第9回研究成果報告書(2003年)

[研究成果報告書 索引]

Abs.No.
研究テーマ
研究者
アントシアニン色素の発色と安定性の分子機構とエンジニアリング 斉藤 和季
千葉大学大学院 薬学研究院
糖質と生命系色素(ポルフィリン類)との協同効果による生体機能の制御とバイオメカニズムの解明 矢野 重信
奈良女子大学大学院 人間文化研究科
魚肝ミクロソームを用いた抗酸化剤の効力評価法の確立-ラットに代わる新規実験動物の開発Ⅱ 幡手 英雄
宮崎大学 農学部
ポリフェノール系食品添加物の新機能開拓と代謝物の構造ならびに安全性に関する研究 村上 啓寿
大阪大学 薬学研究科
膜作用を指標にした食品成分ならびに添加物の有用・有害活性の検索 土屋 博紀
朝日大学 歯学部 
唾液及び尿中の硝酸塩及び亜硝酸塩に対する硝酸塩含量の異なる食事の影響 石永 正隆
県立広島女子大学 
幼小児期に多く摂取される食品添加物のアレルギー疾患に対する安全性評価 ~特に、アトピー性皮膚炎について~ 能勢 充彦
名古屋市立大学大学院 薬学研究科 
食品添加物と腸内細菌との関わりから見た安全性評価 伊藤 徳夫
大阪大学 薬学研究科
食品添加物の脂肪細胞分化に対する影響に関する研究 今川 正良
名古屋市立大学 薬学部
アントシアニン生合成酵素遺伝子の強化による色素生産 山川 隆
東京大学大学院 農学生命科学研究科
食品添加物の赤外線吸収及び紫外可視吸収スペクトルの集積と公開に関する研究 江澤 正思
東亜大学 工学部 
遺伝子工学・細胞工学的手法を活用したポリフェノールの機能性・安全性評価 長岡 利
岐阜大学 農学部 
熱帯植物の新しい味覚修飾タンパク質の活性構造および発現生産の基盤解析 阿部 啓子
東京大学大学院 農学生命科学研究科
食品添加物コンドロイチン硫酸を含むグリコサミノグリカンの機能性に関する研究 今成 登志男
千葉大学大学院 薬学研究院 
抗酸化性を有する天然食用色素の酸化的変化とその制御研究 増田 俊哉
徳島大学 総合科学部 
アントシアニン―大豆タンパク質複合体の調整とDPPHラジカル捕捉活性 西川 和孝
鳴門教育大学 学校教育学部 
乳化性海苔ポルフィランの脂質結合 高橋 幸資
東京農工大学 農学部 
天然植物色素に生理機能を付加させ、食品添加物としての有効性と価値を高めることを目的とした酵素的分子設計(第一報) 石原 浩二 
京都教育大学 教育学部 
リゾチームからの抗菌性ペプチドの分離とその利用 ヒッシャムR.イブラヒム
鹿児島大学 農学部
沙蒿種子表層を覆う高吸水性多糖の構造と応用 多田 全宏
東京農工大学 農学部 
ヤマブドウ(Vitis coignetiae Pulliat)果皮に含まれるアントシアニンの天然着色料並びに健康食品成分としての有用性・機能性 岡本 五郎
岡山大学 農学部 
こうじオリゴ糖添加によるグラノーラミックスの嗜好性増強 瀧井 幸男
武庫川女子大学 生活環境学部 
海藻類からの新規殺菌性褐変防止物質の開発 梶原 忠彦
山口大学 農学部 
難消化性多糖類の適性、適格な使用のモデル系の作製 大鶴 勝
武庫川女子大学 生活環境学部 
ラジカル捕捉、抗酸化活性を指標とした機能性物質の効率的生産系システムの開発 藤伊 正
東洋大学 生命科学部
カロテノイド代謝天然物における立体化学と食品添加剤としての機能評価 勝村 成雄
関西学院大学 理工学部
日本食品化学研究振興財団 特定研究
食品中の食品添加物分析法の開発及び改良に関する研究
伊藤 誉志男
武庫川女子大学薬学部
中澤 裕之
星薬科大学

9-01

アントシアニン色素の発色と安定性の分子機構とエンジニアリング

千葉大学大学院 薬学研究院 斉藤 和季、蒔田 由紀子、山崎 真巳


 アカジソ特異的に発現するbHLH2因子F3G1について、他のアントシアニン生合成制御に関与すると考えられるbHLH転写因子(MYC-RP)、MYB様転写因子(MYB-P1およびMYB-C05)およびWD40因子(PFWD)との間のタンパク質間相互作用を酵母のTwo-Hybrid Systemを用いて解析した。さらにそれぞれの因子について構造遺伝子プロモーターの転写活性化能を測定した。その結果、F3G1はMYC-RP及びPFWDとの間でタンパク質間相互作用することが明らかとなった。これらの結果から、赤ジソにおいてF3G1はMYC-RPやPFWDとの相互作用を介して、アントシアニン生合成を活性化している可能性が示唆された。


