食の安全確保に関する提言

平成14年5月23日
自由民主党 政務調査会
食の安全確保に関する特命委員会


I 食品安全に関する行政機関の改革

1 基本的考え方

 BSE調査検討委員会報告において、食品安全に関する行政の危機意識の欠如と行政の生産者優先・消費者保護軽視等の弊害が指摘されているがいこの問題は、BSEに限らず、食品安全行政全般に共通する問題である。
 BSE発生のような食の安全を脅かす問題を二度と生じないようにし、食の安全に対する消費者の信頼を回復するためには、食品安全に関する行政機構を大幅に見直す必要がある。
 その際には、消費者の健康保護を最優先に、食品安全行政に欠落していたリスク分析の手法-「リスクを科学的に評価するリスク評価、リスクとべネフィットや社会的な影響等を比較考量しながら管理するリスク管理、行政と科学と国民との間の情報や意思疎通を円滑に行い相互信頼を確立するリスクコミュニケーション」-を食品安全行政に導入することが重要ある。
 また、食品の安全性確保に関する施策は、産業振興とは区分して実施すべきである。
 以上の観点を基本として、食品安全に関する行政機構の改革を次のとおり実施する。なお、その際には、政府全体として行政機構縮減合理化の方向と齟齬をきたさないようにスクラップ・アンド・ビルドの考えを徹底する。そのためには、食糧庁の廃止等も視野に入れた思い切った改革が必要である。

2 独立したリスク評価機関〔食品安全委員会(仮称)〕の新設

(1) リスク管理を担当する既存各省からの独立

 食品安全行政にリスク分析手法を導入するため、新たにリスク評価機関を新設する。
 この新たに設けるリスク評価機関は、リスク管理を担当する厚生労働省、農林水産省等既存各省とは独立した機関とし、内閣府に設置する。
 新たなリスク評価機関は、食品に関する個々の危害(ハザード)について幅広くリスクを評価し、その評価結果に基づき、リクス管理を担当する各省に対し必要な勧告を行う。
 以上の趣旨から、新たなリスク評価機関においては、規制、許認可、検疫等のリスク管理は行わず、これらは引き続き既存各省が担当する。

(2) 食品安全委員会の設置

 新たなリスク評価機関は、食品の安全性に関するリスク評価を客観的・専門的・科学的に行うこととなるため、複数の専門家・科学者が合議により行うことが適当であり、委員会組織〔食品安全委員会(仮称)〕とする。
 なお、リスク評価を実際に行うに際しては、情報公開を第一として透明な議論により国民の信頼を確保するとともに、個々の危害(ハザード)ごとに専門家・科学者・消費者等で組織する個別の作業チームを食品安全委員会の下に設置し、評価を行い、その結果を食品安全委員会に報告の上、最終的には食品安全委員会で決定する。

(3) 食品安全委員会の委員

 食品安全委員会から委員については、5~10名程度として、専門家・科学者から構成する。
 なお、国会承認人事とする。

(4) 担当大臣の設置

 食品安全委員会を担当する大臣を置くものとする。ただし、リスク管理を担当する各省大臣の兼務は認めない。

(5) リスク評価の対象

 リスク評価は、食品を経由して体内に摂取される可能性のある危害(ハザード)すべてを対象とする。ただし、医薬品は除くものとする。

(6) リスクコミュニケーションの総合的実施

 リスクコミュニケーションについては、リスク管理を担当する各省においても実施する必要があるが、食品安全委員会においては、これら各省間の調整を含め総合的なリスクコミュニケーションを担当する。
 なお、実際のリスクコミュニケーションの実施に当たっては、消費者、報道関係者等各分野の専門家で構成する専門部会を委員会に設置し、情報の客観性及び透明性を高めるよう努める。

(7) 食品安全行政の監視・モニタリング

 リスク管理を担当する各省が行う食品安全行政についての消費者からの苦情や告発を食品安全委員会が的確に把握することは重要である。このため、この受け皿として、数十名程度の「食品安全行政監視員」を食品安全委員会に設置し、食品安全委員会がリスク管理を行う各省へ勧告する機能を補完するものとする。

(8) 危磯管理体制の整備

 食品安全委員会は、
①リスク管理を担当する各省に対し勧告を行う機関であること
②内外の科学情報や事故等の情報収集を行う機能を有していること
③リスクコミュニケーションを総合的に実施する機関であること
等から、食品の安全性に関する危機管理が必要な場面においても、リスク管理を担当する各省と連携して、情報収集等による緊急事態の発生・拡大防止、緊急事態発生時の消費者等への情報公開、内外情報の提供等一定の役割を果たすことが求められる。この観点から、リスク管理を担当する既存各省との間で適切な役割分担を行いつつ、食品安全委員会として必要な危機管理マニュアルを策定する。

