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公益財団法人 日本食品化学研究振興財団
FDA 21CFR(仮和訳)

101  食品の表示
健康効能促進表示の特定要件

§79  健康効能促進表示:葉酸と神経管欠損

§101.79 健康効能促進表示:葉酸と神経管欠損
 
(a) 葉酸と神経管欠損の関係−(1) 定義。神経管欠損は、幼児の死亡や重大な障害を引き起こす可能性のある脳または脊髄の重大な先天的欠損症である。先天的欠損症である無能症と脊椎披裂は神経管欠損の最も一般的な形で、この種の欠損のほぼ90%を占める。このような欠損は胎児の発育における初期段階で、脳または脊髄の被覆閉合が不十分なことが原因となって起こる。神経管の形成と閉合は妊娠初期に起こるため、欠損は女性が自分の妊娠に気付く前に生じる。
(2) 関係。現在入手可能なデータによれば、適切な量の葉酸を含む食生活によって、神経管欠損のリスクが減る可能性がある。イギリスの医学研究委員会による介入研究からは、このような関係を示す有力な証拠が得られている。それは、再度、妊娠中に神経管欠損を起こすリスクのある女性が、葉酸を4ミリグラム(mg)(4,000マイクログラム(μg))含む栄養補助食品を毎日摂取すると、神経管欠損を持つ子供が生まれるリスクが減少したというものである(これだけの量の葉酸を含む製品は医薬品である)。さらに、食品医薬品局は、葉酸を800μg(0.8mg)含む総合ビタミンミネラル剤を使ったハンガリーの介入試験に対する検討と、葉酸を0〜1,000μg含んだ総合ビタミン剤の使用に関して報告した観察研究に対する検討に基づいて、このような研究の結果のほとんどが、通常の食生活で摂取可能な量の葉酸によって神経管欠損のリスクが減少しうるという結論と一致していると結論した。
(b) 葉酸の重要性−(1) 公衆衛生上の懸念。神経管欠損はアメリカ合衆国では出産児1,000人あたりほぼ0.6人の割合で起こる(つまり、毎年生まれる400万の出産児の内、2,500人がこの欠損を持つ)。神経管欠損は様々な要因が原因になると考えられている。神経管欠損を伴う妊娠の単独で最も大きな危険因子は、本人または家族が過去にそのような欠損を伴う妊娠を起こしたという病歴である。しかし、神経管欠損を持つ子供の約90%は、家族にこの欠損を持つ者のいない母親から生まれている。現在入手可能な証拠から、適切な量の葉酸を含む食生活によって神経管欠損のリスクが減少しうることが示されている。但し、これによって他の先天的欠損症のリスクが減少されることはない。
(2) リスクにさらされている人々。神経管欠損の発生率は遺伝的性質、地理、社会経済的地位、母親の出生状況、妊娠月数、人種、栄養状態、母親の年齢や出産歴を含む健康状態など幅広い要因によって左右されることが報告されている。近い親族(つまり、兄弟姉妹、姪、甥)に神経管欠損を持つ者がいる女性やインシュリンに依存する糖尿病にかかっている女性、発作を伴う疾患があり、バルプロ酸またはカルバマゼピンによる治療を受けている女性は、そうでない女性と比較して有意な差をもってリスクが高い。神経管欠損の発生率はアメリカ合衆国内でも様々で、西海岸は東海岸より発生率が低い。
(3) 受益者。公衆衛生総局では、いくつかの観察研究の結果の総合に基づいて、全ての女性が妊娠可能年齢を通じて毎日適切な量の葉酸(つまり、0.4mg)を摂取していれば、毎年アメリカ合衆国内の妊娠中の神経管欠損の発生を約50%(つまり、約1,250例)回避できると推定している。
(c) 基準。以下の条件を満たす場合には、従来の食品形態による食品や栄養補助食品のラベルまたはラベル表示に葉酸と神経管欠損の関係に関する健康効能促進表示を含めてもよい。
(1) 一般基準。食品または栄養補助食品の健康効能促進表示が、健康効能促進表示に関する§101.14の一般基準をすべて満たすこと。但し、食品または栄養補助食品が“good source(優良供給源)”という用語の定義を満たす場合には健康表示を表示できる。
