薬事・食品衛生審議会資料

 

平成20年09月24日

医薬食品局食品安全部

 

 

既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究(平成19年度調査)

 
既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究
(平成20年9月24日  薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会)

 「既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究」の報告書が、平成20年9月24日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会において公表されました。
 

調査研究報告書
 
既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究
 
平成20年3月

主任研究者
 井上 達
 
研究協力者
 江馬 眞
 菅野 純
 棚元 憲一
 中江 大
 長尾 美奈子
 中澤 憲一
 西川 秋佳
 林  真
 米谷 民雄
 
国立医薬品食品衛生研究所
安全性生物試験研究センター長

国立医薬品食品衛生研所総合評価研究室長
国立医薬品食品衛生研所毒性部長
国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部長
東京都健康安全研究センター参事研究員
共立薬科大学客員教授
国立医薬品食品衛生研究所薬理部長
国立医薬品食品衛生研究所病理部長
国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部長
国立医薬品食品衛生研究所食品部長
 
目次
 A.研究要旨
 B.研究目的
 C.研究方法
 D.研究結果
 E.考察
 F.結論

別添
 エラグ酸
 エレミ樹脂
 スクレロガム
 チャ種子サポニン
 トロロアオイ
 ホウセンカ抽出物
 マクロホモプシスガム
 ラカンカ抽出物

A.研究要旨
 平成8年度厚生科学研究報告書「既存天然添加物の安全性評価に関する調査研究」(主任研究者 林裕造)(以下、「林班報告書」という。)においては、国際的な評価結果、欧米での許認可状況、安全性試験成績結果等から、既存添加物の基本的な安全性について検討した結果、489品目のうち139品目について、今後、新たな毒性試験の実施も含め、安全性について検討することが必要であると報告されている。 本研究は、林班報告書において更に検討する必要があるとされた139品目のうち、以下に掲げるものを除く43品目を対象に、新たに安全性試験成績の収集できた品目について検討を行った。

平成11年度「既存添加物の安全性評価に関する調査研究」(主任研究者 黒川雄二)(以下、「黒川班報告書」という。)において報告された13品目
平成15年度「既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究」(主任研究者 井上達)(以下、「平成15年度井上班報告書」という。)において報告された16品目
平成16年度「既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究」(主任研究者 井上達)(以下、「平成16年度井上班報告書」という。)において報告された14品目
平成18年度「既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究」(主任研究者 井上達)(以下、「平成18年度井上班報告書」という。)において報告された7品目
・これまでに既存添加物名簿から消除された品目(このうち安全性を確認する必要があるとされた添加物は46品目)

 本報告書においては、エラグ酸、エレミ樹脂、スクレロガム、チャ種子サポニン、トロロアオイ、ホウセンカ抽出物、マクロホモプシスガム、ラカンカ抽出物の8品目についての検討結果をまとめて収載している。 検討した8品目については、90日間以上の反復投与試験及び変異原性試験の成績を入手し、これらの試験成績より、それらの既存添加物について基本的な安全性を評価することができた。結論としては、評価した8品目について、現時点で直ちにヒトの健康に対する有害性影響を示唆するような試験結果を認めず、したがって、新たな毒性試験を早急に実施する必要がないものと考えられた。

