された場合の罰則を含めた処分等について、特段の定めを設ける必要はないと考えている。

8の11について
 輸入時の植物検疫の一環として行われている消毒措置には、農薬によるくん蒸処理以外に、
1 米、麦、雑誌等に付着する病菌及びコクジツセンチュウに対する乾熱処理及び温湯侵せき処理
2 麦に混入する麦角に対する塩水選処理
があるが、その他の有害動植物又は品目に関しては、現在のところ、臭化メチル、シアン化水素、二酸化炭素その他の農薬によるくん蒸処理に代わり得るような、消毒効果の確実性と安全性が確保され、農産物への影響が少なく、かつ、経済的で効率のよい消毒方法はないことから、くん蒸処理を廃止するには、このような消毒方法の開発が行われることが必要であると考えている。

8の12について
 輸入時の植物検疫の一環として行われているくん蒸処理は、消毒効果の確実性と安全性が確保され、農産物への影響が少なく、かつ、経済的で効率のよい消毒方法であり、また、適当な代替措置もないことから国際的にも一般に行われており、くん蒸処理を廃止するという方針はない。
 しかし、輸入植物の消毒に係る選択肢を増やすという観点から、くん蒸に代わる消毒方法の技術開発にも努めてきており、その結果として、農薬を使用しない有害動植物の消毒、除去方法が開発された場合には、消毒措置として認めてきているところである。

9の1について
 国産小麦の過去5年の生産数量は、平成4年が75万8,700トン、5年が63万7,800トン、6年が56万4,800トン、7年が44万3,600トン、8年が47万8,100トンである。

9の2について
 我が国の小麦については、「農産物の需要と生産の長期見通し」(平成7年12月26日閣議決定。以下「長期見通し」という。)において、品質、コスト面での大幅な改善を進めることにより、生産の拡大を見込んでおり、平成17年度における生産量を77~94万トンと見通している。

9の3について
 国産小麦については、長期見通しを参酌し、裏作の作付拡大、品質向上等を推進しつつ、消費者ニーズを踏まえた生産の振興を図っているところである。
 国産麦の消費拡大については、国産麦を利用した製品の開発・普及を図る国内麦需要開発推進事業を実施している。

9の4について
 小麦は、米と並んで主食としての役割を果たしており、国産小麦の生産量を増大させることは、食糧自給率の向上にとって有益であると考えている。

9の5について
 収穫後、政府が買い入れるまでの間にくん蒸処理される国産小麦は、ごく僅かであると聞いている。
 また、政府が買い入れた後の国産小麦については、適切な保管管理によっても病害虫の被害を防止できない場合のみ、くん蒸を実施している。
 なお、国産小麦にていては、くん蒸処理以外のポストハーベスト農薬の使用はないと承知している。

9の6について
 炭酸ガスによる国産小麦の貯蔵には、特別の施設等の設備が必要であるが、当該貯蔵の技術については、7の10から13についてで述べたように、その有効性の評価が定まっていない状況にあること、小麦の貯蔵には、通常の貯蔵でもその品質の劣化がなく十分であること等の理由から、炭酸ガスによる貯蔵が現状では国産小麦の一般的な貯蔵方法となるのは困難であると考えている。

9の7について
 食糧用として輸入される小麦の数量について食糧庁の買入実績によれば、平成7年度の食糧用外国産小麦の買入数量は447万5千トンである。
 うち、製パン用等に使用される強力粉の原料となりうる、いわゆるハード系に分類される小麦(アメリカ産ハード・レッド・ウインター・ホイート(粗たん白含有率の最低限度13.0パーセントのもの)、ノーザン・スプリング・ホイート及びダーク・ノーザン・スプリング・ホイート並びにカナダ産ウエスタン・レッド・スプリング・ホイート)の買入数量は265万1千トンである。
 なお、小麦粉の形態による買入れはない。

9の8について
 主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成6年法律第113号)において、民間企業が、国内の生産農家と直接、自由に小麦の取引を行うことを規制する規定はない。

9の9について
 国内の農産物のうち流通の規制がある米については、国民の主食としての役割をはたしているとともに、農業生産においても重要な位置付けを占めていることから、その需給と価格の安定を図ることが重要であり、完全に自由な市場に委ねることは適当でないと考える。

9の10について
 国産小麦については、長期見通しを参酌し、今後とも、その生産の振興を図っていくこととしている。

10について
 植物防疫官による検査の結果、輸入された小麦に植物検疫の対象となる有害動物が付着しているこが認められ、かつ、他に当該有害動物を消毒する方法がない場合に、くん蒸による消毒命令に違反した場合には、植物防疫法(昭和25年法律第151号)第40条第3号の規定により1年以下の懲役又は3万円(平成9年4月1日からは、50万円)以下の罰金に処せられる。