9-02

糖質と生命系色素(ポルフィリン類)との協同効果による生体機能の制御とバイオメカニズムの解明

奈良女子大学大学院人間文化研究科 矢野 重信


 クリーンな癌治療法として注目されている光線力学療法(>PDT:>photodynamic therapy)の光増感剤として高い水溶性を有し、会合体を動的に制御できる3本の糖鎖(マルトヘキサオース)および1本のアルキル鎖(エチル基,ブチル基,ヘキシル基,デシル基,ヘキサデシル基)を連結した一連のテトラフェニルポルフィリン誘導体を合成した。同定は,>NMR ,元素分析などを用いて行った。これらのポルフィリンの会合挙動は> 吸収,>CD(円二色性)スペクトルから検討した。> これら>3本のマルトヘキサオースを持つ> TPP は,非常に高い水溶性を示した。これにより,導入する糖鎖の本数により親疎水性のバランスがコントロールできるということを見いだした。また,マルトヘキサオースのみを連結したポルフィリンの> Soret 帯部分の吸収スペクトルは>DMSO 中でシャープであった。これはポルフィリンがモノマー的に存在していることに起因している。一方、水中では>Soret 帯のブロード化が見られ,濃度が濃くなるに従って,半値幅が大きくなった。これは水中ではポルフィリン同士が会合し,様々なエネルギー状態をとるためだと考えられる。興味深いことに,ある程度の長さのアルキル基とマルトヘキサオースを連結したポルフィリンは水中でブロード化する>Soret 帯を示すものの,濃度を変化させても波形に全く変化が無い特徴的な吸収スペクトルを示した。これは,長鎖アルキル基の疎水性相互作用によって濃度依存性の無い安定な会合体を形成するためだと考えられる。また,>CD スペクトルではいずれのポルフィリンも> DMSO 中では> CD 活性を示さなかった。このことからも,>DMSO 中ではポルフィリンはモノマー的に存在していることがわかる。しかし,水中においては長波長側に負のコットン効果,短波長側に正のコットン効果を示す。これはポルフィリン環同士が相互作用しキラリティーを持った会合体を形成していることを表している。アルキル鎖長が長くなるにつれて,>CD スペクトルの強度は減少して行き,正のコットン効果および負のコットン効果共に> red-shift した波形を示した。また,吸収スペクトルはアルキル鎖長が長くなるにつれてブロード化していく。このことから,マルトヘキサオースのみを連結したポルフィリンではポルフィリン環同士が非常に近い位置に存在する> face-to-face 会合体を形成していると思われる。そして,アルキル鎖長が長くなるにつれて,アルキル鎖の疎水性相互作用がはたらきアルキル鎖同士が凝集した> head-to-tail 型会合体に移行していくと考えられる。


9-03

魚肝ミクロソームを用いた抗酸化剤の効力評価法の確立
-ラットに代わる新規実験動物の開発Ⅱ-

宮崎大学農学部 幡手 英雄



 食品添加剤、医薬品などの安全性や効力を調べるには多数の実験用動物が必要とされるが、近年、ほ乳類の実験動物としての使用が制限される傾向にある。そこで本研究では、魚類がほ乳類の代替実験動物として抗酸化剤の効力検定試験に利用できるかどうかを調べた。まず供試魚のティラピアおよびラットから調製した肝ミクロソームを用いた抗酸化剤の効力測定モデルの設定、つぎに同モデル系による数種の既知抗酸化剤の効力評価を行い、両者による評価の結果を比較検討した。その結果、充分量のPUFAを含む魚肝およびラット肝ミクロソーム脂質の酸化誘導条件は類似しており、同一の条件下で評価した各種抗酸化剤の効力も両者で大差なかった。これらの結果ならびにティラピア肝ミクロソームが-80℃で、1ヶ月間は安定であったことなどから、魚肝ミクロソームはラットの代替となる実用的な抗酸化評価システムへ応用可能であると判断された。


9-04

ポリフェノール系食品添加物の新機能開拓と代謝物の構造ならびに安全性に関する研究

大阪大学大学院薬学研究科 村上 啓寿


ポリフェノール系食品添加物の新機能開拓を目的として種々の生物活性を検定した結果、ケルセチンやケンフェロール等のフラボノールをアグリコンとする配糖体にマラリア原虫の増殖を強く抑制する作用のあることを見出した。また、天然物から容易に入手できる種々のフラボノール配糖体を用いて、マラリア原虫の増殖抑制に対する構造活性相関を詳細に検討した。その結果、ルチンなどのフラボノールジグルコサイドはマラリア原虫のライフサイクルの進行を遅延させるに留まったのに対し、フラボノールモノグルコサイド類はマラリア原虫のライフサイクルを特定のステージで停止させることを見出した。以上の知見から、フラボノールモノグルコサイドは、新規抗マラリア薬のリード化合物になることが期待された。


