第7回研究成果報告書(2001年)

[研究成果報告書 索引]

Abs.No.
研究テーマ
研究者
アフリカ産植物に含まれる新規食品添加物の探索と化粧品・美白化食品としての利用 沢辺 昭義
近畿大学 農学部農芸化学科
人工甘味料の学習・記憶機能および情動行動に及ぼす影響 亀井淳三
星薬科大学薬学部
食品品目別、日本人の1人1日平均喫食量の算定および将来補正方法の研究 山内 あい子
徳島大学薬学研究科
キノアの抗酸化性と抗酸化性食品素材としての利用 渡辺 克美
近畿大学農学部
天然乳化剤植物性ステロールの安全性確認のための
体内取り込み機構の解明
米谷 芳枝
星薬科大学
ヒト正常型c-Ha-rasトランスジェニックラットを用いた食品添加物の発がん性短期検索法の確立 津田 洋幸
国立がんセンター研究所化学療法部
食用油脂へのパプリカ色素の適用性 松藤 寛
日本大学・生物資源科学部
乳化食品モデル系における機能性着色剤としてのルテイン脂肪酸エステルの利用 森田 尚文
大阪府立大学大学院農学生命科学研究科
食品添加物の食物アレルギー誘導性に関する検討 中西 剛
大阪大学大学院薬学研究科
アントシアニン色素の発色と安定性の分子機構とエンジニアリング 斉藤和季
千葉大学大学院薬学研究院
三叉神経刺激性香辛料成分が脳血流量に及ぼす影響 駒井三千夫
東北大学・大学院農学研究科・栄養学分野
食品添加物安全性評価のための各種理化学データ構築に関する研究 (その3) 中野 昭夫
東亜大学大学院
果実アントシアニン色素の動物における吸収と代謝 宮澤 陽夫
東北大学 大学院農学研究科
ムラサキイモ色素生産に関わる酵素遺伝子の精密機能解析 阿部 郁朗
静岡県立大学薬学部
ダイズタンパク質を基本とする新規食品添加物の開発 内海 成
京都大学食糧科学研究所
デヒドロアスコルビン酸水溶液の褐変に及ぼす酸化防止剤の影響 沢村 正義
高知大学農学部
高等菌類による光学活性不飽和ラクトン類及びモノテルペンアルコール類の生産と利用に関する研究 佐々 武史
山形大学農学部
食品添加物としての天然植物色素の安定化と高機能化に関する研究 (第3報)
天然植物色素の酵素的分子設計による機能改変
中島 伸佳
岡山県立大学栄養学科
天然保存料を導入した可食性フィルムの調製と
その利用に関する研究
田中宗彦
東京水産大学水産学部食品生産学科
抗酸化ペプチドの相乗作用を利用した新規抗酸化剤の開発 村本 光二
東北大学大学院農学研究料資源生物科学専攻
香味料有効成分の配糖化
~新規香味成分の酵素的創製~
浜田 博喜
岡山理科大学理学部基礎理学科
プロリン特異性ペプチダーゼを用いた味液の調整法の開発 芳本 忠
長崎大学薬学部
電子スピン共鳴装置を検出端に用いる抗酸化能、特に活性酸素消去能の連続自動分析システムの開発 受田 浩之
高知大学 農学部
味細胞系の嗜好性物質に対する応答特性の解析による苦味評価 森 友彦
京都大学・食糧科学研究所
水溶性フレーバーの乳化乾燥粉末作成時の乳化剤低減化技術の開発 吉井 英文
鳥取大学工学部・生物応用工学科
植物バイオテクノロジーによる食用色素の生産制御に関する研究 中西 史
東京学芸大学教育学部生物学科
財団法人 三栄源食品化学研究振興財団 特定研究
食品中の食品添加物分析法の開発及び改良に関する研究
伊藤 誉志男
武庫川女子大学薬学部
中澤 裕之
星薬科大学


7-01

アフリカ産植物に含まれる新規食品添加物の探索と化粧品・美白化食品としての利用

近畿大学 農学部農芸化学科  沢辺 昭義


 昨年度はアフリカ産ノゲイトウの葉の成分探索を行い、6種の成分を得た。それらの成分のうち、citrusin Cに顕著な化粧品・美白効果が認められたことから、その合成方法についても確立することができ、多量に供給することが可能になったことを明らかにした。
 本年度はアフリカ産植物、フヨウについて検討した結果、5種の成分の単離に成功した。これらの成分のうち、kaempferol およびcitrusin C に顕著な化粧品・美白効果が認められた。また. 1-ブタノール抽出物において、高い活性酸素抑制効果がみられることからシェラレオネの人々が長寿であることにフヨウの葉が関連しているものと考えられた。



