カドミウムに関するQ&A

<1.食品中に含まれるカドミウム>

Q1.カドミウムはどのような物質ですか?どのような害があるのですか?
Q2.どうしてお米などの食品にカドミウムが含まれているのですか?
Q3.どんな食品にカドミウムが含まれているのですか?どのくらい摂取しているのですか?
Q4.お米には、どの程度のカドミウムが含まれているのですか。
Q5.毎日お米を食べても健康に影響はないのですか?
Q6.食品以外からもカドミウムを摂っているのですか?

<2.規制及びリスク管理>

Q7.国内、国外の食品中のカドミウムの規制はどのようになっていますか?
Q8.国際基準が設定されている食品について、わが国でも同様に基準値を設定すべきではないですか?
Q9.農産物の生産段階などにおけるカドミウムの汚染低減対策として、どのような取組みが行われているのですか?

<3.食品摂食時の注意事項>

Q10.食生活において、カドミウムの摂取を減らすために気をつけることはありますか?
Q11.いつも親戚の農家から米をもらっていますが、米中のカドミウム濃度は大丈夫でしょうか?

<4.環境省調査結果への対応>

Q12.本年3月に新たに公表された環境省の調査結果によれば、カドミウム濃度の高い畑作物が確認されていますが、厚生労働省は、この結果を踏まえて畑作物に関する基準を設定するなど、再審議をしないのですか。
Q13.新たに公表された環境省の調査結果によれば、カドミウム濃度の高い野菜があるようですが、野菜を食べても大丈夫でしょうか。
Q14.カドミウムの汚染地域とされる地域に住んでいますが、健康に影響はないでしょうか。


<1.食品中に含まれるカドミウム>

Q1 カドミウムはどのような物質ですか?どのような害があるのですか?

A)
 カドミウムは、鉱物中や土壌中などに天然に存在する重金属で、鉛・銅・亜鉛などの金属とともに存在することから、日本においては1千年以上前から鉱山開発などにより、地中から掘り出されてきました。
 自然環境中のカドミウムが農畜水産物に蓄積し、それらを食品として摂取することで、カドミウムの一部が体内に吸収され、主に腎臓に蓄積します。カドミウム濃度の高い食品を長年にわたり摂取すると、近位尿細管の再吸収機能障害により腎機能障害を引き起こす可能性があります。また、鉄欠乏の状態では、カドミウム吸収が増加する報告があります。
 なお、カドミウム中毒の事例としてイタイイタイ病がありますが、これは、高濃度のカドミウムの長期にわたる摂取に加えて、様々な要因(妊娠、授乳、老化、栄養不足等)が誘因となって生じたものと考えられています。今回検討が行われているような低濃度のカドミウムの摂取とは状況が全く異なっており、低濃度の摂取でイタイイタイ病が発症することは考えられません。

Q2 どうしてお米などの食品にカドミウムが含まれているのですか?

A)
 日本には、全国各地に鉛・銅・亜鉛の鉱山や鉱床が多数あります。カドミウムは、このような鉱山や鉱床に含まれて天然に存在し、さらに、鉱山開発や精錬などの人の活動によって環境中へ排出されるなど、いろいろな原因により水田などの土壌に蓄積してきました。
 お米などの作物に含まれるカドミウムは、作物を栽培している間に、水田などの土壌に含まれているカドミウムが吸収され蓄積したものです。
 また、カドミウムは海水や海の底質中にも含まれており、貝類、イカやタコなどの軟体動物や、エビやカニなどの甲殻類の内臓に蓄積されやすいことがわかっています。

Q3 どんな食品にカドミウムが含まれているのですか?どのくらい摂取しているのですか?