9-05

膜作用を指標にした食品成分ならびに添加物の有用・有害活性の検索

朝日大学歯学部 土屋 博紀
共同研究者:   永山 元彦


 作用点としての生体膜と相互作用による膜流動性変化に着目し、食品成分ならびに添加物の有用・有害な薬理活性を従来とは違う視点から検索した。
 腫瘍細胞や血小板のモデル膜リポソームと培養細胞を用い、膜脂質二重層における局在性が違う種々のプローブで標識した後に蛍光偏光法で膜流動性変化を解析した。また、抗腫瘍活性は細胞培養実験で、抗血小板活性は凝集実験で検証した。さらに、膜作用を指標に活性検索を非食用部分にまで広げ、食品廃棄物を有効利用できる可能性を追究した。
 機能性食品の活性本体ならびに保存料・着色料・抗酸化剤は、腫瘍細胞膜脂質組成に準じたリポソームの膜流動性を変化させた。Daidzeinを除き、(-)-Epigallocatechin gallate、Genistein、Apigenin、Resveratrolは、抗腫瘍薬Doxorubicinと同様に、~10μM濃度で膜表面親水性領域より膜内部疎水性領域に作用して流動性を低下させた。また、いずれの成分も脂質組成に依存して正常細胞より腫瘍細胞のモデル膜と強く相互作用した。Quercetinは膜内部に対して特異的な二相性作用:高濃度(≧5μM)で膜流動性低下、低濃度(≦2.5μM)で膜流動性亢進を示した。膜活性のフラボノイド性成分について、膜活性にはアントシアニジン>フラボノール>フラボン>フラバノン>イソフラボン、フラバノール>エピカテキン、イソフラボン>イソフラバノン、フラボン>カルコンの関係がみられた。また、閉環構造、C環3-位とA環5,7-位の水酸化、B環3',4'-位の水酸化が膜活性を高める等、膜流動性低下に関する構造・活性相関が成立した。
 リポソーム膜に流動性低下作用を示した食品成分ならびに添加物は、10~100μM濃度で腫瘍細胞の増殖を抑制するとともに細胞膜の流動性も低下させた。二相性膜作用のQuercetinは、腫瘍細胞の増殖においても濃度に依存して抑制効果あるいは促進効果を現した。
 非食用のタマネギ外皮から、Quercetinの他に膜作用性フラボノイド(Quercetin二量体の構造異性体2種とQuercetin-4'-glucoside)を精製した。膜流動性低下作用が最強のQuercetin二量体は、10μMの処理で腫瘍細胞の増殖を著しく抑制するとともに細胞膜流動性も低下させた。また、膜脂質と相互作用して、ヒト血小板凝集を抑制するだけでなく血小板凝集塊も解離させた。
 保存料ではp-オキシ安息香酸エステル類とBHTが0.0002~0.002%濃度で膜活性を示したが、抗腫瘍活性食品成分と違いリポソーム膜内部疎水性領域を流動化した。
 膜活性と薬理活性が相関し、膜流動性を低下させる成分や添加物のすべてが腫瘍細胞の増殖とともに細胞膜流動性にも影響した。また、膜流動性変化の解析の応用から、食品廃棄物タマネギ外皮に有用資源としての利用価値が示唆された。膜作用を指標にした薬理活性の新規検索法は、食品成分ならびに添加物の有用性・安全性評価に活用できよう


9-06

唾液及び尿中の硝酸塩及び亜硝酸塩に対する硝酸塩含量の異なる食事の影響

県立広島女子大学 石永  正隆
鈴峯女子短期大学  村田美穂子


 成人女性に硝酸塩含量の異なる野菜中心食と加工食品中心食を各1日(3食)提供し,唾液及び尿中の硝酸塩及び亜硝酸塩量への影響を調べた.
食事試料の硝酸塩含量は野菜中心食260.9mg, 加工食品中心食18.1mgであった.また,亜硝酸塩の含有量は野菜中心食も加工食品中心食も1.51mgであった.
 唾液中の硝酸塩及び亜硝酸塩量は,野菜中心食のほうが加工食品中心食より,それぞれ3倍高い濃度を保った.
 尿中の硝酸塩の一日排泄量は,野菜中心食では硝酸塩の摂取量の68%だったが,加工食品中心食では摂取量の248%で,排泄量が摂取量を大きく上回った。
 尿中の亜硝酸量0.05mgほど検出された。


9-07

幼小児期に多く摂取される食品添加物のアレルギー疾患に対する安全性評価
~特に、アトピー性皮膚炎について~

名古屋市立大学大学院薬学研究科 能勢 充彦


 これまでに臨床的にアトピー性皮膚炎などアレルギー疾患の増悪因子として報告がある食品添加物、あるいはマーケットバスケット方式による食品添加物一日摂取量調査を参考に、幼小児期に多く摂取されている食品添加物を対象に皮膚アレルギー反応ならびにヒトアトピー性皮膚炎用慢性皮膚炎モデルへの影響を検討した。被験添加物として、アナトー色素、タートラジン(食用黄色4号)、サンセットイエロー(食用黄色5号)、安息香酸、L-酒石酸を選択して検討したところ、アナトー色素やサンセットイエロー、安息香酸はマウスを用いた接触性皮膚反応には影響を示さなかった。一方、タートラジンやL-酒石酸は接触性皮膚反応を増強し、また慢性皮膚炎の発症ならびに症状の進展を増強したことから、アトピー性皮膚炎の病態を修飾する可能性が示唆された。


9-08

食品添加物と腸内細菌との関わりから見た安全性評価

大阪大学大学院薬学研究科 伊藤 徳夫



 腸内細菌群集と宿主の相互作用は、栄養および化学物質の吸収、代謝、あるいは化学物質の毒性発現、および解毒に関わる。多くの腸内細菌は通常の培養環境では培養困難、あるいは培養不能である。培養を行わずに培養困難な細菌群集の変動を解析する手法(16S rDNAに注目したRFLP法、FISH法、およびDGGE法等)が環境微生物学分野で応用、確立されている。そこで、PCR-DGGE法を腸内細菌群集変動の解析に応用することを試みた。本法による解析に影響する種々の要因に関して検討し、本目的のための至適で妥当な条件を明らかにした。腸内細菌群集を変動させる薬物としてpenicillin Gおよびmetronidazoleを用いたモデル系で確立した手法の妥当性を検証したところ、DGGEプロファイルおよびその2次元尺度法による解析で明瞭な変化が認められた。