7-02

人工甘味料の学習・記憶機能および情動行動に及ぼす影響

星薬科大学薬学部  亀井 淳三


 動物の不安状態を評価することが可能な方法として確立されているHole board試験法により評価した不安状態などの情動行動の変化に対する人工甘味料の影響について検討した。また、モーリス水迷路試験法およびステップダウン型受動回避試験法を用いてモーリス水迷路試験法およびステップダウン型受動回避試験法を用いて評価した学習・記憶機能に対する人工甘味料の影響についても合わせて検討した。グルコース(3g/kg)、サッカリン(60mg/kg)およびアスパルテーム(150mg/kg)の急性投与あるいは慢性投与は、いずれも不安などを惹起せず、情動行動に対して何ら影響を示さないことが明らかとなった。サッカリンを2週間連続投与しても、グルコースを投与した際に認められたジアゼパムの抗不安作用の減弱作用は認められていない。アスパルテームを2週間連投した群では、グルコース投与群と同様にジアゼパムの抗不安作用の減弱が認められた。アスパルテームによるジアゼパムの抗不安作用に対する桔抗作用には、糖尿病態でみられたような高血糖状態による変化は考えられず、アスパルテームがペンゾジアゼピン受容体の機能に対して、直接的あるいは間接的に桔抗作用を示す可能性が考えられる。一方、サッカリンあるいはアスパルテームは学習・記憶機能に対して、ほとんど影響を与えないことが明らかとなった。
今後さらに、長期間の連投による影響を検討し、さらに安全性を証明していく必要があると思われる。



7-03

食品品目別、日本人の1人1日平均喫食量の算定および将来補正方法の研究

徳島大学薬学研究科  山内 あい子


 食品中の栄養成分、添加物あるいは汚染物質等の日本人の1人1日平均摂取量計算には、旧厚生省国民栄養調査に基づく「食品群別栄養素等摂取量」の数値が分析値とともに用いられている。しかし、国民栄養調査には、①摘出人口が少ない、②季節変動が避けられない、③詳細な食品品目毎のデータがない等の問題がある。そこで、本研究は、平成7年度から平成11年度の統計法に基づく各種統計を用いて、国民栄養調査値の補正または補完、および同数値の再評価を行うことを目的として実施された。
 今回は、植物性食品の日本人1人1日喫食量について検討した。数値の補正・再評価のために、生鮮食品については種々農林水産統計を用い、年間生産量を基本に輸出入補正し、流通中損失、廃棄率(歩留まり)を可能な限り考慮し、供給(純)食料値を求めた。季節食品は、総理府家計調査年報の品目別月次購入量を用いて年平均化した。さらに、各種統計の比較により、統計理論上の外食率と供給後廃棄率を試算した。
 その結果、①国民栄養調査の季節変動補正値、②家計調査購入量の喫食量への変換補正値、③生産輸出入を考慮した国内供給食料値をもとに、食品品目別の日本人1人1日当たり平均喫食量と、外食(等)率および供給後廃棄率が算出された。さらに、これらの値を比較・評価考察することにより、国民栄養調査に無い品目をも含めた、食品品目別の喫食量を求めることが可能であると考えられた。



7-04

キノアの抗酸化性と抗酸化性食品素材としての利用

近畿大学農学部  渡辺 克美


 キノアの食品成分特性、機能性について分析を行った。キノア粉末には脂質が4.8%~6.0%、食物繊維が8.2%~8.5%と、コメ、コムギ、オオムギなどの主要穀類に比べると多く含まれていた。また、ミネラルでは、カルシウムが多く含まれていた。他方、キノアの抗酸化活性をロダン鉄法とDPPH法により分析したところ、いずれの分析方法においても抗酸化活性が認められた。キノアの熱水煮沸抽出物、そのクロロホルム抽出分画物や酢酸エチル抽出分画物のいずれの抽出分画画分においても抗酸化活性が認められたことより、キノアには多くの抗酸化活性能をもつ物質が含まれているものと考えられる。また、キノアの主要成分であるデンプンの性質を分析したところ、キノアデンブンは多角形で、その大きさは1μm前後と、主要穀類やマメやイモのデンプンとは異なった形状をしており、それらのうちでは最も小さいものであることが明らかとなった。さらに、X線回析により、キノアデンブンは穀類デンプンと同じくA型に属することが明らかとなった。また、アミロース含量は6.6%であり、キノアデンプンはモチ種デンプンであることも明らかとなった。



7-05

天然乳化剤植物性ステロールの安全性確認のための体内取り込み機構の解明

星薬科大学  米谷 芳枝


天然乳化剤である植物性ステロールは、食品のw/o型エマルジョンの乳化剤として用いられている。植物性ステロールは、血中コレステロール低下作用や癌予防効果、免疫抑制作用などが報告されている。私たちは大豆由来の植物性ステロールが腸管中や鼻粘膜上では共存物質に対して吸収促進作用を示すことを見いだした。このような吸収促進作用は、生体膜に対する減弱や植物性ステロール自身の吸収による可能性が推測される。従って、本研究は植物性ステロールの安全性確認のために植物性ステロールの体内取り込みによる生体膜機能への影響を調べた。
ナノ粒子やサスペンション状態の植物性ステロールは、ラット小腸からの吸収性は低く、共存物質としての蛍光物質の透過性から調べた結果、小腸粘膜に対する影響も低いと推察された。また、小腸上皮細胞の生体膜モデルとしてのリポソームを用いて、植物性ステロールと細胞膜中リン脂質との相互作用を調べた結果、低濃度の植物性ステロールでは小腸上皮細胞膜構造を乱すが、ある濃度以上では逆に安定化することが明らかとなった。



