報道発表資料

 

平成16年08月04日

医薬食品局食品安全部

 

 

「食品に含まれるカドミウム」に関するQ&A

 

(食品中に含まれるカドミウム)

問1  カドミウムとはどのような物質ですか?どのような害があるのですか?
問2  どうしてお米等の作物にカドミウムが含まれているのですか?
問3  お米にはどの程度のカドミウムが含まれているのですか?
問4  日本人はカドミウムをどの程度摂取しているのですか?外国と比べて摂取量は多いのですか?

 
(我が国における現行の規制や対策)

問5  我が国での規制はどのようなものがありますか?
問6  我が国ではどのような対策が取られていますか?

 
(国際基準の策定)

問7  食品中に含まれるカドミウムについて国際基準が検討されていると聞きましたが、本当ですか?
問8  我が国は国際基準の策定にどう貢献しているのですか?
問9  平成15年12月に国際基準案について我が国が修正意見を提出したと聞きましたが、その内容はどのようなものですか?

 
(今後の国内基準の整備)

問10  食品中に含まれるカドミウムに関する国内基準はいつ頃整備されるのですか?
問11  国際基準が定められたら、それに併せて国内基準を変更するのですか?

 
 

問1  カドミウムとはどのような物質ですか?どのような害があるのですか?

答)

 カドミウムは、鉱物中や土壌中などに天然に存在する重金属で、銀・銅・亜鉛などの金属とともに存在することから、日本においては1千年以上前から鉱山開発などにより、地中から掘り出されてきました。
 食品を摂取した場合に、食品中のカドミウムの一部が体内に吸収・蓄積されることから、カドミウム濃度の高い食品を長年にわたり摂取すると、腎機能障害を引き起こす可能性があります。FAO/WHO食品添加物専門家会議(JECFA)では、カドミウムは腎臓に蓄積し、また、体内での半減期が長いことから、腎皮質のカドミウムが定常濃度になるのに40年以上かかるとしています。また、中高年以上の女性についてリスクが高いとされています。
 なお、イタイイタイ病は、高濃度のカドミウムを数十年にわたり摂取し、さらに、栄養不足等が重なったことにより引き起こされたものです。今回検討が行われているような低濃度のカドミウムの摂取とは状況が全く異なっており、こうした低濃度の摂取でイタイイタイ病が発症することは考えられません。

問2  どうしてお米等の作物にカドミウムが含まれているのですか?

答)

 日本には、全国各地に鉛・銅・亜鉛の鉱山や鉱床が多数あります。カドミウムは、このように天然に存在し、鉱山開発や精錬などの人の活動によって環境中へ排出されるなど、いろいろな原因により水田などの土壌に蓄積してきました。
 お米等の作物に含まれるカドミウムは、作物を栽培している間に、水田などの土壌に含まれているカドミウムが吸収され蓄積したものです。
 お米等の穀物以外にも、野菜、果実、肉、魚など、多くの食品にカドミウムは含まれています。

問3  お米にはどの程度のカドミウムが含まれているのですか?

答)

 お米(玄米)のカドミウム含有量について、全国のさまざまな地域(約3万7千点)を調査した結果を見ると、日本産のお米1kg中に含まれるカドミウム量は平均して0.06mg(=0.06ppm)でした。
 濃度別にみると、鉱山からの排出など人為的に土壌がカドミウムに汚染されていることによると考えられる0.4ppm以上は0.3%となっています。

玄米中のカドミウム含有量の全国実態調査結果


 

問4  日本人はカドミウムをどの程度摂取しているのですか?外国と比べて摂取量は多いのですか?

答)

 厚生労働省の研究機関である国立医薬品食品衛生研究所は、1977年度から毎年、日常食の汚染物質の摂取量調査注1を行っています。2001年度の調査結果によれば、日本人の日常食からのカドミウムの1日摂取量は、29.3μg注2と、この10年間ほとんど変わっていません。
 また、このカドミウムの摂取量をFAO/WHO合同食品添加物専門家会議が定めたカドミウムの暫定耐容摂取量注4(人の体重1kg当たり1週間7μgまで)と比較すると、人の体重を50kgとした場合、食品からのカドミウムの摂取量は暫定耐容摂取量の約6割注5に当たります。
 なお、WHOが1992年に発行した「環境保健クライテリア134(Environmental Health Criteria 134)」では、1本のタバコは約1~2μgのカドミウムを含み、その約10%が吸入されるとしています。
 