B.研究目的
 平成7年5月の食品衛生法改正によっては、食品添加物の指定範囲が、従来の化学的合成品から天然香料等を除くすべての添加物に拡大された。本改正に伴い、従来から販売・製造・使用等がなされてきた「化学的合成品以外の添加物(天然香料等を除く。以下「天然添加物」という。)」については、経過措置として、その範囲を既存添加物名簿に掲載して確定させた上で、引き続き、販売・製造・輸入等を認めることとされた。
 しかしながら、これら既存添加物名簿に掲げられた天然添加物については、従来から指定されている添加物と異なり、各品目毎に安全性のチェックがなされているものではなく、国会等において、その安全性の確認が求められているところである。
 これを受けて、平成8年度に公表された林班報告書では、既存添加物489品目について、国際的な評価結果や欧米での許認可状況及び安全性試験成績結果等の情報を用いて、基本的な安全性について検討がなされ、「489品目の内、159品目については、既に国際的な評価がなされており、基本的な安全性が確認されている。さらに、41品目については入手した試験成績の評価により、150品目についてはその基原・製法・本質からみて、いずれも現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないものと考えられた。」と報告されており、残る139品目についてさらに検討が必要であるとされている。平成11年度に公表された黒川班報告書では、「林班報告書により安全性の確認が必要とされた139品目の内、14品目の既存添加物については、現時点で直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果が認められず、新たな安全性試験を早急に実施する必要がないものと考えられた。」(この内の1品目は,流通実態がないため、既存添加物名簿から消除された。)と報告されている。さらに、平成15年度に公表された井上班報告書では「安全性の見直しを行った17品目については、現時点において、直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった。」(この内の1品目については、念のため、追加試験の実施を検討している。)、平成16年度に公表された井上班報告書では「安全性の見直しを行った14品目については、現時点において、直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった。」、平成18年度に公表された井上班報告書では「安全性の見直しを行った7品目については、現時点において、直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった。」と報告されている。
 本研究は、平成8年度林班報告書で安全性について検討することが必要と指摘された天然添加物139品目から、これまでに安全性の見直しが終了した品目及び既に既存添加物名簿から消除された品目を除く、43品目を対象として、国内外の試験成績を収集し、その試験成績の評価を行うことにより、それらの基本的な安全性を検討することを目的とした。

C.研究方法
 本研究は、林班報告書において安全性の確認が必要とされた既存添加物139品目の内、これまでに安全性の見直しが終了した品目及び既に既存添加物名簿から消除された品目を除く43品目の中で、90日間以上の反復投与試験成績及び変異原性試験成績の双方の資料を入手し得た8品目について、品目毎に安全性試験成績の評価を行った。

D.研究結果
 本研究で安全性の見直しを行った8品目については、現時点において、直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった。その概要は別添のとおりである。

E.考察
 本研究では、林班報告書において安全性の確認を必要とされた既存添加物の内、見直しの済んでいない43品目を対象に安全性評価のための試験成績の収集を行い、少なくとも90日間以上の反復投与試験成績及び変異原性試験成績の双方が入手できた8品目について、それらの試験成績を評価したところ、いずれの品目についても、現時点において、直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果が認められなかった。したがって、評価を行った8品目については、新たな安全性評価のための試験を早急に実施する必要がないものと考えられた。
 なお、本報告に先立って、厚生労働省は、平成16年7月に、アカネ色素の発がん性に関する食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会の評価を踏まえて同色素を既存添加物名簿から消除し、その使用を禁止した。さらに、同省は、使用実態のない既存添加物として、平成16年12月に38品目、平成19年9月に32品目を消除した。
 このように、既存添加物の見直し作業は,現時点までに着実に進行しているが、今後ともさらに使用実態の調査等を行い、必要な品目から効率的に見直しを進めていく必要があると考える。

F.結論
 本研究は、新たに8品目の天然添加物について、基本的な安全性が確認されていることを明らかとした。これらについては、いずれも現段階においてさらなる安全性の検討を早急に行う必要がないものと考えられた。


エラグ酸

1.食品添加物名
 エラグ酸

2.基原、製法、本質
 ウルシ科ヌルデ(Rhus javanica LINNE)に発生する五倍子、ミロバン(Terminalia chebula RETZ.)の実、ヒシ科ヒシ(Trapa japonica FLEROV.)の実、フトモモ科ユーカリ(Eucalyptus globulus LABILL.)の葉等を脱脂後、水又はエタノールで抽出して得られたものである。成分はエラグ酸である。