11の1について
 小麦粉の輸入については、小麦の国内生産や安定供給を確保するとの観点から、ウルグァイ・ラウンド農業合意の算定ルールに従い、適切な水準の関税相当量を設定しているところである。
 一方、小麦粉調製品の輸入については、国内産業保護の観点から、適正な水準の関税を設定しているところである。

11の2について
 小麦粉を輸入する際に支払う関税相当量は、ウルグァイ・ラウンド農業合意に基づき、基準期間(1986年~1988年)における関税相当量を実施期関(1995年から6年間)中に15パーセント削減することとしているところである。この関税相当量は、小麦の国内生産や安定供給を確保するとの観点から設定されており、これ以上に引き下げることは困難である。

11の3について
 小麦粉及び小麦粉調製品の関税については、ウルグァイ・ラウンド農業合意に基づき、2000年まで段階的に引き下げることとし、一部の小麦粉調製品については、既に合意水準への引き下げを行っているところであり、これ以上に引き下げを行うことは、国内産業保護の観点から困難である。

12の1、2及び3について
 食品の表示は、公衆衛生の確保のために必要な情報であるほか、公正な競争の確保、商品選択における利便の確保などのための重要な情報であるが、表示の義務付け又は指導に当たっては、国際的な整合性や表示に伴う販売業者等の負担等も考慮する必要があると考えている。
 臭素酸カリウムを添加していない旨の表示、ポストハーベスト農薬を使用していない旨の表示及びくん蒸処理を行っていない旨の表示については、このような表示の有無が公衆衛生上何ら問題となるものではないこと及び国際的にも求められておらず、販売業者等に過大な負担を強いるおそれがあること等から、これらの表示を義務付け又は指導することは適切でないと考えている。事業者が任意にこれらを使用していない旨の表示をすることは、一般消費者に誤認を与えるものでなければ法的に問題はない。

13の1及び2について
 小麦粉改良剤の使用については、6の3についてで述べたように、国として特定の小麦粉改良剤(麹)の使用を推奨することは考えていない。
 また、炭酸ガスによる保存技術については、7の10から13についてで述べたように、その有効性の評価が定まっていない状況にあるので、国として普及させることは考えていない。

13の3について
 食料全般に関する事項については、民間人を含む学識経験者等を構成員として、農政審議会等の機関において、これまでも調査審議を行っているところである。

別表1

輸入国名 農薬名
アメリカ
 
 
 
 
 
リン化アルミニウム
リン化マグネシウム
臭化メチル
クロルピルホスメチル
マラチオン
ピペロニルブトキシド
カナダ
 
リン化アルミニウム
マラチオン
オーストラリア
 
 
 