(9) 事務総局(仮称)の設置

 以上の機能を的確かつ円滑に実施するため、食品安全委員会に事務総局を置く。
 事務総局においては、食品安全委員会の管理に必要な事務のほか、リクス評価に必要な国内外の科学情報や事故等の情報収集、作業チームが行う具体的な評価作業のために必要な事務、食品安全行政の監視・モニタリング等を行う。なお、事務総局の組織については食糧庁等既存組織の見直しの中で対応を図る。

3 監視体制の充実・強化

(1) 水際の食品安全監視体制の充実強化

 中国産野菜の残留農薬問題やBSE問題に関しイタリアから輸入した肉骨粉がBSEに汚染されていた可能性が指摘されるなど、輸入食品の衛生検査、植物検疫、動物検疫といった水際における食品等の安全検査の重要性が増大しているのに対し、一方で現在の体制は、食品衛生監視員(輸入食品についてのモニタリングを行っているもの)約260人、植物防疫官約780人、家畜防疫官約280人ときわめて脆弱な体制にある。
 我が国の食生活はカロリーベースで約6割が外国の輸入品であることを考えると、食の安全を確保する上で、水際の食品の安全監視体制の充実が重要であり、この分野における思い切った体制の強化、整備を図る。

(2) 食品表示に関する監視体制の充実強化

 BSE問題に端を発し雪印食品の偽装表示事件をはじめとして食品表示に関する消費者の信頼が大きく揺らいでおり、食品の安全性や消費者の食品選択に関する権利の保護という点で、食品表示に関する消費者の信頼回復が早急に求められている。
 このため、企業モラルの回復は当然のことながら、違反した場合の罰則の強化、更には、食品表示に関する監視体制の充実強化を図る。

4 人間と動物の共通感染症への対応

 近年における社会経済の発展等により、核家族化、高齢化が進展するに伴い、人間と動物の共生が一層志向される中で、犬、猫等の家庭動物が、人々の心に癒しを与えたり、盲導犬、聴導犬、介助犬等として様々な人々の日常生活を支えるなど、人間生活、社会生活の中で果たす動物の役割は多岐にわたるとともに、ますます重要なものになってきている。
 このような中で、動物の保健衛生の向上、とりわけ人と動物の共通感染症対策について、動物医療に対する需要や期待が従前にも増して著しく高まってきていることから、国は、動物に関し、単に畜産等の産業政策的な観点からのみならず、犬・猫等の家庭動物に関する動物医療の提供体制の整備についても、今後医療面を含めて本格的かつ幅広に取り組む必要がある。
 これに関連して、欧米には獣医局、獣医務局があること等を参考として、獣医師行政の一元化について中長期的課題として積極的に検討すべきである。

II 食品衛生法等関係法令の改正

1 基本的考え方

 食の安全に対する消費者の信頼を回復するため、食品の安全性確保に万全を尽くす観点から、食品衛生法を始めとする食品の安全性の確保に関する法律を抜本的に改正しなければならない。
 食品衛生法は、終戦直後の衛生状況も不十分な時期に制定された法律であり、有害・粗悪・不衛生な食品を取り締まり、排除するという観点が強い法体系である。現在は、農薬、動物用医薬品などはもとより、遺伝子組換え食品、ダイオキシン、内分泌かく乱化学物質など食品の安全性をめぐる新たな課題が生じてきている。また、O-157を含む食中毒事件は、引き続き国民の健康や生命への大きな脅威であり、毎年数万人の患者が発生し、尊い生命が失われている。
 こうした状況を踏まえて、食品安全行政はすべて、国民の健康を保護することを目的としていることを明確に位置付け、食品衛生法をはじめとする食品の安全性の確保に関する法律を、国民の健康保護に重点を置いた今日的な法体系を抜本的に見直す。

2 食品安全行政の基本原則の確立

 食品の安全性の確保に関する法制は、食品衛生法やと畜場法などの厚生労働省が所管する食品衛生規制、飼料安全法、農薬取締法などの農林水産省が所管する生産段階での規制があるが、包括法において、以下のとおり、食品安全行政の基本原則を確立する。

