薬事・食品衛生審議会資料

 

平成17年07月28日

医薬食品局食品安全部

 

 

既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究(平成16年度調査)

 
既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究
(平成17年7月28日  薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会)

 「既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究」の報告書が、平成17年7月28日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会において公表されました。
 

平成16年度食品添加物安全性確認費
調査研究報告書

既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究


平成17年7月

主任研究者
 井上 達 国立医薬品食品衛生研究所
安全性生物試験研究センター長
研究協力者
 江馬 眞 国立医薬品食品衛生研所総合評価研究室長
 菅野 純 国立医薬品食品衛生研所毒性部長
 川西 徹 国立医薬品食品衛生研究所生物薬品部長
 棚元 憲一 国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部長
 長尾 美奈子 共立薬科大学客員教授
 西川 秋佳 国立医薬品食品衛生研究所病理部第一室長
 林 真 国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部長
 広瀬 雅雄 国立医薬品食品衛生研究所病理部長
 米谷 民雄 国立医薬品食品衛生研究所食品部長


A.研究要旨
 平成年度厚生科学研究報告書「既存天然添加物の安全性評価に関する調査研8究」(主任研究者林裕造) (以下、「林班報告書」という。)においては、国際的な評価結果、欧米での許認可状況、安全性試験成績結果等から、既存添加物の基本的な安全性について検討した結果、489品目のうち139品目については、今後安全性試験の実施も含めその安全性について検討することが必要であると報告されている。
 今回は、林班報告書において、更に検討する必要があるとされた139品目のうち、平成年11度「既存添加物の安全性評価に関する調査研究」(主任研究者 黒川雄二)(以下、「黒川班報告書」という。)において報告された14品目及び平成15年度「既存添加物の安全性の見直しに関する調査研究」(主任研究者井上達)(以下、「井上班報告書」という。)において報告された17品目を除く、108品目を対象に、新たに安全性試験成績の収集できた品目について検討を行った。
 本報告書においては、アグロバクテリウムスクシノグリカン、アマシードガム、アロエベラ抽出物、魚鱗箔、サンダラック樹脂、スフィンゴ脂質、パフィア抽出物、ヒキオコシ抽出物、ヒメマツタケ抽出物、ベタイン、ベニバナ赤色素、メバロン酸、モリン及びログウッド色素の14品目についての検討結果をまとめて収載している。
 検討した14品目については、90日間以上の反復投与試験及び変異原性試験の成績を入手することができた。試験成績より個々の既存添加物について基本的な安全性を評価することができた。結論としては、現時点で直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められず、新たな安全性試験を早急に実施する必要はないものと考えられた。

B.研究目的:
 平成7年5月の食品衛生法改正により、食品添加物の指定制の範囲が従来の化学的合成品から天然香料等を除くすべての添加物に拡大された。本改正に伴い従来から販売・製造・使用等がなされてきた化学的合成品以外の添加物(天然香料等を除く。以下「天然添加物」という。)については、経過措置として、その範囲を既存添加物名簿として確定した上で、引き続き、販売・製造・輸入等を認めることとされた。
 しかしながら、これら既存添加物名簿に掲げられた天然添加物については、従来から指定されている添加物と異なり、各品目毎に安全性のチェックがなされているものではなく、国会等において、その安全性の確認が求められているところである。
 平成8年度には林班報告書により、既存添加物489品目について、国際的な評価結果、欧米での許認可状況及び安全性試験成績結果等から、既存添加物の基本的な安全性について検討がなされ、林班報告書として公表された。この報告書では、「489品目のうち、159品目については既に国際的な評価がなされており基本的な安全性は確認されている。さらに41品目については入手した試験成績の評価により、また150品目についてはその基原、製法、本質からみて、いずれも現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないものと考えられた。」と報告されており、残る139品目についてさらに検討が必要であるとされている。
 平成11年度には黒川班報告書により、「林班報告書により安全性の確認が必要とされた139品目のうち、14品目の既存添加物について、現時点で直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められず、新たな安全性試験を早急に実施する必要はないものと考えられた。」と報告されている。更に、平成15年度の井上班報告書により、「安全性の見直しを行った17品目については、現時点において、これら17品目において直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった。」と報告されている。
 本調査は、平成8年度林班報告書で安全性について検討することが必要とされている139品目から、平成11年度黒川班報告書で安全性の見直しの終了した14品目及び平成15年度井上班報告書で安全性の見直しの終了した17品目を除く、残る108品目を対象として、国内外の試験成績を収集し、その試験成績の評価を行うことにより、天然添加物の基本的な安全性を検討することを目的とした。

