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公益財団法人 日本食品化学研究振興財団
FDA 21CFR(仮和訳)

114  酸性食品
製造および工程管理

§90  方 法

§114.90 方 法
 
酸性化食品のpHあるいは酸度を決定するために用いる方法には以下のものがあるが、これらに限られるわけではない。
(a) pH決定に用いる電位差法
(1) 原理。「pH」という用語は酸の強さあるいは程度を示すために用いる。pH値、すなわち水溶液中の水素イオン濃度の逆数の対数は、サンプル水溶液に浸した2本の電極間の電位差を測定することによって決定する。適当なシステムは、電位差計、ガラス電極、基準電極から成る。pH値を正確に決定するためには、pHのわかっている標準緩衝液の起電力を測定し、その値を、テストする水溶液のサンプルの起電力測定値を比較して決定することができる。
(2) 計器類。pH決定に用いる主な計器は、pH計あるいは電位差計である。たいていの場合、直読式pH目盛が必要である。商業用には、電池、コードを使った計器類も使用できる。電源電圧が不安定な場合は、電線を使う計器類は電圧調製器を合わせて使用して、メーターの目盛りの読みが定まるようにするべきである。電池で動く計器の場合は、適切に動いているか、電池を頻繁に検査するべきである。拡張ユニットスケールあるいはデジタル読み出しシステムは、より正確に測定ができるため、これらを使用するべきである。
(3) 電極。典型的なpH計には、ガラス膜電極、基準電極あるいは単プローブ組合せ電極が備えられている。特定目的用に設計された種々の電極が利用できる。最も一般的な基準電極は、飽和塩化カリウム溶液の塩橋を持つカロメル電極である。
(ⅰ) 電極の手入れと使用。カロメル電極は乾燥すると損傷する恐れがあるので、飽和塩化カリウム溶液あるいはその他の製造業者が規定する溶液を充填しておかなければならない。最高の結果を得るためには、電極使用前に、電極を緩衝液、蒸留水あるいは脱イオン水、あるいはその他の製造業者が規定した液体に数時間浸し、その後、標定用の蒸留水あるいは緩衝液に先端を浸して保管し、すぐに使用できる状態にしておくべきである。電極は、標準緩衝液に浸す前に水ですすぎ、サンプル測定の間に、次に測定する溶液、又は水ですすぐべきである。計器の反応が遅延するのはエージングあるいは電極の汚れが原因であることがある。電極の洗浄、再活性化には、電極を一分間1モルの水酸化ナトリウムに浸し、その後 0.1モルの塩酸溶液に1分間浸すことが必要で、またこれにより洗浄することができる。この処理を2度繰り返し、酸性溶液に電極を浸して完了すべきである。洗浄が済んだ電極は水で完全にすすぎ、柔らかい布で水分を吸収して後、標定を行うべきである。
(ⅱ) 温度。正確な結果を得るため、電極、標準緩衝液、サンプルの温度は一定に維持するべきである。テストが行われる温度は20°〜30°であるが、25℃が最適である。計器の補正をせずに温度決定を行うと、pH値に影響する恐れがある。自動温度補正装置を使用してもよい。
(ⅲ) 精度。たいていのpH計の精度は約 0.1pHで表され、再現性は通常±0.05pH以下である。pH計には全目盛りのついたものもあり、この場合の精度は約±0.01pHで、再現性は± 0.005pHである。
(4) pH測定の一般手順。作業者が計器を使用する時は、製造業者の計器を使用し、pH測定には以下の技術を使うべきである。
(ⅰ) 計器のスイッチを入れ、電子部品を温め、安定させる。
(ⅱ) 計器および電極を、商業用として調製したpH 4.0標準緩衝液、あるいは、“Official Methods of Analysis of the Association of Official Analytical Chemists” (AOAC), 第13版 (1980) 第50.007(c)節 “Buffer Solutions for Calibration of pH Equipment Official Final Action”に定める新たに調製した0.05モルのフタル酸水素カリウム緩衝液のいずれかを用いて標準にあわせる。本文献は、ここに言及することにより本連邦規則の一部となる。コピーは、 AOAC INTERNATIONAL (481 North Frederick Ave., suite 500, Gaithersburg,MD 20877)で入手でき、又、国立公文書記録管理局(NARA)にて閲覧できる。NARAに本資料の利用について問い合わせるには、202-741-6030に電話するか、 http://www.archives.gov/federal-register/code-of-federal-regulations/ibr-locations.htmlへアクセスされたい。緩衝液の温度は記録し、温度調節制御装置を観測温度 (室温約25℃) に調節する。