7-06

ヒト正常型c-Ha-ras遺伝子トランスジェニックラットを用いた
食品添加物の発がん性短期検索法の確立

国立がんセンター研究所化学療法部  津田 洋幸


 我々の作成した乳腺発がん高感受性ヒト正常型c-Ha-ras遺伝子トランスジェニックラット(Tg)ラットを用い、乳腺腫傷の発生を指標とした食品添加物の発がん性の中期検索モデルの開発を試みた。方法はまず既知の発がん物質について陽性結果を得られるかについての実験を行った。1) ラットにおいては甲状腺、肺等を標的とするニトロサミンのN,N-bis(2-hydroxypropyl) nitrosamine (DHPN)を0.1%、2週間飲水投与後全経過40週にて屠殺した。2) 皮膚、皮下組織および乳線腫瘍を発生させる多環芳香族炭化水素のbenzo[a]pyrene(B[a]P)、3-methyl cholanthrene (3-MC)、弱い肝発がん物質のanthraceneを、50日齢よりそれぞれ200mg/kgにて最初の3週に3回胃内投与し、雌は実験開始12週、雄は20週にて屠殺した。その結果、1) DHPNでTg雌雄において乳腺腫瘍(腺瞳+腺がん)が有意に多く発生した。2) 乳腺腫瘍は雌Tgで3-MC、B[a]P、anthraceneの全てで、また雄Tgで3-MC、B[a]P、anthraceneでそれぞれ野生型より有意に多く発生した。以上から、本Tgラットでは雌では12週、雄でも20週の期間に3-MC、B[a]P、anthraceneで野生型より有意に多く乳線腫瘍が発生する事が明かとなった。とくに非乳腺発がん物質の発がん性が容易に検出できたことは、本Tgラットは臓器標的性においてかなり広い範囲の発がん物質の検索に有用であり、弱い発がん物質のanthraceneについても陽性結果がえられたことは、本Tgラットが食品添加物の発がん性短期検索法として実用化できる可能性が示された。



7-07

食用油脂へのパプリカ色素の適用性

日本大学・生物資源科学部  松藤 寛


 抗酸化性を有するパプリカ色素を食用油脂に添加し、その挙動を追跡した。追跡するにあたり、まずパプリカ色素を添加した食用油脂の酸化劣化評価法について検討を行った。従来法では共存するパプリカ色素の影響を受けることから、核磁気共鳴分光計(NMR)を用いて行った。すなわち、食用油脂のモデル化合物としてリノール酸を用い、酸化によって減少するジビニルメチレンのプロトンシグナル(DP)を1H-NMRで定量的に測定したところ、DPシグナルはリノール酸の酸化に伴い減少し、その減少量は従来の酸化劣化評価の一つである過酸化物価値と良好な直線関係を示した。そこで、リノール酸に対してパプリカ色素を0.002、0.02、0.2%の割合で添加し、その酸化劣化を追跡したところ、パプリカ色素添加濃度の増加に伴い、リノール酸の酸化劣化は明らかに抑制された。また、パプリカ色素の消失後、急激な酸化劣化が起こっていたことから、パプリカ色素の残量(色の消失)を視覚的に判断することにより、油脂の酸化度合いを推察できることが示唆された。



7-08

乳化食品モデル系における機能性着色剤としてのルテイン脂肪酸エステルの利用

大阪府立大学大学院農学生命科学研究科  森田 尚文


 カロテノイド、即ちb-カロテンおよびルテインにより着色したドライフードモデル、およびドレッシングモデル中での色素安定性、およびこれらのカロテノイドの脂質酸化反応における効果を検討した。b-カロテンおよびルテインをドライフードモデルに添加すると黄色となった。反応中のカロテノイドの残存量およびドライフードモデルの色調の変化から始発の添加量が高い場合には迅速に分解することがわかった。また、添加カロテノイドの濃度が高い場合ほど、生成される脂質酸化の量が多かった。しかしながら、カロテノイドの色調の変化と酸化促進はa-トコフェロールの添加により低下した。一方、ドレッシングモデル中では9日間、60℃の保存下でもルテインおよびルテインジエステル共に顕著な分解は認められなく、抗酸化活性が持続し、且つ色調についても急激な変化は認められずドライフードモデルの場合に比べて安定であった。



7-09

食品添加物の食物アレルギー誘導性に関する検討

大阪大学大学院薬学研究科  中西 剛


 本研究では、食品添加物の安全性の確保と新規機能性食品の探索を目的として、天然着色料7種類と合成着色料3種類のB細胞と抗原提示細胞に対する機能修飾に関する検討を行った。その結果、天然着色料であるコウリャン色素はマウス脾臓細胞に対し単独で増殖作用を示した。また本作用は、コウリャン色素がB細胞に対して作用していることに起因することも明らかとなった。さらに脾臓細胞をリポポリサッカライド(LPS)で処理した際の影響については、コウリャン色素が無刺激ではほとんど作用を示さない濃度において増殖反応をさらに促進した。したがってコウリャン色素は、LPS刺激によって誘導されるB細胞増殖反応に対して相乗的に働くことも明らかとなった。
一方、抗原提示細胞に与える影響について検討するために樹状細胞株であるDC2.4細胞の表面抗原の発現に対する影響について検討したところ、クチナシ青色色素を除くすべての着色料でMHC class II分子の低下が認められた。また青色1号色素、赤色3号色素、黄色5号色素、モナス色素、ベニバナ色素、コウリャン色素、でMHC class I 分子の低下が認められた。その他の分子については、モナス色素、コウリャン色素において、B7-1、CD40分子の低下が認められた。特に顕著な変化が認められたのはモナス色素で、すべての分子が低下しており、その程度も顕著であった。したがって、これらの色素は樹状細胞の抗原提示能を阻害する可能性が示唆された。