C.研究方法
 林班報告書において安全性の確認が必要とされた既存添加物139品目のうち、黒川班報告書で安全性の見直しの終了した14品目及び平成15年度井上班報告書で安全性の見直しの終了した17品目を除く、残る108品目を対象として、90日間以上の反復投与試験成績及び変異原性試験成績の双方の資料を入手し得た14品目について、品目毎に安全性試験成績の評価を行った。

D.研究結果
 本調査において、安全性の見直しを行った14品目については、現時点において、これら14品目において直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった(その概要は別添のとおりである)。

E.考察
 林班報告書において、安全性の確認を必要とされた既存添加物のうち、見直しの済んでいない108品目を対象に、安全性試験成績の収集を行い、少なくとも90日間以上の反復投与試験成績及び変異原性試験成績の双方が入手できた14品目について、試験成績を評価したところ、いずれの品目についても、現時点において、直ちにヒトへの健康影響を示唆するような試験結果は認められなかった。従って、評価を行った14品目については、新たな安全性試験を早急に実施する必要はないものと考えられた。
 厚生労働省は、平成16年7月、アカネ色素の発がん性に関する食品安全委員会及び薬事・食品衛生審議会の評価を踏まえ、同色素を既存添加物名簿から消除し、その使用を禁止した。また、平成16年12月、使用実態のない既存添加物として38品目(安全性を確認する必要があるとされている添加物は25品目)を消除したところである。
 現時点において、既存添加物の見直し作業は着実に進行していると考えられるが、今後とも既存添加物の使用実態の調査を行い、情報の必要な品目から効率的に見直しを進めていく必要があると考える。なお、具体的な安全性の見直し状況については添付する参考資料を参照ありたい。

F.結論
 本調査により、基本的な安全性が確認されていると考えられた新たなものは、試験成績の収集による品目であった。これらの14品目についてはいずれも現段階において安全性の検討を早急に行う必要はないものと考えられた。



別添
アグロバクテリウムスクシノグリカン

1.食品添加物名
 アグロバクテリウムスクシノグリカン(アグロバクテリウムの培養液から得られた、スクシノグリカンを主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
 細菌(Agrobacterium tumefaciences)の培養液より、分離して得られた多糖類である。主成分はスクシノグリカンである。
3.主な用途
 増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344ラットに被験物質0.5、1.5、5%の濃度で飼料に混入し、90日間 反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、
摂餌量及び体重に有意な変化は認められなかった。
 血液学的、血液生化学的検査ならびに病理学的に本添加物の摂取に基づく有意な影響は認められなかった。
 以上の結果より、本剤の無毒性量は雌雄とも5%3.64g/kg)と考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000μg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、5.0mg/mL(生理的限界濃度)まで染色体異常試験を行った結果、いずれの処理条件下においても染色 体異常の誘発は認められなかった。3)
 マウス(ICR系雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)

(引用文献)
1.原田昌興:神奈川県立がんセンター臨床研究所
2.本間正充:厚生科学研究費補助金、国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部
3及び4.田中憲穂:厚生科学研究費補助金、財団法人食品薬品安全センター

アマシードガム

1.食品添加物名
 アマシードガム(アマの種子から得られた、多糖類を主成分とするものをいう。)
2.基原、製法、本質
 アマ科アマ(Linum usitatissimum LINNE)の種子の胚乳部分より、室温時~温時水又は含水アルコールで抽出して得られたものである。主成分
は多糖類である。
3.主な用途
増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質100、300、1000mg/kgの用量で強制経口投与し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、摂餌量、眼科学的検査、尿検査、血液学的検査、血液生化学的検査、器官重量、肉眼的及び病理組織学的検査のいずれの検査においても、被験物質に起因すると考えられる変化は認められなかった。
 体重では、雌雄とも1000mg/kg群で軽度な増加抑制がみられた。
 以上の結果より本剤の無毒性量は雌雄とも300mg/kgと考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5mg/plate
まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量 5mg/mLまでの染色体異常試験を行った結果、短時間処理法、連続処理法のいずれにおいて
も染色体異常の誘発は認められなかった。3)
 マウス(ddy 系雄、7週齢)の末消血を用いた小核試験は、オリーブ油にけん濁したアマシードガム2000mg/kg10ml/kg)×2 まで試験され
ており、いずれの用量においても小核の誘発は認められない。4)
 以上から、アマシードガムには遺伝毒性はないと判断した。

(引用文献)
1.小野 宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、財団法人食品薬品安全センター
2.兒嶋昭徳:平成13年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
3.望月信彦:平成13年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
4.本間正充:厚生科学研究費補助金、国立医薬品食品衛生研究所