・食品安全行政は、国民の健康保護を最優先すること。
・安全な食品を提供する第一義的な責務は、製造者、輸入者、加工者、調理者、販売者等にあること。
・国及び地方公共団体は、国民の健康保護の観点から、食品の安全性確保のための施策に責任をもって取り組むべきこと。
・食品安全行政は、リスク分析の考え方に則って、リスク評価とリスク管理の機能的分離と相互作用、リスクコミュニケーションの確立などを主眼として取り組むべきこと。

3 食品衛生法等の食品衛生規制に関する法律の見直し

(1) 基本原則の明確化

 2に対応して、各法律の目的規定を見直し、「食品の安全性を確保することをもって国民の健康保護を図る」旨を明確にし、行政、事業者の責務を明確に位置付ける。

(2) 食品の安全性確保に関する基準の整備

①農薬や添加物等の安全性評価の推進と安全性に問題のあるものの流通禁止

ア 農薬取締法を含む関係法を改正し、農薬、動物用医薬品、飼料添加物について、国内で使用されるための登録等と同時に食品への残留基準が設定される仕組みを導入するとともに、食品への残留基準が変更された場合に農薬の使用基準等も改正される仕組みを強化する。
イ 基本未設定の農薬等について、早急に基準値の設定や分析法の整備を行い、その上でなおも基準未設定の農薬等についての残留を原則禁止する制度を創設する。
ウ 既存添加物について、安全性評価を優先的に行うべき既存添加物の評価を早急に終了させ、安全性の問題が判明したものについて即時に使用禁止できる規定を整備する。

②製造・輸入・販売に係る安全性確保のための規格基準について、最近の食中毒発生の状況などを踏まえて製造基準などを整備するとともに、既存の基準について、最新のリスク評価を基に見直す。
③ハサップ(総合衛生管理製造過程)承認制度について、一定期間ごとに見直しを行う更新制度を導入する。
④過剰摂取等による健康影響が懸念される場合の流通禁止規定など、安全な健康食品の流通確保のための規制を整備する。
⑤法違反時の罰則について、法違反に対する十分な抑止力となるよう、経済情勢も踏まえながら、法人に重点を置いて、強化する。
⑥食品表示制度の見直しについては、「Ⅲ 食品表示制度の抜本的改善」に記載のとおり。

(3) 監視・検査体制の充実・強化

①包括的輸入禁止規定の創設

 繰り返し基準に違反し、かつ、輸出国において十分な安全対策がとられていないなど、違反の蓋然性の高い特定の国からの特定の食品について、輸入の都度検査を行わなくとも、包括的に輸入を禁止できる仕組みを創設する。

②実施体制の充実・強化

 ①の法改正に加え、輸入食品については国の検疫所、国内流通食品については地方自治体の保健所を中心として、予防を万全に行うという観点から、監視・検査を行う専門職である食品衛生監視員の増員を図るなど、実施体制を強化する。

(4) 食品に起因する事故発生時の対応

①大規模・広域食中毒発生時の国の自治体に対する指示権限を創設するとともに、自治体間の役割を明確にする。
②食品製造者等に対して、食中毒発生時の原因究明等のため、原材料の購入等の記録保管の努力義務を課す。

(5) リスクコミュニケーションの強化

 海外等の情報収集・分析体制を強化するとともに、ホームページや公聴会等を通じて消費者との意見交換を行う、関係審議会への消費者代表の参加を明確にするなどにより、地方自治体を含め、食品の安全行政への消費者参画の推進を図る。

4 食の安全確保についての国民の理解

 食品の安全性についての科学的な知見、収集される情報の正確性・即時性や食品の安全についての監視・検査の体制・人員・予算には常識的に一定の限度があり、また、安全性の確保には、相応のコスト(価格への反映)を要することについても、国民の理解を得ていくことが肝要である。
 過度の農薬使用は消費者の「(曲がったキュウリや)虫食い野菜を敬遠する」嗜好にも問題がある。見栄えよりも肝心なのは安全性であるというように消費者の意識を変革する、啓発していくことも必要ではないかと考える。

III 食品表示制度の抜本的改善

1 基本的考え方

 輸入食品の増加、多種多様な加工食品、食経験の乏しい食品の増加を背景として、外見や形状では安全性等について判断できない食品が増えている。また、最近、雪印食品、全農チキンフーズ等偽装表示が多発している状況を踏まえ、「表示」を通じて食品の安全性確保と消費者の選択の機会の確保を図るとともに、食品安全に対する消費者の信用回復を図ることがますます重要となっている。