7-10

アントシアニン色素の発色と安定性の分子機構とエンジニアリング

千葉大学大学院薬学研究院  斉藤和季、中嶋淳一郎、山崎真巳


 植物のアントシアニン生合成経路において、無色のロイコアントシアニジンから有色のアントシアニジン3-3-グルコシドを生成する反応は、アントシアニジン合成酵素(ANS)とフラボノイド3-グルコース転移酵素(3-GT)によって触媒されると考えられている。しかし、これまでこの段階の反応機構の詳細は明らかではなかった。
 複数の植物種(ペチュニア、キンギョソウ、ペチュニアおよびトレニア)のANSをコードするcDNAを大腸菌内で発現させて得た組み換え酵素を用いたin vitroの解析により、実験に用いた全ての組み換えANSからロイコアントシアニジンをアントシアニジンに変換するANS活性を検出することに成功し、ANSが2-オキソグルタル酸依存性酸化酵素であることを生化学的に証明した。さらに大腸菌内で発現させたペチュニア3-GTとペチュニアANSとの共存反応解析により、ANSと3-GTの反応順序を生化学的に解明した。また、擬似的に植物細胞内の反応を再現することにより、アントシアニジン3-グルコシドの発色には液胞程度の酸性条件で十分であることを示した。以上の結果から、次のような反応機構が示唆された。すなわち、ANSはロイコアントシアニジンの2、3位からの脱水素を触媒し、2-フラベン-3,4-ジオールを生成する。その2-フラベン-3,4-ジオールは、非酵素的異性化によって安定な3-フラベン-2,3-ジオール(プソイド塩基型アントシアニジン)となり、これが3-GTによってグルコシル化される。さらに液砲へ輸送され、その酸性条件下で有色のアントシアニジン3-グルコシド(フラビリウムイオン)が生成する。



7-11

三叉神経刺激性香辛料成分が脳血流量に及ぼす影響

東北大学・大学院農学研究科・栄養学分野  駒井三千夫
(共同研究者:石川宏海、畠山英子、宮崎良文、古川勇次)


 辛味物質などの香辛料成分の刺激は、口腔内に分布する三叉神経を介して中枢に伝えられている。最近、匂いや香りを喚ぐことによる脳の血流量の変化および末梢の血圧変化によって、快不快の感覚がある程度評価できるという装置が開発されてきた。1秒ごとに測定できる光トポグラフィー技術やトノメトリー技術によって、人間の感情あるいは決不快の変化を非侵襲的にある程度モニターすることができるようになった。今回の報告は、こうした装置を用いた食塩あるいは辛味物質の口腔内刺激後の1秒毎の脳における血流量変化と、末梢の血圧変化に関する最初の報告である。
 これまでのラットを用いた我々の検討によって、トウガラシの主成分であるカプサイシンは、口腔内に10秒間塗布するだけで食塩の摂取を低下させる効果を有することが示されてきた。被験者を用いた今回の測定によって、とくに食塩を30秒間口に含んだ時の収縮期血圧・脈拍数の増加が、カプサイシンの口腔内処理後には軽減されるというデータが得られた。これには、カテコールアミンや食欲調節ペプチドの関与が示唆されたが、その機構についてはなお詳細な研究が必要である。また、脳血流量は、多くの被験者で(10/13)カプサイシンの処理後10秒から30秒以上経過後に(今回の記録時間は30秒間のみ)大きく増大することが分かった。



7-12

食品添加物安全性評価のための各種理化学データ
構築に関する研究(その3)


東亜大学大学院  中野 昭夫 義平 邦利
東亜大学工学部  江澤 正思
 食品添加物の安全性評価の目的でNMRスペクトルの測定が可能な約230品目の食品添加物の内、196品目のNMRスペクトルを測定し、スペクトルの帰属を行った。次にこれら添加物の1H-NMRスペクトル、13C-NMRスペクトル、添加物の名称、分子式、及び分子量等のデータをWebページ上に公開する目的でスペクトルデータのテキスト化を行い公開した。又、13C-NMRの吸収値(化学シフト値)を用いて、食品中に含まれる添加物の同定が可能な分析ソフトを開発し公開した。更に、このシステムを用いて、加工食品中の添加物の定性分析を試みた。



7-13

果実アントシアニン色素の動物における吸収と代謝

東北大学 大学院農学研究科  宮澤 陽夫


 果実の色素成分であるアントシアニン(cyanidine-3-glucoside, Cy-g; cyanidine-3-sambubioside, Cy-s; cyanidine-3,5-diglucoside, Cy-dgの混合物)のラットにおける吸収と代謝をUV-HPLC法およびLC-ESI/TOF MSを用いて検討してきた。まず、前年度までの研究によって、食品色素であるアントシアニンは当初予想されていたよりも遥かに消化管から体内への吸収が微量であることがわかった。
 例えば、緑茶カテキンは摂取量の約5%、ケルセチンは約10%、大豆イソフラボン類は約20%が体内に移行するのに、アントシアニンの体内移行量は多くて2%あるいはそれ以下であった。アントシアニンの主な吸収部位は胃であり、配糖体のまま肝臓に入り、そのほとんどはメチル化され尿中に排せつされることがわかった。これが、アントシアニンを摂取しても血中濃度がなかなか上がらない原因のひとつであった。ただメチル化を受けたことから、肝臓や腎臓の薬物代謝に影響する可能性が考えられた。過剰量のアントシアニンをラットに経口投与するとアントシアニンは肝臓のcatechol O-methyl transferaseによってメチル化され、この時、S-adenosylmethionineが使われS-adenosylhomocysteineが生じ、血液のhomocysteine値が上がる現象が観察された。本結果は、catechol構造を持つアントシアニンは肝臓の薬物代謝の基質になり代謝されることを示した。