9-09

食品添加物の脂肪細胞分化に対する影響に関する研究

名古屋市立大学大学院薬学研究科 今川 正良



 脂肪細胞分化に対する食品添加物の影響について、種々の系を用いて検討した。まず、脂肪細胞分化のマスターレギュレーターといわれている転写因子、PPARとそのコファクター(転写活性化因子)との相互作用を検出する系を確立した。次に、本来脂肪細胞に分化しないマウスNIH-3T3細胞にPPARを強制発現する細胞を樹立した。これらの系を用いて、ソルビン酸(保存料)、亜硝酸ナトリウム(発色剤)などについて検討したが、顕著な差は観察されなかった。次に、前駆脂肪細胞株を用いて脂肪細胞分化過程に及ぼす影響について検討した。その結果、酸化防止剤であるアスコルビン酸に分化促進作用が認められた。また、脂肪細胞分化過程における、食品添加物添加によるタンパク質発現パターン変動を二次元電気泳動により比較検討した。さらに、PPARγのDNA認識配列の決定および標的遺伝子群の同定も併せて検討した。その結果、新たな認識配列を見い出すと共に、標的遺伝子の候補となるタンパク質群を複数同定した。


9-10

アントシアニン生合成酵素遺伝子の強化による色素生産

東京大学大学院農学生命科学研究科 山川 隆



 ムラサキイモ(アヤムラサキ)の生産するアントシアニン色素生合成能力を強化するために、アントシアニン生合成経路上の酵素、ジヒドロフラボノールレダクターゼ(DFR)とアントシアニンシンターゼ(ANS)に注目した。山川紫のDFR遺伝子を大腸菌で過剰発現させて得られた酵素タンパク質を解析したが、得られたタンパク質には目的の酵素活性はみられなかった。一方、Agrobacterium rhizogenesを用いてムラサキイモの毛状根を誘導した。アサガオのANS遺伝子をアヤムラサキの毛状根に導入することを試みたところ、ANS遺伝子が導入された毛状根も得られた。これらの毛状根の増殖とアントシアニン含量について検討を行ない、アントアニン色素を生産する培養条件を決定した。


9-11

食品添加物の赤外線吸収及び紫外可視吸収スペクトルの集積と公開に関する研究

東亜大学工学部 江澤 正思      
東亜大学大学院 中野昭夫、義平邦利



 食品添加物の安全性評価の目的で229品目の赤外線(IR)吸収スペクトル及び197品目の紫外可視吸収(UV・VIS)スペクトルを測定した。この内、IRスペクトルについては、各添加物の吸収スペクトルと吸収波数及びスペクトル強度(透過度)をWeb上に公開した。 又、これらの吸収波数を用いて、食品中に含まれる添加物の一括定性分析が可能な分析システムを構築した。 更に、このシステムを用いて食品中の添加物分析を行い、本システムの有用性について検討を行うと共に、既に公開しているNMRスペクトルを用いた検索システムとの比較を行った。


9-12

遺伝子工学・細胞工学的手法を活用したポリフェノールの機能性・安全性評価

岐阜大学農学部 長岡 利



  大豆イソフラボンは化学構造がエストロゲンと類似しており、エストロゲン作用をもつことから、種々のガン、骨粗鬆症などに対する好影響が注目されている。抗動脈硬化因子であるアポリポタンパク質 A-I(ApoA-I)レベルはエストロゲンなどのホルモンによって変動することが知られており、大豆イソフラボンにも同様な活性が期待される。以前我々は、ヒト肝癌由来細胞であるHepG2細胞において、大豆イソフラボンの一つであるゲニステインがエストロゲン受容体(ER)αを介してApoA-I mRNAレベルを上昇させることにより、ApoA-Iレベルを上昇させることを初めて明らかにした。しかし、その作用機構に対する検討はほとんどされていない。我々は、ヒト肝癌由来細胞であるHepG2細胞において大豆に含まれるゲニステインがApoA-I分泌量や、ApoA-I mRNAレベルを増加させることを報告してきた。さらに、このApoA-I mRNAの誘導には、ERαが関与していることも報告した1)。そこで本研究では、ゲニステインの4'位、7位の水酸基のうち、どの水酸基がApoA-I分泌量やApoA-I mRNAの増加および、その転写活性に関与しているのかを検討した。HepG2細胞に、50μMのゲニステインを添加したところ、ApoA-I分泌量とApoA-I mRNAレベルは有意に増加した。HepG2細胞に、10、20、50μMの17β-エストラジオールを添加し、ApoA-I分泌量を測定すると、増加傾向が観察された。HepG2細胞において、50μMのゲニステイン、4'-O-methyl Genistein、7-O-methyl Genisteinを添加すると、ApoA-I分泌量、ApoA-I mRNAレベル、遺伝子転写活性において、ゲニステインの添加により有意な増加を示したが、4'-O-methyl Genistein、7-O-methyl Genistein添加ではほとんど増加を示さなかった。これら結果から、HepG2細胞におけるゲニステインによるApoA-I分泌の増加やApoA-I遺伝子の転写活性化には、エストロゲン受容体および、ゲニステインの4'位あるいは7位の水酸基が関与する可能性が示唆された。


9-13

熱帯植物の新しい味覚修飾タンパク質の活性構造および発現生産の基盤解析

東京大学大学院農学生命科学研究科 阿部 啓子


 Curculigo latifoliaの種子から「酸味を甘味に変換する」味覚修飾タンパク質の精製を行った。複数種のHPLCを行った結果、フェニル疎水カラムに供することにより、分離ならびに収率の高い活性画分が得られた。これらのN末端アミノ酸配列解析を行ったところ、少なくとも2種類以上のクルクリンとは異なるクルクリン類似タンパク質を同定した。これらの結果から、味覚修飾活性の本体はクルクリンおよびクルクリン類似タンパク質のヘテロ多量体であると結論した。

 