アロエベラ抽出物

1.食品添加物名
 アロエベラ抽出物(アロエの葉から得られた、多糖類を主成分とするものをいう) 。
2.基原、製法、本質
 ユリ科アロエ(Aloe vera LINNE)の葉より、搾汁して得られたものである。主成分は多糖類である。
3.主な用途
 増粘安定剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344 系ラットに被験物質1003001000mg/kgの用量で強制経口投与し、90日間反復投与試験を行った。その結果、体重、摂餌量、眼科学的検査では変化は認められなかった。血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査及び器官重量では、一部の検査項目に有意差が認められたが、背景データ、用量依存性、あるいは病理組織学的検査から、偶発的あるいは毒性学的に意義の乏しい変化と考えられた。剖検では1000mg群の雄1例に精巣の矮小化及び軟化と精細管の萎縮像が観察されたが、自然発生病変と判断された。
以上の結果より本剤の無毒性量は雌雄とも1000mg/kgと考えられる。 1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKm101)を用いた復帰突然変異試験は、5mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞を用いて、最高用量 5mg/mlまでの染色体(CHL/IU)異常試験を行った結果、代謝活性化の有無に係わらず陰性であった。3)
 マウス(ICR 系雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kgまで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)

(引用文献)
1.小野 宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、財団法人食品薬品安全センター
2.松島泰次郎:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、日本バイオアッセイ研究センター
3.及び4.岩本毅:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人残留農薬研究所

魚鱗箔

1.食品添加物名
 魚鱗箔(タチウオ、ニシン、イワシ等の鱗の微細鱗を採集し精製したものである。主成分はグアニンである) 。
2.基原、製法、本質
 イワシ科マイワシ(Sardinops melanosticta TEMMINCK et SCHLEGEL)、タチウオ科タチウオ(Trichiurus lepturus LINNE)又はニシン科ニシン(Clupea pallasi CUVIER et VALENCIENNES)の魚体の上皮部を採り、室温時水又は弱アルカリ性水溶液で洗浄後、室温時エタノールで抽出して得られたものである。主色素は不明であるが、グアニンを含む。白色~淡黄灰色を呈する。
3.主な用途
 着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質100、300、1000mg/kgの用量で経口強制投与し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、摂餌量及び体重に変化は認められなかった。
 血液学的検査では、雌の300mg/kg群において、平均赤血球血色素量の増加が認められたが、軽微であり、1000mg/kg群では認められないことから、被験物質に起因するものではないと判断した。
 血液生化学的検査では被験物質に由来する変化は認められなかった。
 臓器重量は、雄の1000mg/kg群において、脳及び脾臓の絶対重量の高値が、雌300mg/kgの群で甲状腺の絶対重量の低値が、雌の 300mg/kg群及び1000mg/kg群で甲状腺の相対重量の低値が認められた。これらは病理組織学的な変化等を伴わないことから、被験物質に由来するものではないと判断した。
 病理組織学的検査では被験物質に由来する変化は認められなかった。
 以上の結果より本剤の無毒性量は雌雄とも1000mg/kgと考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、TA1538)を用いた復帰突然変異試験は、25mg/plateまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、1%CMC けん濁液として、最高用量5mg/mLまで添加し、染色体異常試験を行った結果、24時間及び48時間の連続処理において、10%未満の構造異常が認められ、擬陽性と報告している。3)
 マウス( ddy系雄、8週齢)の骨髄を用いた小核試験は、1%トラガント溶液のけん濁液を最高用量2000mg/kg/day×2まで経口投与しており、多染性赤血球比(PCE)に減少傾向が認められたが、小核を有する多染性赤血球の占める割合には有意な増加はなく、陰性と判断した。4)
 以上から、魚鱗箔には遺伝毒性はないと判断される。

(引用文献)
1.小野 宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、財団法人食品薬品安全センター
2.宮部正樹:平成9年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
3.祖父尼俊雄:平成9年食品添加物安全再評価等の試験、国立衛生試験所変異遺伝部
4.岸美智子:平成9年度食品添加物安全性再評価等の試験結果、神奈川県衛生研究所