A)
 カドミウムは土壌又は水など環境中に広く存在するため、米、野菜、果実、肉、魚など多くの食品に含まれていますが、我が国においては米から摂取する割合が最も多く、日本人のカドミウムの1日摂取量の約4割は米から摂取されているものと推定されています。
 

<食品からのカドミウム摂取量の経年変化>


 
 厚生労働省の研究機関である国立医薬品食品衛生研究所は、昭和52(1977)年度から毎年、日常食の汚染物質の摂取量調査 1)を行っています。平成19(2007)年度の調査結果によれば、日本人の日常食からのカドミウムの1日摂取量は、21.1μg 2)(成人の平均体重を53.3kgとすると2.8μg/kg 体重/週)であり、調査開始以降、経年変化はあるものの米の摂食量の低下などにより減少してきています。
 また、2003年6月に開催された第61回FAO/WHO食品添加物専門家会議(JECFA) 3)の報告書によれば、各国の調査に基づくカドミウムの平均的な摂取量は0.7~6.3μg/kg 体重/週、また、WHOが公表している世界の各地域の食品の消費量とカドミウム濃度から得られた地域ごとの平均的なカドミウム摂取量は2.8~4.2 μg/kg 体重/週となっており、我が国の摂取量は比較的低い状況となっています。1)国立医薬品食品衛生研究所が、地方衛生研究所と協力して行っている調査です。食品を集めて調理し、食品中に含まれるカドミウムの濃度を分析し、国民栄養調査の食品摂取量をもとに、1日当たりの汚染物質摂取量を推定しています。
2)μg(マイクログラム)は、1グラムの百万分の1の重さです。
3)国際食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)が合同で運営している専門家により構成される機関であり、食品添加物や食品中の汚染物質等のリスク評価を行っています。

Q4 お米には、どの程度のカドミウムが含まれているのですか?

A)
 お米(玄米)のカドミウム含有量について、全国のさまざまな地域(約3万7千点)を調査した結果によると、日本産のお米1kg中に含まれるカドミウム量は平均して0.06 mg(=0.06 ppm)でした(1997~1998年 旧食糧庁の全国実態調査結果より)。
 お米のカドミウム濃度が0.4 ppmを超える場合、それは鉱山からの排出などによって人為的に水田がカドミウムに汚染されていることが原因と考えられていますが4)、上記調査結果からは、そのようなお米の割合は全体の0.3%となっています。
 

<玄米中のカドミウム含有量の全国実態調査結果>

4)昭和43年度公害調査研究委託費により実施されたカドミウムに関する調査研究の成果に基づいて判断されたものです。

Q5 毎日お米を食べても健康に影響はないのですか?

A)
 食品安全委員会の食品健康影響評価によると、「近年、日本人の食生活の変化によって1人当たりの米消費量が1962年のピーク時に比べて半減した結果、日本人のカドミウム摂取量は減少してきている。2007年の日本人の食品からのカドミウム摂取量の実態については、21.1μg/人/日(体重53.3kgで2.8μg/kg 体重/週)であったことから、耐容週間摂取量 5)の7μg/kg体重/週よりも低いレベルにある。したがって、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられる。」とされています。
 
 <参考> 食品からのカドミウム摂取の現状に係る安全性確保について(食品安全委員会)5)毒性試験などに基づくリスク評価により、人が一生涯、毎日摂取したとしても健康に悪影響を与えない量として推定されたものです。

Q6 食品以外からもカドミウムを摂っているのですか?

A)
 飲料水や食品からの摂取といった経口での摂取経路のほかに、呼吸器を介して体内にカドミウムが吸収され、体内を循環する経路があります。
 例えば、たばこの煙の中にはカドミウムが多く含まれていることから、喫煙する人は、喫煙しない人よりも、カドミウム摂取量が多くなります。
 仮にたばこに含まれるカドミウム(約1~2μg/本)の約10%が喫煙により肺に吸入され、さらに、吸入されたカドミウムの約50%が体内に吸収されるとすると、1日に20本喫煙する人は、毎日約1~2μgのカドミウムを吸収すると推定されます。

<2.規制及びリスク管理>

Q7 国内、国外の食品中のカドミウムの規制はどのようになっていますか?