9-14

食品添加物コンドロイチン硫酸を含むグリコサミノグリカンの機能性に関する研究

千葉大学大学院薬学研究院 今成登志男、戸井田俊彦、豊田英尚、酒井信夫
国立医薬品食品衛生研究所 食品部 穐山浩、米谷民雄            


 コンドロイチン硫酸は関節炎などに効果が期待される機能性食品、あるいは食品添加物として注目を集めている天然酸性多糖類の一種である。由来する原料によりその分子量、硫酸含量、硫酸基の結合位置など多様性に富み、食品添加物としてコンドロイチン硫酸の物性を評価する試験法は十分な分析体制が整備されてないのが現状である。そこで初年度は、天然品由来の様々なコンドロイチン硫酸を用いて、核磁気共鳴法および酵素分解法など種々の物理的・化学的分析法の開発および適用を試み、コンドロイチン硫酸の品質規格化のための分析法を確立した。さらに経口投与されたコンドロイチン硫酸の代謝的運命を調べるための、生体試料前処理法についても詳細に検討し、簡便で迅速な方法を確立し、実験的関節炎を惹起したマウスへのコンドロイチン硫酸の経口投与を試み、その治療効果を見出した。今回、マウス脾細胞を用いてコンドロイチン硫酸の免疫化学的活性について検討し、in vitroにおけるコンドロイチン硫酸の抗原感作T細胞(全身性免疫系)に及ぼす影響の一端を明らかにしたので報告する。


9-15

抗酸化性を有する天然食用色素の酸化的変化とその制御研究

徳島大学総合科学部 増田 俊哉



現在使用されている食用天然色素には,フェノール性物質が多く存在する.前年度までの検討によりそれらの色素のなかにはミセル系において強力な抗酸化性を示すものがあることが判明した.そのうち,ラック色素について,今回,抗酸化的性質と抗酸化機構に詳細な検討を加えた.まず,ラック色素の主色素であるラッカイン酸Aを単離し,その抗酸化性を測定したところ,トコフェロールには及ばないものの,類縁構造を有するカルミン酸より強力な活性を示した.その一方で,測定系が均一系の場合,その活性は消失することが判明した.また,ラッカイン酸Aの抗酸化性は,測定系のpHの影響を受け,pH 6.3より酸性にすると,その抗酸化性が急速に減少することがわかった.一方,ラッカイン酸Aの酸化・抗酸化機構を物質科学的に解明するために,ラッカイン酸Aの抗酸化反応物の分析を試みた.HPLCによる経時的グラジュエント分析において,抗酸化反応の進行にしたがって2種の生成物が生じることをHPLC分析で検出した.これらの生成物は不安定で精製単離することはできなかったが,そのうち主生成物については,LC-MS分析に成功し,得られた擬似分子イオンピークから生成物の化学構造を推定した.


9-16

アントシアニン―大豆タンパク質複合体の調整とDPPHラジカル捕捉活性

鳴門教育大学学校教育学部生活・健康系 西川 和孝



 アントシアニン―大豆タンパク質複合体を、脱脂大豆をオートクレーブして得られる変性大豆タンパク質抽出物とアントシアニンを含有する各種植物メタノール抽出物の混合物から調製した。全てのアントシアニン―大豆タンパク質複合体は、アントシアニンを含んでおり、赤色から紫色のアントシアニン系色調を呈していた。最も高いアントシアニン含量(0.23%、複合体乾重あたり、cyanidin等量)は、黒豆から調製した複合体で認められた。全てのアントシアニン―大豆タンパク質複合体は、イソフラボンを含有する変性大豆タンパク質(沈殿体)よりも強いラジカル捕捉活性を示した。最も強いラジカル捕捉活性を示したのは、ナンキンハゼ紅葉由来の複合体であり、その強い活性はアントシアニンだけでなくタンニン成分(geraniinやchebulagic acid)の寄与が大きいものと推察した。アントシアニン―大豆タンパク質複合体は、食品分野において、新しい複合型タイプの機能性素材として有望であると思われる。
 


9-17

乳化性海苔ポルフィランの脂質結合

東京農工大学農学部 高橋 幸資


 乾海苔から調製したポルフィランの脂質結合能を明らかにするために、ポルフィランを用いてO/Wエマルションを調製してその油滴界面のゼータ電位を調べ、また、リン脂質を用いて調製しリポソームをポルフィランで被覆して、ホスホリパーゼDで分解したときの被分解性をリポソーム内部に封入したカルセインの放出程度で評価した。その結果、ポルフィランによってゼータ電位が著しく低下し、カルセインの放出も著しく抑制されたので、ポルフィランが脂質と結合することが明らかになった。


9-18

天然植物色素に生理機能を付加させ、食品添加物としての有効性と価値を高めることを目的とした酵素的分子設計(第一報)

京都教育大学教育学部理学科 石原 浩二
共同研究者:岡山県立大学保健福祉学部 中島 伸佳



 リパーゼのエステル交換反応を応用した酵素的アシル化法により,イソクェルシトリンシンナメートをはじめとする,9種類のアシル化イソクェルシトリンの合成に成功した。また,酵素的に合成したアシル化イソクェルシトリンの耐熱性についても調査した.


9-19

リゾチームからの抗菌性ペプチドの分離とその利用

鹿児島大学農学部 ヒッシャムR.イブラヒム


リゾチーム(LZ)は免疫細胞の空胞内や胃・腸管内のプロテアーゼの多い環境に存在していることが知られている。我々は最近、LZのアミノ酸配列中に、多くの天然の殺菌ペプチドに共通の特徴的な構造モチーフをもった配列を発見した。また、LZに対する感受性の高い細菌や真菌は特異的なプロテアーゼを分泌することが知られている。このようなことから、我々はLZの部分的な加水分解が特異的な抗菌作用を引起こすと考えた。そこで、LZを化学的および酵素的な方法で特異的に加水分解し、その抗菌作用を調べた。LZのAsp-X部位を化学的にあるいは細菌プロテアーゼで分解すると、グラム陽性菌および陰性菌に対する抗菌性が著しく強くなった。これらの結果は、Asp部位での、部分的、特異的な加水分解がLzの抗菌活性を著しく促進することを示唆している。 また、Asp部位で部分加水分解させたLzのジスルフィド結合を還元すると、さらに抗菌活性が強くなった。これらの結果から、Lzの加水分解により、抗菌性ペプチドが生成することが示唆された。そこで、ジスルフィド結合の還元を伴うマイルドアシッド法による加水分解は、酸素を使用することなく、Lzから、抗菌ペプチドを単離する為の有効な方法になりえることを示唆しました.