3.主な用途
 酸化防止剤

4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344系雌雄ラットに、混餌(1.25%、2.5%、5%)投与による13週間反復投与試験を行った。その結果、いずれの群の動物においても死亡は認められず、一般状態及び摂餌量において、被験物質に関連する変化は認められなかった。体重については、雌の全投与群において有意な増加抑制が認められた。
 血液学的検査では、2.5%群の雄でMCVの増加が、1.25%群の雌でMCVの減少が認められたが、用量相関性も認められないことから、被験物質の影響ではないと考えられた。
 血液生化学的検査では、1.25%群の雌雄でALPの減少が、2.5%群の雄でASTの減少が、5%群の雄でALPの減少、雌でCa及びPの減少及びClの増加が認められたが、散発的な変化であり、被験物質の影響ではないと考えられた。
 器官重量では、5%群の雄で心臓の相対重量の低値が、雌の全投与群で脳の相対重量の高値が認められた。
 病理組織学的検査では、被験物質の投与に起因すると考えられる変化はみられなかった。
 以上から、無影響量は雄で5%(3011 mg/kg/日)、雌で1.25%未満(778mg/kg/日)、無毒性量は雌雄で5%(3254 mg/kg/日)と判断された。1)
(2)遺伝毒性試験
 細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、10mg/プレートまで試験されており、S9mixの有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL)を用いて、最高処理濃度40μg/mL(短時間処理法、-S9mix)、80μg/mL(短時間処理法、+S9mix)及び10μg/mL(連続処理法)の染色体異常試験を行った結果、短時間処理法-S9mix、40μg/mLでのみ染色体異常の誘発が認められたが、用量依存性もみられず僅かな増加(5%)であり明確な陽性反応とは考えられなかった。以上から陰性であると結論された。3)
 マウス(BDF1系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000 mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核出現頻度の有意な増加は認められなかった。また、2000mg/kgにおいて多染性赤血球の割合が有意に減少し、骨髄細胞の分裂抑制が確認された。以上から小核誘発性は陰性であると結論した。3)
 以上から、エラグ酸には遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.西川秋佳:平成16年度食品添加物規格基準設定等試験、国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター病理部
2.麻野間正晴:平成16年度厚生労働科学研究費補助金、既存添加物の安全性確保上必要な品質問題に関する研究
3.中嶋圓:平成16年度厚生労働科学研究費補助金、既存添加物の安全性確保上必要な品質問題に関する研究


エレミ樹脂

1.食品添加物名
 エレミ樹脂(エレミの分泌液から得られた、β-アミリンを主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
 カンラン科エレミ(Canarium luzonicum A.GRAY)の分泌液を、乾燥して得られたものである。主成分はβ-アミリンである。
3.主な用途
 ガムベース、増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344/DuCrj系雌雄ラットに、強制経口(30、200、1000 mg/kg体重)投与による13週間反復投与試験を行った。その結果、いずれの群の動物においても死亡は認められず、一般状態、体重、摂餌量、眼科的検査、尿検査及び剖検において、被験物質に関連する変化は認められなかった。
 血液学的検査では、200 mg/kg以上の群の雄でPT及びAPTTの延長又は延長傾向が認められた。
血液生化学的検査では、30 mg/kg以上の雌雄でリン脂質の高値、雌で総コレステロールの高値、雄でα2-グロブリン比の高値とアルブミン値及びA/G比の低値が、200 mg/kg以上の雌雄でβ-グロブリン比の高値、雌でγ-GTP及び総蛋白量の高値とアルブミン値及びA/G比の低値、雄でα1-グロブリン比の高値が、1000 mg/kgの雌でα1-グロブリン比の高値、雄でγ-GTP及び総コレステロールの高値が認められた。
 器官重量では、200 mg/kg以上の雌雄で副腎の絶対重量の高値、雌で肝臓の絶対及び相対重量の高値、1000 mg/kg群の雌雄で副腎の相対重量の高値が認められた。
 病理組織学的検査では、200 mg/kg以上の群の雌で小葉辺縁部の肝細胞の脂肪変性が認められ、200 mg/kg以上の群の雌雄で副腎束状帯の皮質細胞の脂肪変性が認められた。
 以上から、肝臓への影響が30 mg/kg以上の群の雌雄で、副腎への影響が200 mg/kg以上の群の雌雄で認められた。30 mg/kg群では、リン脂質を除く血液生化学検査値の変化はいずれも背景データの範囲内の変動であり、肝重量に変化はなく、肝臓の病理組織学的な変化も認められていないことを考慮すると、その毒性学的意義は乏しいと考えられた。したがって、無影響量は雌雄とも30 mg/kg/日未満、無毒性量は雌雄とも30 mg/kg/日と考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 細菌を用いた復帰突然変異試験及び哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験が行われており、いずれも陰性であった。2) また、 枯草菌を用いるDNA修復試験(Rec-assay法)が行われており、陰性であった。3)
 マウス(ddY系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000 mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)
 以上から、エレミ樹脂には遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.小野宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、(財)食品薬品安全センター秦野研究所
2.林真:厚生省等による食品添加物の変異原性評価データシート(昭和54年度~平成10年度分)
3.祖父尼俊雄:食品添加物の変異原性試験成績(その11)(平成元年度厚生省試験研究費による)
4.宮澤眞紀:平成16年度既存添加物の安全性確保上必要な品質問題に関する研究、神奈川県衛生研究所