A)
 現在、国内では、食品衛生法において、米(玄米)、清涼飲料水及び粉末清涼飲料にカドミウムの基準値が設定されています。
 米については、昭和45年以降、基準値は1.0 mg/kg未満とされてきました。また、その当時、カドミウム濃度0.4 mg/kgを超える米が生産される地域は、何らかのカドミウムによる環境汚染があると考えられていたため、市場の混乱を避けるために、国が0.4 mg/kgから1.0 mg/kg未満の米を買い上げて市場流通しないよう管理してきました。
 

<食品衛生法に基づくカドミウムの基準値>
食 品
基準値
米(玄米) 1.0 mg/kg未満
清涼飲料水
 (ミネラルウォーター類を含む)
原水 0.01 mg/L以下
製品 検出してはならない
粉末清涼飲料 検出してはならない

 
 また、国際基準は次のように設定されています。
 

<食品中の汚染物質規格>  (CODEX STAN 193-1995, Rev.3-2007)
食品群
基準値
(mg/kg)
備 考
穀類(そばを除く)
0.1
小麦、米を除く
ふすま、胚芽を除く
小麦
0.2
 
ばれいしょ
0.1
皮を剥いたもの
豆類
0.1
大豆(乾燥したもの)を除く
根菜、茎菜
0.1
セロリアック、ばれいしょを除く
葉菜
0.2
 
その他の野菜(鱗茎類、アブラナ科野菜※、
ウリ科果菜、その他果菜)
0.05
食用キノコ,トマトを除く
精米
0.4
 
海産二枚貝
2
カキ、ホタテを除く
頭足類(イカ及びタコ)
2
内臓を除去したもの
※「アブラナ科野菜」のうち、葉菜で結球しないものは「葉菜」に含まれる。

 

<個別食品規格>
食 品
基準値
備 考
ナチュラルミネラルウォーター
0.003 (mg/l)
CODEX STAN 108-1981
食塩
0.5 (mg/kg)
CODEX STAN 150-1985

 
 上記の国際基準の設定を受け、平成20年7月から平成21年10月までに開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食品規格部会において、食品安全委員会の食品健康影響評価結果を踏まえて食品からのカドミウム摂取のリスク管理について審議が行われました。
 
 この審議の結果、米中のカドミウムの基準値を現行の玄米中1.0 mg/kg未満から玄米及び精米中0.4 mg/kg以下に改正することとされ、食品衛生分科会の審議を経て、平成22年2月に薬事・食品衛生審議会から答申がなされました。この改正内容については、平成22年4月に関係告示が公布されたところであり、平成23年2月28日より施行されることとなっています。(厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知 食安発0408第2号(平成22年4月8日))


<改正後の米のカドミウムの基準値(平成23年2月28日施行)>
食品
基準値
米(玄米及び精米)
0.4 mg/kg以下


 また、現在、食品衛生法でカドミウムの規格基準が設定されている清涼飲料水(ミネラルウォーター類を含む)及び粉末清涼飲料については、別途検討することとしています。

Q8 国際基準が設定されている食品について、わが国でも同様に基準値を設定すべきではないですか?