 
 

注1) 国立医薬品食品衛生研究所が、地方衛生研究所と協力して行っている調査です。食品を集めて調理し、食品中に含まれるカドミウムの濃度を分析し、国民栄養調査の食品摂取量を基に、1日当たりの汚染物質摂取量を推定しています。
注2) μg(マイクログラム)は、1グラムの百万分の1の重さです。
注3) FAO/WHO合同食品添加物専門家会議とは、国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で運営している専門家により構成される機関であり、食品添加物や環境汚染物質等のリスク評価を行っています。
注4) 毒性試験などに基づくリスク評価により、人が一生涯、毎日続けて摂取したとしても健康に悪影響を与えない量として推定されているものです。
注5) 計算式は以下のとおりです。(日本人の体重を50kgとする。)

食品由来のカドミウム1日摂取量29.3μg×7日÷50kg

───────────────────────────────────

=58.6%

人の体重1kg当たり1週間当たりのカドミウムの暫定耐容摂取量7μg/kg体重/週

 

 また、諸外国のカドミウム摂取量については、今年6月に開催された第61回FAO/WHO食品添加物専門家会議(JECFA)の報告書によれば、各国の調査に基づくカドミウムの平均的な摂取量は0.7~6.3μg/kg体重/週、また、WHOが公表している世界の各地域ごとの食品の消費量とカドミウム濃度から得られた地域ごとの平均的なカドミウム摂取量は2.8~4.2μg/kg体重/週となっています。

 

問5  我が国での規制はどのようなものがありますか?

答)

 我が国のお米のカドミウムの基準値は、食品衛生法に基づく規格基準として、「玄米は、カドミウムを1.0ppm(1kgの玄米中に1.0mgのカドミウム量)以上含んではならない」と定められています。したがって、1.0ppm以上のお米(玄米)は、販売や加工などが禁止され、実態として焼却処分されています。

 

問6  我が国ではどのような対策が取られていますか?

答)

 農林水産省では、昭和45年から0.4ppm以上1.0ppm未満のお米(玄米)を農家から買い上げ、非食用に処理しています。
 また、お米(玄米)のカドミウム濃度が1.0ppm以上となる水田は、汚染した土を入れ替える客土工事や住宅地への転用などの土壌汚染対策が行われています。これは、問2のとおり、お米のカドミウムによる汚染は、水田土壌がカドミウムに汚染されたために起こるからです。なお、土壌の汚染が進行しないように、鉱山等からのカドミウムの排出を抑制する規制が取られています。
 さらに、お米(玄米)のカドミウム濃度が0.4~1.0ppmの水田には、出穂時期に水田の水を張ったままにすることや石灰等を用いて土壌のpHを中性にすることにより、水稲のカドミウム吸収を抑制するといった営農技術対策が行われており、現在その普及に努力をしているところです。

 

問7  食品中に含まれるカドミウムについて国際基準が検討されていると聞きましたが、本当ですか?

答)

 現在、コーデックス委員会(注)において、食品中のカドミウムの国際的な基準について検討が行われています。同委員会の食品添加物・汚染物質部会においては、当初、お米(精米)1Kgに含まれるカドミウムの上限許容量を0.2 mg ( = 0.2ppm)とする基準値案が提案されていましたが、本年3月に開催された同部会において上限許容量を0.4 mgとする案に変更され、小麦、野菜などの基準値原案と併せて、コーデックス総会に諮ることが合意されました。
 本年6月末に開催されたコーデックス総会での検討の結果、これらの基準値原案は食品添加物・汚染物質部会において引き続き検討することとされ、またその際は、FAO/WHO合同食品添加物専門家会議が来年2月に実施するカドミウムの摂取量評価の結果を十分に考慮するよう要請されました。
 次回のコーデックス委員会食品添加物・汚染物質部会は平成17年4月に開催される予定です。
(注):  コーデックス委員会は、FAO/WHO合同食品規格委員会が正式名称であり、1962年にFAOとWHOが合同で設立した国際的な食品規格等の策定を行う 政府間機関です。委員会は各事項を取り扱う部会を設置しており、カドミウムなどの汚染物質は「食品添加物・汚染物質部会」が検討しています。

 
【参考】コーデックス委員会における基準値原案

食品群

基準値案
(mg/kg)

備考

精米

0.4

 
軟体動物

1.0

頭足類を含む
小麦

0.2

 
ばれいしょ

0.1

皮を剥いたもの
根菜、茎菜

0.1

セロリアック、ばれいしょを除く
葉菜

0.2

 
その他の野菜
(鱗茎類、アブラナ科野菜、ウリ科果菜、その他果菜)

0.05

食用キノコ,トマトを除く

 

問8  我が国は国際基準の策定にどう貢献しているのですか?

