第20回研究成果報告書(2014年)

[研究成果報告書 索引]

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研究テーマ
研究者
保存料・日持ち向上剤の効果を視覚化:微生物増殖抑制効果を表示・検索可能とするデータベースの開発 小関 成樹
北海道大学大学院農学研究院
ゼオライトによる加工食品からの放射性セシウムの除去方法の検討 関澤 春仁
福島県農業総合センター
亜鉛欠乏予防に効果のある食品添加物に関する食品科学的研究 神戸 大朋
京都大学大学院生命科学研究科
電子スピン共鳴装置を用いた酸化防止剤の安全性および有効性に関する研究 岩崎 雄介
星薬科大学薬品分析化学教室
食品添加物次亜塩素酸ナトリウムに含まれる臭素酸の食品残留性に関する研究 輿石 一郎
群馬大学大学院保健学研究科
「クチナシ赤色素」の化学構造および色素形成メカニズムの解明 伊藤 裕才
共立女子大学家政学部食物栄養学科
ラット肝二段階発がんモデルによるチオアセタミドの発がん促進作用により形成された肝前がん病変早期における多点的な細胞周期障害性について 渋谷 淳
東京農工大学大学院農学研究院
甘味タンパク質ソーマチンの苦味抑制機構の解明 桝田 哲哉
京都大学大学院農学研究科
定量NMR法の既存添加物の品質評価への適用に関する研究 寺坂 和祥
名古屋市立大学大学院薬学研究科生薬学分野
食品中ナノマテリアルの免疫毒性評価とその安全性確保に向けて 吉岡 靖雄
大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野
非遺伝毒性肝発がん物質ダンマル樹脂の発がんメカニズムの解明 鰐渕 英機
大阪市立大学大学院医学研究科分子病理学
沖縄県産四季柑の機能性の評価と生物活性分子の同定 森田 洋行
富山大学和漢医薬学総合研究所天然物科学分野
多糖類による放射性核種排泄促進作用に関する基礎的研究 榎本 秀一
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
医薬品機能分析学分野
健康保持増進への寄与が期待できる精油成分の機能性評価 井上 裕康
奈良女子大学研究院生活環境科学系
糖鎖によるポリフェノールの包接と機能化 湯口 宜明
大阪電気通信大学工学部
1H-NMRを用いたメタボロミクスによるショウガ抽出エキスの規格化に関する研究 若菜 大悟
星薬科大学薬化学教室
ナノ食品添加物による消化管吸収機能の亢進に関する研究 小野寺 章
神戸学院大学薬学部
生体膜モデルにおける天然由来食品添加物グリチルリチンの分子挙動解析 坂元 政一
九州大学大学院薬学研究院
米糠由来高純度トコトリエノールの体内動態および生理機能に関する研究 都築 毅
東北大学大学院農学研究科
エラジタンニンの体内動態および抗炎症作用に関する研究 伊東 秀之
岡山県立大学保健福祉学部栄養学科
スパイス香気成分の化学構造と生物活性に関する研究 肥塚 崇男
山口大学農学部
ポリフェノール系既存添加物による新規食中毒制御法の開発 島村 裕子
静岡県立大学食品栄養科学部
保存料に対する植物病原性真菌プロファイル作成 高鳥 浩介
東京農業大学農学部
香気プロファイルによる山椒の品種判別と柑橘様香生成因子に関する研究 飯島 陽子
神奈川工科大学応用バイオ科学部栄養生命化学科
吸着層および油滴の分散状態が乳化系からのフレーバーリリースに与える影響 松村 康生
京都大学大学院農学研究科品質評価学分野
ヒト生理学的計測に基づく食べやすい食品テクスチャーを表現する基準値の探索 神山 かおる
農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所
香料を用いた咽頭残留の定量的評価法の開発 堀 一浩
新潟大学大学院医歯学総合研究科
摂食嚥下リハビリテーション学分野



20-01

保存料・日持ち向上剤の効果を視覚化:微生物増殖抑制効果を表示・検索可能とするデータベースの開発
北海道大学大学院農学研究院 小関成樹


 食品の腐敗・変敗の原因となる乳酸菌に対する各種保存料・日持向上剤の効果を明らかにして,定量的に評価さらには予測することを目的とした。乳酸菌4菌株の増殖抑制効果(増殖速度,誘導期間を指標として)を8種類の保存料・日持向上剤,8条件の添加濃度,および5条件の保存温度において検討した。その結果,これらパラメータを説明変数とする増殖速度および誘導期間を記述する数理モデルを開発することができた。モデル式から,増殖速度あるいは誘導期間を温度と添加物濃度の関係における等高線として描画することができ,定量的な評価が可能となった。今後,開発した数理モデルから任意の条件で実際の食品系において実験を行い,モデルの精度および妥当性を検討することが必要である。