サンダラック樹脂

1.食品添加物名
 サンダラック樹脂(サンダラックの分泌液から得られた、サンダラコピマール酸を主成分とするものをいう) 。
2.基原、製法、本質
 ヒノキ科サンダラック(Tetraclinis articulata (VAHL.)MAST.)の分泌液より、室温時エタノールで抽出し、ろ液からエタノールを留去して得られたオレオレジンから得られたものである。主構成成分はサンダラコピマール酸である。
3.主な用途
 ガムベース
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344ラットに被験物質 0.2、1.0、5.0%の濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態及び摂餌量にも被験物質に起因する変化は認められなかった。
 血液学的検査において、5.0%群の雌雄でHt値の減少、雄のMCHCの増加、血液生化学的検査において、5.0%群の雄でBUNの増加、TGの減少、1.0%群の雄でAlTの減少が認められたが、いずれも毒性学的には意義の乏しいものと判断された。
 臓器重量では、主要臓器の絶対重量に群間差は認められない。相対重量では、雄の1.0%、5.0%群及び雌の5.0%群で肝臓の有意な増加が認められた。また、病理組織学的検査で、雄の5.0%群の2例に軽微な小葉中心性の肝細胞肥大(有意差はない)が認められており、このことが肝臓の相対重量の増加に関与している可能性がある。
 病理学的検査では、軽微な小葉中心性の肝細胞肥大の所見を含め、発生頻度及び程度に有意差は認められない。
 無毒性量は雄で0.2% (123.6mg/kg/day)、雌で1% (686.6mg/kg/day)であると考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonela typhimurium TA98、TA10、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は 5000 μg/plate 、まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて染色体異常試験を行った結果、いずれの処理条件下においても染色体異常の誘発は認められなかった。しかしながら、析出が観察される高用量においては倍数体が誘発されている。3)
 マウス(ICR 系雄、8週齢)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kg×2回まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)
 従って、in vitroで観察された染色体異常誘発性は、十分高用量まで検討されたげっ歯類を用いる小核試験で確認できなかったことから、生
体にとって特段問題となるものとは考えられない。

(引用文献)
1.関田清司:厚生労働科学研究費補助金、国立医薬品食品衛生研究所毒性部
4.中嶋 圓:厚生科学研究費補助金、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
3.松元郷六:厚生労働科学研究費補助金、財団法人残留農薬研究所
4.宮川 誠:株式会社三菱化学安全性科学研究所

スフィンゴ脂質

1.食品添加物名
 スフィンゴ脂質(ウシの脳又は米ぬかから得られた、スフィンゴシン誘導体を主成分とするものをいう) 。
2.基原、製法、本質
ウシ科ウシ(Bos taurus LINNE)の脳、イネ科イネ(Oryza sativa LINNE)の種子又は小麦(Triticum aestivum LINNE)の胚芽から得られた米ぬかより、室温時~温時エタノール、含水エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン又は酢酸エチルで抽出したものより得られたものである。主成分はスフィンゴシン誘導体である。
3.主な用途
 乳化剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 Wistar Hannover(GALAS) 系ラットに被験物質60、 250、 1000mg/kgを強制投与し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、体重増加量、血液学的及び血清生化学的検査、臓器重量及び病理組織学的検査において、被験物質に起因する変化は認められなかった。
無毒性量は雌雄で1000mg/kgであると考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000 μg/plateまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量5000μg/mLの染色体異常試験を行った結果、いずれの処理条件下においても染色体異常の誘発は認められなかった。3)
 マウス(ICR 系雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)

(引用文献)
1.三森国敏:厚生労働科学研究費補助金、東京農工大学農学部獣医学科教授
2.松島泰次郎:平成12年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、日本バイオアッセイ研究センター
3.望月信彦:平成12年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
4.岩本毅:財団法人残留農薬研究所

パフィア抽出物

1.食品添加物名
 パフィア抽出物(パフィアの根から得られた、エクジステロイド及びサポニンを主成分とするものをいう) 。
2.基原、製法、本質
 ヒユ科パフィア(Pfafia iresinoides SPRENGEL)の根より、微温時含水エタノールで抽出したものより得られたものである。主成分はエクジステロイド及びサポニン等である。
3.主な用途
 製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質 100、300、1000mg/kgの用量で強制経口投与し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、摂餌量、眼科学的検査、尿検査、血液学的検査、血液生化学的検査、器官重量、肉眼的及び病理組織学的検査のいずれの検査においても、被験物質に起因すると考えられる変化は認められなかった。
 なお、いくつかの検査項目において、散発的な変化が認められているが用量的な相関もないこと等から、毒性学的な意義はなく、被験物質に起因する変化ではないと判断された。
 以上の結果より本剤の無毒性量は雌雄とも1000mg/kgと考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5mg/plate まで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量5mg/mLまでの染色体異常試験を行ったところ、代謝活性化の有無に係わらず、全ての用量において染色体異常の誘発は認められなかった。3)
 マウス(ddy系雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)

(引用文献)
1.小川宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、財団法人食品薬品安全センター
2.松島泰次郎:平成14年度食品添加物安全性評価等の試験検査、日本バイオアッセイ研究センター
3.岩本毅:平成14年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、財団法人残留農薬研究所
4.佐藤修二:平成14年度食品添加物安全性再評価等の試験結果、神奈川県衛生研究所