2 表示制度の一元的な見直し

 「表示」をもとに、消費者が、食品の安全性や品質、嗜好などの面から判断して食品を選択することになるが、「食品衛生法」、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」、「不当景品類及び不当表示防止法」、「不正競争防止法」というように多数の制度が関わる食品表示については、消費者にとって分かりやすいものとすることが最も重要である。
 したがって、食品の安全性の確保に関する法制度の見直しの検討に当たっては、こうした趣旨を踏まえることが必要である。
 このような視点に立って、消費者等の意見を十分に聴きながら、表示項目、監視体制及び罰則にわたる一元的な見直しを行い、その結果に基づき組織体制を整備するとともに、食品表示制度に関する法律の一元化等の法整備に努めることが必要である。
 その際、食品の表示には、
①食品の安全性に関する表示と、
②品質の規格や公正な取引確保などの食品の安全性に直接関わらない表示
があり、両者で趣旨・目的・義務付けの必要性が異なることに十分留意することが必要である。
 なお、今通常国会に提出中のJAS法の改正法案は、緊急的に必要な罰則強化措置を講じたものであり、見直しの第一段階と位置付けるべきである。

(1) 表示項目の整理

 表示させる項目を、法律上義務付けるべき事項と任意的な事項とに区分して再整理することが必要である。
①法律上義務付けるべき事項
・食品の安全性に関する事項
・消費者の商品選択において特に重要な事項(原産地表示等)
②任意的な事項
 ①に掲げる事項以外の事項、例えば他の類似品との差別化を図るための事項等

 なお、当面、品質保持期限、賞味期限、消費期限など食品衛生法とJAS法とで重複して表示させている項目について、合理的な範囲で、それぞれの趣旨・目的等の観点から再度整理を行う。

(2) 生産履歴に関するJAS規格の規定
 
 消費者が、必要な場合に、食品の生産履歴に関する正確な情報を入手できる体制を早急に実現することが必要である。
 このため、JAS規格においては、表示された生産履歴と実態が一致しているかどうかを第三者機関が検証する仕組みを取り入れた「生産履歴」に関するJAS規格を制定する。

(3) 監視・検査体制の見直し

・専門的な知識を要することも多い食品の安全性に関する監視は体制の充実強化を図りながら保健所の食品衛生監視員を中心に対応する。
・消費者の商品選択において重要な原産地などの事項については、農産物等の生産、流通を担当する部局を拡充強化して対応する。
・消費者の協力を得て表示のモニタリングを行う「食品表示ウオッチャー」制度の拡充、消費者等から苦情、相談に対応する表示相談窓口(表示相談110番)の充実に努める。

(4) 罰則の強化

 義務的な表示、任意的な表示を問わず、表示義務の不履行や虚偽表示の場合の罰則について、食品表示制度間の均衡にも配慮しながら、違反に対する十分な抑止となるよう措置し、特に「食品の安全性に関する表示」に関しては、法人に重点を置いた強化を図る。

IV 食品安全に対する消費者の信用回復対策

1 基本的考え方

 英国においてはBSE問題等を契機として、行政への消費者の信頼が失墜したが、①行政機構の改革により、独立した食品基準庁の設立、②BSE専門家からなる委員会の設置、③国民への情報公開を実施することにより、国民の信頼を回復することができた。
 英国のこのような経験にかんがみ、我が国においても、国民の信頼を回復するためには、①リスク評価を担う組織とリスク管理を担う組織の分離、②専門家から構成される食品安全に関する委員会の設置、③情報公開の徹底を行っていくことが重要である。

2 トレーサビリテイ(生産・製造過程への遡及)について

 当面、食品の安全確保の観点から、食中毒発生時において、原因究明や被害拡大防止のため、食品製造者等に対して、原材料、製品等の購入元や販売元に係る記録を保管するよう、努力義務を課す。
 また、安心して食品を購入することができるよう、消費者のニーズに応じて生産や流通に関する情報を引き出すことができる取組みを促す。

3 食品企業におけるモラルの確保

(1) 食品を扱う企業の責務として、社会的モラルをもって行動することが求められる旨を包括的に明記する。
(2) 欧米では内部告発者を保護することにより、内部告発を奨励する制度が採り入れられており、示唆に富む面もあるが、我が国の企業文化や風土に馴染むものであるか慎重に検討することが必要である。したがって、当面は、既存の監視・検査体制の充実で対応する。

4 食育の推進等

(1) 食の安全に関する不信と食品の多大な廃棄の現状に照らし、食品の安全性、食品に対する愛着等について、子供等に教える「食育」を推進する。
(2) 消費者の嗜好を反映して、流通部門から生産部門に対する規格に関する要請(重量、長さ、形状等)が生産コストを押し上げたり、無駄を生み出している面があるので、国民経済的視点からの見直し・改善が必要である。