20-02

ゼオライトによる加工食品からの放射性セシウムの除去方法の検討
福島県農業総合センター 関澤春仁,丹治克男,吉岡邦雄


食品添加物として指定されるゼオライトは陽イオン交換能を有し、放射性セシウムを吸収することが知られている。本研究では梅漬けおよび梅酒加工時にゼオライトを不織布に入れて一緒に漬け込んだ。原料果実に対する加工品の放射性セシウム濃度を加工係数(Pf)とした場合、梅漬け加工においては、ゼオライトを添加しなかった区のPfは0.79、ゼオライトを原料重量比10%および20%添加した区のPfはいずれも0.43、ゼオライトを原料重量比10%添加して塩水で加工した区は0.24、粒径が他の区よりも大きい造粒ゼオライトを原料重量比10%添加した区では0.58となった。一方、梅酒加工においては、ゼオライトを添加しなかった区のPfは0.24、ゼオライトを原料重量比10%添加した区のPfは0.15、20%添加した区は0.09、粒径がより大きい造立ゼオライトを原料重量比10%添加した場合は0.14となった。以上の結果から、梅漬けおよび梅酒加工時にゼオライト処理を行うことにより、加工後の梅漬けおよび梅酒の放射性セシウムを低減できることが明らかとなった



20-03

亜鉛欠乏予防に効果のある食品添加物に関する食品科学的研究
京都大学大学院生命科学研究科 神戸大朋


 飽食の時代にある我が国において懸念されている栄養問題の一つに亜鉛欠乏があげられる。亜鉛欠乏に陥ると味覚機能や免疫機能が低下することはよく知られているが、高齢者では、さらに褥瘡や舌痛、皮膚炎に悩まされることも多い。ヨーロッパで実施された疫学調査・ZincAge project(健康・老化と亜鉛との関連に関する研究)では、血清亜鉛値が高い高齢者が健康な傾向にあることが証明されており、超高齢社会を迎えた我が国においては、健康な社会生活の実現のために効果的な亜鉛欠乏予防法の確立が望まれている。消化管からの亜鉛吸収には亜鉛トランスポーターZIP4が必須の役割を果たす。本研究では、昨年度の解析に引き続いてZIP4発現促進活性(=亜鉛欠乏予防効果)を有する食品添加物を探索し、同定した添加物から活性因子本体の同定を目指すと同時に、これまでに見出した食品添加物の細胞内亜鉛量に与える影響、その効果の検証のためのin vivoでの解析を実施した。



20-04

電子スピン共鳴装置を用いた酸化防止剤の安全性および有効性に関する研究
星薬科大学薬品分析化学教室 岩崎雄介


 食品添加物は、保存料、甘味料、着色料、香料など、食品の製造過程または食品の加工・保存の目的で使用されている。個別では安全と謳われていた食品中の化学物質でも生体内で相互的な複合反応を引き起こし、想定外な影響を与える可能性がある。本研究では食品添加物の安全性を評価するために、酸化防止剤と金属の複合反応に着目し、ラジカルを選択的に検出可能な電子スピン共鳴装置(ESR)を用いた活性酸素種(ROS)生成の評価を行った。酸化防止剤と各種金属を反応させたところ、鉄と銅以外のミネラルや微量金属はROSの産生に寄与しなかった。しかし、特定の酸化防止剤は銅と反応することで、ROSが産生されDNAの酸化と切断を引き起こし、酸化ストレスを惹起させる可能生が示唆された。



20-05

食品添加物次亜塩素酸ナトリウムに含まれる臭素酸の食品残留性に関する研究
群馬大学大学院保健学研究科 横田あずさ, 輿石一郎


市販のカット野菜は次亜塩素酸殺菌処理を施されている。本研究では、次亜塩素酸処理されたカット野菜に残留する発がん性物質臭素酸の残留性について定量評価した。測定装置としてテトラメチルベンジジンを発色試薬とするポストカラム誘導体化HPLCを確立した。肉、魚、野菜に関しては、10%ホモジネートを試料とする前処理法を確立した。しかしながら、市販のカット野菜に残留する臭素酸を測定するには、さらに定量下限を下げる必要があった。そこで、ホモジネートの代わりに野菜のしぼり汁を試料とすることで、定量下限0.1 ng/g of wet weightを達成することが可能となった。本法を市販のカットレタス(調理後2日目)に応用したところ、残留臭素酸濃度を測定することができた。



20-06

「クチナシ赤色素」の化学構造および色素形成メカニズムの解明
国立医薬品食品衛生研究所食品添加物部 伊藤裕才


既存添加物「クチナシ赤色素」は、クチナシ果実中のイリドイド配糖体geniposideのメチルエステルをアルカリ加水分解したgeniposidic acidを-グルコシダーゼ処理でアグリコンgenipinic acidとした後、タンパク質加水分解物と反応させて形成する赤色素である。色素は水溶性の高分子化合物あるため、化学構造および色素形成メカニズムは未解明である。アグリコンgenipinic acidは試薬genipinの加水分解では調整できなかったため、クチナシ果実よりgeniposideを抽出して調製した。イリドイド類とグリシンを反応させた結果、予想に反して赤色素ではなく青色素が生成した。条件検討の結果、反応液中のイリドイド濃度を15% (w/v) 程度に高め、かつクエン酸やキシロースを添加し、さらに窒素ガスの曝気による嫌気条件が赤色素の形成に必要であることが再確認された。イリドイド濃度を高めると反応初期に炭酸ガスの発生が観測された。これらの知見と結果は、反応液を還元状態に保つことが赤色素形成に必須であることを強く示唆した。反応液にクエン酸の替わりにアスコルビン酸を添加した結果、クエン酸の添加や窒素ガスの曝気をせずとも赤色素の生成が確認された。



20-07

ラット肝二段階発がんモデルによるチオアセタミドの発がん促進作用により形成された肝前がん
病変早期における多点的な細胞周期障害性について
東京農工大学大学院農学研究院動物生命科学部門病態獣医学研究分野 渋谷淳