ヒキオコシ抽出物

1.食品添加物名
 ヒキオコシ抽出物(ヒキオコシの茎又は葉から得られた、エンメインを主成分とするものをいう) 。
2.基原、製法、本質
 シソ科ヒキオコシ(Isodon japonicus HARA)の茎又は葉より、エタノールで抽出して得られたものである。主成分はジテルペノイド(エンメイン等)である。
3.主な用途
 苦味料等
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質100、300、1000mg/kgの用量で強制経口投与し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、体重、尿検査及び剖検において、被験物質投与による影響は認められなかった。摂餌量、眼科学的検査、血液学的検査、血液生化学的検査、器官重量及び病理組織学的検査において、一部の検査項目に有意な変化が認められているが、用量反応性もなく偶発的なものであり、毒性学的な意義は乏しいと判断された。1)
 上の結果より本剤の無毒性量は雌雄とも1000mg/kgと考えられる。
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5mg/plateまで試験がされた。代謝活性化に依らない場合のWP2uvrA/pKM101において、最高用量においてわずかな復帰変異コロニーの増加が認められたが、用量依存性、再現性が認められず、総合的に判断して陰性であると考えられた。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量1.25mg/mlまでの染色体異常試験を行った結果、細胞増殖抑制試験で50%以上の抑制が認められた高用量においてのみ、代謝活性化の有無に係わらず構造異常を有する細胞の増加が認められた。3)
 マウス(ICR 系雄、7週齢)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kgまで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)
 哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験で認められた異常誘発は、細胞毒性が発現する用量のみの反応であり、用量反応関係も明確でないこと、及び限界用量まで試験されたげっ歯類を用いる小核試験において陰性であったことを考慮すると、ヒキオコシ抽出物は生体内において遺伝毒性を発現するとは考えられなかった。

(引用文献)
1.小野宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、財団法人食品薬品安全センター
2.~4.松元郷六:厚生労働科学研究費補助金、財団法人残留農薬研究所

ヒメマツタケ抽出物

1.食品添加物名
 ヒメマツタケ抽出物(ヒメマツタケの菌糸体若しくは子実体又はその培養液から抽出して得られたものをいう) 。
2.基原、製法、本質
 担子菌ヒメマツタケ(Agaricus blazei MURR.)の菌糸体若しくは子実体又はその培養液より、水で抽出して得られたものである。
3.主な用途
 苦味料等
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質を0.63、1.25、2.5、5%の濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、体重増加量及び摂餌量に殆ど影響は認められなかった。
 血液学的検査では、雌5%群でMCVの有意な増加が認められたが、用量相関性は認められず、被験物質の影響ではないと考えられた。
 血清生化学的検査においては、雄の2.5%群以上でBUNの有意な増加が認められたが、CRNは0.63%群以上では逆に有意な低下を示し、 腎重量や腎の組織変化との相関性もないことから、毒性学的な意義は少ないと考えられた。その他ALBやTCなどに有意な差が認められたが、用量相関性は認められなかった。雌では1.25%群ではBUNのみが有意な増加を示したが偶発的な変動と考えられた。
臓器重量では、雄1.25%及び2.5%群で肝臓の相対重量が増加を示し、雌2.5%群で脳の相対重量が有意な増加を示した。しかし、用量反応性はなく、偶発的なものと考えられた。
 病理組織学的検査において、雌雄で肝臓に小肉芽腫及び髄外造血、腎臓に好塩基性尿細管及び硝子滴の沈着(雌では鉱質沈着、心筋に軽度)の炎症性細胞浸潤が認められたが、これらは自然発生病変であり、偶発的なものであり、毒性学的に意義の乏しい変化であると考えた。
無毒性量は雌雄で5%(雄:2645mg/kg/day、雌:2965mg/kg/day )であると考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、 WP2uvrA/pKM101)、を用いた復帰突然変異試験は5000 μg/plateまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量 5000μg/mLの染色体異常試験を行った結果、いずれの処理条件下においても染色体異常の誘発は認められなかった。3)
 マウス(ddy 系雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kg×2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)

(引用文献)
1.西川秋佳:厚生労働科学研究費補助金、国立医薬品食品衛生研究所病理部
2.安心院祥三:厚生科学研究費補助金、財団法人化学物質評価研究機構
3.中嶋圓:厚生労働科学研究費補助金、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
4.岸美智子:神奈川県衛生研究所