(2) 特定基準−(ⅰ) 表示の性質— (A) 関係。以下の条件を満たす場合には、従来の食品形態による食品または栄養補助食品のラベルまたはラベル表示に、妊娠能力があり、妊娠可能年齢を通じて適当な量の葉酸を毎日摂取する女性は、妊娠中に脊椎披裂またはその他の神経管欠損を起こすリスクが減少しうるという健康効能促進表示を表示することができる。
(B) 栄養素の指定。栄養素の指定において、表示には“folate(葉酸)”または“folic acid(葉酸)”、“folate, a B vitamin(葉酸、ビタミンBの一種)”、“folic acid, a B vitamin(葉酸、ビタミンBの一種)”、“folacin, a B vitamin(フォラシン、ビタミンBの一種)”という表現を使うこと。
(C) 病気の指定。健康状態の指定にあたり、表示には先天的欠損症を「神経管欠損」または「先天的欠損症、脊椎披裂、または無能症」「脳または脊髄の先天的欠損症、無能症または脊椎披裂」「脊椎披裂または無能症、脳または脊髄の先天的欠損症」と指定すること。
(D) 多因性の性質。表示には、神経管欠損は様々な原因から起こり得るということが示されなければならず、葉酸の摂取が唯一認知された神経管欠損の危険因子であるような印象を与えてはならない。
(E) リスクの減少。
表示では、妊娠可能年齢を通して適切な量の葉酸を摂取しつづけることによって減少できる神経管欠損のリスクの具体的な割合を示してはならない。表示では一部の女性は妊娠可能年齢の間に適切な量の葉酸を摂取しつづけることによって神経管欠損妊娠のリスクを減らす可能性があると述べなければならない。本sectionのparagraph (c)(3)(vi)に準じて、人口をベースにしたリスク減少の割合推定についての表現は、これを任意に行うことができる。
(F) 1日に安全に摂取できる上限。
成人及び4歳以上の子供ための1日摂取量(DV)(400mcg)、および妊娠中または授乳中の女性のためのDV(800mcg)の100%より多い量を含む食品についての表示は、当該DVに関連して1日に安全に摂取できる上限を明記するものでなければならない。「1日に安全に摂取できる上限は1,000mcg(1mg)」という文言を、括弧内に入れて表示することができる。
(G) 「葉酸は健康な食事の一部として摂取するべきだ」という文言が表示されるものとする。
(ⅱ) 食品の性質−(A) 基準。食品、または栄養補助食品は§101.54に定義される葉酸のgood source(優良供給源)としての基準を満たす、またはそれを上回らなければならない。
(B) 栄養補助食品。栄養補助食品は、分解と溶解に関して、米国薬局方(U.S.P.)の規格を満たさなければならない。但し、適用可能なU.S.P.規格がない場合には、栄養補助食品中の葉酸が製品ラベル上で述べられている使用条件下で生物学的利用可能であることを示すこととする。
(ⅲ) 制限。表示は、レチノールまたは既成のビタミンAの形によるビタミンAやビタミンDをRDIの100%を超える量含む従来の食品形態による食品や栄養補助食品については、行ってはならない。
(ⅳ) 栄養ラベル表示。栄養ラベルには、食品中の葉酸の量に関する情報が含まれなければならない。この情報は、もしビタミンAとビタミンC、カルシウム、鉄の量のみが示される場合には鉄の表示の後に記され、もし、その他の任意のビタミンやミネラルが表示される場合には、§101.9(c)(8)と(c)(9)にしたがって表示される。
(3) 任意に表示される情報--(ⅰ) 危険因子。表示は神経管欠損の危険因子を具体的に示してもよい。そのような情報が示される場合、それは§101.79(b)(1)または(b)(2)の記述(例えば、危険の大きい女性は、神経管欠損を伴う妊娠歴のある女性、神経管欠損のある近親者(兄弟姉妹、甥姪)のいる女性、インスリン依存糖尿病の女性、バルプロ酸またはカルバマゼピン で癲癇治療中の女性)あるいは本paragraph(c)(3)(ⅰ)の他の部分の記述で構成されていてもよい。