V 危磯管理体制の確立

1 基本的考え方

 食に関連した国民の生命、健康の安全を脅かす事態に対して、科学的な根拠に基づく、健康被害の発生予防、拡大防止、治療等の対策が円滑かつ効果的に実施される危機管理体制を確保するためには、新たに設置されるリスク評価機関である食品安全委員会がリスク管理を担当する厚生労働省、農林水産省等既存各省と連携して各々の機能を果たすことができる、まさに各省庁横断的な体制作りを行うことが重要である。

2 危機管理情報の収集及び共有

 危機管理においては、危機管理情報の収集が最も重要であるため、食品安全委員会の事務総局が関係省及びその研究機関等から政府機関関係情報、学術情報等の提出を求めることとする。また、リスク管理か担当する厚生労働省、農林水産省等既存各省においても危機管理に関する情報を相互に提供することとする。各機関が収集、交換の対象とする情報については、事故発生情報、学術研究情報など情報の性質も踏まえて、脱落している情報がないようあらかじめ取り決めておくこととする。

3 「食の危機管理基本指針」の制定

 危機管理体制の構築に当たっては、英国における食品安全(リスク評価を含む。)を担う食品基準庁が健康問題を所管する保健省及び家畜衛生等を担う環境・食料・農村地域省との間の覚え書において、一般原則、責任の分担のほか、農薬の安全、動物用医薬品、食品に起因する動物由来感染症及び伝達性海綿状脳症、食品規格と表示、遺伝子組換え食品、動物飼料、国際関係、緊急対応等の個別の課題について定めており、わが国においても関係機関の間で覚え書を交換し、その内容を公表することによって、実際の協力が的確に働くことにしていくことが必要である。
 危機管理体制の基本的事項を明らかにするため、内閣府の総合調整機能の一環として食品安全委員会が中心となり、厚生労働省及び農林水産省と協力して「食の危機管理基本指針」を作成する。「食の危機管理基本指針」は、
①食中毒のような急性の健康危機だけでなく、徴量の有毒有害物質の長期摂取であっても重大なものも含め、広範な食の危機を対象とし、食品のみならず、飼料も対象とする必要がある
②予防の観点からの未然防止措置、危機発生時の緊急対応、人の健康被害が生じた場合の治療等の確保、情報公開と再発防止措置の確立について記述する
③国産、輸入を問わず、フードチェーンを通じた危機管理が可能となるよう関係省間の連携、役割分担の基本的考え方を明確にする
ことが重要である。

4 危機管理マ二ユアルの策定

 上記「食の危機管理基本指針」に基づき、各省庁が対応する危機に関して、食中毒、動物由来感染症、環境汚染由来物質、残留農薬、残留動物用医薬品などの分野ごとに具体的対応の詳細を明記した危機管理マニュアルを作成する。さらに、BSEやダイオキシン汚染など個別の重要問題ごとについても作成する。
危機管理マニュアルには、関係省間の連携、分担を明らかにして縦割り行政の弊害を解消するとともに、リスクコミュニケーションのあり方も明記し、国民に信頼される危機管理システムを構築する。
 さらに、危機管理マニュアルには、各省レベルの対応内容のほか、
①対応の責任及び役割分担の明確化、指揮命令系統の整備
②地方支分部局、研究機関、地方自治体との連携、役割分担
③地万自治体内での関係機関との連携
④平時における情報収集、情報交換、演習訓練
などの記述も必要である。

5 緊急時の予防措置

 特に緊急時の危機費理システムの構築に当たっては、
①リスク評価を緊急に行う場合、データの収集、専門家の検討等一定の結論を得るまでに時間を要する場合もあることから、欧州食品規則も参考として、リスク管理を担当する厚生労働省、農林水産省等既存各省において、問題がある食品又は飼料の流通、輸入等の条件の付与や一時禁止等の当面の予防措置を講ずることができること
②この当面の下防措置については、リスク評価機関である食品安全委員会、リスク管理を担当する厚生労働省、農林水産省等既存各省の間において相互に情報提供を適切に行い、後日、食品安全委員会からのリスク評価に基づく勧告、危機管理対応の評価等を受けること
とすることが必要である。

公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 事務局

本部 大阪府豊中市三和町1丁目1番11号

TEL(06)6333-5680 FAX(06)6333-5491

お問い合わせはこちらへ

東京分室 東京都中央区日本橋本町4丁目6番3号 SEGビルアネックス2階

English Top