7-14

ムラサキイモ色素生産に関わる酵素遺伝子の精密機能解析

静岡県立大学薬学部  阿部 郁朗


 ムラサキイモ(山川紫)色素生産に関わる酵素遺伝子のうち、カルコンフラバノンイソメラーゼ(CHI)、及び、UDPグルコース3-O-フラボノイドグルコース転移酵素(F3GT)遺伝子の単離に世界に先駆けて成功した。このうちCHI遺伝子については全長配列を決定し、大腸菌において異種発現した酵素について活性を確認した。今後、F3GT遺伝子についてはさらに全長配列の決定を引き続き試みる一方で、酵素の基質特異性や酵素反応のキネティクスなど、また、酵素反応機構の解明をめざした精密機能解析を行っていく予定である。これらはムラサキイモ色素生産の生合成工学を行う上できわめて重要な知見であり、天然色素が組み替え食品ならぬ「組み替え添加物」として使用される事態においても通用する規格設定の一助となるものと思われる。



7-15

ダイズタンパク質を基本とする新規食品添加物の開発

京都大学食糧科学研究所  内海 成、丸山 伸之


 ダイズタンパク質を基本とする新規食品添加物を開発する基盤を確立することを目的として、ダイズタンパク質の主要成分である7Sグロブリンと11Sグロブリンの構成サブユニットの特性を解析した。7Sグロブリンはa、a'、bの3種のサブユニットより成り、11SグロブリンはグループIの3種とグループIIの2種より成る。天然のダイズ種子中には両グロブリンとして各構成サブユニットが複雑に組み合わさった種々の分子種が存在し、単一サブユニット組成や単一グループ組成の分子種を天然のダイズ種子から調製することは困難である。限定的なサブユニット組成をもつ変異ダイズを利用して、7 Sグロブリンの単一サブユニット組成ヘテロ分子種、11Sグロブリンの単一サブユニットグループ分子種を調製し、それらの溶解性、熱安定性、表面疎水性、乳化性を比較・解析した。
 その結果、両グロブリンとも、構成サブユニットやサブユニットグループによって、これらの特性が互いに異なること、そして、野性型7Sグロブリンや11Sグロブリンの特性への寄与の仕方も異なること、しかも寄与の仕方が特性によっても異なることを明らかにした。これらの成果は、ダイズタンパク質を基本とする食品添加物を開発するための育種の方向性を示すものである。



7-16

デヒドロアスコルビン酸水溶液の褐変に及ぼす酸化防止剤の影響

高知大学農学部  沢村 正義


 褐変モデルの一つとして、デヒドロアスコルビン酸(DHA)水溶液に関して、酸化防止剤(亜硫酸ナトリウムおよびL-システイン)の影響を調べた。100 mM DHA水溶液において、亜硫酸ナトリウムの場合、褐変抑制は30 mM以上で観察された。しかし0.1~20 mMでは褐変が促進された。とくに、10 mMでは高い褐変促進が認められた。システインでは、l mMから40 mM添加範囲において褐変度の増加がみられ、とくに20 mMでは高い褐変の増加が認められた。システインの場合、褐変抑制には100 mM以上の濃度が必要であった。一方、DHA分解物で褐変前駆体のC-IおよびC-IIの生成量は亜硫酸ナトリウムおよびシステインの添加濃度の増大に伴い生成量は減少し、100 mMでは2-furoic acid以外のピークは認められなかった。また、亜硫酸ナトリウム10mM添加時には極大吸収330 nmのピークが最大となった。DHA水溶液のpHの褐変に及ぼす影響では、pH 1とpH 2~5の間で亜硫酸ナトリウムの添加濃度に差がみられた。DHAの褐変物質の前駆体の一つC-Iを単離精製し、化学構造の推定を試みた。その結果、分子量265のカルボキシル基を有する化合物であることが推察された。