(ⅱ) 葉酸と神経管欠損の関係。表示は本sectionのparagraph(a)と(b)の葉酸と神経管欠損との関係やその重要性をまとめた記述を含めてもよい。但し、表示中の記載を特に禁じられた情報は除く。
(ⅲ) 神経管欠損を伴う妊娠歴。表示は過去に神経管欠損を伴う妊娠を起こしたのある女性は妊娠前に医師か医療サービス提供者に相談するべきだと述べてよい。もしそのような記述をする場合、表示はすべての女性が妊娠を考えている際には医療サービス提供者に相談するべきだとも述べなければならない。
(ⅳ) 一日摂取量。表示は目標摂取量として葉酸の一日摂取量を100%(400 mcg)と明記してもよい。
(ⅴ) 罹患率。表示は米国の新生児の内神経管欠損を伴った新生児の数の年間推定を示してもよい。現在の推定は§101.79(b)(1)に示してあり年間新生児1万人中6人である(年間400万人生まれる新生児のうち約2,500人)。§101.79(b)(1)で示されるデータは米国衛生公衆総局から最新推定値が入手できない場合に使用するものとする。入手できる場合は最新のものを引用してもよい。
(ⅵ) 危険の低減。すべての女性が出産可能年齢中に十分な量の葉酸を摂取した場合の米国の神経管欠損を伴った新生児数の減少の推定を表示の中に含んでもよい。本sectionのparagraph(b)(3)にある情報は使用できる。もしそのような推定(つまり50%)が示される場合、その推定とともに追加情報として推定が人口ベースであり個々の女性が減らせる割合を反映するものではないをことを述べなければならない。
(ⅶ) 葉酸を十分に含む食事。表示は葉酸を十分に含む食事を示すために「葉酸の源としては果物、野菜、全粒穀物製品、栄養強化シリアル、栄養補助食品がある」あるいは「十分な量の葉酸は果物、青物類野菜、豆、全粒穀物製品、栄養強化シリアルを多く含んだ食事または栄養補助食品から得られる」あるいは「十分な量の葉酸は果物(柑橘類及びジュースを含む)、野菜(青物類を含む)、豆、全粒穀物製品(パン、米、パスタを含む)、栄養強化シリアルを多く含んだ食事または栄養補助食品から得られる」といった表現を使用してもよい。
(d) 健康効能促進表示の模範例。食品のラベル表示中に使える葉酸と神経管欠損の関係に関する健康効能促進表示の模範例を以下に記す。
(1)  例1及び2。健康効能促進表示の模範例は食品1サービング(1serving:1食分)または単位量(一般人)当たりの葉酸一日摂取量100%以下の食品に適するもので、必要な内容だけを記している。
(ⅰ) 十分な量の葉酸を含む健康的な食事は脳や脊髄に先天的欠損症を伴う子供を生む危険を減らせる。
(ⅱ) 健康的な食事中の十分な量の葉酸は脳や脊髄に先天的欠損症を伴う子供を生む危険を減らせる。
(2)  例3。健康効能促進表示の模範例は食品1サービングまたは単位量当たりの葉酸一日摂取量100%以下の食品に適するもので、必要な内容の他に任意に表示できる情報を記している。すなわち、出産可能年齢を通じて葉酸の十分含まれる健康的な食事をとる女性は脳や脊髄の先天的欠損症を伴う子供を生む危険を減らせる。葉酸の源としては果物、野菜、全粒穀物製品、栄養強化シリアル、栄養補助食品がある。
(3) 例4。健康効能促進表示の模範例は一般の人が食べ葉酸一日摂取量100%以上の食品に適するものである。すなわち、出産可能年齢を通じて葉酸の十分含まれる健康的な食事をとる女性は脳や脊髄の先天的欠損症を伴う子供を生む危険を減らせる。葉酸摂取量は一日当たり250%(1,000 mcg)を超えない。
 
[61 FR 8779, Mar. 5, 1996; 61 FR 48529, Sept. 13, 1996; 65 FR 58918, Oct. 3, 2000にて改正]