Home Home Back Back
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団
厚生労働省行政情報

04/30/1998国会関係
環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)問題に対する政府の早急な対応を求める申し入れ

環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)問題に対する政府の早急な対応を求める申し入れ

 環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)は、@生体が本来持っているホルモンと同じような働きをして生体を撹乱するA生体のホルモン量を変化させるB生体の生殖機能等に打撃を与えて生殖等を困難にする−など重大な影響を及ぼすことから、人類の存続に挑戦する重大なものである。古くは「沈黙の春」、最近においては「奪われし未来」、「メス化する自然」で警告され、また従来からWHO、IPCS(国際化学物質安全計画)が指摘してきた。さらに最近においてはIFCS(化学物質に関する国際政府間フォーラム)もその重大を確認し、IOMC(化学物質の健全管理のための組織間プログラム)を通じて関係機関に働きかけているところである。
 現在、このような撹乱性を持つ化学物質として指摘されているだけでも七十種類を超えている。ダイオキシン、PCB、DDTなどをはじめとして、食品や容器、化粧品、合成洗剤、プラスチック材料などの身の回りのあらゆる分野に環境ホルモンがあふれているといっても過言でない。例えば、熱湯を入れたポリカーボネート(PC)製の哺乳ビンや学校給食の食器などから、ビスフェノールAが溶け出すことが分かっている。またカップ麺も容器からもスチレンが溶けている。このビスフェノールAは、樹脂原料の一種で、虫歯の詰め物や缶詰の内部のコーティングなどにも使われている。これらの環境ホルモンは極数量で人体に影響を及ぼし、あるものは体外に排出されにくく、長年にわたって体内に蓄積されると指摘され、徐々に人間の内分泌系等に影響を及ぼし、その存在の実態が知られないまま、既に日常生活の中に深く浸透している。
 この環境ホルモン問題は、因果関係が必ずしも明確に証明されていないが、人類の生存にとって看過できない重大なものである。かつての一連の公害問題は、科学的な因果関係の立証が必要という理屈の下で、対策が後手後手になり被害が拡大した。今、必要なのは、関係省庁、研究機関などが環境ホルモンの調査と研究に早急に取り組むとともに、予防原則の考えをもって、出来るところから速やかに規制をかけていくことである。当に「人間の安全保障」が問われていると言える。
 以上の観点を含めた人間主義の立場から、次の事項に対し早急かつ抜本的な取り組みを強く求めるものである。

一、(予防原則の徹底)一九九二年に採択された「リオ宣言」の第十五原則には、環境対策における予防的方策の適用が明記されている。政府は「完全な化学科学的実性の欠如が、環境悪化を予防するための費用対効果の大きな対策を延期する理由として使われてはならない」との宣言を改めて確認し、環境ホルモン問題においても「予防原則」の姿勢を貫くこと。

二、(子ども基準の採用)一九九七年のマイアミ環境大臣サミットにおいて、環境中の有害物への特定の暴露や乳児及び子どもの感受性を理解するための研究や、研究結果や法的な決定事項に関する情報交換を推進し、情報が十分でないときは、予防原則または、予防的アプローチに則り、子どもの健康を守るための環境基準等を整備すべきことが宣言されている。これらを踏まえて、環境ホルモン対策においては子どもを基準にしたリスク評価を行い、対策を講じること。また、国連の子どもの権利条約の意義を十分に留意すること。

三、(対策本部・専門機関・予算措置)政府は「環境ホルモン問題対策本部」を設置するとともに、人類的危機感を持って関係省庁、研究機関が一体となって調査研究と対策を早急に講じること。また、環境ホルモン対策の専門機関を創設し、環境ホルモン対策での国際協力を強化して、研究・対策に取り組むこと。さらにこれを踏まえて環境ホルモン問題に関する予算を飛躍的に拡大すること。あわせて、“環境安全保障”にかかる国際機関の拡充に向けたイニシアチブの発揮に努めること。