チオアセタミド (TAA) は酸化性ストレスによってラットに肝発がんを誘発する。我々は既にTAAによるラット肝発がん過程早期に形成された前がん病変を含む肝細胞増殖病変において、p16Ink4a遺伝子のエクソン領域のメチル化による下方制御を含めた様々な細胞周期関連分子の発現異常が生じていることを報告している。本研究ではさらなる探索として、ラット肝二段階発がんモデルにおいて、TAAによる発がん促進過程に抗酸化物質である酵素処理イソクエルシトリン (EMIQ) とリポ酸 (ALA) を併用することで、TAAによる発がん過程早期での細胞周期異常の関与を検討した。N-ジエチルニトロソアミンによるイニシエーション処置後のTAAによる発がん促進によって、免疫組織化学染色でglutathione S-transferase placental form (GST-P) 陽性を示す肝細胞増殖巣の個数および面積、増殖肝細胞数、アポトーシス肝細胞数が増加した。EMIQないしALAの併用投与によってこれらの増加は抑制された。TAAによって誘発されるGST-P陽性巣に一致したp16Ink4a陰性巣の形成は、EMIQないしALAの併用投与によっては抑制されなかった。TAAによる発がん促進作用によってGST-P陽性巣内における、細胞増殖マーカーであるKi-67、G2/Mおよびスピンドルチェックポイント蛋白質 (phosphorylated checkpoint kinase 1、Mad2)、DNA損傷関連蛋白質であるphosphorylated histone H2AX、G2期およびおよびM期関連蛋白質 (topoisomerase Ⅱαphosphorylated histone H3、Cdc2) に陽性を示す肝細胞数が増加し、EMIQないしALAの併用投与によってこれらの増加は抑制された。これらの結果から、TAAによる発がん促進によってp16Ink4aの下方制御が生じ、それが前がん病変細胞の選択的な増殖を導いていることが示唆された。しかしながら、抗酸化物質はこの遺伝子制御に影響を与えなかった。一方、抗酸化物質はTAAによって生じる細胞集団の変化を効果的に抑制しており、このことからTAAによる肝発がん促進過程早期において細胞周期の促進とDNA損傷の蓄積から細胞周期チェックポイントが活性化し、それによってG2期およびM期で細胞周期の停止が生じていることが示唆された。



20-08

甘味タンパク質ソーマチンの苦味抑制機構の解明
京都大学大学院農学研究科食品生物科学専攻 桝田哲哉


タンパク質の多くは味を呈さないが、例外的に甘味を呈するタンパク質が存在する。熱帯植物由来のソーマチンは古くから甘味を呈することが知られ、ショ糖に比べモル比で10万倍と非常に強い甘味を呈し、甘味料、風味増強剤として多くの食品に利用されている。またソーマチンは強い甘味を呈すると同時に、苦味や渋味をマスキングする作用をも有することが知られている。
これまでのソーマチンの甘味発現機構の解析により、ソーマチンの甘味発現に関わるアミノ酸残基をはじめ、甘味受容体のシステインリッチドメインがソーマチンとの応答に重要な役割を担うという知見が得られているが、ソーマチンの苦味抑制効果に対する知見は少ない。そこで本研究は客観的にソーマチンの苦味抑制効果について検討を行うため、苦味受容体を培養細胞に安定発現させた細胞株を作製し、苦味物質に対する応答について細胞内カルシウム変化を指標として評価するアッセイ系を構築し、ソーマチンの苦味抑制効果について検討を行うことを試みた。



20-09

定量NMR法の既存添加物の品質評価への適用に関する研究

  

名古屋市立大学大学院薬学研究科生薬学分野 寺坂和祥


天然基原の食品添加物である既存添加物の中には、成分規格設定のための含有成分の定量法や定量精度に課題があるものがある。そこで、本研究では既存添加物中の有効成分の定量分析に定量NMR法(qHNMR法)を適用することを課題として研究を実施し、以下の成果を得た。(1)「ヤマモモ抽出物」の抗酸化成分myricitrinの市販試薬の純度をqHNMR法を用いて評価した。本法が、「ヤマモモ抽出物」中のmyricitrin含量の絶対定量に直接に応用できる可能性を示唆した。(2)「カンゾウ抽出物」の甘味成分glycyrrhizic acidの市販試薬の純度をqHNMR法を用いて評価した。本法を「カンゾウ抽出物」中のglycyrrhizic acidの絶対定量に直接に適用することは、夾雑シグナルの存在のために困難であった。



20-10

食品中ナノマテリアルの免疫毒性評価とその安全性確保に向けて
大阪大学大学院薬学研究科毒性学分野 吉岡靖雄


本検討では、腸管におけるナノマテリアル認識機構および、安全なナノマテリアルの創製に向けた基礎情報の収集を目指し、分散性に優れたナノシリカをモデルナノマテリアルとして、リスク解析の一環として腸管吸収性を評価した。その結果、より小さなナノシリカは、従来サイズのシリカよりも、腸管吸収されやすく、かつ、表面修飾によっても腸管吸収性が変化することが示された。将来的に、本研究の成果が安全な食品ナノマテリアルの創製および、食品ナノ産業の発展に貢献することを期待している。 