7-17

高等菌類による光学活性不飽和ラクトン類及びモノテルペンアルコール類の
生産と利用に関する研究

山形大学農学部  兼目 裕充、佐々 武史


 菌類は特徴ある不飽和ラクトン類やテルペンアルコール類の有用香料物質、特に極微量で香りへの寄与が高い光学活性物質を100%の光学純度で産生する能力を有する。これらの有用な物質生産機能の開発研究は、その生産性の効率化、省エネルギー化のみならず、添加物の効果的な低減にもつながると考えられ、今後益々重要になると考えられる。本研究では、食品添加物として重要な香料である光学活性不飽和 g-ラクトン類、モノテルペンアルコール類の生産法を開発し、それらの成分の化学的同定と利用について検討を行った。
 不完全糸状菌Acremonium roseumの生理活性二次代謝産物の研究の過程で l)、特徴的な臭いを有する種子発芽阻害物質2種類を分離した。その1つは(S)-(+)-(Z)-6-dodecen-4-olideと同定された。本物質はUSA/FEMA収載物質で、バターの重要な香気成分の一つとして食品香料に使用されているものであった。また、同時に構造類似の物質を分離し、その構造を(S)-(+)-(Z,Z)-6,9-dodecadien-4-olideと推定した。この関連物質も特徴ある高い香りを有していた。
 糸状菌Phomopsis amygdali が生産する植物ホルモン様活性ジテルペノイドの生合成研究の過程で 2、菌類としては大変珍しいRC-1,2,4および-5と仮称したモノテルペン類を分離した。RC-1はすでに本菌から単離報告のあった1a,2a,3b-trihydroxy-p -menthane 3) と同定された。RC-2およびRC-4は、ハッカ植物の生産する(-)-メントールの鏡像異性体である(+)-メントールの誘導体であり、それぞれの構造を(+)-7-hydroxymenthold 4)および(+)-6a-hydroxymentholと結論した。RC-5は1a-hydroxy-2a,3a-epoxy-p -menthaneと結論し、その構造からRC-1の前駆体と考えられた。RC-2およびRC-4は糸状菌が生産する珍しいモノテルペンであるのみならず、非天然型メントールの構造を有する点で興味深い。
 ヤマブシタケ(Hericium erinaceum)子実体は、独特な形と共に、香りの面でも特徴が見られる。液体培養菌体も子実体と似た香りがあったことから、この香り成分を検索し、十数種類のセスキテルペン炭化水素が含まれていることを見出した。GC-MS分析からこれらの一部をb-cubebene, b-elemene, g-lelemene, trans-b-farnesene, germacrene D, b-bisaboleneおよびd-cadineneと同定した。
 以上のように、高等菌類が産生する光学活性不飽和 g-ラクトン類、モノテルペンアルコール類とセスキテルペン炭化水素類の構造を明らかにし、それらの生産方法を研究した。特に(S)-(+)-(Z)-6-dodecen-4-olideは実際に香料として使用されており、この光学活性体を100%の純度で生産できることから、糸状菌による本化合物の発酵生産法は大変有用であり、実用性が高いと考えられた。



7-18

食品添加物としての天然植物色素の安定化と高機能化に関する研究
(第3報)
天然植物色素の酵素的分子設計による機能改変


岡山県立大学 栄養学科  中島 伸佳
(共同研究者)
京都教育大学 理学科  石原 浩二
岡山理科大学 理学部  古谷 力
 食品添加物としての天然植物色素の光や熱に対する安定化や、抗酸化性を始めとした生理機能の高機能化を目的として、リパーゼのエステル交換能を応用した酵素的方法により、アシル化フラボノイドグルコシドやアシル化アントシアニンの効率的な合成に成功した。また同時に、酵母によるUDPglucose発酵を共役させたユーカリ培養細胞由来の酵素反応系を用いる、ポリフェノール(フラボノイド)類の酵素的グルコシル化法も合わせて開発した。



7-19

天然保存料を導入した可食性フィルムの調製とその利用に関する研究

東京水産大学水産学部食品生産学科  田中宗彦、石崎松一郎、高井陸雄


 抗菌性を有する可食性フィルムを開発するにあたり、数ある天然抗菌剤のうちでe -ポリリジンを本研究では使用した。まず、e -ポリリジンがクロカジキ筋形質タンパク質フィルムの物理的性質に及ぼす影響を調べ、ついでe -ポリリジン添加フィルムの抗菌性を測定した。フィルムの引っ張り強度は、pH4のフィルムがいずれの添加濃度でも小さく、pH6あるいはpH10.5の場合両者間に有意な差は認められなかった。また、いずれのpHでもe -ポリリジンの添加は調製した可食性フィルムの引っ張り強度に影響を及ぼさなかった。同様の傾向がフィルムの引っ張り伸び率、水蒸気透過性にも見られた。フィルムに添加したe-ポリリジンは抗菌性を発揮し、特にグラム陽性菌に対して効果が良好であった。以上のように、クロカジキ筋形質タンパク質フィルムにe -ポリリジンを添加することにより、抗菌性を有する可食性フィルムが開発できることが明らかになった。



7-20

抗酸化ペプチドの相乗作用を利用した新規抗酸化剤の開発

東北大学大学院農学研究科資源生物科学専攻  村本 光二


 抗酸化ペプチドの構造と活性相関およびフェノール化合物との相乗作用に関する知見に基づいた新規抗酸化剤の開発を目的として、ヒスチジン含有ペプチドとサリチル酸または没食子酸のハイブリッド化合物をデザインした。没食子酸のカルボキシル基にペプチドあるいはアミノ酸のアミノ基をカップリングすることによって、強いラジカル消去作用をもったハイブリッド化合物を得ることができた。



7-21

香味料有効成分の配糖化
~新規香味成分の酵素的創製~

岡山理科大学理学部基礎理学科  浜田 博喜


 香辛料有効成分へのグルコシル化を行い、水溶性を高めるなど、有用かつ高機能な新規香辛料を創製することを本研究の目標として、酵素の優れた触媒機能を応用し、唐辛子の辛味成分であるカプサイシノイドへの効率的な配糖化に成功した。