ベタイン

1.食品添加物名
 ベタイン
2.基原、製法、本質
 アカザ科サトウダイコン(Beta vulgaris LINNE var. rapa DUMORTIER)の糖蜜より、分離して得られたものである。成分はベタインである。
3.主な用途
 調味料
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットを用いて52週間の慢性毒性試験(1.0、2.3、5.0%)及び104週間の発がん性試験(1.0%、5.0%)を混餌にて実施した。
 一般状態では、慢性毒性試験及び発がん性試験のいずれも著変は認められなかった。体重は各群とも試験期間を通じて漸増した。摂餌量は、慢性毒性及び発がん性試験のいずれも本剤投与群で散発的に対照に比較して有意に少ない週が認められた。
 発がん性試験の生存率は、雌雄とも対照群との間に差は無かった。
 血液学的検査では、慢性毒性試験の雄2.3%以上及び雌1.0%以上の群で平均赤血球容積減少、雌雄5.0%群で平均赤血球ヘモグロビン量減少が観察され、発がん性試験の雌5.0%群で平均赤血球容積減少及び平均赤血球ヘモグロビン量減少が観察された。また、血小板数の増加傾向が慢性毒性及び発がん性試験の雌雄の本剤投与群に観察された。
 慢性毒性試験で実施された血液生化学検査においては、総蛋白濃度、アルブミン濃度、A/G比及びのGOT低下が雌雄の本剤投与群に、ALP、GPTの低下が雄の本剤投与群で認められた。
 臓器重量では、肝臓及び腎臓の重量増加が慢性毒性試験及び発がん性試験の雌雄の5.0%群で認められた。
病理組織学的検査においては、慢性毒性試験及び発がん性試験の雌雄とも対照群に比較して発生頻度及び程度の差は認められなかった。また、用量に相関して発生頻度が増加する腫瘍あるいは非腫瘍性変化は認められなかった。
 以上から、無毒性量は5.0%(雄:4821mg/kg/day、雌:4150mg/kg/day)であり、5.0%までの濃度では発がん性は示さないことが明らかとなった。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5000 μg/plateまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量 5000μg/mLまでの染色体異常試験を行った結果、いずれの処理条件下においても染色体異常の誘発は認められなかった。3)
 マウス(ICR 系雄)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kgまで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)

(引用文献)
1.小野宏:(財)食品薬品安全センター
2.兒嶋昭徳:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
3. 及び4.岩本毅:平成11年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、(財)残留農薬研究所

ベニバナ赤色素

1.食品添加物名
 ベニバナ赤色素(ベニバナの花から得られた、カルタミンを主成分とするのをいう) 。
2.基原、製法、本質
 キク科ベニバナ(Carthamus tinctorius LINNE)の花又はこれを発酵若しくは酵素処理したものより、黄色素を除去した後、室温時弱アルカリ性水溶液で抽出し、中和して得られたものである。主色素はカルタミンである。赤色を呈する。
3.主な用途
 着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)急性毒性試験
 マウス経口投与における50%致死量(LD50)は、雌雄とも5g/kg以上であった。1)
(2)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質(1,792色価)0.5、1.5、5.0%の濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態も変化は認められなかった。体重及び摂餌量では、体重は群間に差は認められなかったが、摂餌量は雄の5.0%群で増加傾向が認められた。
 血液学的検査及び血液生化学的検査では、5.0%雄群でWBC数の有意な増加が認められたが、用量反応性や白血球百分比の変化も認められないことから本剤に関連する変化とは考えなかった。
 臓器重量では、5.0%群の雄の腎臓比重量、雌の肝臓実重量と比重量の増加が認められたが、血液学的検査、血液生化学的検査及び病理組織学的検査結果において、これらの臓器の障害を示唆する変化は認められないことから、毒性変化とは考察しなかった。
 以上の結果より本剤の無毒性量は 5.0%(雄:3056mg/kg/日、雌:3224mg/kg/日)と考えられる。2)
(3)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98 、TA100、TA1535、TA1537、TA1538)を用いた復帰突然変異試験は、20mg/plateまで試験されており、S9mixによる代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。3)、6)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量5mg/mLまでの染色体異常試験を行った結果、代謝活性化した系において弱い染色体異常誘発性を有していた。4)、6)
 マウスの骨髄を用いた小核試験は、陰性であるという報告がある。6)
 また、Rec-assayを実施したところ、S9mix非添加においてDNA損傷性は認められないとされている。5)、6)
 以上の結果から、哺乳類培養細胞で観察された弱い染色体異常誘発性は、マウスの骨髄を用いた小核試験において陰性が示されたことから、生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないものと考えられる。