スクレロガム

1.食品添加物名
 スクレロガム(スクレロチウムの培養液から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
 不完全菌類(Sclerotium glucanicum)の培養液より、分離して得られたものである。主成分は多糖類である。
3.主な用途
 増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344/DuCrj系SPFラットに被験物質100、300、1000mg/kgの用量で強制経口投与し、90日間反復投与試験を行った。その結果、1000mg/kg群の1例において死亡が見られ、死亡前日には口並びに鼻周囲の被毛の汚染、排便量の減少、自発運動の低下、腹部膨満、異常呼吸音等の一般状態の異常が見られたが、病理学的に直接死因に結びつくと考えられる変化が見られなかったこと、一般状態の悪化後早期に死に至ったこと、1000mg/kg群において同様の症状を呈した1例では、投与を継続したにも関わらず、一般状態の異常が回復し、血液学的検査ならびに血液生化学的検査成績、病理組織検査等の所見にも異常が見られなかったことから、死亡原因は投与過誤による誤嚥性肺炎によるものである可能性が高いと考えられた。
 一方、その他の動物では一般状態、体重推移、摂餌量の異常は見られず、尿検査、眼科学的検査、血液学的検査ならびに血液生化学的検査の成績、器官重量、剖検所見ならびに病理組織学所見にスクレロガムの投与に起因すると考えられる特異な変化は認められなかった。
 以上から、無毒性量は雌雄で1000mg/kg/日であると考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537)および大腸菌(Escherichia coli WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000μg/プレートまで試験されており、S9mixの有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高処理濃度5000μg/mLの染色体異常試験を行った結果、いずれの処理条件下においても染色体異常の誘発は認められなかった。3)
 マウス(BDF1系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)
 以上から、スクレロガムには遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.高島宏昌:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、財団法人食品薬品安全センター秦野研究所
2.嶋田佐和子:平成16年度食品・添加物等規格基準に関する試験検査等について、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
3.嶋田佐和子:平成16年度食品・添加物等規格基準に関する試験検査等について、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
4.嶋田佐和子:平成16年度食品・添加物等規格基準に関する試験検査等について、財団法人食品農医薬品安全性評価センター


チャ種子サポニン

1.食品添加物名
 チャ種子サポニン(チャの種子から得られた、サポニンを主成分とするものを言う。)
2.基原、製法、本質
 ツバキ科チャ(Camellia sinensis O.KZE.)の種子を、ヘキサンで脱脂した後、エタノールで還流抽出して得られたものである。主成分はサポニン(ティーサポニン等)である。
3.主な用途
 乳化剤
4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344/DuCrj系SPFラットに、強制経口(30,100,300,1000mg/kg)投与による90日間反復投与試験を行った。その結果、1000mg/kg投与群では、雌雄動物の少数例で異常呼吸音が観察され、死亡が発現(雌雄各2例)したが、これらの死亡例では、剖検の結果、肺に浮腫および鬱血が認められたが、肺の病理学的影響は死亡例にのみ認められた。他の例でも急性毒性として一過性の浮腫が起こった可能性が高い。一方、死亡例、生存例とも副腎の束状帯に瀰漫性の肥大が認められ、雄では総コレステロールの低下が、雌では副腎重量の増加ならびに血糖値の低下が認められた。また、低体重並びに摂餌量の低下が認められ、貧血傾向が認められた。
 一般状態観察では、1000mg/kg投与群で軟便、餌こぼし、投与後の一過性の流涎や排便量の減少が見られ、血液生化学検査の結果、グロブリン・総タンパク濃度、尿素窒素濃度、トリグリセライド濃度の低下、ALT活性やγ-GTP活性、Na濃度の増加が認められた。また、雄では胸腺重量の低下、雌では肝臓重量の増加が認められた。300mg/kg投与群では、雌雄で副腎の束状帯細胞に瀰漫性の肥大、雄における総コレステロールの低下、一般状態観察における軟便および餌こぼし、雄のA/G比の増加とトリグリセライド濃度の低下、α1-グロブリン並びにγ-グロブリン分画比の低下が認められた。
 以上から、無毒性量(NOAEL)は雌雄で100mg/kg/日であると考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000μg/プレートまで試験されており、S9 mixの有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL)を用いて、最高処理濃度120μg/mL(-S9 mix)、80μg/mL(+S9 mix)の染色体異常試験を行った結果、いずれの処理条件下においても染色体異常の誘発はみとめられなかった。3)
 マウス(ICR系(Crj:CD-1)、雄、各用量5匹)の骨髄における小核試験は、最大耐量である500mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。3)
 以上から、チャ種子サポニンには遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.小野宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、(財)食品薬品安全センター秦野研究所
2.松島泰治郎:平成12年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、日本バイオアッセイ研究センター
3.岩本毅:平成12年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、(財)残留農薬研究所