7-22

プロリン特異性ペプチダーゼを用いた味液の調整法の開発

長崎大学薬学部  芳本 忠


 プロテアーゼ分解の障害となるプロリンやピログルタミン酸を特異的に分解するプロリルアミノペプチダーゼとピログルタミルペプチダーゼを開発し、それらを用いタンパク質のアミノ酸への完全分解による味液の調整法の開発をおこなった。食用とするため、酵素の安全な給源としてメロン果肉からプロリルアミノペプチダーゼを精製しその性質を明らかにした。酵素は他の起源のプロリルアミノペプチダーゼと同様にアミノ末端プロリンを特異的に除去した。一方、納豆生産にも用いられる枯草菌由来のピログルタミルペプチダーゼはすでに我々が研究してきたが、不安定なためサブユニット間にジスルフィド結合を入れることにより30度耐熱性が増した。これら酵素を用いることにより、大豆タンパク質のプロテアーゼ分解が可能となった。



7-23

電子スピン共鳴装置を検出端に用いる抗酸化能、特に活性酸素消去能の
連続自動分析システムの開発

高知大学 農学部  受田 浩之


 活性酸素の消去活性を有する物質は食品の酸化的な劣化の防止に、また老化や生活習慣病の予防にも有効である。本研究では特にスーパーオキシドアニオンの消去能を有する食品成分のスクリーニング法の開発を目的として、キサンチンオキシダーゼ(XO)固定化リアクターをスーパーオキシドアニオン発生カラムとして利用したスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性の計測システムの開発を試みた。
 初めにXO固定化リアクターの性能の把握とSOD活性測定の最適条件の設定を行うために、ルシゲニンを用いた化学発光検出に基づくSOD活性計測法の開発を行った。最適化したシングルラインでのフローインジェクション分析(FIA)システムではIC50を与えるSOD濃度は200ng/ml以下、注入量としては3.6ngであった。スーパーオキシドアニオンを継続的に発生させるダブルラインシステムの設定を行ったところ、50ng/ml以下のIC50が得られ、分析感度を向上させることが可能であった。
次に、ルシゲニンの代わりにDMPOを検出プローブに用いる電子スピン共鳴装置(ESR)を検出端に利用した新しいSOD活性測定法の開発に取り組んだ。最初にTEMPOLの繰り返し注入による特定ラジカルの連続モニタリングの可能性について検討を行ったところ、再現性の高いFIA-ESRシグナルを得ることができた。そこで、化学発光FIAシステムの最適条件に基づいてスーパーオキシドアニオンとDMPOのスピンアダクトの検出を試みたが、満足の得られる強度のコントロールピークを得ることはできなかった。この結果はプローブとスーパーオキシドアニオンの反応性の低さに起因するものと考えられ、今後スーパーオキシドアニオンとの反応性に富み、かつ安価なプローブを開発する必要性が強く示唆された。



7-24

味細胞系の嗜好性物質に対する応答特性の解析による苦味評価

京都大学・食糧科学研究所  森 友彦


 味細胞における苦味情報伝達経路については、セカンドメッセンジャー関与型経路の活性化や、イオンチャネル・細胞膜への直接的相互作用など複数種類の存在が示唆されている。本研究では、マウス単離味細胞の応答をホールセルパッチクランプ法を用いて測定し、苦味情報伝達経路について電気生理学的な方面から解析を行った。その結果、以下の成果を得た。

  • 苦味物質であるデナトニウム・キニーネ刺激は、味細胞に異なる応答を生じさせることが認められた。
  • マウス味細胞におけるデナトニウムの情報伝達経路として、ホスホリパーゼC、ホスホジエステラーゼをそれぞれエフェクターとする二種類のGタンパク質・セカンドメッセンジャー関与型経路が同一細胞内に共存して機能していることを提示した。
  • マウス味細胞におけるキニーネの情報伝達経路として、カリウムチャネルが阻害される経路を見出した。またカリウムチャネルの阻害とは別に、細胞の膜コンダクタンスを上昇させる経路の存在を明らかにした。このコンダクタンス上昇は、Gタンパク質・セカンドメッセンジャー関与型経路ではなく、キニーネが直接カチオンの流入を促すことによるものであることが示唆された。
  • また、細胞内外のイオン組成を変化させた条件下における検討から、各味情報が複数種類の経路を介して伝達されることを認めたので報告する。


7-25

水溶性フレーバーの乳化乾燥粉末作成時の乳化剤低減化技術の開発

鳥取大学工学部・生物応用工学科  吉井 英文


 水溶性モデルフレーバーとして酪酸エチル、脂溶性モデルフレーバーとしてd -リモネンを用い、乳化剤としてアラビアガム(GA)、大豆水溶性多糖(SSPS)及び修飾デンプン(Hi-cap)を用いて、乳化フレーバーエマルションを噴霧乾燥することにより、フレーバー乾燥粉末を得た。噴霧乾燥による粉末中フレーバー残留率は、乳化エマルション径に大きく依存した。乳化エマルション溶液中と噴霧粉末中のエマルション径分布とを調べた結果、平均エマルション径が1.5 mmより大きい場合、アトマイザー後エマルション径が小さくなっていた。これは、アトマイザーによりエマルション径の大きなフレーバー滴は壊れ、蒸発するためと考えられる。作成した噴霧乾燥粉末のフレーバー徐放挙動は、フレーバー保持担体の組成、相対湿度に大きく依存した。