20-11

非遺伝毒性肝発がん物質ダンマル樹脂の発がんメカニズムの解明

大阪市立大学大学院 医学研究科 分子病理学 鰐渕英機


ダンマル樹脂はフタバガキ科又はナンヨウスギ科の分泌液より得られたもので、主成分は多糖類であり、多くの飲食物に増粘安定剤として使用されている。これまでに我々は1年間慢性毒性試験および2年間発がん性試験を実施し、ダンマル樹脂がラット肝発がん性を有することを明らかにしてきた。また、in vivo変異原性を検索できるgpt deltaラットを用いて、ダンマル樹脂が非遺伝毒性肝発がん物質であることを明らかにした。これらの結果から、ダンマル樹脂は非遺伝毒性的な発がんメカニズムを介して肝発がん作用を示す可能性が考えられた。しかし、その肝発がん過程に非遺伝毒性分子機序がどのように関与するかについては未だ不明である。そこで、本研究ではダンマル樹脂の発がんメカニズムを解明することを目的とし、酸化的ストレスおよび遺伝子発現変動について検討した。動物は6週齢のF344ラットを用いて、無処置群および2%ダンマル樹脂投与群の2群を設定し、4週間飼育した。剖検後、得られた肝臓について酸化的ストレスの指標である8OHdG量の検討およびマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現量解析を行った。その結果、8OHdG量にダンマル樹脂投与による有意な変化はみられなかった。またマイクロアレイの結果についてIPA softwareよりcanonical pathway解析を行った結果、異物代謝酵素誘導系や芳香族炭化水素受容体誘導系の関与が疑われ、さらにヒストン脱アセチル化酵素、DNAメチル基転移酵素がダンマル樹脂投与によって発現減少がみられた。以上より、ダンマル樹脂がシトクロムP450による水酸化の亢進およびエピジェネティック修飾機構の異常を誘導し、発がんに寄与している可能性が示唆された。



20-12

沖縄県産四季柑の機能性の評価と生物活性分子の同定
富山大学和漢医薬学総合研究所天然物化学分野 森田洋行


 ミカン科植物カラマンシーCitrus microcarpa Bungeはフィリピン及び中国南部が原産のキンカン類とミカン類の雑種からなる矮性柑橘類である。我々は、四季柑の果皮からmRNAを抽出し、植物ポリフェノールの骨格形成を担うⅢ型ポリケタイド合成酵素(PKS)のクローニングと機能解析を行った結果、四季柑果皮に、キノリノン骨格を特異的に形成するⅢ型PKS、及び、アクリドンやベンゾフェノン、フロログルシノールの骨格形成能を有するⅢ型PKSが発現していることを見いだした。これまで四季柑から、これらの骨格を有する誘導体の単離・報告例はないものの、本結果は、これらの化合物誘導体をはじめ、さらに多種多様な生物活性分子が四季柑の果皮に含まれている可能性を強く示唆している。そこで、四季柑の機能性を評価することを目的に、沖縄県産四季柑の果皮について、ヒト膵がん細胞PANC-1とPSN-1に対する栄養飢餓状態での選択的殺細胞活性試験を行った。その結果、四季柑果皮がヒト膵がん細胞PANC-1とPSN-1に対して、栄養飢餓状態選択的殺細胞活性を示すことが判明した。さらに、10種のフラボノイド類を単離・同定し、このうちの3種が栄養飢餓状態選択的殺細胞活性を有することが判明した。



20-13

多糖類による放射性核種排泄促進作用に関する基礎的研究
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科医薬品機能分析学分野 榎本秀一


東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により、137Cs、131I、90Sr を含む様々な放射性核種が環境中へ放出された。現在でも、放射性核種が混在した食品等の摂取による内部被曝が懸念されている。内部被曝低減のための放射線防護剤の探索は大きな課題であるが、効果的かつ容易に入手可能な防護剤は未だ発見されていない。一方、ペクチンの摂取が137Csの体外排出を促進するとの報告はあるが、未だ科学的なエビデンスは得られていない。そこで我々は、ペクチンが137Cs、131I、90Srの生体内分布および排泄に与える影響について評価するとともに、その作用機序の解明を目的として研究を行った。
 事前にペクチンを1 週間経口投与したBALB/c マウスに、137Cs、131I、85Sr の三核種混合溶液を尾静脈内投与し、6 時間後に屠殺して解剖を行い、高純度ゲルマニウム半導体検出器により各組織に含まれる放射能 (%ID/g;単位重量当たりに含まれる放射能) を測定した。また、ペクチンの放射性核種投与後摂取における有効性の評価については、三核種混合溶液を尾静脈内投与したマウスに1 週間ペクチンを経口投与し、その後、上記と同様の方法で各組織における放射能を測定することにより行った。
 ペクチンは放射性同位元素の組織分布には影響を与えなかったものの、排泄経路を変化させ、尿中への排泄を増やすことで内部被ばく低減につながる可能性を示した。