トロロアオイ

1.食品添加物名
 トロロアオイ(トロロアオイの根から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
 アオイ科トロロアオイ(Abelmoschus manihot MED.)の根を、乾燥、粉砕して得られたものである。主成分は多糖類である。
3.主な用途
 増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344系ラットを用いた混餌(0.5、1.5、5.0%)投与による、90日反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態においても著変を認めなかった。また、体重、摂餌量、摂水量、尿検査、眼科検査、血液学的検査、血液生化学的検査、肉眼的病理検査、器官重量及び病理組織学的検査において、被験物質投与に起因すると考えられる毒性学的な影響はみられなかった。
 以上より、本試験条件下における無毒性量は5.0%(雄:2939 mg/kg/日、雌:3325 mg/kg/日)と判断された。1)
(2)遺伝毒性試験
 細菌を用いた復帰突然変異試験及び哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いた染色体異常試験が行われており、いずれも陰性であった。2) また、 枯草菌を用いるDNA修復試験(Rec-assay法)が行われており、陰性であった。2)
 マウス(ICR系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000 mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核を誘発しないものと判断された。3)
 以上から、トロロアオイには遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.玉野静光:平成17年度食品・添加物等規格基準に関する試験検査等について、(株)DIMS医科学研究所
2.林真:厚生省等による食品添加物の変異原性評価データシート(昭和54年度~平成10年度分)
3.小野宏:平成16年度食品・添加物等規格基準に関する試験検査等について、(財)食品薬品安全センター秦野研究所


ホウセンカ抽出物

1.食品添加物名
 ホウセンカ抽出物(ホウセンカの全草から抽出して得られたものをいう。)
2.基原、製法、本質
 ツリガネソウ科ホウセンカ(Impatiens balsamina LINNE)の全草より、室温時含水エタノールで抽出して得られたものである。
3.主な用途
 酸化防止剤
4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344/DuCrj系ラットに、混合水(1.25、2.5、5.0%)の自由摂取による90日間反復投与試験を行った。その結果、被験物質投与群での死亡は認められず、また、一般状態、体重、摂餌量、摂水量、血液学的検査、器官重量及び病理組織学的検査において被験物質に関連した明らかな変化は認められなかった。
 血清生化学的検査では、塩素、ナトリウム、カリウム、無機リンの値において投与に関連する変化が認められたが、毒性学的意義は乏しいと考えられた。
 以上から、無毒性量は雌雄で5.0%(雄:3997 mg/kg/日、雌:4577 mg/kg/日)と判断された。1)
(2)遺伝毒性試験
 細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、100 mg/プレートまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL)を用いて、最高処理濃度5000μg/mLの染色体異常試験を行った結果、代謝活性化系の有無に係わらずいずれの処理条件下においても染色体異常の誘発は認められず、陰性であると結論された。3)
 マウス(ICR系、雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000 mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核出現頻度の有意な増加は認められず、陰性であると結論した。4)
 以上から、ホウセンカ抽出物には遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.広瀬雅雄:平成16年度食品添加物規格基準設定等試験検査、国立医薬品食品衛生研究所
2.麻野間正晴:既存添加物の安全性確保上必要な品質問題に関する研究、名古屋市衛生研究所
3.松元郷六:平成16年度既存添加物の安全性確保上必要な品質問題に関する研究(ホウセンカ抽出物の哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験)、(財)残留農薬研究所
4.松元郷六:平成16年度既存添加物の安全性確保上必要な品質問題に関する研究(ホウセンカ抽出物のマウスを用いる小核試験)、(財)残留農薬研究所