(ⅲ) 電極を水ですすぎ、柔らかい布で水分を取る。ふいてはならない。
(ⅳ) 先端を緩衝液に浸して、pHを読み取る。この時、一分間待ってpH計を安定させる。標準調整用コントロールを調節して、観測温度におけるpH値が既知緩衝液のpH値 (例えば 4.0) と一致するようにする。電極は水ですすぎ、柔らかい布で水分を吸収する。
計器が、二回続いてほぼ同じ値を示すまで、新しい緩衝液で上記の手順を繰り返し行う。pH計の機能を確認するためには、pHが 7.0の別の標準緩衝液等を使用してpHの値を調べるか、あるいはAOAC, 第13版 (1980) 第50.007(e)節に定めた 0.025モルの新しいリン酸溶液で調べる。尚、AOACはここに言及することにより本連邦規則の一部となる。
AOACの入手利用に関しては本 section, paragraph (a)(4) (ⅱ) で述べている。拡大目 盛りpHメーターは、pH 3.0あるいはpH 5.0の標準緩衝液で調べることができる。さらに、緩衝液と計器は、適切に標準計器に合わせた別の計器で得た値と比較することによって調べることができる。
(ⅴ) 指示電極が適切に機能しているかは、最初に酸性緩衝液、次に塩基緩衝液を使用して調べることができる。まず、pH 4.0の緩衝液を使って約25℃で電極を標準に調整する。pH計の目盛りがちょうど 4.0を指すように、標準調整用コントロールを調節するべきである。電極は水ですすぎ、水分を取り、AOAC, 第13版 (1980) 第50.007f節に定めたpH9.18の硼砂緩衝液に浸す。AOACはここに言及することにより本連邦規則の一部となる。AOACの文献の入手、閲覧に関しては、本 section, paragraph (a)(4)(ⅱ) で述べている。pH値は、pH9.18 ± 0.3であるべきである。
(ⅵ) pH計が適切に機能しているかは、ガラス電極および基準電極入力を短絡し、それによって電圧を0まで下げることによってテストすることができる。計器によっては、スタンバイにスイッチを切り換え、短絡用ストラップを使用して短絡することもある。計器を短絡した状態で、標準調整用コントロール一方の極端からもう一方の極端へ変換する。
これによって、中央目盛りから± 1.5pHより大きな振れがおこるようにすべきである。
(5) サンプルのpH決定
(ⅰ) サンプルの温度を室温 (25℃) にし、温度補正制御装置を観測温度に合わせる。拡大目盛りの計器を使った時、サンプル温度は、標定用に使用する緩衝液の温度と同じでなければならない。
(ⅱ) 電極を水ですすぎ、水分を取る。電極をサンプルに浸し、pH計が安定するまで1分間待ってpH値を測定する。電極を水ですすぎ、水分を取り、新しいサンプルでこれを繰り返す。サンプルから出る油脂が電極を被覆する。そのため、計器は頻繁に清浄、標準にあわせておくべきである。油を含むサンプルが汚染を起こす場合、電極はエチルエーテルで洗浄することが必要になることもある。
(ⅲ) よく混合したサンプルのpH値を2回測定する。これらの値は、サンプルが均質な溶液であることを示すためには、一致しているべきである。値は0.05pH刻みの最も近い値で報告する。
(6) サンプルの調製。食品の中には、異なる酸度の液体と固体成分から成る混合物であることがある。あるいは半固形状のものもある。以下は、これらの分類ごとにpHテスト用サンプル調製手順の例である。
(ⅰ) 液体、固体成分混合。17〜20°傾けて米国製標準8号ふるい (ステンレス製であるべきである)を使って2分間、容器の内容物をふるいにかける。液体および固体部分の重量を記録し、それぞれ別に保管する。
(a) 液体部分に電極汚染を起こす程度の油分を含んでいる場合は、分液漏斗を用いて油層を分離し、水分層を残す。油分層は廃棄する。水分層の温度を25℃にして、pHを測定する。
(b) ふるいに残った固体は除去し、均質なペースト状に混合し、温度を25℃にしてpHを測定する。
(c) 固体・液体のアリクォートをもとの容器にあった割合で混合し、均質になるまで混ぜる。混合物の温度を25℃にして、平衡pHを測定する。あるいは、容器の内容物を全て混合し、均質になるまで混ぜ合わせ、温度を25℃に調整して、平衡pHを測定する。