A)
 食品中の汚染物質のリスク管理の方法としては、(1)農産物の生産段階での汚染低減対策、(2)食品の製造・加工段階での汚染低減対策、(3)基準値の設定があります。
 今回、わが国における食品からのカドミウムの摂取状況及び国内食品中のカドミウムの含有実態を勘案した結果、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられます。
 しかしながら、汚染物質であるカドミウムの摂取量をさらに低減することが望ましいことから、農産物の生産段階での低減対策を進めることに加えて、米について基準値を設定することとしました。これは、日本人の食品からのカドミウム摂取の約4割が米からの摂取であり、米に基準値を設定して管理を行うことが効果的であることから、、ALARAの原則6)に従って基準値を改正することとしたものです(1.0ppm→0.4ppm)。
 米以外の食品については、米に比べて、それらからのカドミウム摂取量が少なく、基準値を設定して管理することとしてもカドミウム摂取の低減には大きな効果は期待できないことから基準値を設定しないこととし、関係者に対し、引き続き、農産物の生産段階での低減対策を推進するよう要請することとしました。
 併せて農水産物の含有実態調査を実施することを要請し、今後、一定期間経過後に低減対策と含有実態調査のその実施状況について報告を求め、必要に応じて米以外の食品の規格基準の設定等について検討することとしています。 6)「合理的に達成可能な範囲でできる限り低く設定する(As low as reasonably achievable)」との考え方。

Q9 農産物の生産段階などにおけるカドミウムの汚染低減対策として、どのような取組みが行われているのですか?

A)
 土壌がカドミウムに汚染された農用地については、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律等に基づき、環境省及び農林水産省において、汚染を除去するための客土(非汚染土による盛り土)などの事業が行われています。
 
 <参考> 農用地土壌汚染対策(環境省)
 
 また、農林水産省において、(1)カドミウムの吸収効率の高い植物を用いて土壌中のカドミウム濃度を低減する「植物浄化」技術の普及、(2)稲穂が出る時期の前後に水田に水を張ることによりカドミウムの水稲への吸収を抑制する「湛水管理」が推進されています。
 さらに、米以外の品目(大豆、麦、野菜等)についても、(1)転作作物として水田で生産された際のカドミウム濃度を低く抑制するための植物浄化等の土壌浄化対策、(2)カドミウム低吸収性品種・品目への転換、(3)土壌改良資材の施用などによるカドミウム吸収抑制対策が推進されているほか、(4)植物浄化技術の畑への適用、(5)新たなカドミウム低吸収性品種の開発など、新たなカドミウム低減対策の実用化に向けた研究開発が進められています。

 <参考> 食品のカドミウム対策(農林水産省)


<3.食品摂食時の注意事項>

Q10 食生活において、カドミウムの摂取を減らすために気をつけることはありますか?

A)
 前述のとおり、食品安全委員会の食品健康影響評価によれば、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられます(Q5参照)。
 しかしながら、水産庁や厚生労働省の調査結果によると、軟体動物(貝類、たこ、いか)、甲殻類(かに、えび)の内臓にカドミウム濃度の高いものが認められており、これらを原料として用いた加工食品である塩辛類の一部にはカドミウム濃度の比較的高いものが認められています。
 これらの食品は、我が国において古くから食されてきたものであり、通常の食生活において健康に悪影響を与える可能性は低いと考えます。食生活を通じて健康な毎日を過ごすためにも、同じ食品を毎日たくさん食べ続ける偏食などに注意し、バランスの良い食生活を心がけましょう。
 
 <参考> 国内産農畜産物等の実態調査結果(農林水産省)

Q11 いつも親戚の農家から米をもらっていますが、米中のカドミウム濃度は大丈夫でしょうか?

A)
 わが国で生産される米中のカドミウムについては、農林水産省が調査を実施しています。農林水産省において重点的に調査されている地域などは、以下を参照して下さい。
 
 <参考> 産地におけるコメのモニタリング調査結果(農林水産省)
 
 米中のカドミウム濃度の高い可能性がある地域においては、生産された自家消費用などの非売用の米についても、生産者の希望に基づき、JA等が調査分析を実施しており、販売される米と同様、食品衛生法の基準値を超過する場合は、JA等が生産者に対して消費しないよう連絡し、翌年度の栽培に当たっては湛水管理などのカドミウム低減対策を講じるよう指導を徹底しています。
 なお、食品衛生法は、販売のみでなく、不特定又は多数の者に対する販売以外の授与についても規制の対象とされており、その場合は基準値に適合する必要がありますが、親戚など限られた人への授与については、対象外となっています。