(引用文献)
1.滝澤行雄:平成3年度食品添加物安全性試験、秋田大学医学部
2.菅野純:食品添加物試験検査費、国立医薬品食品衛生研究所毒性部
3.山本勝彦:平成3年度食品添加物安全性試験、名古屋市衛生研究所
4.祖父尼俊雄:平成3年度食品添加物安全性再評価等の試験、国立衛生試験所変異遺伝部
5.石崎睦雄:平成3年度食品添加物安全性再評価等の試験、茨城県衛生研究所
6.林真:真板敬三:平成6年度食品添加物規格基準設定等試験検査、財団法人残留農薬研究所

メバロン酸

1.食品添加物名
 メバロン酸
2.基原、製法、本質
 酵母(Saccharomycopsis fibuligera)によるコーンスチープリカー又はカゼイン由来のペプトンを主原料とする発酵培養液より、有機溶剤で抽出して得られたものである。成分はメバロン酸である。
3.主な用途
 製造用剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質を400、2000、10000ppmの濃度で飼料に混入し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態及び摂餌量にも変化は認められなかった。体重では、雌雄とも10000ppm群で有意な増加抑制が認められた。
血液学的検査では、10000ppm群において、雄で赤血球数が、雌でヘモグロビン及びヘマトクリット値が有意に減少し、それぞれ軽度な貧血傾向が観察されたが、造血器系臓器において病理組織学的変化は見られなかった。
 血液生化学的検査では、10000ppm群において、雌雄でのALT上昇、雄でのAST上昇、雌でA/G比の低下、総コレステロール及び中性脂肪値の有意な増加が認められた。
 臓器重量は、10000ppm群において、雌雄とも肝臓の絶対及び相対重量が増加した。
 病理組織学的検査では、10000ppm群の肝臓で小葉中心性の肝細胞脂肪化が同群の雌雄全例に認められ、一部では小葉中心部だけでなく全域に微細な肝細胞の脂肪化が認められた。また、同群の雌雄全例に軽度な炎症細胞の集族巣が肝実質内に散見された。2000ppm以下で被験物質に起因する変化は認められなかった。
 以上の結果より本剤の無毒性量は雌雄とも2000ppm(149.5mg/kg/day) と考えられる1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5mg/plateまで試験されており、代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて、最高用量5mg/mlまでの染色体異常試験を行った結果、明確な用量依存性は見られないものの、いずれの処理条件においても細胞毒性の認められる最高用量において、構造異常を有する細胞の増加が認められた。3)
 マウス(ICR 系雄、7週齢)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kgラ2まで試験されており、いずれの用量においても小核の誘発は認められなかった。4)
 哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験で認められた異常誘発は、細胞毒性が発現する用量のみの反応であり、用量反応関係も明確でない点、軽度ながらもpHの低下が認められた点、及び限界用量まで試験されたげっ歯類を用いる小核試験において陰性であった点を考慮すると、メバロン酸は生体において遺伝毒性を発現するとは考えられなかった。

(引用文献)
1.中江大:厚生労働科学研究費補助金、佐々木研究所
2.及び3.中嶋圓:厚生労働科学研究費補助金、財団法人食品農医薬品安全性評価センター
4.松元郷六:厚生科学研究費補助金、財団法人残留農薬研究所

モリン

1.食品添加物名
 モリン
2.基原、製法、本質
 クワ科ファスチック(Broussonetia xanthoxylum MARTIUS)の幹枝又は根より、エタノールで抽出し、精製して得られたものである。成分はモリンである。
3.主な用途
 酸化防止剤
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットを用い、被験物質濃度を0.625、1.25、2.5、5.0%となるように調製し、混餌投与にて90日間反復経口投与試験を実施した。その結果、全期間を通じ、動物の死亡及び一般状態の異常は認められなかった。摂餌量は雄雌とも用量相関性をもって増加した。血液学的検査では、雄の0.625%以上で軽度な貧血が認められ、5.0%群ではSeg.の増加及びのLymph減少も認められたが毒性学的な意義は明らかでない。
雌では0.625%以上の各群でのWBC増加傾向が認められ、5.0%群ではSeg.の増加及びLymphの減少も認められたが毒性学的な意義は明らかでない。血液生化学検査では、雌の0.625%以上及び雄の2.5%以上の各群でAST、ALT、ALPあるいはγ-GTの増加、肝臓及び腎臓の相対重量及び絶対重量の増加が認められ、肝臓及び腎臓などにおける障害が示唆された。しかし、病理組織学検査ではそれらの臓器に何ら異常は認められなかったことから、毒性学的な意義は不明である。無毒性量は、雄では0.625%(299mg/kg/day)、雌では0.625%未満(366mg/kg/day未満)と推定された。1)
なお、雌の無毒性量は0.625%未満(366mg/kg/day 未満)となるが、その毒性の程度から、雄の無毒性量を大きく下回らないと評価できる。
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、TA1538)を用いた復帰突然変異原性試験は、S9mixによる、代謝活性化の有無に係わらず、His+復帰コロニーを誘発したことから陽性と判断した。2)
 哺乳類培養細胞(CHL)を用いた染色体異常試験は、直接法及び代謝活性化法で約12%の染色体異常を誘発した。3)
 雄のSD系ラットを用い、500mg/kg及び2000mg/kgの単回強制経口投与によるin vivoラット肝不定期DNA合成試験を実施した。その結果、長時間処理の2000mg/kg群において統計学的に有意なネットグレイン数の増加が認められたが、背景データの範囲内であった。また、短時間処理においては有意な変化は認められなかったことから、本試験条件下においてSD系ラットの肝細胞に対しDNA損傷性を有しないと結論している。5)
 マウス(ddY 系雄)を用いた小核試験は、半数致死量と推定される用量の半量(500mg/kg)まで試験されている。多染性赤血球比(PCE)の減少により被験物質の暴露証明がなされているが、いずれの用量においても小核誘発性はないと結論された。4)