20-14

康保持増進への寄与が期待できる精油成分の機能性評価

奈良女子大学研究院生活環境科学系食物栄養学分野 井上裕康・中田理恵子


誘導型シクロオキシゲナーゼ(COX-2)はプロスタグランジン産生の律速酵素で、非ステロイド性抗炎症薬の標的として知られ、発癌や生活習慣病にも関与している。核内受容体PPARはリガンド依存性転写因子で、、/、のサブタイプが存在する。いずれも脂質代謝、糖代謝、細胞増殖・分化に関与しており、生活習慣病予防の標的として注目されている。私たちは核内受容体PPARがCOX-2の細胞特異的発現調節に関与することを見出し、COX-2発現抑制およびPPARs活性化能を有する成分が生活習慣病予防に寄与すると考え、両作用を持つ食品機能成分の探索を進めている。これまで両効果をもつ成分として、レスベラトロールや植物精油由来のカルバクロールなどを同定している。本研究では、香辛料シナモンバーク油主成分trans-シンナムアルデヒドが、培養細胞系でCOX-2発現抑制とPPAR活性化能を有すること、生体においては、アルデヒド代謝を阻害した条件でPPARαを介して脂質代謝改善に関与する可能性を明らかにした。さらに、辛子油成分ベンジルイソチオシアネートは、培養細胞でCOX-2発現抑制とPPARα活性化を示し、生体においてもPPARαを活性化することを新たに見出した。以上より、trans-シンナムアルデヒドとベンジルイソチオシアネートは、COX-2発現抑制およびPPAR活性化を介して生活習慣病予防に寄与する可能性が示唆された。



20-15

糖鎖によるポリフェノール包接と機能化

大阪電気通信大学工学部 湯口宜明


糖鎖とEGCGとの相互作用についてこれまで研究してきた。この相互作用が抗酸化能などの活性にどのように影響を与えるのかを明確にするため、蛍光プローブを用いたラジカル補足活性試験を行った。その結果活性試験においても糖鎖添加による影響が認められた。また混合の仕方によっても差異がみられた。溶液混合に比べ、あらかじめペースト状態で機械的な混合を行った粉末混合のほうが、抗酸化能が高めになり、相対反応性は溶液混合に比べると低めになった。



20-16

1H-NMRを用いたメタボロミクスによるショウガ抽出エキスの規格化に関する研究

星薬科大学薬化学教室1)、国立医薬品食品衛生研究所生薬部2)、医薬基盤研究所薬用植物資源研究
センター3) 若菜大悟、丸山卓郎、杉村康司、川原信夫、飯田修


ショウガ (Zingiber officinale) は広く知られている香辛料であり、温暖な地域で栽培される。ショウガの規格化は単一もしくは少数の化合物の定量値を根拠とするものが多いため、今回、1H-NMR スペクトルを用いたメタボロミクスによりショウガの規格化を試みた。主成分分析 (PCA) により外れ値を示す試料を除いた後、再度 PCA を行ったところ、金時種と奄美在来種間、中国 L5 種と三州高知種及び中国 L4 種間に分類される傾向が確認された。そこで、OPLS-DA によりこれらの品種間の差を検討したところ、スクロース、グルコース、アラニン、アルギニン、アスパラギン、リンゴ酸及び gingerol が今回用いた試料における品種間の違いに関わることが判明した。



20-17

ナノ食品添加物による消化管吸収機能の亢進に関する研究

1. 神戸学院大学薬学部 2. 理研CDB 小野寺章1、太田舞子1、弘内淳美1、米村重信2、河合裕一1


老化・高齢による食欲不振・低栄養状態は、様々な要因により引き起こされる。本研究グループは、食品添加物による消化管吸収機能を向上させることを目的に、ナノ食品添加物と腸管上皮細胞の膜透過性との関連を解析した。ナノマテリアルは、食品添加物として用いられている二酸化ケイ素(シリカ)及び銀の粒子を用いた。シリカ粒子は、一次粒子径300 nm及び70nmの2種類を用い(nSP300、nSP70)、銀粒子は、1次粒子径 70 nm及び1 nmの2種類(nAg80、nAg1)を用いた。これら粒子の一部は、過剰量処置による細胞毒性が報告されている。そこで腸管上皮細胞のバリア構造であるタイトジャンクション(TJ)の形態を観察した。また本研究で用いた腸管上皮細胞は、Caco-2細胞を腸管上皮様細胞に分化させた細胞を用いた。TJ構造への影響は、50 ug/mLのシリカ粒子及び銀ナノ粒子を腸管上皮細胞へ24時間処置し、TJ構成タンパクZO-1を免疫蛍光細胞染色により標識し、共焦点レーザー顕微鏡FV1000で観察した。その結果、nSP70、nSP300、nAg70では、TJ構造の乱れや細胞死による細胞の剥離は観察されなかった。一方、nAg1は、細胞間隙が広がり、一部の細胞では剥離していた。次に、これら粒子の膜透過性への影響を電気抵抗値の解析により評価した。電気抵抗値(TEER;Transepithelial Electro Resistance)は、TJの指標となり、低い値であれば細胞透過性の向上を意味する。50 ug/mLのnSP70処置による腸管上皮細胞のTEER値は、処置後1時間で90%に低下し、24時間後は70%に低下した。50 ug/mL nSP300処置は、1時間後の変化は観察されず、24時間後に約85%程度に低下した。50 ug/mL nAg70は、1時間後で約60%に低下し、24時間後には約100%と回復した。50 ug/mL nAg1は、1時間後及び24時間後で0%であった。以上の結果より、細胞透過性の亢進に有効な素材は、ナノシリカ粒子よりナノ銀粒子であると考えられた。一方、nAg1は、処置24時間後でのTJ構造の乱れ及びTEER値の回復が確認できなかったことから、強い細胞毒性を示すと考えられた。では、nAg70はどのようにして一時的に膜の透過性を亢進させたのであろうか?腸管上皮細胞での栄養の吸収は、イオンチャネルや輸送経路の活性化、細胞膜の透過性亢進、細胞間隙の開きの3種に大別される。本研究では、番目の細胞間隙の開きに着目し、nAg70により細胞が一時的に収縮することで細胞間隙が開くと考えた。そこで、一般的な細胞収縮経路を阻害し、nAg70によるTEER値への影響を解析した。その結果、nAg70によるTEER値の低下が阻害された。すなわち、nAg70は腸管上皮細胞の細胞間隙を一時的に広げることで、細胞透過性を亢進させると考えられた。以上より、老化・高齢による栄養の吸収低下に、ナノ銀粒子が有効であると示唆された。