マクロホモプシスガム

1.食品添加物名
 マクロホモプシスガム(マクロホモプシスの培養液から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
 不完全菌類(Macrophomopsis)の培養液より、分離して得られたものである。主成分は多糖類である。
3.主な用途
 増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)90日間反復投与試験
 F344/DuCrj系SPFラットに、強制経口(100、300、1000mg/kg)投与による90日間反復投与試験を行った。その結果、1000mg/kg投与群の雄では、軽微にとどまる有意差であるが、血中のアルブミン濃度および総コレステロール濃度の低下が認められた。一方、被験物質の毒性に起因すると考えられる一般状態、体重推移、摂餌量の異常は認められず、尿検査、眼科学検査、血液学検査成績ならびに器官重量、剖検所見ならびに病理組織学所見に特異な変化は認められなかった。
 以上から、無毒性量(NOAEL)は雌雄で300mg/kg/日であると考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000μg/プレートまで試験されており、S9 mixの有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL)を用いて、最高処理濃度5000μg/mLの染色体異常試験を行った結果、S9 mixの有無に関わらず、短時間および長時間処理のいずれの処理条件下においても染色体異常の誘発はみとめられなかった。3)
 マウス(ICR系(Crj:CD-1)、雄 各用量5匹)の骨髄における小核試験は、限界用量である2000mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。3)
 以上から、マクロホモプシスガムには遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.小野宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、(財)食品薬品安全センター秦野研究所
2.松島泰治郎:平成12年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、日本バイオアッセイ研究センター
3.岩本毅:平成12年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、(財)残留農薬研究所


ラカンカ抽出物

1.食品添加物名
 ラカンカ抽出物(ラカンカの果実から得られた、モグロシド類を主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
 ウリ科ラカンカ(Memordica grosvenori SWINGLE)の果実より、水、含水メタノール若しくはエタノールで抽出して得られたもの、又は室温時~温時含水メタノールで抽出し、植物油を用いて油溶性成分を除去したものより得られたものである。主甘味成分はモグロシド類である。
3.主な用途
 甘味料
4.安全性試験成績の概要
(1)急性毒性試験
 ICR系マウスに、強制経口(2000mg/kg)投与による急性毒性試験を行った。その結果、試験動物に異常もしくは死亡例は観察されず、致死量は雌雄ともに2000 mg/kg以上であると認められた。1)
(2)90日間反復投与試験
 F344ラットに、被験物質0.25、0.5、1.0、2.0%の濃度で飲水に混入し、90日間反復投与試験を行った。その結果、体重減少や死亡などの毒性は全く認められなかった。また主要臓器などに病変は認められず、血清生化学的にも異常所見は認められなかった。2)
 Wistar Hannover(GALAS)ラットに、被験物質0.04、0.2、1、5%の濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を行った。その結果、いずれの群の動物においても死亡は認められず、体重増加量、血液学的及び血清生化学的検査、臓器重量、病理組織学的検査においても被験物質投与に起因した変化は認められなかった。
 以上から、無毒性量は雌雄で5%以上(雄:2523.5mg/kg/日、雌:3202.7mg/kg/日)であると考えられる。3)
(3)遺伝毒性試験
 細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA)を用いた復帰突然変異試験は、5000μg/プレートまで試験されており、S9 mixの有無にかかわらず陰性であった。4)また、細菌(TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000μg/プレートまで試験されており、S9 mixの有無にかかわらず陰性であった。5)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、顕微鏡観察可能な最高用量の625μg/mLの染色体異常試験を行った結果、連続処理法では、染色体構造異常の誘発(11.5%)が認められ、短時間処理法(-S9および+S9処理)においても擬陽性と判定される誘発(5.0~7.0%)が認められたことから、染色体異常誘発性は陽性と判断された。変異原性の強さに関する相対的比較値であるD20値の最小値は1.27mg/mLと算出された。6)
 マウス(BDF1系、雄、各用量5匹)の骨髄における小核試験は、限界用量である2000mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。6)
 以上から、ラカンカ抽出物には遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.自社データ
2.廣瀬育生:平成11年食品添加物安全性再評価等の試験検査、広島大学
3.三森国敏:平成16年度食品・添加物等規格基準に関する試験検査等について、東京農工大学
4.自社データ
5.松島泰治郎:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、日本バイオアッセイ研究センター
6.菊池正憲:平成15年度食品・添加物等規格基準に関する試験検査等、(財)食品農医薬品安全性評価センター
 
既存添加物の安全性見直しの状況(平成20年8月現在):既存添加物状況表(H20).pdf



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