(引用文献)
1.広瀬雅雄:平成12年度食品添加物規格基準作成等試験検査、国立医薬品食品衛生研究所
2.宮部正樹:平成7年度食品添加物規格基準作成等の試験検査、名古屋市衛生研究所
3.高秀秀信:平成7年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、横浜市
4.岸美智子:平成7年度食品添加物安全性再評価等の試験検査、神奈川県
5.小野宏:平成15年食品添加物等規格基準に関する試験検査、財団法人食品薬品安全センター

ログウッド色素

1.食品添加物名
 ログウッド色素(ログウッドの心材から得られた、ヘマトキシリンを主成分とするものをいう) 。
2.基原、製法、本質
 マメ科ログウッド(Haematoxylon campechianum)の心材より、熱時水で抽出して得られたものである。主成分はヘマトキシリンである。
黒褐色を呈する。
3.主な用途
 着色料
4.安全性試験成績の概要
(1)反復投与試験
 F344系ラットに被験物質を20、100、500mg/kgの用量で強制経口投与し、90日間反復投与試験を行った。その結果、動物の死亡は認められず、一般状態、摂餌量、眼科学的検査、血液生化学的検査及び剖検において、被験物質に起因する変化は認められなかった。
その他、500mg/kg群で次のような所見が認められた。雄で、軽度な体重増加抑制、尿検査では雌に有意な尿量の増加及び尿比重の低下が観察された。血液学的検査では、雌にリンパ球及び単球の減少を伴う白血球数の有意な減少が認められた。臓器重量測定の結果、雄の腎臓の相対重量の有意な増加が認められ、病理組織学的検査において、雌雄全例の腎臓の近位尿細管上皮にリポフスチンを含有する褐色色素の沈着が観察された。これらは毒性学的に意義のある変化ではないと判断された。
 以上の結果より本剤の無毒性量は雌雄とも100mg/kgと考えられる。1)
(2)遺伝毒性試験
 ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium TA98、TA100、TA1535、TA1537、WP2uvrA/pKM101)を用いた復帰突然変異試験は、5mg/plateまで試験されており、S9mixによる代謝活性化の有無にかかわらず陰性であった。2)
 哺乳類培養細胞(CHL/IU)を用いて染色体異常試験を行った結果、短時間処理法(+S9)で用量依存性を伴い10%を超える染色体構造異常誘発頻度の上昇、短時間処理法(-S9)では10%は超えないものの増加傾向が認められた。3)
 マウス(BDF1 雄、9週齢)の骨髄を用いた小核試験は、限界用量である2000mg/kgまで試験された結果、用量依存性は認められないものの2000mg/kgにおいて陰性対照群との間に小核誘発率の統計学的に有意な増加が認められた。また、2000mg/kgにおいては、多染性赤血球の割合が有意に減少し、被験物質の暴露が示された。4)
 染色体異常試験において認められた変化については、細胞毒性の認められる用量のみでの変化であることから毒性学的な意義のあるものではないと考えられる。また、小核試験において認められた変化は統計学的には有意であったが、当該試験における陰性対照の値が低かったことが影響しており、毒性学的には意義のある変化ではないと考えられることから、生体にとって特段の問題となるものではないと結論されている。

(引用文献)
1.小野宏:平成15年度既存添加物の安全性に関する試験、財団法人食品薬品安全センター
2.~4.中嶋圓:厚生労働科学研究費補助金、財団法人食品農医薬品安全性評価センター


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