<4.環境省調査結果への対応>

Q12 平成23年3月に新たに公表された環境省の調査結果によれば、カドミウム濃度の高い畑作物が確認されていますが、厚生労働省は、この結果を踏まえて畑作物に関する基準を設定するなど、再審議をしないのですか。

A)
 環境省が実施した調査は、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律に基づく対策地域の指定要件を検討することを目的として、畑作物と土壌中のカドミウム濃度の相関関係を調べるため、土壌中のカドミウム濃度が高めの地域も含めて実施されたものと聞いていますが、調査した畑作物の点数や地域に限りがあります。
 薬事・食品衛生審議会における食品中のカドミウムに関する審議は、食品安全委員会の食品健康影響評価を踏まえて行われたものです。同評価では、農林水産省が実施した全国規模の調査結果をもとにカドミウム濃度が比較的高い農作物の流通も想定して推計された日本人のカドミウム摂取量分布も含めて評価されています。
 審議会においては、食品安全委員会の食品健康影響評価を踏まえ、各食品群のカドミウム摂取量の寄与率、国際基準のある作物に基準を設定した場合のカドミウム摂取量低減効果の推計等も勘案して、以下の結論が得られました。
(1) 米中のカドミウムの規格基準を改正(1.0ppm→0.4ppm)すること
(2) 消費者に対し、バランスのよい食生活を心がけることの重要性について情報提供を行うこと
(3) 米をはじめその他の農作物について、低減対策を推進するよう関係者に要請すること
(4) 農水産物中のカドミウムの実態把握に努めるよう関係者に要請すること

 今般公表された環境省の調査結果については、平成22年5月18日に開催された食品規格部会において報告し、仮にこの調査結果を含めたとしても、以上の審議会での審議の結論に影響を与えることはないことを確認いただきました。

Q13 新たに公表された環境省の調査結果によれば、カドミウム濃度の高い野菜があるようですが、野菜を食べても大丈夫でしょうか。

A)
 Q3及びQ5のとおり、食品安全委員会の食品健康影響評価によれば、我が国での市場流通食品の分析結果をもとに算定したカドミウムの一日摂取量は2.8 μ g/kg体重/週であり、耐容週間摂取量の7 μ g/kg体重/週を十分下回っていることから、一般的な日本人における食品からのカドミウム摂取が健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと考えられるとされています。
 また、同委員会では、比較的カドミウム濃度が高い農作物が流通することも想定し推計された日本人のカドミウム摂取量分布についても、以下のとおり評価しおり、審議会における議論では、カドミウム摂取量が多いと推定される人でも、健康に悪影響を及ぼさない摂取量を十分に下回っているとされています。
-食品安全委員会汚染物質評価書 カドミウム(第2版)より抜粋-

 独立行政法人国立環境研究所(2004)は、平成7年から平成12年までの6年間の国民栄養調査による摂取量データと農林水産省の実態調査による食品別カドミウム濃度データから確率論的曝露評価手法(モンテカルロシミュレーション)を適用し、日本人のカドミウム摂取量分布*の推計を行っている。この結果、現状の0.4ppm以上の米を流通させない場合におけるカドミウム摂取量は、算術平均値3.44μg/kg体重/週、中央値2.92μg/kg体重/週、95パーセンタイルで7.18μg/kg体重/週であると報告されている。

<食品からのカドミウム摂取量の経年変化>

※ 日本人のカドミウム曝露量推計に関する研究より引用

* この摂取量分布は、計算上のものであり、分布図の右側部分は、統計学的に非常に誤差が大きく、非常に確率が低い場合も考慮されている領域である。したがって、実際にはPTWIを超える人は、ほとんどいないと考えるのが妥当である。