20-18

生体膜モデルにおける天然由来食品添加物グリチルリチンの分子挙動解析
九州大学大学院薬学研究院 坂元政一


グリチルリチン(GC)は、マメ科カンゾウに含有するトリテルペノイドサポニンであり、肝庇護作用を始め、抗炎症作用、抗アレルギー作用、抗ウイルス作用を有する。生体内においてGCは、細胞膜を作用点としてその機能を発揮する。現在までに、細胞レベルにおいてGCの細胞内輸送が報告されているものの、分子レベルにおける分子認識や相互作用を解明した例は無い。これまでに、脂質ラフトモデルとGCの界面科学的挙動を精査した。本研究では、GCのアグリコン部位であるグリチルレチン酸(GA)と脂質ラフトモデルとの相互作用をLangmuir単分子膜手法を駆使して精査することでGAの生体膜に及ぼす影響、更にはグルクロン酸部位の影響を解明することを目的としている。本研究において表面圧()-面積(A)は、Wilhelmy法により測定し、表面電位(トV)は、241Am電極と参照電極を用いた空気イオン化電極法により測定した。また、膜の表面形態は、ブリュースター角顕微鏡(BAM)、蛍光顕微鏡(FM)、及び原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。脂質ラフトモデルには、パルミトイルスフィンゴミエリン(PSM)、ジオレオイルフォスファチジルコリン(DOPC)、コレステロール(CHOL)の等モル分率PSM/DOPC/CHOL(1/1/1; by mol)を用いた。先ず、下相液にGAを溶解(0, 0.10, 0.25, 0.50, 1.0, 5.0 lochM)し、表面に吸着したGAとPSM/DOPC/CHOL (1/1/1)混合単分子膜との相互作用を上記手法により系統的に検討した。GC吸着後の-A、トV-A等温曲線の結果より圧縮により気/液界面からGAがsqueeze outされることが判明した。次に、BAM及びFMによる形態変化の観察結果より、脂質ラフトドメインはGAの濃度に依存し縮小した。興味深いことに、下相液中のGAの濃度が5.0 lochMにおいては、GAが液体膨張(LE)ドメインと液体凝縮(LC)ドメインとに二分し分け隔てる様子が観察された。一成分系(PSM, DOPC, CHOL)及び二成分系(PSM/DOPC, PSM/CHOL, DOPC/CHOL)単分子膜挙動より、CHOLがGAと相互作用し、LEの帯状ドメインを形成した。このことよりこの挙動の原因はCHOLが支配していることが示唆された。また、その相互作用は、GCの場合と比較しGAの方が強いことが判明した。GAの生物学的活性はGCより強いことを示す報告が多くある。そのため、本研究により示された脂質ラフトモデルにおけるGCやGAの相互作用とそれら種々の活性強度間には相関があるものと考えられる。



20-19

米糠由来高純度トコトリエノールの体内動態および生理機能に関する研究
東北大学大学院農学研究科 都築毅


我々は最近、ビタミンE同族体のトコトリエノール (T3) がアレルギー症状軽減作用を持つことを見出した。本研究ではアトピー性皮膚炎モデルマウスであるNC/Ngaマウスを用いて、アレルギー反応を負荷したマウスにT3を投与してアレルギー症状を軽減したときに、脂質代謝系がどのように変化するか、T3が体内にどのくらい吸収されるのか検討した。その結果、アレルギーを発症したマウスでは肝臓の脂質蓄積が見られたが、T3を投与したマウスでは肝臓における脂質蓄積が改善されていた。このメカニズムを明らかにするためにDNAマイクロアレイ解析や定量RT-PCR法により肝臓での脂質蓄積に関わる遺伝子発現変化を調べた。その結果、アレルギー反応を負荷したマウスでは、細胞周期を停止し脂質蓄積を誘導するCdkn1aの発現上昇や脂肪酸酸化を促進するAcox1の発現低下が見られたが、T3を投与したマウスではこれらの変化が改善されていた。このことから、T3を投与してアレルギー反応を軽減することにより。脂質代謝系の撹乱が改善されることが明らかとなった。