答)

 問7のとおり、現在コーデックス委員会において、食品中のカドミウムの国際基準が検討されています。基準を検討するためには、その科学的基礎となるカドミウムのリスク評価が必要です。そのため、平成12年6月にFAO/WHO合同食品添加物専門家会議においてカドミウムのリスク評価が実施されました。しかしながら、リスク評価を行うためのデータが十分でなかったことから、新たな疫学調査等の実施が求められました。
 この勧告を受け、我が国においてカドミウム摂取と健康への影響に関する疫学調査等を実施し、平成14年11月に同専門家会議に対して、疫学調査結果と農作物等のカドミウムの含有実態調査結果を提出しました。
 平成15年6月に、我が国が提出した調査結果など最新の科学的データを基に、再度カドミウムのリスク評価がFAO/WHO合同食品添加物専門家会議で行われました。その結果、カドミウムの暫定耐容摂取量(人の体重1kg当たり1週間7μgまで)を維持することが決定されました。
 次回専門家会議は平成17年2月に開催され、カドミウムの摂取量の評価が実施される予定になっていますが、我が国からも前回の専門家会議以降に得られた新しいデータなどを提出し積極的に貢献していくこととしています。

  

問9  平成15年12月に国際基準案について我が国が修正意見を提出したと聞きましたが、その内容はどのようなものですか?

答)

 平成15年12月、我が国はコーデックス委員会に対して、お米(精米)1Kgに含まれるカドミウムの上限許容量を0.2 mg ( = 0.2ppm)から0.4 mgとするなど個々の食品について具体的な基準案の修正意見を提出しました。この内容は、国民の健康保護を最優先とし、その上で、我が国で流通している農作物中のカドミウム含有量の実態や日本国民のカドミウム推定摂取量を踏まえたものです。平成16年3月に開催されたコーデックス委員会食品添加物・汚染物質部会において、米の上限許容量を0.4mgとする案に変更することが了承され、さらに検討を進めることとなりました(問7参照)。
 我が国におけるカドミウムの摂取量の推定には、2種類のデータを用いました。1つは日本人がどんな食品を1日あたりどれだけ摂取しているかというデータ(国民栄養調査)、もう1つは農作物等がどれだけカドミウムを含有しているかというデータ(農水産物に含まれるカドミウムの実態調査結果)です。この2つのデータからランダムに数値を取り出し、その2つの数値を掛け合わせる作業を10万回繰り返し、掛け合わせた数値について、その分布を作成しました(下図参照)。掛け合わせた数値がカドミウムの摂取量の推定値と考えられます。


図: 現状におけるカドミウム摂取量の推定
 
 また、基準を設定した場合のカドミウム摂取量の変化についても推定(シミュレーション)を行いました。基準を設定した場合、基準値を超える農水産物は流通しなくなることから、いくつかの基準値シナリオを設定し、それぞれについて基準値を超える農作物等のデータを除外し、摂取量の計算を行いました。修正案を我が国に適用した場合の摂取量(平均値及び95%値)を推定すると、カドミウムの暫定耐容摂取量 (人の体重1kg当たり1週間7μgまで)を下回っており、安全は十分に確保されていると考えています。

 

問10  食品中に含まれるカドミウムに関する国内基準はいつ頃整備されるのですか?

答)

 食品中に含まれるカドミウムの摂取の安全性確保について、現在、厚生労働省は食品安全委員会に健康影響評価(リスク評価)をお願いしています。この健康影響評価の結果が出された後に、薬事・食品衛生審議会で議論を行い、できるだけ速やかに国内基準を設定することとしています。

 

問11  国際基準が定められたら、それに併せて国内基準を変更するのですか?

答)

 国際基準が定められ、それが国内基準と異なる場合は、国際基準の設定にいたる科学的な検討の経緯などを十分に評価し、その理由を勘案しつつ、我が国において国内基準の見直しの必要性も含め検討を行う予定です。
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