9-20

沙蒿種子表層を覆う高吸水性多糖の構造と応用

東京農工大学農学部 多田 全宏



 沙蒿(Artemisia sphaerocephala Krasch)は中国西北部乾燥地に広く自生するキク科植物で, その種子の表層は高吸水性多糖類によって覆われており、ひどい乾燥地でも発芽し、成長することができる。中国寧夏を中心とする一部地域では古くから、種子を粉末にして小麦粉、そば粉等に混ぜ、麺類の物性改良材として利用している。今回、1.沙蒿種子表面を覆う高吸水性多糖類の分離精製法と物性改良法に関して、有効な方法を見出した。2.この高吸水性多糖類の構成糖がグルコースとマンノース(約3:1)であることを明らかにした。


9-21

ヤマブドウ(Vitis coignetiae Pulliat)果皮に含まれるアントシアニンの天然着色料並びに健康食品成分としての有用性・機能性

岡山大学農学部 岡本 五郎


 岡山県北部の蒜山で栽培されているヤマブドウ(Vitis coignetiae Pulliat)果実は、通常9月中下旬に収穫され、アントシアニン色素を豊富に含むことで知られている。しかし、糖含量が低く、酸含量が非常に高いために、そのワイン品質はあまり高く評価されていない。本研究では、蒜山で栽培されている約30樹の果実の成熟に伴う果汁および果皮の成分を分析し、赤ワイン用ブドウとしての評価を行った。その結果、ヤマブドウ果実の成熟は10月中下旬まで続き、完熟すれば果汁の糖度が20°Brixに達し、果皮のアントシアニンはさらに高まった。また、多くの樹ではアミノ酸含量が一般的な赤ワイン用品種より著しく低かった。果汁のアミノ酸と果皮のアントシアニンの組成や濃度は、樹によってかなり変異した。26種のプライマーを用いたRAPD分析の結果、栽培されている樹には遺伝的な変異があり、それによるアミノ酸やアントシアニンの組成が大きく変わることが認められた。果汁の総ポリフェノール含量は、通常の赤ワイン用品種であるカベルネ・ソービニヨン(CS)の2~4倍多く、DPPH消去法による抗酸化活性も、同じ地域で栽培されたCS果汁の約1.8倍高かった。以上のように、蒜山で栽培されているヤマブドウは、完熟すれば糖含量は十分高く、高レベルのアントシアニンやポリフェノールを含み、抗酸化活性も高い。今後、それらの有用成分をより多く含む個体の選抜とその増殖が進めば、天然着色料並びに健康食品原料としての価値がさらに高められると考えられる。


9-22

こうじオリゴ糖添加によるグラノーラミックスの嗜好性増強

武庫川女子大学生活環境学部 瀧井 幸男


 日本人の生活習慣病発症を予防し、肥満や高血圧を抑制するためには、栄養吸収の適正な調節機能を有する食物繊維の摂取が大切である。特に幼児から学童時に至る肥満児の増加が問題となる。
 この時期に食物繊維を咀嚼する習慣性を維持し、日常摂取するよう習慣づけるには、食材に適正な甘味と食感を付与することが必須となる。すなわち食物繊維の量と質的な内容を充足するために、雑穀、植物種子、コーンフレーク、乾燥果実類を混合した食品(グラノーラ)を毎日食することが大切である。Aspergillus oryzae MIBA316は、清酒醸造用に用いられる麹かびであり、この目的に合致する安全な食品基材であるが、そのままでは甘味成分が不足する。
 本研究課題では、グラノーラ製品における嗜好性を充足し、甘味性を増強することを目的として、麹菌が生産するα-アミラーゼを純化し、電気泳動的に均一な標品を得て、その特性を調べた。さらに当該酵素の遺伝子を取得した後、すでに安全性が確認されている麹菌宿主・ベクター系に導入した。得られた遺伝子構造ならびに全塩基配列を決定し、その一次構造から、酵素分子の構造を予測して、甘味成分の増強効果を検討した。


9-23

海藻類からの新規殺菌性褐変防止物質の開発

山口大学農学部 梶原 忠彦



 褐変原因酵素であるポリフェノールオキシダーゼ(PPO)の効果的、且つ新規な阻害剤を海藻に着目し、スクリーニングすることを目指した。
 チロシナーゼ阻害活性は、ドーパを基質として475 nmの吸光度を測定することによってアッセイした。また、試料測定溶液が白濁するような場合には、アラビアゴムに溶解し酸素電極を用い酸素減少量を測定することによって、阻害効果を比較した。
 その結果、α,β-不飽和カルボニル化合物は顕著な阻害活性を有することが分かった。特に、抗菌性のある (2E)-ヘキセナール、(2E)-ノネナールなどのα,β-不飽和アルデヒド類に強い阻害活性が見出された。また、(2E)-ヘキセノール、(2E)-ノネノール、(3Z)-ヘキセナールには阻害活性が認められないなど構造活性相関についても興味ある結果が得られた。他方、これら不飽和アルデヒド類は、海藻をカットあるいは磨砕したときに、高等植物と異なって、意外にも、C20-不飽和脂肪酸から、酵素的に生成することがはじめて明らかになり、海藻から殺菌性と褐変抑制活性を兼ね備えた活性物質を効率よく探索するための重要な手掛かりが得られた。