7-26

植物バイオテクノロジーによる食用色素の生産制御に関する研究

東京学芸大学教育学部生物学科  中西 史


セイヨウアカネ(Rubia tinctorum)の毛状根は収穫後、乾燥・抽出の過程において色調が著しく変化し、それは含有するアントラキノン系色素の組成変化に由来する。その中心はlucidin-3-O-primeverosideからlucidinへの b-primeverosidaseを介した酵素反応である。セイヨウアカネ毛状根からカラムクロマトグラフィー等を用いた分画により得られたb-primeverosidase活性画分のSDS-PAGEでは、約68kDの位置にメインバンドが検出された。ゲル濾過カラムクロマトグラフィーにおける活性の溶出位置から算出した分子量もそれに近い値を示し、本酵素は単量体として機能する可能性が考えられた。また、等電点電気泳動後の活性染色により、等電点は約5.5と推定された。本酵素の活性は、明所で栽培した植物体の茎や葉においてはほとんど検出されなかったが、暗所で培養し、アントラキノン系色素を蓄積した茎では、その活性は顕著に増加し、茎葉部位における本酵素の活性発現は、光により阻害される可能性が示された。



7-27

財団法人 三栄源食品化学研究振興財団 特定研究
食品中の食品添加物分析法の開発及び改良に関する研究
伊藤 誉志男* 武庫川女子大学薬学部 中澤 裕之** 星薬科大学
岡   尚男 愛知県衛生研究所 岸 弘子 神奈川県衛生研究所
笹尾 忠由 横浜市衛生研究所 扇間 昌規 武庫川女子大学薬学部
中村 幹雄 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社 浜野 孝 神戸市衛生研究所
堀江 正一 埼玉県衛生研究所 山崎 勝弘 大阪府立衛生研究所
*代表者  **副代表者

 本研究は、3カ年計画で実行される。平成12年度は、化学構造決定が進んでいる天然色素を中心として、20品目の分析法を開発することを目標として取り組んだ。分担研究者からの申告に基づき分担を決定するとともに、日本食品添加物協会に天然添加物の提供を依頼した。色素については、まず17品目の天然色素について1~3社から、試料の提供が得られることとなった。併せて、それらを含む食品の提供も得られた。色素以外の試料についても、順次提供が得られつつある。分析法に関する主な研究結果は次の通りである。
 アントラキノン系色素については、日本薬学会編「衛生試験法・注解2000」を応用し、TLC/デンシトメトリー法あるいは、HPLCによるより簡便で精度のよい定量方法、さらに電気泳動法を用いた試験法の開発に取り組んだ。コチニール色素およびラック色素について、電気泳動法を用いた新しい試験法が完成した。また、食品中のラック色素分析のための基礎的データとなる化学構造をタンデム型マススペクトリメトリーより行った。
 カロチノイド系色素については、TLC/デンシトメトリー法あるいは、HPLCによるより簡便で精度のよい定量方法を検討した。オレンジ色素、トマト色素、マリーゴールド色素について、TLC/デンシトメトリー法を用いた新しい試験法が完成した。また、クチナシ色素、アナトー色素の前処理法及び展開溶媒の検討も行われた。多くの市販品に適用したところ、Rf値の良好な再現性が示され実用的な方法であることが確認された。
 アントシアニン系色素については、従来からの三次元HPLC法や可視検出器を用いたHPLCに加え、LC/MS法のデータも蓄積された。ブドウ果実色素について、LC/MS法を用いた新しい試験法を完成させた。アカキャベツ色素、ムラサキイモ色素、シソ色素、ムラサキトウモロコシ色素、ブラックカーラント、エルダベリーに関する分析法も加わり、各種食品への検討も行われた。
ウコン色素については、従来からの三次元HPLC法や可視検出器を用いたHPLCに加え、LC/MS法のデータも検討された。LC/MS法を用いた新しい試験法が完成し、各種食品への検討も行われた。
 従来困難だといわれてきた高分子多糖類については、まずHPLC/ICPに基づいた食品中のカラギナンの分析法が確立された。その他の多糖類については、次年度から検討する予定である。また、HPLC/旋光度法を用いた食品中のアラビアガムの分析法も検討された。
 蛋白質あるいはアミノ酸系に関して、高分子蛋白である甘味料タウマチンのHPLC法を用いた新しい試験法を完成させ、果汁入り飲料及びスポーツドリンクへの適応が試された。さらに、感度の高いELISA法が検討され、次年度に食品への適応が試験される予定である。また、アミノ酸分析装置を用いた食品中のアミノ酸分析も検討された。
 HPLC法を用いたシクロデキストリン、トコフェロール、トリプシンの試験法が開発され、各種の食品への適応が試された。また、酸化還元型の検出器を用いた分析法も、抗酸化型についてのボルタンメトリーおよび糖類への適用が試みられた。
 完成された試験法は、定型の様式に統一されることとなった。これらの試験法については、平成14年度に、他の試験研究機関でも試験され、客観的なチェックと評価が実施されることになっている。
 以上のように、初年度を総括すると、各種の特異的な検出器や各種の前処理法が検討され、新たな試験法確立のチャレンジの年であったとまとめられる。


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