20-20

エラジタンニンの体内動態および抗炎症作用に関する研究
岡山県立大学保健福祉学部栄養学科 伊東秀之


加水分解性タンニンに属するエラジタンニンは、各種薬用植物やザクロ、ベリー類などの果実をはじめ、ピメンタ、メラロイカ、ユーカリ葉およびザクロなど酸化防止剤を目的とした食品添加物にも多く含まれている。エラジタンニンは、癌や動脈硬化症をはじめとする各種生活習慣病等、生体内酸素障害と関連付けられる諸疾患の予防との関連で注目を集めているが、その生体内挙動をはじめ生体内で活性発現に直接寄与する化合物に関しては未解明な点が多く残されている。エラジタンニンを豊富に含む食品添加物の中でも、特にザクロに含まれる punicalagin のように、分子内に特異な gallagyl 基を有するタンニンの gallagyl 基由来成分の生体内挙動についての知見はほとんど見当たらない。本研究では、前年度に引き続きgallagyl 基の生体内挙動を解明する目的で、ザクロ果皮から単離した punicalagin および punicalin をラットに経口投与し、尿中代謝物の検索を行った。その結果、ザクロエラジタンニンに特有のgallagyl基由来の代謝産物として M1 (urolithin A) が代謝産物として生成することが示唆され、さらにその他の代謝産物の存在も観察された。さらにザクロの抗炎症活性評価の一環として、ザクロ抽出物およびザクロアリル部分に比較的多く含まれているエラジタンニンダイマーのoenothein Bについて、ヒスタミン合成酵素の阻害活性試験を行った。その結果、oenothein Bにヒスタミン合成酵素阻害活性が示された。



20-21

スパイス香気成分の化学構造と生物活性に関する研究
山口大学農学部 肥塚崇男


スパイスの主要香気成分であるフェニルプロペン類は、特徴的な香気や抗菌作用を示すことから、古代より我々は生活に取り入れ、食品香料や食品添加物、化粧品原料として利用してきた。このようなフェニルプロペン類は(i)ベンゼン環(C6)官能基の種類、(ii)プロペン(C3)側鎖の立体構造の違いにより多彩な構造多様性を示し、僅かな化学構造の違いでその生理活性が異なることが報告されている。しかしながら、フェニルプロペンの化学構造と生理活性に関する知見は未だ数少ない。そこで、本研究ではフェニルプロペン化学構造が農業・食品産業上問題視されている害虫であるハダニの産卵に対してどのような影響を示すか検討した。その結果、O-ジメチルアリルオイゲノールにおいて顕著なハダニ産卵抑制効果が見られた。一方で、プロペン(C3)側鎖がないO-ジメチルアリルグアイアコールやジメチルアリル基の二重結合がないO-イソアミルオイゲノールでは、ほとんど抗ダニ活性を持たないことが明らかとなった。このことからC6-C3といった全体的なフェニルプロペン骨格に加え、ジメチルアリル基の存在が、今後の抗ダニ活性を持つ生理活性物質の創製に重要であることが考えられた。



20-22

ポリフェノール系既存添加物による新規食中毒制御法の開発
静岡県立大学食品栄養科学部 島村裕子


本研究は、新規の食中毒制御法を開発することを目的とし、ポリフェノール系既存添加物を含むポリフェノール類の毒素活性および産生抑制効果を検討した。ポリフェノール系既存食品添加物16試料とそれらに含まれるポリフェノール類12試料の計28試料に対する抗菌活性を調べ、抗菌活性を示さない濃度以下で試験に供した。Western blot解析およびHPLCにより、28試料中12試料でSEAと結合親和性を有する可能性が示唆された。活性が認められた試料のうち、リンゴ由来プロアントシアニジン (AP) およびカテキン類に着目したところ、重合度の高いAPはSEAと結合し、低いAPは結合せずに毒素活性を阻害した。カテキン類では、ガロイル基3位の水酸基がSEAとの結合親和性に関与していた。しかし、ガロイル基4位の水酸基をメチル化したカテキンにおいても毒素産生および活性抑制効果が認められたことから、SEAとの結合がこれら阻害活性に必ずしも関連しているわけではないことが示唆された。



20-23

保存料に対する植物病原性真菌プロファイル作成
東京農業大学農学部 高鳥浩介、高橋淳子(桐生大学短期大学部)

 
食品添加物としての保存料は、微生物管理する上で重要である。従来保存料の評価は大腸菌のような食中毒性細菌に対して行われていたが、真菌に対する評価は極めて少なかった。そこで、保存料の真菌に対する有効性評価を幅広く実施し、有効濃度に影響を与える真菌群の特定し、食品添加物として用いられる保存料と真菌の関係をとりわけ無効または無効に近い真菌群(抵抗性真菌)を特定し、そのプロファイル作成することができた。さらに、真菌事故の多い食品にみる植物病原性真菌によってひき起こされるケースが多いことからその真菌に焦点を当て、保存料および防カビ剤の抗カビスペクトルをまとめた。デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウムではすべての菌株で最大使用量、ADIを下回って発育を抑制していた。同じ防カビ剤でも、菌株によりMIC値に大きなバラつきがあったことから、その効果には違いがあることがわかった。さらに保存料および防カビ剤のカビに対する定量構造活性相関について検証したが、決定係数が0.5以下の真菌は、保存料および防カビ剤に対して、MIC値がほとんど変わらない真菌群であることがわかった。



20-24

「香気プロファイルによる山椒の品種判別と柑橘様香生成因子に関する研究」
神奈川工科大学応用バイオ科学部栄養生命科学科 飯島陽子


サンショウは、ミカン科に属し、独特な柑橘香とピリッとした辛味を持つ特徴的な香辛料である。しかし、接ぎ木で繁殖することが多く、サンショウの分類は複雑で不明な点が多い。本研究では、市場に出回るサンショウ属植物の香気プロファイルを調べ、比較することによって、サンショウの品種による特徴を把握した。8種のサンショウ属植物を入手し、葉の香気成分組成をGC-MS分析により調べた。多変量解析を行った結果、日本で食用として好まれるサンショウ(Z.piperitum)は、一つのクラスターを形成し、柑橘香を有するcitronellalが他のサンショウ植物よりも顕著に多いことが分かった。一方、食用サンショウの台木としてよく用いられる野生のサンショウでは、いくつかのモノテルペン類が含まれていたが、食用サンショウにはあまり含まれないメチルケトン類が含まれていることが分かった。次に、citronellalの生合成を粗酵素系により確認したところ、citralを基質とした還元反応により生成することが推測され、この酵素遺伝子の探索、クローニングを試みた。