9-24

難消化性多糖類の適性、適格な使用のモデル系の作製

武庫川女子大学生活環境学部 大鶴 勝
(共同研究者:松浦寿喜、升井洋至、竹田由里、堀尾拓之、南野勝彦)


 市販されている多糖類を食した時、糞量や糞水分率の増減、糞に含まれる脂質が多糖類の種類によってどのように変化するのかを調べる為に、市販17種の多糖類についてラットに投与した時の糞量の変化、糞水分率の変化、糞脂質含量、糞ミネラル含量及び血液中の脂質成分に対する影響を調べた。良い結果を出した11種*について粘度を調べた。混合することで粘度が上昇したカラヤガム-キサンタンガム、カラギーナン-カラギーナンK2について動物実験をした。
 使用したラットはSD系雄ラットで、1群5匹としてコントロール食を基本として、それに多糖類を5%混ぜて1週間自由に摂食させた。実験食投与期間終了の最後の3日間の摂食を測定するとともに、糞を採取して糞中の脂質成分を分析した。
 使用した多糖類は、*カラギーナン(3種)、*アルギン酸、*ロガストビーンガム、グアーガム、*アラビアガム、トラカントガム、*カラヤガム、*ペクチン、*キサンタンガム、ジェランガム、*プルラン、ガディガム、大豆多糖類、セルロース、*グルコマンナンである。
 血中総コレステロールは混合系で減少し、糞中脂質ではトリグリセライド、総コレステロール、胆汁酸共カラヤガム-キサンタンガムで増加した。糞中ミネラル、特にNa、Kはカラギーナン-カラギーナンK2は増加傾向、カラヤガム-キサンタンガムは単独のものより減少傾向を示した。


9-25

ラジカル捕捉、抗酸化活性を指標とした機能性物質の効率的生産系システムの開発

東洋大学生命科学部 藤伊 正



 3種サツマイモの主アントシアニジンを調査したところ、ベニアズマの皮部分色素は、ペオニジン:シアニジン (7:1)、アヤムラサキの可食および皮部分ともに、ペオニジン:シアニジン (3:1) が主アントシアニジンであった。一方、タネガシマムラサキの可食部分の色素は、シアニジンが主であったが、わずかにペオニジンも含まれていた (10:1)。
 ベニアズマ、アヤムラサキ、タネガシマムラサキの3種サツマイモから不定根を作出し、色素形成およびラジカル捕捉活性を指標として有用クローンの作出を試みた。作出した3種サツマイモ不定根で、ほとんど色素形成は認められなかったが、サツマイモ不定根のラジカル捕捉活性を調べた結果、ベニアズマ不定根 (0.1mg/mL IBA) において約60 % (1mg/mL 反応液) と高い活性が得られた。
さらに、色素の発現条件を調査するため、バーミキュライトを入れたMS液体培地で3種サツマイモシュートを培養した。タネガシマムラサキにおいて、根先端部に直径約5mmの紫色を呈した根の肥大が認められた。アヤムラサキおよびベニアズマでは、根部の肥大化は認められず、根は薄桃色を呈した。
 ムラサキシュートをエチレンおよびACC処理し、暗所で培養した場合において、抗酸化活性を有するコーヒー酸誘導体の生産を誘導せず、シコニン生産のみ誘導した。一方、照明下でのエチレンおよびACC処理では、わずかにコーヒー酸誘導体が検出された。


9-26

カロテノイド代謝天然物における立体化学と食品添加剤としての機能評価

関西学院大学理工学部化学科 勝村 成雄


 生物界に広く存在するカロテノイドは、様々なテルペノイドに分解代謝される。植物ホルモンであるアブサイシン酸やバッタの昆虫防御物質・グラスホッパーケトンなど、幅広い生物活性を示す化合物群である。これらカロテノイド酸化代謝天然物、及びその立体異性体の合成に対して、Sharpless不斉エポキシ化、m-クロロ過安息香酸 (mCPBA)でのエポキシ化、続くWittig反応、パラジウム触媒カップリングを鍵反応とする共通合成戦略を確立し、発芽抑制作用や蟻に対する防虫作用を示す(-)-ロリオライド、植物ホルモン・アブサイシン酸の生合成前駆体である(-)-キサントキシン、及びそれらの全立体異性体の選択的合成に成功した。


9-27

日本食品化学研究振興財団 特定研究
食品中の食品添加物分析法の開発及び改良に関する研究

武庫川女子大学薬学部
星薬科大学
愛知県衛生研究所
神奈川県衛生研究所
武庫川女子大学薬学部
三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
神戸市衛生研究所
埼玉県衛生研究所
大阪府立公衆衛生研究所
大阪府立公衆衛生研究所
伊藤 誉志男*
中澤 裕之**
岡   尚男
岸   弘子
扇間 昌規
中村 幹雄
浜野 孝
堀江 正一
堀   伸二郎
山崎 勝弘
*代表者  **副代表者


1. 液体クロマトグラフィー/質量分析法を用いた食品中の黄色系天然色素(ウコン色素、クチナシ黄色素、ベニバナ黄色素)の一斉分析
 本研究では、黄色系天然色素に注目し、新たな分析法の構築を目指している。黄色系天然色素は、主に飲料、菓子、カレー、漬物等に利用され、需要も増加傾向にある。主な色素には、カロチノイド系クチナシ黄色、フラボノイド系ベニバナ黄色、ジケトン系ウコン色素が挙げられる。日常分析法の構築を目的としてLC/MSを利用した3種類の天然黄色素の一斉分析を構築した。前処理には、固相抽出法を採用した。
 