 日本人が食品を通じて摂取するカドミウムのうち野菜各品目から摂取する量の割合は、主要な摂取源である米に比べて低い上、我が国の農作物の流通・販売や食生活の現状からは、カドミウム濃度の高い野菜を毎日大量に、長期間にわたって摂取する可能性は低いと考えられますが、食生活を通じて健康な毎日を過ごすためにも、同じ食品を毎日たくさん食べ続ける偏食などに注意し、バランスの良い食生活を心がけましょう。

Q14 カドミウムの汚染地域とされる地域に住んでいますが、健康に影響はないでしょうか。

A)
 食品安全委員会の食品健康影響評価では、カドミウム摂取量が多いと推定される人でも健康に悪影響を及ぼさない程度の摂取であるとされています(Q12参照)。

 また、カドミウム汚染地域の住民を対象に食事からのカドミウム摂取とその健康影響に関する調査を実施した、自治医科大学医学部薬理学講座環境毒性学部門・香山不二雄教授は、前述の環境省の調査結果の公表を受けて、下記のとおりコメントしています。

 
 全国5ヶ所(米中のカドミウム濃度が低い地域1ヶ所とカドミウム濃度が高い地域4ヶ所)で、農業に従事する30歳以上の女性1,381人の方を対象に、疫学調査7)を行いました。
調査項目は、大きく分けて、以下の2つに分類されます。
[1] カドミウムの摂取量を知るための調査項目:食事調査(どのような食品をどのような頻度で食べているのか)の実施、食品(米については対象者の 方が実際に食べているもので、自家産米を含む。その他の食品については、調査地域における市場流通品)中のカドミウム濃度の測定
[2] カドミウムによる健康影響を知るための調査項目:採尿、採血、骨密度検査等

調査結果ですが、
[1] カドミウムの摂取量については、米からのカドミウム摂取量をもとに食品全体からのカドミウム平均摂取量を算出したところ8、 カドミウム濃度が低い地域では0.86~2.43 μg/kg体重/週、カドミウム濃度が高い地域では2.27~6.72 μg/kg体重/週でした。カドミウム濃度が 高い地域では、調査に参加した方のうち17.9~29.8%が耐容週間摂取量7μg/kg体重/週を超えていました。
また、カドミウム濃度が高い地域で実施した調査によれば、マーケットバスケット法9)では8.05 μg/kg体重/週、陰膳法10)では3.08 μg/kg体重/週 となり、陰膳法ではマーケットバスケット法での約半分の結果でした。陰膳法では、個人の正確な暴露量を知ることができますが、 個人内の日内変動が献立によって大きくなることが知られています。
[2] カドミウムによる健康影響については、カドミウム濃度が低い地域と高い地域との間で、腎臓の近位尿細管障害(Q2参照)の発症頻度に差はありませんでした。  このような調査結果から、カドミウムの汚染地域に住んでいる人が、その地域で流通している食品を食べても、健康に悪影響を及ぼす可能性は低いと 考えられ、食品安全委員会が設定した耐容週間摂取量の7μg/kg体重/週は、十分安全サイドに立って設定されているものと考えられます。

7)この疫学調査は、食品安全委員会の「汚染物質評価書 カドミウム(第2版)」(p15, p52~53)においても引用されています。
8)食品全体からのカドミウム摂取量の50%を米から摂取していると仮定した場合と、米以外の農産物等の汚染濃度を全国平均(平均摂取量15 μg/日)であると仮定した場合の二通りの方法で算出しています。
9)広範囲の食品を小売店等で購入し、必要に応じて摂取する状態に加工・調理した後、分析し、食品群ごとに化学物質の平均含有濃度を算出します。これに特定の集団における食品群の平均的な消費量を乗じることにより、化学物質の平均的な摂取量を推定します。
10)調査対象者が食べた食事と全く同じものの1日分を食事試料とし、1日の食事中に含まれる化学物質の総量を測定することにより、調査対象者が食べた食品に由来する化学物質の摂取量を推定します。

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