(ⅱ) マリネ製品。固形物から油分を分離する。固形分をミキサーに入れ、均質ペースト状になるまで混合する。混合しやすいように少量の蒸留水を加える必要のある場合も考えられる。少量の蒸留水を入れても、たいていの食品のpHは変わらないが、緩衝が十分に行われていない食品については注意が必要である。製品 100グラムあたり 20mlより多い蒸留水を加えるべきではない。温度を25℃に調整した後、調製したペーストに電極を浸してpHを測定する。
(ⅲ) 半固形製品。プディング、ポテトサラダ等の半固形製品の場合は、均質になるまで混合して、そのペーストでpHを測定することができる。滑らかさの必要な時は、食品100グラムあたり10〜 20mlの蒸留水を加えてもよい。調製したペーストの温度を25℃に調整して、pHを測定する。
(ⅳ) 特別混合製品。前菜等の特別混合製品は、油分を洗い流し、残った部分がペースト状になるまで混合し、pHを測定する。滑らかさの必要な時は、食品 100g あたり 10 〜 20mlの蒸留水を加え、混ぜ合わせる。調製したペーストの温度を25℃に調整して、pHを測定する。
(7) 工程pH測定。材料のpHを測定するためにサンプルを入手する。
(ⅰ) 工程液の場合は、温度を25℃にあわせ電極を液体に浸すことによってpHを測定する。
(ⅱ) 固形分をふるいでこし、作業ができる程度のペーストに混合する。調製したペーストの温度を25℃に調整して、pHを測定する。
(ⅲ) ペーストを作る固形物が充分にある場合には、液体・固体のアリクォートを測定ができる程度のペーストに混合する。調製したペーストの温度を25℃に調整して、平衡pHを測定する。あるいは、容器の内容物を全て混合し、均質になるまで混ぜ合わせ、温度を25℃に調整して、平衡pHを測定する。
(b) pH測定のための比色法。この方法は、pHが 4.0以下の時に電位差法の代わりとして使用することができる。
(1) 原理。pH比色法では、pH範囲内で色が徐々に変化する指示薬を溶液中に入れて使用する。テストするサンプルのpHに対して最もはっきりと色の変化を表す指示薬を選ぶ。pHは、サンプルをテストした時の指示薬の色によって決定する。
(2) 指示薬溶液。たいていの指示薬溶液は、指示薬をアルコールに溶かした0.04%の溶液である。テストでは、数滴の指示薬溶液を 10mlのサンプル溶液に加える。色は明るい背景で比較するべきである。白色の磁器製点滴板を使って、調べる色をいくつかの色標本と比較することによって、およその決定を行うことができる。pH値のわかっている標準指示薬溶液のチューブ数本をコンパレーター・ブロックに備えると、より正確な比色テストを行うことができる。
(3) 指示試験紙。指示薬で処理した紙テープをサンプル溶液に少し浸す。溶液のpH値に従って紙テープの色は変化し、標準色シートと比較することによっておよそのpHを決定することができる。
(c) 滴定酸度。滴定酸度を決定するために使うことのできる方法は、AOAC,第13版(1983)第22.060節 “Titratable Acidity Official Final Action”の “Indicator Method”および第22.061節 “Glass Electrode Method  Official Final Action” に記述している。尚、AOACはここに言及することにより本連邦規則の一部となる。AOAC文献の入手利用に関しては、本 section, paragraph (a)(4)(ⅱ) で述べている。水酸化ナトリウム溶液の調製、標準化の手順は、AOAC,第13版(1980)第50.032−50.035節 “Sodium Hydroxide Official Final Action”の “Standard Potassium Hydroxide Phthalate Method” に記述する。尚、AOACはここに言及することにより本連邦規則の一部となり、この文献の入手に関しては、本 section, paragraph (a)(4)(ⅱ) に記述している。
  
〔44 FR 16235, Mar. 16, 1979, 47 FR 11822, Mar. 19, 1982にて改正;49 FR 5609, Feb.14, 1984 ; 54 FR 24892, June 12, 1989; 63 FR 14035, Mar. 24, 1998〕