2. 逆相TLC/スキャニングデンシトメトリーによるクロセチンを指標とする食品中のクチナシ黄色素の分析
 食品中のクチナシ黄色素の分析には、クロシンを指標とした分析法が一般的である。しかし、カラメルあるいはアントシアニン系色素を含む食品の場合には、これらの色素とクロシンのスポットが重なり、クチナシ黄色素を同定することは困難である。そこで、食品中のクチナシ黄色素を確実に同定する方法として、クロセチンを指標物質に用いるTLC/スキャニングデンシトメトリーによる分析法を確立した。
 
3. LC/MSによるブドウ果皮色素及び赤キャベツ色素の同時分析
 天然着色料として汎用されているアントシアニン系色素、ブドウ果皮色素及び赤キャベツ色素の液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)を用いた高感度且つ選択性の高い分析法を検討した。ブドウ果皮色素及び赤キャベツ色素は疎水性の異なる多くの成分から構成されていることからグラジエント溶出法を採用した。移動相のpHが中性付近であると、分離カラムへの保持が十分でないことから、0.2%ギ酸-アセトニトリル系を移動相に用いることにした。イオン化モードは、両色素は極性が高いこと、及び酸性条件下ではプラスにチャージしていることからエレクトロスプレーイオン化(ESI)、positiveモードとした。本条件により両色素の主要成分の分子イオン(M+)が感度良く検出された。前処理には、ギ酸水溶液で抽出後、 OASIS HLBカートリッジを用いてクリーンアップする方法を採用した。本法によるブドウ果皮色素及び赤キャベツ色素主要成分の添加回収率は、清涼飲料中に50 ppm相当添加時においていずれも80%以上であった。
 
4. 食品中のタウマチンの高速液体クロマトグラフィーによる測定法
 第7版食品添加物公定書に収載されている甘味料のタウマチンは、清涼飲料水、菓子、健康食品に使用されている。これら食品中から紫外分光検出器付き高速液体クロマトグラフィーを用いた定量法を構築した。
 
5. HPLCによる食品中のパパインの分析法
 パパインは、タンパク質分解酵素として食品工業を始め、様々な分野で利用されており、既存添加物名簿に記載されているが、最終食品中のパパイン活性を測定する方法は未だ見当たらない。そこで、今回、高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)による食品中のパパインの測定法を検討した。
 
6. HPLCによる食品中のブロメラインの分析法
 ブロメラインは、たんぱく質分解酵素として食品工業を始め、様々な分野で利用されており、酸性領域で活性を示すプロテアーゼとして既存添加物名簿に記載されている。今回、高速液体クロマトグラフィ-(HPLC)による食品中のブロメラインの測定法を検討した。
 
7. GLCによるグアーガムの分析法
 グアーガムはインダス河流域の乾燥地帯に生育するマメ科のグアーの種子胚乳部から得られるガラクトマンナンであり、ガラクトースとマンノースの構成比は1:2と言われている。デンプンやタンパク質とよく混じり合い、各種食品の増粘剤として利用されている。植物ガム質や粘質物は可溶性食物繊維として知られており、分析法としては食物繊維として重量を測定する方法や加水分解を行った後、構成糖類を測定する方法がある。また、構成糖であるガラクトースやマンノースの測定法としては液体クロマトグラフ(HPLC)やガスクロマトグラフ(GLC)で分別定量する方法がある。そこで前処理には食物繊維の測定法1)を参考にして、ろ過により食品の不溶性部分と可溶性部分を分け、分別された可溶性部分にアルコールを加え、グアーガムを沈殿させる。得られた沈殿物を硫酸により加水分解し、グアーガムをガラクトースとマンノースとし、アルディトール・アセテート誘導体化を行い、その誘導体をGLCにより測定する方法を用いた。
 
8. HPLC法による植物タンニンの定量
 食品中からの植物タンニン(タンニン酸)の簡便で迅速な分析法を検討した。乳脂肪やたん白質を多く含むプリン、アイスクリームでは、たん白消化酵素と脂肪消化酵素を作用させ、たん白質と脂肪を分解した後、抽出する操作で良好な回収率が得られた。
 
9. HPLCによるγ-オリザノールの分析法
 γ-オリザノールは米糠から得られる生理活性物質で、トリテルペンアルコールや各種植物ステロールのフェルラ酸エステルの総称である。
γ-オリザノールについては、成長促進作用をはじめとする数々の薬理作用や抗酸化作用が報告されており、安全性が極めて高く、熱にも安定で、副作用も特に認められないことから、「食品添加物リスト」には、既存添加物(天然添加物)の酸化防止剤として掲げられている。食品中からγ-オリザノールを定量する方法として、シクロアルテノールフェルラ酸エステル及び24-メチレンシクロアルテノールフェルラ酸エステルを指標物質に用いる一斉分析法を構築した。
 
10. HPLCによるヤマモモ抽出物の分析法
 ヤマモモ抽出物は、ヤマモモ科ヤマモモ(Myrica rubra SIEBOLD)の果実、樹皮又はに属する常緑高木で、その果実にはミリシトリン、タンニン、ミリセチン等のフラボノイドを多く含む。ヤマモモ抽出物の主成分はミリシトリンであり、酸化防止剤としてスナック食品、菓子、飲料などに使用されている。ミリシトリンを指標物質とし食品中からの分析法を確立した。


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