リン化アルミニウム
リン化マグネシウム
臭化メチル
二酸化炭素


別表2

対象品目 くん蒸剤の名称 物質名 消毒基準(使用基準)
栽植の用に供する木本植物、草本植物及びその部分又は果実 青化ソーダ シアン化水素 倉庫1立方メートルにつき青化ソーダ
10.8グラム(30分、10度~20度)
5.4グラム(30分、20度以上)
果実 液体青酸 シアン化水素 倉庫1立方メートルにつき液体青酸
1.8グラム(30分、10度~20度)
袋詰めされた米、麦、とうもろこし、大豆、コプラ等(ふすま、ぬか等の一次加工品を含む。) 燐化アルミニウム 燐化水素 倉庫1立方メートルにつき燐化水素として
0.75グラム(7日間、5度~10度)
0.75グラム(6日間、10度~20度)
0.75グラム(5日間、20度以上)
ばら積みされた米、麦、とうもろこし、大豆等(ふすま、ぬか等の一次加工品を含む。) 燐化アルミニウム 燐化水素 サイロ1立方メートルにつき燐化水素として
2.0グラム(7日間、5度~10度)
2.0グラム(6日間、10度~20度)
2.0グラム(5日間、20度以上)
種子及び果実 臭化メチル 臭化メチル 倉庫1立方メートルにつき
48.5グラム(2時間、5度以上)
40.5グラム(2時間、10度以上)
32.5グラム(2時間、15度以上)
24.5グラム(2時間、20度以上)
16.0グラム(2時間、25度以上)
栽植の用に供する植物及びその部分 臭化メチル 臭化メチル 倉庫1立方メートルにつき
48.5グラム(2時間、15度)
32.5グラム(2時間、20度)
袋詰めされた米、麦、えんどう、コプラ、ココア豆、コーヒー豆、こしょう等(紛状及びかす状のものを除く。) 臭化メチル 臭化メチル 倉庫1立方メートルにつき
26グラム(48時間、10度以下)
21グラム(48時間、10度~20度)
15グラム(48時間、20度以上)
袋詰めされたとうもろこし、きび、もろこし等(紛状及びかす状のものを除く。) 臭化メチル 臭化メチル 倉庫1立方メートルにつき
34グラム(48時間、10度以下)
27グラム(48時間、10度~20度)
21グラム(48時間、20度以上)
袋詰めされた大豆、いんげん、らっかせい等(紛状及びかす状のものを除く。) 臭化メチル 臭化メチル 倉庫1立方メートルにつき
42グラム(48時間、10度以下)
35グラム(48時間、10度~20度)
26グラム(48時間、20度以上)
袋詰めされたそば、ひまの種子及び紅花の種子並びに米、とうもろこし、大豆等の紛状及びかす状のもの 臭化メチル 臭化メチル 倉庫1立方メートルにつき
51グラム(48時間、10度以下)
41グラム(48時間、10度~20度)
30グラム(48時間、20度以上)
木材 臭化メチル 臭化メチル 倉庫1立方メートルにつき
48.5グラム(24時間、15度以下)
32.5グラム(24時間、15度以上)
ばら積みされた米、麦等(紛状及びかす状のものを除く。) 臭化メチル 臭化メチル サイロ1立方メートルにつき
33グラム(48時間、10度以下)
28グラム(48時間、10度~20度)
21グラム(48時間、20度以上)
ばら積みされたとうもろこし、きび、もろこし等(紛状及びかす状のものを除く。) 臭化メチル 臭化メチル サイロ1立方メートルにつき
45グラム(48時間、10度以下)
37グラム(48時間、10度~20度)
28グラム(48時間、20度以上)
ばら積みされた大豆、いんげん、らっかせい等(紛状及びかす状のものを除く。) 臭化メチル 臭化メチル サイロ1立方メートルにつき
49グラム(48時間、10度以下)
40グラム(48時間、10度~20度)
29グラム(48時間、20度以上)
米、麦、とうもろこし、きび、もろこし等(紛状及びかす状のものを除く。) 二酸化炭素 二酸化炭素 倉庫及びサイロ内の濃度
40~80%(21日間、20度~25度)
40~80%(14日間、25~30度)
40~80%(10日間、30度以上)
米、麦、とうもろこし、きび、もろこし等(紛状及びかす状のものを除く。) 二酸化炭素 二酸化炭素 倉庫及びサイロ内の濃度
50%以上(14日間、20度~25度)
50%以上(10日間、25度以上)
切り花 臭化メチル、燐化水素及び二酸化炭素の混合ガス 臭化メチル、燐化水素、二酸化炭素 倉庫1立方メートルにつき、臭化メチルとして14グラム、燐化水素として3グラム及び二酸化炭素5%(4時間、15度)


別表3

種類 品目 基準値(ppm)
穀類 大麦 50
小麦 50
米(玄米をいう) 50
そば 180
とうもろこし 80
ライ麦 50
上記以外の穀物 50
果実 核果実  
あんず(アプリコットを含む) 20
うめ 20
おうとう(チェリーを含む) 20
すもも(プルーンを含む) 20
ネクタリン 20
もも 20
かんきつ類果実  
オレンジ(ネーブルオレンジを含む) 30
グレープフルーツ 30
なつみかんの果実全体 30
みかん 30
ライム 30
レモン 30
上記以外のかんきつ類果実 30
仁果果実  
西洋なし 20
日本なし 20
びわ 20
マルメロ 20
りんご 20
熱帯産果実  
アボカド 75
キウィー 30
グアバ 20
なつめやし 20
パイナップル 20
パッションフルーツ 20
バナナ 20
パパイヤ 20
マンゴー 20
ベリー類果実  
いちご 30
クランベリー 20
ハックルベリー 20
ブラックベリー 20
ブルーベリー 20
ラズベリー 20
上記以外のベリー類果実 20
かき 20
ぶどう 20
上記並びにすいか、まくわうり及びメロン類果実以外の果実 60

(注)別表2に掲げるくん蒸剤のうち、食品衛生法第7条第1項に基づく残留農薬基準が設定されているものは、臭化メチルのみである。

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