四、(研究開発の促進)環境ホルモン対策についての研究は、@生体への影響メカニズムの解明Aスクリーニング手法の開発と実施B複数の化学物質の複合的な毒性評価法とリスク評価法の開発C人体にかかわる総量規制的な耐容一日摂取量(TDI)の開発などーの観点からなされるべきである。さらに、既存統計を活用しながらも必要な統計データは積極的に集積し、総合的、予防的対応のために国民の健康状態を把握する「国民総合健康度評価システム」を開発、実施すること。

五、(総合的な実態調査の推進)環境ホルモンの疑惑物質について、現状を把握し、今後の対策の検討に活用するため、全国の大気、土壌、水質、ヒト、生物、食品、廃棄物焼却場、処分場等の汚染状況や事業所等の排出実態の調査を緊急かつ総合的に実施すること。

六、(化学物質の危機管理体制の構築)事故などの緊急時における化学物質の急性犠牲を回避するための適切な体制を構築すること。当該地域の地理的情報と事業所諸元や、いわゆるPOPS(残留性化学物質)を含めた化学物質等の各種データとともに管理するGIS(地理情報システム)、化学物質の輸送上の移動体を衛星等で把握し地図情報に統合するGPS(全地球測位システム)、原材料の調達から廃棄に至るまで製品の全プロセスを負荷評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)、PRTR(有害化学物質の排出・移動登録)などの体系を有機的にリンクさせた総合的なデータベースを持つ機動的な「化学物質危機管理体制」を構築すること。

七、(化学物質安全基本法の制定)化学物質に関係した法律は様々あるが、化学物質の管理に対する国の基本姿勢を明記するとともに、化学物質の安全利用についての基本方針を明らかにするために、現行の「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」等をふまえ、地球環境問題等の観点から、「化学物質安全基本法」ともいうべき省庁積極的な基本法を制定すること。

八、(土壌汚染防止法、水基本法の制定)各地でおこる土壌の化学物質汚染の深刻さを鑑み、環境ホルモンによる土壌汚染の影響の大きさを考えると、日本版スーパーファンド法ともいうべき「土壌汚染防止法」の制定を、また環境汚染は水循環等により拡散することから、流域対応型の環境対策を考えるべきであり、この点からも水循環を基本とした「水基本法」の制定を早急に行うこと。

九、(食品衛生法の見直し)食品衛生法の食品に用いられている合成樹脂の量と化学物質溶出基準(第十条一項、第二十九条二項)を早急に見直すこと。

十、(農薬取締法の見直し)新しい農薬は農薬取締法に基づき、@発がん性試験A催寄生試験B動物を使って数世代後の影響を見る繁殖試験ーなどで安全性を確認後、使用を認めている。現在、国内には五、四三七種類の農薬が登録されているが、有機塩素系農薬をはじめ、全ての農薬の安全性について再検査し再評価を行うこと。

十一、(PRTR制度の法制化と表示)政府は化学的な調査研究と合わせて、有害化学物質の排出・移動登録(PRTR)制度を法制化すること。また有害物質排出目録の作成や環境ホルモン物質を含む製品にその旨を表示することを徹底し、あわせて環境ホルモン問題に関する情報公開を早急かつ徹底的に行うこと。その為にも家庭用品品質表示等の関連法を早急に見直すこと。

十二、(製品規制)保育所、幼稚園、学校給食で行われているポリカーボネート(PC)製の食器や乳児の哺乳ビン、塩化ビニール製の玩具などの製造・販売を禁止するとともに、ビスフェノールやフタル酸エステルなどプラスチック材や、ノニルフェノールやスチルベストロールなど合成洗剤の材料は、安全性が確認されるまで、使用禁止を含めて規制すること。

以上、右、申し入れる。
平成年四月三十日           
内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)問題
平和・改革・公明合同プロジェクトチーム
座長 加藤 修一
内閣総理大臣

橋本 龍太郎 殿