20-25

吸着層および油滴の分散状態が乳化系からのフレーバーリリースに与える影響
京都大学大学院農学研究科品質評価学分野 松村康生、佐々木美緒、松宮健太郎


乳タンパク質あるいは修飾澱粉で乳化したエマルションからのフレーバーリリースに及ぼす油滴合一の影響を、ヘッドスペース ー ガスクロマトグラフィーによって分析した。乳化系での分析に先立って、水溶液中において、油滴合一促進剤であるジグリセリン・モノオレイン酸エステルの影響を調べたところ、疎水性の香気性成分であるペンタン酸エチル及びヘキサン酸エチルは、ジグリセリン・モノオレイン酸エステルのベシクルに取り込まれることによって、フレーバーリリース量が減少した。一方、もう一つの油滴合一促進剤であるアミラーゼの場合には、水溶液中からのフレーバーリリースはほとんど影響を受けなかった。エマルション系に関しては、水溶液と比較して、疎水性の香気性成分の放散量は減少し、これらの成分が水相から油相に移行していることが示された。カゼインナトリウム、修飾澱粉それぞれで調製したエマルションに対して、ジグリセリン・モノオレイン酸エステル、アミラーゼを、それぞれ油滴合一促進剤として加えたところ、静置条件下で油滴の合一が引き起こされた。油滴合一に伴うフレーバーリリースの変化を検討した結果、油滴の合一は、必ずしもエマルション中からのフレーバーリリースに影響を与えるものではないことが示された。



20-26

ヒト生理学的計測に基づく食べやすい食品テクスチャーを表現する基準値の探索
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所 神山かおる


固形状食品のモデルとして異なるテクスチャーのハイドロコロイドゲルを用いて、咀嚼している時の食べやすさに関与する一口量の影響を、咀嚼筋筋電位測定(EMG)により解析した。11名の被験者が、一口量3 mLおよび6 mLの5種類のゲルを自然に摂食した。閉口筋である左右の咬筋および開口筋である舌骨上筋群の筋電位を記録し、第一嚥下までおよび最終嚥下までの全摂食過程について筋電位変数を解析した。食品の一口量を減らすと、より多くの咀嚼が誘導される。一口量が2倍になると、咀嚼回数、嚥下回数、摂食時間は約1.4倍になったが、1回の咀嚼動作あたりのEMG変数は有意な差が認められなかった。この関係は、異なる力学特性をもつゲルで共通であり、さらに、寒天ゲルとコンニャクマンナン混合ゲルにおいて、一口量を24 mLまで拡大したが、同様の関係が成立した。この結果から、広いテクスチャー範囲のハイドロゲル状食品の一口量を決めれば、摂食時間、咀嚼や嚥下回数、咀嚼量を推定できると考えられる。
嚥下における一口量の影響を解析するため、超音波パルスDoppler法を用いて、嚥下した食物の食道入口部の描出法を確立し、食道入口部における嚥下した水一口量の違いが食塊流速に及ぼす影響について検討を行った。男女5名ずつの被験者が、水を3、6、9、12 mLを嚥下し、超音波を頚部に当てて、食道入口部での流速スペクトルを解析した。一口量が増加するのにしたがい、通過時間、最大速度、平均速度のいずれもが増加した。嚥下された水が食道入口部を通過する時の平均速度は0.3 m/s前後であったが、高速度成分が存在していた。




20-27

香料を用いた咽頭残留の定量的評価法の開発
新潟大学大学院医歯学総合研究科摂食嚥下リハビリテーション学分野 堀一浩


嚥下障害は,誤嚥性肺炎や窒息の原因となり,ADLやQOLの低下を招く。咽頭残留は,嚥下後誤嚥の原因となるだけでなく,咽頭内へ細菌付着の原因となり,誤嚥性肺炎を引き起こす可能性がある。しかし,咽頭内残留を定量的に評価する方法は未だ確立されていない。食物摂取時のにおいは,口腔内で食塊形成されて咽頭内へ送り込まれた食塊のにおいが鼻腔へと流れて感知される。本研究では,嚥下時のレトロネーザルアロマの変化を定量的に分析するとともに呼気に含まれる香気量を鼻孔から測定することにより,咽頭残留量を評価する試みを行った。
まず、嚥下量・嚥下圧が香気量に及ぼす影響を検討した。その結果,嚥下量は最大香気量に影響を及ぼさなかったが,最大香気量にいたる時間は嚥下量に依存して長くなった。さらに,嚥下圧と香気量には有意な相関を認めた。次に、咽頭残留をシミュレートして試料を咽頭の保持させた結果,咽頭保持時の香気量は咽頭注入量と強い相関を示した。
本実験の結果より、鼻腔より香気量を測定することによりレトロネーザルアロマを経時的に測定することができ,さらに咽頭残留量を定量的に測定できる可能性が示唆された。


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